2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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株式会社教育と探求社の創業20周年を記念して開催された本イベント。代表の宮地勘司氏と、株式会社ブレインパッド常務執行役員、CHROの西田政之氏との対談の模様をお届けします。本記事では、思考のベースをアップデートするためのリベラルアーツの重要性について語られました。
宮地勘司氏(以下、宮地):僕は西田さんがすごくおもしろいなと思うのは、経営や金融やデータを学ばれたりしてるんですけど、常に目に見えない形而上的なもの、精神的なものを考えていらっしゃると思うんです。例えば哲学とかもあると思うんですけど、そのへんは何が大事だとお考えですか。
西田政之氏(以下、西田):今はVUCAの時代と言われて久しいわけですけども、いつの時代も先なんて読めないじゃないですか(笑)。
宮地:そうですよね。
西田:じゃあどうすればいいのかと考えた時に、基本に立ち返ってベースに戻ることだと思うんですね。宮地さんの先ほどの言葉で言うと、そのベースが何かと考えた時に、我々が盲目的に信じているようなことって、相当あるんじゃないかなと思うんです。
例えば今、なんの疑いもなく資本主義社会を生きているわけなんですけども。よく考えると、16世紀にヨーロッパが封建制度から資本主義へ移行するにあたって、「魂と身体は別だ」というデカルトの二元論がありました。そこで人と自然の関係性が変わり、「自然は人間に支配されるべき卑しいもの」という位置付けになりました。
そこから奴隷制の肯定につながって、産業革命を通じて、「与えるより多く搾取する」という考えが蓄積されて、資本主義の根幹となるわけですけど。その時ちょうど対比されたのが自然主義のスピノザの「人間は自然の一部だよ」って考え方ですよね。
自分たちの基盤を揺るがす考え方を恐れた資本家や、あるいは当時の教会によって反対を受けて、自然主義は負けてしまった。そこから脈々と資本主義をベースとする今の社会がつながっているじゃないですか。
西田:その結果、今は地球環境が悪化して、生態系が取り返しのつかない状況を目の当たりにしている。人間自ら生命の危機を招いている事実があるので、我々が前提としている思考のベースを、今一度再定義する必要があるんじゃないかなと思っています。
その際に大事なのが、古の天才たちが蓄積した、いわゆる哲学です。彼らの思考のフレームワークを借りて思考して、今の思考のベースをアップデートするのがすごく大事なんじゃないかなと思っています。そこで、あちこちで「リベラルアーツや哲学って大事じゃないですかね」という話をさせていただいてます。
宮地:めちゃめちゃおもしろいですね。今の時代に最も必要な話だなと思いました。私もたまに言うんですけど、株式会社より学校のほうが歴史が古いんですよね。日本では亀山社中(1865年に坂本龍馬とその同志20数人により結成された日本初の商社)が初の株式会社だと言われていますが、学校の歴史は千年に及ぶような単位なので。
ちょいと出の、いろんな事情や都合で転がってきた株式会社の真ん中にある資本主義を、あまりに絶対視してるなと思います。
宮地:「新しい資本主義」って言葉がよく言われていますけど、模索してると思うんですよね。「資本主義の裏側にあるのは何なのか」「本当は倫理が大事なんじゃないの」みたいな研究とかも今され出しているし。
あとやはり揺らいでるなと思ったのは、「民主主義は絶対じゃん」と言われていて、(最近の世界情勢は)侵略したり殺戮したり、とんでもないって僕も思ってるんだけど。民主主義が間違ってばかりで停滞してる中で、ある種の強権政治の合理性と速さを感じるというか(笑)。
勝ち負けじゃないのかもしれないけど、もう自由主義や民主主義が勝ったと思っていました。でもアメリカで強権主義の人が選ばれそうになっているのを見ると、世界では逆に劣勢になってるなと。そう思うと、どっちにしても、ある俯瞰した立ち位置を持たないといけない。
盲目的に「資本主義、あるいは民主主義はすばらしい」とするんじゃなくて。歴史も踏まえて、自分がいったん離れたところで何が最適かを考え続けるのが、すごく大事だなと思います。
西田:おっしゃるとおりで、そこの思考が停止してしまってると思うんですよね。考えることを放棄してしまっていて、世の中の流れに流されちゃってるだけというか。
それを危惧して、今北海道の十勝の浦幌町で、リーダー育成の研修を去年の11月から立ち上げて、今年本格展開するんです。そこで1つやっていることが、一次産業の体験を通じて「生きるとは何か」「命とは何か」を考えるワークショップです。
例えば酪農従事者にどんな苦労があって、牛のどんな犠牲をもって、我々が朝いただいているコップ1杯の牛乳が生産されているか。頭では想像できるんですけども、実際現地に行って体験して、牛が涙を流すところを見て、初めてその大変さを実感するわけですよ。
我々の都市での生活は、地方の一次産業によって支えられている部分があると思うんです。働いている時の思考って、思考のベースの上に構築されるものですから、そこがアップデートされると、考え方や生き方や行動自体が変わってきますよね。そういうことを日本全体でやらないと、本当に思考停止してしまって、流されちゃうんじゃないかなと思うんです。
宮地:そうですね。この前ある人が、「徴兵制じゃなくて徴農制をやったらどうか」と言っていて、僕はすごく感動したんです。ある年齢になったら、2年間は強制的に農業に従事すると。実現できるかは別として、案としてはかなりおもしろいなと思うんですけどね。
やはり体験が圧倒的に不足していると知ることと。知っていることと実際に体験することの間のギャップが、大きな災いやズレを生んでいるなと。それは本当にそのとおりだなと思いました。
西田:例えばカルビーさんは、新しく入ってきた社員全員を北海道の畑に連れていって、農業体験をさせるという、すばらしいことをやっていらっしゃいます。まさに企業ぐるみでそういったことをやるのは、きっと大事ですよね。
宮地:大切ですね。変化の多い社会であるからこそ、自分の軸を持ったり基盤を持ったり、あるいは考えるための土俵が必要だと思うんですけど。
さっきから何度か出てきている、哲学と言ったほうがいいのか、リベラルアーツと言ったほうがいいのか。これに関して、なぜ大事なのかとか、どう使うのかとか、西田さんの考え方を教えていただけますか。
西田:社内でも今リベラルアーツのプログラムを展開中なんですけども、「なぜそれを西田さんはやるんですか?」と言われた時にお答えしているのが、「本業を極めたければ異業種を学べ」というところです。
何が言いたいかと言うと、やはり世の中のイノベーションって、他の分野からヒントを得て生まれている部分が多いわけですよね。例えば蓮の葉から撥水加工が生まれたり、禅からiPhoneが生まれたりしているじゃないですか。
専門分野を突き詰めるのも、それはそれで大切なんですけども、やはり何かのブレイクスルーとなるヒントやきっかけは、他分野を学ぶことから生じている部分があります。
西田:これは人間の脳もそうなんですけども、人間の脳には「経験的直観」と「戦略的直観」があります。経験的直観は自分の経験の積み重ねで答えが出るもので、戦略的直観は脳の引き出しの中にあるいろんなものが、勝手にシナプスがつながり合って、1つの思考が生まれるというものです。
戦略的直観は極めて正しいと言われています。いかに脳に良質な知見をためるかで、発想の広がりや質がたぶん決まってくるので。そういった意味で、やはりリベラルアーツで幅広く関心事を学ぶのは、すごく大事なんじゃないかなと思います。
宮地:なるほどね。今のお話では、違う領域のもの(を学ぶこと)で、ビビッとシナプスがつながって、新しいクリエーションを促すとありましたけど。例えば、何かお店をやっている人がエンタメの世界に入るとか、異なる領域や分野のビジネスをすることでも、起こると思うんですが。なぜリベラルアーツなのか、もう少し答えていただいてもいいですか。
別に異なる分野だったら、自分の仕事と違う体系、文化の仕事でもいいのかなと。でも、リベラルアーツってその部分のもっと基盤にあるのかなと思ったんです。どんな機能や効果を期待しているのか、なぜリベラルアーツが大切なのかと。
西田:そうですね。例えば、アートも一見、仕事に関係ないように見えます。ただ、僕らの仕事において、対外的にあるいは対内的に発信する際、どんなに良いものを作ったとしても、伝わらなければ意味がないですよね。「じゃあどうやって伝えればいいか」という時に、芸術・アートが、1つのヒントになるわけです。
フランスは、言葉や文化も違う国に四方八方を囲まれています。その緊張感がある中で、自分たちの主義主張をどうやって表現したらいいか考えた時に、表現手法の1つとしてアートが広まったわけです。そこに人々のいろんな思いが、言葉を越えて表現されているんですね。
そういったことって、我々のふだんの生活、コミュニケーションあるいはマーケティングとかに、めちゃくちゃ役に立つと思うんです。そんな感じで、いわゆるリベラルアーツと呼ばれるものは、やはり体系的に作られてきたので、ふだんの生活やビジネスに応用しやすい題材がそろっていると思います。
宮地:なるほど。今の話はよくわかりました。ありがとうございます。
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