2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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ジャパンハート主催のイベントに、同団体の創設者である小児科医の𠮷岡秀人氏と、横浜創英中学・高等学校 元校長の工藤勇一氏が登壇。医療と教育、それぞれの業界で活躍してきた両氏が、「イノベーションが生まれる当事者の作り方」をテーマに対談しました。本記事では、当事者意識を奪う日本の教育の問題点や、世界で医療活動を行う𠮷岡氏の思いなどが語られました。
司会者:次はこちらのテーマです。お話をおうかがいする中で、私自身も含めて、みんな「本質に気づけるようになりたい」「何かアクションをしたい」と思われている方がすごくたくさんいます。社会が少しずつ変わってはいくことを期待しながらも、なかなか大きな一歩を踏み出すことが難しい状況である。
個人個人が自分自身が当事者になることに対して踏み込めない理由は、どういうものがあるとお考えでしょうか? お二方におうかがいしたいと思いますが、工藤先生はいかがでしょう?
工藤勇一氏(以下、工藤):そうですね。2つの視点が必要だと思うんですが、1つは根本的な理由ですね。人が当事者になることを阻むというか、日本社会がどうして当事者になれないのかという根本的な問題。それともう1つは現実問題です。
我々と言っていいのかわからないけど、仕事をやっていく中では基本的に敵だらけです。「工藤さんは『敵だらけ』の状況をどうしたんですか?」ってよく質問されるんですが、「普通のことだから」と、あんまりイライラしないことです。たぶん𠮷岡さんもイライラしないですよね(笑)。
𠮷岡秀人氏(以下、𠮷岡):そうですね。
工藤:まあ、僕もイライラするか(笑)。イライラはしても、「しょうがないな」と思う。それをどう当事者に変えるかというと、人は変えられないので、やはり経験をしてもらわなきゃいけない。
当事者に変わってもらうためには、機会を作ってあげたり巻き込んでいく戦略が必要で、ありとあらゆる方向からいろんな方法を使ってやっていくわけです。その話は𠮷岡さんのほうがはるかに得意だと思いますが、日本の学校教育がうまくいっていない最大の理由はここにあるということです。
工藤:教育の目的は何かということについては、ヨーロッパの方々が先に気がついた。会場にはヨーロッパに詳しい方もいらっしゃるので、本当は聞いたほうがいいのかもしれないですが、ヨーロッパでは宗教上の問題もあって、性悪説に沿った教育をしていた時代があります。だから歴史上、「鞭で叩いて叩き直せ」みたいな教育が長い間あった。
我々はその教育を明治維新から引き継いでしまったので、「子どもはしつけて育つものだ」という、ヨーロッパ型の文化を入れちゃったんですね。これがいまだに続いているわけですね。
ヨーロッパは第二次世界大戦終了後に大きく教育が転換をしていきました。「社会を作っている当事者にしなきゃいけない」という教育が始まったので、教育の方法がまったく変わっていったんですよ。
つまり教育に大事な2大目標は、僕なりにみなさんにわかりやすいことを言うと、「子どもの主体性をどう育てるか」と「当事者性をどう育てるか」だと思うんですね。
「主体性」というのは生まれた時は全員が持っているものです。生まれた瞬間に主体的じゃない子どもは1人もいないんですね。でも小学校の高学年ぐらいになって、お母さんが「うちの子、勉強の仕方がわからないんです」「うちの子、言われたことしかできないんです」と言う姿があるとすれば、この10年間ぐらいの間で主体性を奪ったわけです。
ヨーロッパでは、主体性を失わせない教育をするために上からの指導をしないんですね。基本的に支援をする、主体性を失わせない教育技術というか。お医者さんにとっての医療技術が、教員にとっては何かと言うと、まだ今の日本では教師主導型の指導技術を正しいと思っているんです。
工藤:ヨーロッパは、子どもがちっちゃいうちから支援技術を言語化しているんですよ。だからまず1つ、支援技術という言語化が今の日本の教育に足りないんですね。この間インドネシアのマニュアルを見たら、インドネシアでは子ども同士が喧嘩をした時に、教員が指導しないで解決する方法がちゃんと載っていました。
僕もこれを見て驚きましたよ。日本には言語化されているものがほとんどないですね。うちの学校では、僕が開発したものをやっていますけどね。
もう1つは「当事者性」なんですが、当事者性は育てるものなんです。子どもたち同士で遊ばせてほったらかしにしておけば、当然喧嘩も起こるし、大ケガするかもしれないことが起こるけど、ほったらかしにしておいたほうがまだマシですね。
だって日本では、幼児教育から「仲良く遊ぼうね」「順番ね」と教えるわけです。仲良く遊ぶってことは、「人の気持ちを考えてやろうね」というように、全部大人が仕切っていくわけですね。
ほったらかしにしておけば、「貸して」「いや、貸したくない」「なんでよ」「あなたは返さないから」ってちゃんと(子ども自身が)勉強していくのに、先生が出てきてそれを全部奪って「『順番どおり』って言ったでしょ。あなたが悪いから謝りなさい」と謝らせる。(謝られた)子は「いいよ」と言うわけですね。
おかしな教育でしょう? こういうふうに育った子どもたちは、先生やお母さんに「あの子いじわるだから」と言いつけに行って、先生には「なんとかあの子を排除してください」とか言うわけですよね。
だって当事者であれば、解決するのは子どもたちだと教えなきゃいけないから、そのことを教えるための支援技術が必要なんですよ。教員はトラブった時に上手に入って、この子たちが解決しているようなセリフを使うんですね。
この教育がないから、そもそも根本から間違っているんです。最初から主体性を奪い取る教育をして、当事者性を奪い取るというか、育てない教育をしている。
工藤:当事者性をどういう方法で育てるかというと、民主主義的に教えることですね。民主主義として、解決方法を教えていく方法をきちんと言語化して教えていく作業が、日本ではほとんど言語化されてないですよ。
インドネシアの冊子を見て、僕はびっくりしました。それが教室に貼ってあるんですよ。教室に貼ってあるという意味はわかりますか? 先生がやるんじゃなくて、生徒がやるんです。生徒がトラブると、このマニュアルに従って子どもが仲介に入るんですよ。(インドネシアでは)ここまで言語化されているんですが、日本は150年間変わってないです。
司会者:ありがとうございます。今言ったような教育の課題が、先ほどのデータにも表れているのかもしれません。
では、どうやって当事者意識、あるいはチームを社会課題の解決に向かって巻き込んでいくことができるのか。20年間で𠮷岡先生が工夫してこられたチーム作りについて、おうかがいできますでしょうか。
𠮷岡:そうですね。この前もちょっと言ったんですが、今バリバリYouTubeに出ている幻冬舎の箕輪(厚介)さんという編集者がいるんです。彼が言っていたのは、「昔は若い人たちはお金がある人にみんな付いていったけど、今は誰もお金のある人なんかに付いていかないんです」ということです。
じゃあ、今はどんな人に若い人たちが付いていくかと言うと、1つのことをやり続けている人です。それは芸術でもいいし、機を織っていてもいいし、何でもいいんです。1つのことを一生懸命やり続けている人に若い人たちが付いていく、と言っていましたね。
ひな形みたいに、若い人たちが憧れて「ああなりたいな」という人たちが、今は日本から少しいなくなってきているのはあるとは思いますね。
𠮷岡:例えば「お金持ちになりたい」という時代があったから、お金を持っているやつがいい車に乗って、いい生活をして、おいしいものを食べて、えばっていた時代があったでしょう。そういう時代があったけど、今の若い人たちはそんなふうに思ってないじゃないですか。
「いい車に乗りたい」と思っている人よりも、「別に車は動けばいい」と思っている人が多いし、いい食べ物をカップルで食べているよりは、2人でその空間があればいいと思っている人たちが増えてきているわけですね。
そういう意味では、より本質的なところを見切られてきているとは思うんですね。ここらへんのジェネレーションギャップを、僕より上の人たちと下の人たちの間で最近はすごく感じるようになっています。だから、何をしたわけではないです。ただひたすら、自分の正しいと思うことをやり続けてきただけです。
1つだけヒントがあるとすれば、ちゃんと育てるというか。例えば今日もミャンマー人の子が来ていますが、カンボジアとかミャンマー人は(現地では)文句を言ったり、あんまり働かないんですよ。
だけど、海外へ行っている日本人はめちゃくちゃ働くんです。ミャンマーから来ているミャンマー人も海外ではめっちゃ働くし、カンボジア人もそうなんです。だって、自分がマイノリティーだから存在価値が懸かっているわけですね。
マイノリティーだから、現地人より能力が高くないと同じように使ってもらえないし、同じような給料も保証されないでしょう。人生と命、生活が懸かっているから、マイノリティーの人たちはめっちゃがんばるんですよ。
ミャンマーでは日本人たちがメインで動いて、そのチームの中では現地人をマイノリティーにしてしまう。そうすると、存在価値を示すために、認められるために、彼らはめっちゃがんばるんですよ。僕が現地の人を教育していく時に最初に取り入れたのはこれで、カンボジアでもやりましたが成長スピードが圧倒的です。
非常に狭き門だから、日本で医者や看護師になる人たちより、現地ではもうちょっとレベルの高い人がなっているんですね。能力はもともとすごく高い人たちなので、心の姿勢というか気持ちの姿勢、意志とチャンスさえあれば、あっという間に成長します。とにかく、彼らをマイノリティーにしてしまうという方法論でやってきたんですね。
𠮷岡:ただ、教育だから押したり引いたりすることはあって。怒ったり、厳しくしたり、時には放置しないといけないとか、細かいことはいろいろあるんですね。だけど、一応そういう感じでやってきました。だけどすごく大切だったのは、ブレないでひたすらやるという、僕の姿勢だと思うんですよ。
ある時、患者が集まり過ぎたんですね。僕が帰るまでにあと38時間ぐらいしかないんですが、手術する患者が三十何人いたんですよ。ミャンマーでは、彼らは交通費を借金してきているんです。日本だとせいぜい(移動時間が)1~2時間ですが、2日も3日もかけて来る人たちがいるから帰せないんですよ。
「もう1回来い」と言っても来れないから、この38時間で30人を全員手術しきると決めたんですね。一睡もせずにひたすら38時間、僕は手術をやり続けたんです。そして出発の10分ぐらい前に全部終わったんですよ。
(全員の手術が)終わった時に、一緒に働いている日本の看護師たちはみんな泣いていましたし、現地の人たちもすごく満足していた。患者を裏切らないとか、患者の期待に応える、そして逃げないということをブレずにやってきた。
道の途中で倒れるのは本望だと、僕が初めてミャンマーへ行った時からそう思ってやってきたんですね。倒れても仕方ないからみんな許してくれるだろうと思ってやっていたので、そこだけはブレないようにやってきたんです。それが今ジャパンハートで働いている人たちのひな形になるし、基準になる。
ここがブレると組織は崩壊するし、僕は創業者なので、まだ創業者が生きている間は示していける。また次のステージに変わった時は、それに代わる何かが必要になってくるとは思うんですが、そこはマネジメント力なのかもしれません。
工藤:質問してもいいですか?
司会者:はい、もちろんです。
工藤:たぶん最初に現地に行った頃とはまったく違っていて、自分たちで回せるようになっているんだと思うんですが、継続していくことってそれなりに難しいものがあるんじゃないのかなと思うんです。
𠮷岡:そうですね。お金の問題や人員の問題も含めて、やはりいろいろ問題はあるんですが、一つひとつ解決していくしかないと思うんですね。ただ、僕は最初から徹底して自分に腹落ちさせていることがあって。それは何かと言うと、自分がやりたいからやっている。ただそれだけなんですよ。
僕はこれがしたかったから、ここへ来てやっている。だから、自分にとって不都合なことが起こったり、気に食わないことが起こったり、望んでない結果が来た時にも、それを人のせいにしない。
時には本当に人が死ぬんですよ。日本だったらカバーされたかもしれないけど、設備が不十分なところでやっているから、子どもたちが亡くなる。それが自分のミスじゃなくて、誰かのミスであることもあるんですが、僕のせいじゃないですか。僕がやるって決めたことにみんなが付いてきて、最終責任者は僕だから。
人間だから、僕も弱いから「お前のせいだ」って言いたいんですよ。ここ(喉元)まで出て何回も飲み込みんです。「お前、なんであの時に気づかなったんだ」と怒りたいけど、必死に飲み込むんですよ。それで、自分のせいだと納得させる。
𠮷岡:患者の家族は雪崩を打ったり泣いているし、子どもは動かなくなる。こういうシーンを経験して、「自分が死んだほうがよっぽどマシだな」と何回も思ってきたんですね。なぜ言い訳しないのか、なぜ自分のせいだと思うかと言うと、自分がやりたくてここに来たから。これがすべての始まりだったんです。
彼らが僕のところへ頼みに来たわけではないんです。僕が彼らを助けたいと思ったんですよ。僕らみなさんのことを助けたいとして始めたことだから、いいことも悪いことも全部のせいなんです。
これもいつも言うんですが、我が子のためであろうと、奥さんのためであろうと、親のためであろうと、人間は本当につらいことには耐え続けることができない。だけど、自分のことだけは耐え続けることができるんですね。それはなぜかと言うと、恐らくその結果の中にいいことも悪いことも、プラスもマイナスもあるからなんだと思うんです。
プラスも自分の中に沈んでいくから、僕らはずっと耐え続けることができると思うんですね。だから、つらいことはありますが、やり続けることができるんです。すごく単純なんですけど、すべては自分の意志で、自分のためにやっているということ。
もちろん可哀想な人たちだし、気の毒だし、病気は治ってほしいと思いますが、「自分のためにやっている」って自分で腹落ちしているんですね。だから、「何かが起こった時に人のせいにしない」ということに最初に気づいて、今でも自分の中で腹落ちしているから、つらくても、何かがあっても続けてこれたんじゃないかなとは思う。
司会者:ありがとうございます。自ら考え、そして選んだから続けているということで、まさに今日のテーマの当事者意識の部分のお話なのかなと思いました。
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