AI活用でワクチンをスピーディーに開発したモデルナ社

ニック・トンプソン氏(以下、ニック):では、シンギュラリティとは何を意味するのか、どのようなものになるのか。シンギュラリティにつながる質問をしたいと思います。(AIは)人間の脳や十分に洗練されたコンピュータができることはすべて行えるようになるでしょう。今後10年間で、それらができないことは何でしょうか?

レイ・カーツワイル氏(以下、レイ):1つは、創造的であることです。人間ができることはすべてできるようになりますが、新しい知識を創造することはできないでしょう。ただ、それは実際には間違っています。なぜなら、例えば生物学のシミュレーションができるからです。

モデルナのワクチンについては、誰か1人のアイデアで「これは効果があるかもしれない」と座って考える通常の方法ではありませんでした。 通常はテストをするにも、複数人で試すには何年もかかります。

(モデルナのワクチン開発では) 彼らはうまくいきそうなものをすべてリストアップしました。 そして実際には、数十億の異なるmRNA配列がありました。 彼らは「全部試してみましょう」と言って、生物学をシミュレートして2日であらゆることを試しました。

そこである週末、彼らは数十億の異なる可能性を試しました。 その中から最も優れたものを選んだのが、今日までのモデルナのワクチンなのです。彼らは実際に人間でテストしましたが、シミュレートされた生物学を使ってテストできるので、それも克服できるでしょう。

人間でのテストをやめるのは少し難しいですが、可能です。すべてを試し、最良のものを選択し、それを数日で、数百万のシミュレートされた人間にテストを行います。それが病気の薬を作る未来の方法です。

現在、がんやその他の病気について、このまったく新しい方法を使った研究がたくさん行われています。この流れはモデルナワクチンから始まったのです。私たちは精神疾患の治療法も開発し、現在第3段階の試験段階にあります。

AIの発展のために人間の創造性が必要

ニック:しかし、どこが限界なのでしょうか? (AIは)何ができないのか? ということです。

レイ:それはコンピュータが創造的であることです。実際、思いついたことを試すだけではなく、すべての可能なことをリストアップし試します。 

ニック:それは創造性なのですか? それとも、ただ能力を最大限に発揮して力ずくでやっているだけなのですか?

レイ:他のどんなかたちの創造性よりもはるかに優れていて、創造的です。なぜなら、あらゆる可能性を試し、それを非常に素早く実行し、私たちが以前持っていなかったものを考え出すからです。創造性として、他にどんなものがあるというのでしょう?

ニック:では、創造性の限界について話していきます。今後10年間に突き当たるであろう課題は何でしょうか?

レイ:まあ、このプロセスを経ていないのですから、私たちはすべてを知っているわけではありません。何がうまくいくかを想像する創造性が必要です。また、生化学シミュレーターでシミュレーションできなければなりません。

ですから、実際にそれを解明しなければなりません。そのためにしばらくは人を使うことになるでしょう。つまり、人間ができることを(AIが)すべてできるようになりますが、私たちが知らないことがたくさんあるので、それを見つけたいのです。そのために、機械と一緒に仕事をするには、人間の創造性が必要です。

脳と機械をつなげる技術の台頭に時間がかかる理由

ニック:では、シンギュラリティを実現するために何が起こるのかに戻りましょう。あなたが示した計算能力のグラフがあります。このグラフは非常に安定しており、対数スケールで一直線に上昇しています。

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