自信をつける為には……

ティルH.グロブ氏:最初に質問させてください。心臓がドキドキして、膝がガクガク、お腹の辺りがキュッと痛くなる、手に汗をかく、こんな感じを味わったことがある人はどのくらいいらっしゃいますか? ありがとうございます。

素敵な異性に声をかける、大人数のクラスの中で手を挙げて質問をする、上の人に自分の意見を主張しようとすると、とても緊張してしまい、言おうと思ったことが上手く言えなかったことがある人は? ありがとうございます。

では次に、緊張するけれども覚悟を決めてやってみた後、次のうちいずれかを経験したことがある人は手を挙げて下さい、その後もまだそれに対する恐れが抜けない、または一度できたのだからまた出来ると、何回もそれを続けるうちにもはや緊張しなくなった、いかがでしょうか? ありがとうございます。

これが、今日私がお話するテーマです。正確に言えば、今よりも自分に自信を持つ方法についてお話します。もっと正確に言えば、社交の不安や恐怖をどのように克服するか、他人にどう思われるかを気にしなくなる為にはどうしたらいいか、そして恐怖にとらわれずに自分らしく生きるにはどうしたらいいかについてお話します。まだトークの冒頭ですが答えをお教えしましょう。答えは、路上に30秒寝転がってみることです。

(会場笑)

もちろんこれには寝転がる以上の意味があります。そして、この結論に至るまでの経緯もお話します。大小兼ねた私自身の不安症の話、セラピー、コーチングを経て道に30秒寝転がることがその対処法であるという結論にたどり着きました。

外面はイケてる高校生、内心はビクビクしていた

私は私が覚えている限り、自信に溢れ、社交的で高校ではプロのバスケのチームに入っていました。周りでも人気者でいつもクラブに出かけて、パーティ三昧でした。私の友人も皆プロのバスケ選手でしたので、高校ではイケてるグループの中の1人だったのです。周囲の人々からも私のことを自信家で社交的であると思われていました。

しかし、本当の私は全く違いました。私は大抵不安で怖がっていたのです。特に私よりもクールでスマートで成功している人の中にいると、私はシャイになり落ち着かない気持ちでいっぱいでした。これは自分を否定されることへの大きな恐れ、自分はクールではないのかもしれないという大きな不安と、弱いやつだと思われたくないという気持ちが原因です。これにより私は次のいずれかの行動を取らざるを得なくなりました。

まずは回避です。例えば、大きなパーティに誘われたとする。でもそこにいる人を誰も知らなければ私は行きません。誰も知らないのでどうしていいかわからずに部屋の隅に立っていれば、皆から「あいつは誰にも話しかけてもらえないダサいやつだ」と思われてしまうからです。または、友達みんなを集めて一緒にそのパーティに行くことで、ダサい奴だと思われることを回避しました。

次に承認です。皆の人気者、一番クールな友人に気に入られる行動を取りました。彼に「こいつもクールな仲間だ」と認められたかったのです。それが個人的には間違ったことだとわかっていても、とにかく認められる為にはなんでもやりました。

ビクビクする自分を克服する為、臨床心理に目覚める

高校の後バスケは辞めました。腕を故障し、もうバスケを続けることが出来なくなってしまったからです。その後に心理セラピー、コーチングの道に進みます。バスケを通じて学んだのは、何かを追求しようと思うのであればその道のプロから学べばいいということです。この教訓をセラピー、コーチングにも当てはめました。

ヨーロッパで最高のセラピストやコーチ達に会い、彼らから学ぶことにしました。ある時カンファレンスに行きました。その会場で最も権威あるセラピストに挨拶をし、あなたの弟子にしてください! と頼みました。この瞬間、私は自分が抱える拒否されることへの恐れと向き合っていました。拒否されるのが嫌だ、恐いという気持ちを乗り越えるのに今が最高の時なんだと自分に言い聞かせて。

幸運というか皮肉というべきか、そのカンファレンスで初めて「コンフォートゾーン」という概念があることを知りました。そこではその概念に基づき、自分の限界を超えてより速く成長する為のテクニックを紹介していました。「コンフォートゾーンチャレンジ」とは意識的に自らをナーバス・不安にさせる状況に追い込むことです。

例えば、拒否・否定されることへの恐れがあるのであれば、10回誰かに拒否されることをする。恥をかくことを恐れているのであれば、外で両手をまっすぐ上に上げて、公共の場にいる周囲の人から変な目で見られるようにする。このように、自らをその状況に追い込み続けると他人の目が気にならなくなります。

すごく良いアイディアだと思いました。これで私自身も自らの恐れを克服することが出来ると。臨床心理、心理学の中でこの概念がどのように分析されてきたかを更に勉強するようになりました。特に認知行動心理学の分野でです。不安を解消する解決法は1950年代から語られ続けてきました。疑似体験療法です。つまりコンフォートゾーンチャレンジと同じように、自分が怖いと思うことに自ら意識的に挑戦することです。これが効果的である理由もちゃんとあります。

簡単に言うと、皆さんの身体には恐れに反応する自律神経がありますが、これを私達が意識的にコントロールすることは出来ません。恐れに体が反応する例として、心拍数が上がる、汗が出る等があります。様々な体験を通じて、この自律神経がどんな状況に自分が恐れを感じるかを学びます。すると、同じ状況に遭遇すると、毎回自律神経が反応するのです。頭ではそれが恐れるべき状況ではないと理解しているのにも関わらずです。

駅で地べたに横になってみた

そこでこのように自分を変えていきます。自分が怖い、不安だと思う状況に意識的に追い込み、その状況に長く自らを置くことで、だんだんと不安のレベルが下がっていきます。すると自律神経が、この状況は別に怖くないのだ、と学ぶのです。これが自分に自信をつけるプロセスです。

これはいい! と思ったので自分でも実践してみることにしました。一番最初にやったチャレンジをよく覚えています。ある木曜日に、よしコンフォートゾーンチャレンジを実行するぞと思ったのですが、よくある話です。「明日からやればいいや」と、次の日から始めることにしました。

その同じ木曜の午後、大学から帰宅途中、午後5時、ラッシュアワーで駅は人であふれています。ホームで電車を待っていました。その時にふと思ったのです。「よし、明日はこのホームで30秒横になるぞ」と。電車がホームに入ってきます。その時また思いました、「明日まで待たずとも今やってしまえばいいじゃないか」と。

今やってやろうか考え始めると2つの変化が起き始めました。心拍数が上がり、手には汗をかいている、呼吸が難しくなってきた。それと同時に、瞬く間に様々なやらない理由が頭の中に浮かんできます「友達が家で待っているじゃないか」「頭がおかしいと思われるぞ」等々。

(会場笑)

私はまだそこに立ったままです。今ここでやってやろうか、でも怖い、出来ないという気持ちの間でドキドキしながらどうしようかどうしようかと思いながら。でも電車が来たし、明日にしようと思い直しました。電車内に一歩乗り込んだ時、あることを理解し「はっ!」としました。

以前も頭ではわかったつもりでしたが、その瞬間にあることを体感として真に理解しました。言い訳するのはとても簡単ですが、言い訳し続ければ、自分の恐れから目を背け続けるであろうということを。

バッグを床に置き、床に寝ころびました。怖かったです。心臓はバクバクです。そして3つのことに気がつきました。第一に、周囲の人が私をとても変な目で見てきたことです。私を変な目で見ながら避けて通ります。ある子供が興味を持って私のほうに近づいてきた時に、その子の母親が「変な人に近づいちゃダメ!」と引っ張っていきました。

(会場笑)

第二に、多くの人が「なぜこの男は地面に転がっているのだ」と理解できずに混乱していた様子です。私は明確な目的を持って寝転がっていましたが、他の人は誰もなぜ私が床に転がっているのか知りませんから。第三に、ほとんどの人が私のことなど見ていなかったし、特段気にかけることもなかったことです。どれだけ私の近くにいようとも、ほとんどの人が私のほうを見ることもありませんでした。

床に寝転がると、どんどん緊張が解けていきました。1分も2分もそうしていると、なんの緊張も感じずリラックスしてきます。しばらくしてバッグを掴んで立ち上がると、周囲の人が今度はなんだ、という顔をして私の様子をうかがっているのを感じます。その後電車に揺られて帰宅しながら、電車の窓に写る自分の顔を見るとにっこりと満足げな大きな笑みを浮かべていました。

友人にも勧め、インターネット拡散でムーブメントに

これが私の初めてのコンフォートゾーンチャレンジです。その後私は自分が恐れを抱いていることのリストをつくり、ひとつずつ克服していくことにしました。あるものはすぐに克服できましたし、あるものは他よりも克服するのに時間がかかりました。友人にもコンフォートゾーンチャレンジの話をし、それを勧めると、ヨーロッパ中にいる私の友人達もチャレンジをし、更にその様子の写真やビデオが続々と届くようになりました。

私も私の友人達もこれを効果的だと思うのであれば、他の人の役にだって立つはずだ! と、コンフォートゾーンチャレンジのオンラインコミュニティをつくりました。お互いに自分が抱える不安や恐れをシェアし、アドバイスする。だんだんとこのコミュニティが拡大し、今では恐れに立ち向かい、克服し、自信をつける世界20ヵ国から数100人のメンバーがいます。

こちらをご覧ください。世界中で路上に寝転がるという挑戦をした人々からのビデオ投稿です。例えばこちらはシンガポール人の男性です。

こちらはロンドンの男性。

こちらはベルリンの男性。

私自身に人から否定・拒否されることへの恐れがあり、それを克服しようとして見つけたメソッドが、遂には国際的なムーブメントになったのです。他の皆さんが自らの恐れ、悩みを克服しようとしたことと自分自身の経験から3つのことを学びました。