効果的に時間管理を行うには?

篠田真貴子氏(以下、篠田):私の課題はさておき、例えば1週間の中で日にちを割っていくとか、1日の中での時間の使い方もあるし、そもそも時間をどのユニットでとらえて、どうチャンク分けすると自分は心地良いのかって、けっこう人によって違うと思うんですよ。

倉貫義人氏(以下、倉貫):わかるわかる。違いますね。

篠田:お二人はどうなのかなって、今日は聞いてみたいなと思いました。

倉貫:最近はやれてないんですが、僕はストレングスファインダーで言う「達成欲」を持ってるので、朝に1日の予定を自分で立てるんですよ。1時間ごとに「こういうことやる」と書いて、それを達成できたらその日は気持ち良く寝れるというのをやっていて。

でも、そうするとすごくがんばらなきゃいけないので、最近はちょっと体力も落ちてきて(笑)。「そんなにがんばれなくなったな」というところがあって、そこまでやらなくなっちゃったんだけど。でも、最近はやってなくて張り合いがないから、やったほうがいいんじゃないかって思い始めてますね。

篠田:へぇー。1日単位なんだ。

倉貫:立場上、上司がいないので、別に何もしなくてもよいとなったら「何もしなくてもよい人」になっちゃうんです。自分を甘やかし放題なので、本当は自分にタスクを渡すことができたほうがいいなと思いつつ、最近はできてないですね。それこそ、30代と同じ働き方ってできないじゃないですか。

篠田:できない。

仲山進也氏(以下、仲山):うん。

倉貫:そうなってきた時に、どんなふうに自分の仕事の折り合いつけてるのか……これは僕のザッソウですね(笑)。

篠田:なるほどね(笑)。

仲山:もう量で勝負できないからね。

倉貫:そう。

“To Doリストを消し込むタイムマネジメント”が好きな人・苦手な人

倉貫:量で勝負できないし、こなすというか、やり切っていく仕事のスタイルではできないなって。全部をリストアップしてやってく仕事の仕方や毎日の過ごし方をしてると、達成できない日が増えてくるとちょっとつらくなるから、もうやらなくなったんです(笑)。

篠田:なるほどね。

倉貫:「それでもいいよ」というふうに、自分を認めながら日々過ごしていて。

篠田:でも、倉貫さんは相変わらず達成欲を持ってるから、別の組み立てで「やってやった感」が欲しいんだけど、それはいったい何だろう? みたいな感じなんですね。

倉貫:そう。本も書くとなったら、「毎日これぐらいは書かなきゃ」って達成していかなきゃいけないからハリが出るんですが、「本を書こう」って決意するのもなかなか踏ん切りがつかない、みたいなところはけっこうある(笑)。

篠田:じゃあ、To Doリストを消し込むみたいなのがすごく好きな方ですね。

倉貫:そう。To Doリストを消し込むのが好きなんですよ(笑)。

篠田:(笑)。……笑ってることからお察しいただけると思うんですが、まったくそういうの萌えない。

(一同笑)

篠田:「To Doリスト? ふーん」みたいな(笑)。世の中の出版されてる仕事術って、なんとなく倉貫さんみたいなTo Doリスト消し込みが好きな方ばっかりだなと思っていて。

倉貫:多いですね。

篠田:そうじゃない私みたいな者に、なんか良いのはないのかなってうっすら思います。

「拡散モード」と「収束モード」という2つのモード

倉貫:逆にTo Doリスト消し込まない仕事のスタイルって、どんな仕事のスタイルなんですか……(笑)?

篠田:がくちょがそっちじゃないかっていう、疑いを持ってるんですけど。

仲山:そうですね。消し込まなきゃいけないモードになった時は、リストを作って消し込んでいくこともやらなくはないんですが、僕は時間のとらえ方が真逆というか。もっとふわっとしてるというか、スパンが長くて。

数ヶ月単位で、「拡散モード」の時と「収束モード」の時の波がくるんですよ。例えば本を出したらイベントに呼んでいただいたり、取材の依頼をいただいたり、いろんな知り合いが増えていって、アウトプットやしゃべったりする機会が増える。

「忙しいな」って思うぐらいそういうのが増えたり続いたりすると、「でも、これがずっと続くわけじゃないしな」と思って、とりあえず全部受ける。そういう過ごし方をしてると、その流れがそのうち収束してくるんですよね。だんだんと「びっくりするぐらい予定が入らないな」ってなる時があって。

篠田:(笑)。

仲山:その時に1個、「本を作りましょうね」という企画を編集者さんと進めたりしておくと、「そろそろ執筆せよ」という天の声が聞こえてきたなって思って、本を書くために時間を使えるようになる。順調に執筆時間がとれる期間を経て、また本が出ると拡散モードになって……みたいなのを繰り返してる感じがします。

篠田:(笑)。

To Doリストを作っても、そのとおりに動けない

篠田:忙しくなって、落ち着いて、本を書いてという1セットで1年とか1年半ぐらい?

仲山:そうですね。2年に1冊ぐらいのペースで本を出してるから。

篠田:2年単位ぐらいなのか。ワークショップとかもけっこうやってらっしゃるじゃないですか。それは今の波に関係なく?

仲山:それはずっとベースとしてある感じですね。

篠田:なるほどねぇ。私、たぶん体質的にはがくちょに近い気がする。笑っちゃうんですが……「いつまでにこれを出さなきゃ」みたいな締め切りがバーッとある時に、To Doリスト的に書くじゃないですか。書いても、自分がそのとおりに動かないんですよ。平気で無視する。

(一同笑)

倉貫:それは別のことに興味がわくとか?

篠田:それもあるし、思った時間で終わらないとか。決めたことを破ることに、「しまった」とか「達成感が足りない」とストップするものや罪悪感がないので、ワークしないんですよね。ただリストになったというか、むしろリストになったことで「見えた!」と、すっきりしちゃうみたいな。

倉貫:(笑)。

篠田:一般的にTo Doリストが発揮するとされる効果は、私にはまったくないんです。威張ってる場合じゃないんだけど。

(一同笑)

倉貫:いやいや(笑)。

篠田:まだもうちょっとマシなのは、Googleカレンダーの言うことはわりと聞く。

倉貫:それはわかる。

篠田:なので、カレンダーに「この作業をやる」とブロックするほうが成功確率は高いですね。

仲山:一緒です。

篠田:それでも確率は6~7割かなっていう感じ(笑)。なんか瞬発力で……。

倉貫:(笑)。でも瞬発力はあるから、そこでやれちゃうってことですね。

篠田:そう。でも、それがいいのかどうか。

締め切りに追われる日々が続くとインプットが減る

篠田:あとは体力問題で、そうは言っても私ももう50代なので、「瞬発力」とか言ってるのもちょっとどうかと思うし。

(一同笑)

篠田:確かに瞬発力と言っても、本当に何も考えてないことはたぶんなくて。例えば「何か書いてください」と言われて、締め切りが3週間後ってなったら、常にその問題意識を保持はしてるんですよね。複数案件あっても意外に保持してるんですよ。ずっとバックグラウンド処理してるの。

実は瞬発力の正体はそれで、材料がまったくゼロなまま急に慌ててやることはない。引き受けた時点で、ある程度は自分の中で勝手に目処がついたと思って引き受けてると思うんですよね。というのに甘えて……。

倉貫:やれちゃうからね。

篠田:それに甘えて、「やっば。(締め切り)明後日じゃん」みたいな。

(一同笑)

仲山:締め切りに動かされてるという感じですよね。

篠田:そう。あまり健全じゃないんですよね。

倉貫:いえいえ。でも、締め切りがないとやらないというのはわかります。締め切り、欲しいですね。

篠田:締め切りはないんだけど、普通に本を読んだり、人と会って話したりしたりとか、インプットがありますよね。

ちゃんと考えてるベースの蓄積があって、例えばそこに締め切りがあるご依頼がくるから、自分の中でなんとなくぼんやり貯めてたもののアウトプットにつながるわけじゃないですか。でも、締め切りに追われる日々が続くと、ベースを貯めることができなくなっていくんです。

仲山:どんどん後回しというか、手つかずになりますよね。

篠田:そう。井戸が枯れてくヤバさみたいなものがちょっとあるんですよね。

読書は“食事と同じくらいの位置づけ”にする

篠田:倉貫さんみたいなTo Doリスト派は、「本を読む」みたいなのもTo Doリストにするの?

倉貫:いや。「本を読む」はTo Doリストにせずに、机の上に常に置いてある。今、僕の目の前には3冊積んである(笑)。

篠田:3冊だったらぜんぜんいいですよ。私、たぶん100冊積んじゃってる。

(一同笑)

倉貫:本をいっぱい読みたいし、読もうっていう本もあるから、前までは端から端まで本当にしっかり読むことを大事にしてたんですよ。だけど、端から端まで読もうと思って積んどくぐらいだったら、もう「さっと読んで読んだことにしてもよい」と自分を許せるようになりましたね。

篠田:それ、めちゃわかります。

倉貫:「本を読むのは食事と同じぐらいにしたほうがよい」みたいなことを誰かが言っていて、確かにそうだなと思って。「絶対にこの本を理解しよう」と思って1歩も踏み出せないより、日々のことにして、集中力がない時も読んだりする。

篠田:とりあえず開いて。

倉貫:そうそう。開いてパーっと読む。ぜんぜん何も残らない時があっても、それはその時の本と自分の体調の縁だから、まぁいいかなって。最近はそのスタンスになって、ちょっと積読が減りました(笑)。

篠田:なるほどねぇ。

時間がない中で、定期的にアウトプットをする難しさ

仲山:「ブログを書く」というのはリスト化するんですか?

倉貫:「ブログを書く」はリスト化していますが、もう死ぬほど貯まっててヤバいですね。

篠田:ネタが?

倉貫:うん、そう。書きたいネタが死ぬほど貯まってるけど、ぜんぜん書けないから気持ち悪いんですよね。

篠田:それもすごい。書きたいネタって、思いついた時が一番書く勢いがある時だと思いません?

倉貫:本当にそうなんですよ。とはいえまとまった時間がないと書けないのと、書きなぐっていいのかというと……ポッドキャストだったらしゃべり切っていいんですが、一応ブログのほうはもうちょっと読者を気にしてるんです。

読者にわかるように、役に立つようにって、2ステップぐらい抽象化と言語化をするので。そう考えたら、構成を考える時間がとれずにネタが残ることはあるなぁと思って。

でもこれシノマキさんのFacebookのアウトプットの話とはちょっと違うかもしれないけど、僕も今年はあんまりブログが書けてなくて。僕の場合はTo Do派なので、定期的にアウトプットすることを自分に課さないとやらなくなっちゃうなと思って。

だからクオリティ関係なく、毎週出すなら出すとか。僕の場合は自分に課せたらストイックにやりそうな気はするなと思ってはいる。

アウトプットして初めて理解できることはたくさんある

篠田:私も「毎週」みたいな決め方はたぶん合わないんだけど、常に出す体質にしておかないと、アウトプットして初めて理解できることっていっぱいあるじゃないですか。

倉貫:ある。

仲山:しかも、テキストにしてみるっていうことですよね。

篠田:理解の深まりが足りなくなってるのが本当にまずいなと思って、立て直したいんです。

仲山:それをやらないと、「ちゃんとしたものを書かなければいけない」みたいな心理的なハードルがだんだんと上がっていくんですよね。

篠田:そうなの。例えば1ヶ月ぐらい前に読み終わって、めっちゃ感銘を受けた本があるんですよ。それについて書くと、さらに自分の理解が深まって絶対にいいのに、書けてないんです。

倉貫:わかる。

仲山:時間が経てば経つほど、「ちゃんと書かなきゃいけない」ってなりますよね。

篠田:書くにあたって、余計なことを考えちゃうんですよ。

倉貫:「その時にサッと書いときゃよかったなぁ」ってなる。

篠田:勢いでね。「これ、超良かったわー」ぐらいの感じで、雑に書くのが本当は一番良かったのに。

倉貫:本当にそう。日々やってると慣れてくるんだけど、ちょっとやらなくなると戻るのが億劫になりますよね。