阪大担当者が語る、大学のブランド戦略の現場

University Identity のために大学を知り、おもしろがる #1/2

みなさんは自分が所属している団体のアイデンティティが、どのようなものかご存じでしょうか? 大阪大学のクリエイティブユニットに所属している伊藤雄一氏は、日々大学のアイデンティティである「ユニバーシティアイデンティティ」について考え、行動しています。大阪大学では、正確に大学のロゴマークを覚えている人が少ないようです。では、団体におけるアイデンティティの構成要素とは一体どのようなものなのでしょうか? また、このアイデンティティを確立するためには、どのような努力を行うべきなのでしょうか? 所属している人たちが同じ方向を向く組織の作り方を、実際の大阪大学の状況と照らし合わせながら伊藤氏が語ります。 (TEDxOsakaUSalonより)

大学の見せ方を考え、変える「クリエイティブユニット」

伊藤雄一氏:皆さん、こんばんは。大阪大学、クリエイティブユニットの伊藤といいます。今日お話しするトークの内容は、ユニバーシティアイデンティティ。

あんまり聞き慣れない言葉だとは思うのですけれど、UniversityとIdentityの融合した言葉についてどう考えているのかを僕が喋るのですけれど、サロンですので、あとで皆さんで一緒にトークしながら、考えていきたいと思います。

簡単な説明があったのですけれども、僕がいるのはクリエイティブユニットという部署なのですね。クリエイティブユニットってどういうことか。図でいうと、こういう感じですね。

大阪大学の本部から、一般の人々の皆さんに出て行くものは、うちを通って出て行くような部署なのです。だから基本的に皆さんの目に触れるものは、一部部局が作っているものについては名簿に入れてないですけど、本部が作っているものは、クリエイティブユニットの目を通って、出来るようになっています。

具体的にどういう人がいるのか。

僕はディレクションをやっていますけど、僕の下にはWebのデザイナーさん。グラフィックのデザイナーさん。映像のディレクターさん。英語翻訳ができる英語エディターがいるのですね。これくらいの人たちがクリエイティブユニットを作って、デザイン、翻訳、Webの見せ方を考えるというようなことをやっています。外に出て行くということで、大阪大学の広報の人たちが同じ部屋にいて、日々やり取りをしています。

本当はクリエイティブユニットと広報の部屋の写真をお見せしたかったのですけど、あんまりクリエイティブじゃないのですね。じめじめしているというか(笑)。

日々こういうところで、デザインやブランディングをやっています。

「いい人材を輩出している」大阪大学の実際のイメージは?

まずは、皆さんの大阪大学のイメージって何ですか?

どうですか、こんなイメージないですか? これは僕らがTwitterやブログなどのいろんな媒体を見て、ネガティブなキーワードとして。皆さんじゃないと思いますけど、学生さんがよく呟く単語というのがある。僕らはこれをどうにかしたい

じゃあ一般の人が大阪大学をどう思っているのか。これはブランディング調査で調べてみました。

これは、一般の人が大阪大学に関して思うポジティブなイメージ。僕は情報の人間ですから、形態素解析してキーワードを数えて、このようなタグクラウドのまとめ方ですね。だいたい当たっているのではないですか? 例えば、信頼できる大学だとか。進学させたいとかですね。いい人材を輩出している。就職がいいとかですね。レベルが高い。ステータスがあるとかですね。

一方で、ネガティブなイメージ。意外に少ない。

京大(笑)。25パーセントの人が「京大に負けている」って言っているのですね。あとは、キャンパスが田舎にある。遠い。ノーベル賞を受賞していない。おもしろみに欠ける。貢献というのは社会貢献が少ない。これは言い訳させてほしいのですけど、京大が大きいのは、ちょうど山中先生が受賞した直後にとられたアンケートなのですね。非常にバイアスが掛かっていると思いたいのですけど。

大学の独自性を表す「ユニバーシティアイデンティティ」の構成要素

皆さんは、阪大が好きですか? 阪大好きな人は拍手を。あんまり好きじゃない人、拍手。どちらでもない人、拍手。ありがとうございます。

何を言われてもいいように作ったものです。阪大が好きな人が多かったので、嬉し泣きですね。僕らの仕事というのは嬉し泣きができるような人をいっぱい作ることです。実は僕は情報科の研究の人間で、メインの研究ではユーザインターフェース。

本当はユーザインターフェースの話も1時間くらいしたいんですけど、人とコンピュータとを繋ぐものをどう作るかという研究をしています。ユーザアビリティ。でも、今日はその話じゃなくて、ユニバーシティアイデンティティの話をします。ユニバーシティアイデンティティとは何なのか。

これは一般的な言葉ではないのです。UIではなくてCIという単語が一般的です。これはコーポレートアイデンティティ。企業の言葉です。企業の場合は、「大学」という所がそのまま置き換わるのですけど、大学の理念・独自性・文化のイメージ。そういうイメージをわかりやすいメッセージで社会に発信し、大学の存在価値を高めるという戦略のことをユニバーシティアイデンティティというわけです。そのためにはどうするか。

まず、理念の統一が必要です。後世のみんなに残すんですね。次に行動の統一をする必要があるでしょう。最後に、様々な見た目、視覚的な統一をする必要があるでしょう。

大阪大学のロゴを知っている学生はどれくらいいるのか?

これらのことが、ユニバーシティアイデンティティの構成要素になっている。じゃあ、見た目の統一。正しい大阪大学のロゴマークって、皆さんご存じですか?

ロゴは大阪大学の理念を表したものです。その正しいロゴマークがどれだかわかりますか?

一個、論外なものがありますけど、これは東京都のマークなのですね。東京都の清掃車にはこれが付いているのです。だから阪大の人が東京に行くと、ちょっとびっくりする。「あ、阪大のマーク付いている!」とかって(笑)。

これも論外なのですけど、これは年に1回ぐらい、広報のほうにクレームが来るんですね。「梅田で阪大のロゴをパクっている眼科がいます」。これ、眼科さんのマークなのです(笑)。お医者さんが阪大卒で、使っているんじゃないかと。この2つは論外として、どうですか。正解は、全部間違っています。

引っ掛けなのですね。正解はこれです。

何が違うかわかりますか? ここでこういうのがある。

いちばん大きいのは、ここがくっついているかどうかですね。銀杏マークというのは真円で作られているので、ここがやや下がって、円になっている。円なので、ここが若干末広型になっている。これは某学部の封筒で使われていたロゴマーク。これはここが開いていて全然違う。これは、去年の某学部の学部案内に使われていたんですけど、これ真円じゃないのです。それを踏まえて、これを見ると、どうですか。

全然違うのですね。さあ次の問題。理念を正確に知っている人はいますか?

なぜこのマークなのか。これが正解です。

60年の伝統を持つ銀杏をモチーフに、3つの円弧による連携の中に「OSAKA」のOをしのばせ、歴史ある大学としての知性と格調を失うことなく、大学、学生、市民へと連なる親近感を表現した。という理念で作られています。すなわち、地域に生き世界に伸びるという大阪の理念、モットーを体現したのが大阪大学のマークなんのですね。

理念や考え方、行動をロゴマーク化した「ユニバーシティアイデンティティ」は大学からの一方通行

ここまでがユニバーシティアイデンティティのビジュアルアイデンティティがいかに大事かという話です。誰がいつ作ったかご存知の人?

正解はこの方。田中一光さん。非常に有名なデザイナーさんです。

何をやった人か。無印良品やLOFTのデザインやつくば万博のロゴマークを作られた方が、田中一光さん。この非常に有名な方が作ったのが阪大マークだということを踏まえて、もう一回見て頂くと、ちょっとかっこよく見えてこないですか?

これバランスがきちんととられたマークなのですけど、ただ若干下が細いので、デザイン的にいうとバランスが悪かったのを、こういうロゴテキストを付けることで安定化させたということがクリエイティブユニットのひとつの仕事でもあります。

もう一つ、クリエイティブユニットでユニバーシティアイデンティティということで、最近やっていることに飛翔というマークがあります。見たことありますか? 最近いろんなところで使われています。

2011年がちょうど大阪大学の80周年だったのですね。80周年のテーマが原点へ・未来へというテーマだったのですけども、その未来へという部分を、今後大阪大学が未来を志向していろいろやっていくのだよということで、鳥をモチーフに作ったと。

それを今いろんなところで使っていて、例えば、大阪大学の平野俊夫総長が22世紀輝くというキャッチコピーを使って、大阪大学が今後どうあるべきかということをいろいろやるなかで、こういったところにモチーフとして使われているのが飛翔というマークです。

ということで、ユニバーシティアイデンティティというのは大阪大学、ユニバーシティが理念や考え方、行動を示して、ロゴマーク化して皆さんに見せるものであって、ある意味、一方通行なのです。皆さんが大阪大学のマークの意味を知らなかったというのは、ちょっと残念なことではあるのですけど、一方通行なのです。

ユニバーシティアイデンティティの作り方

もっと大事なのは、僕らが今進めているブランディングということです。

ユニバーシティアイデンティティの更に一個先にあるものは、ブランディングです。何が違うかというと矢印が増えて、双方向なのです。

皆さんが大阪大学をどう思って、それに合わせて大阪大学が皆さんに何を提供できるかを考えることが、最近のクリエイティブユニットのミッションになっています。

「ブランディング」ってよく聞く言葉だと思うのですけど、何なのか。これは、コミュニケーションを通じて、好きになってもらうことです。最近、「セルフブランディング」って言葉が流行っているのですけど、あれは面接のような就職活動を通じて、面接官に好きになってもらうことがセルフブランディングなのです。

なぜ、好きになってもらうことが大事なのか。簡単な話です。皆さんよくわかると思います。好きな人の言うことには良く耳を傾けるじゃないですか。好きな人は実際よりよく見えるじゃないですか。好きな人のそばに行きたがるでしょう。好きな人に相談したいと思いませんか? 好きな人にはなしかけられたい。好きな人のことは良く思い浮かべる。好きな人のことは忘れにくい。まさにこうすることで、ユニバーシティアイデンティティの確立が容易になるのです。

ブランディングにおいて一番大切なことは「誰をターゲットにしているのか」

ブランディングをすることで、皆さんに大阪大学をもっと好きになってもらいたいというのがクリエイティブユニットの仕事です。どうやって好きになってもらうか。僕は大学のことはある程度知っているのですけども、大学を知っておもしろがるというのが大事だと僕は思っています。

じゃあ大阪大学はどんな大学なのか。まずは、歴史がある。研究がすごい。大阪大学といったら、ロボットとか。教育にも力を入れている。基礎セミナーを皆さんも受けていると思うのですけど、他の大学には無い、とても大きな特徴のある授業だったりします。

優秀な卒業生を輩出しています。例えば、今のマイクロソフトの社長の樋口さん。サントリーの佐治敬三さん。ソニーの盛田さんとか。卒業生が非常に優秀である。一番大事なことは、絶対これなのです。大阪にある。

これは東大や京大、他の大学には絶対に真似できない特徴なのです。大学をこういうふうに知って、それをおもしろがって使うのがブランディングです。ブランディングするときに一番大事なのは、ここなのですね。相手が誰ですかっていうことを考えないとだめです。

一般的に、大学が持つ相手というのは、こうなります。僕はこの考え方をすすめているのですけど、プレ・インターナルとインターナルとエクスターナルと大きく分かれる。その中に、ソサイエティ、学生、コミュニティがあります。

プレ・インターナルは、大学に入る前の人。例えば、受験生である高校生や中学生。インターナルだと在校生。エクスターナルは卒業生。黄色と青色とで分けていますけども、黄色が外側の人。青色が内側の人っていうことです。まず誰に見せたいかを考えて、その人たちに合うようなものを作っていく。

実際に大阪大学が行っている学生向けのブランディング

具体的に何を作っているかをお見せしますけども、今年、高校生のオープンキャンパス向けに作った、大阪大学のプロモビデオがあります。さっき、4つか5つありましたよね。歴史、教育、研究、学生、大阪にあるということを全て盛り込んだビデオをちょっと見て頂きます。

全部、キーワードが入っていたでしょう。歴史、教育、研究、学生ですね。最後に総長が学生さんの未来が楽しみって言って、未来で締め括っている。大阪は、最初にいろいろ出て来ましたよね。阪大のキャンパスが遠いと言われるのを払拭させるために、モノレールや飛行機があってアクセスがいい。万博があって緑が多いよ、みたいなものを出しているのですね。そういうものをブランディングでやっているのですね。

学生さん向けにはこういうものも出しています。

こういうものも未来戦略から依頼を受けて作ったのですね。阪大で未来トークをやりますと学生さんにアピールするポスターを何か作ってくれということで、4枚綴りのポスターっぽいものにしますと。このキャッチコピーもだんだんふざけてくるのですね。最初は、「過去と未来をつなげる為に」とかっこいいのですけど、だんだんちょっとパズドラ的な。いろいろ反響があります。

キャッチコピーを作るときは、50対50で賛成・反対っていうようにしなさい。一番良くないのは無関心。最初に聞きましたけど、「大阪大学好きですか?」に対して、好きの反対は嫌いじゃなくて、好きの反対は無関心なのです。だから、好きの反対に対して、嫌いな人がパチパチしていたのは問題無いのですけど、どちらでもないというのが一番困るんです。これは学生向けに作っています。

TwitterやYouTubeにも手を広げているブランディング

他にも最近はこんなものを作りました。

これは大阪大学の職員採用サイトです。「コイっ!阪大」ということで、阪大に来たら、こんなことが起こりますよっていう職員採用サイトを作ったのです。それまでは、すごくジメジメしたサイトだったのです。テーブル要素で作られていたのですが、変えたんですね。大竹先生にリツイートして頂いて、一気にバズりまして、東大対阪大みたいになったのですね。ちなみに東大。

どうですか? 「これは学風じゃないの」とかって言われるのです(笑)。もう一つ、忘れてはならないのが、こいつですね。

彼もミーティングに参加していますけど、なんとか阪大のキャラクターとして、一般の方だけでなく高校生にも好きになってもらいたいと。

阪大のTwitterをフォローされている方って、どのぐらいおられます? 拍手で。ぼちぼちですね。是非フォローしてください。ニュースばっかり呟くと思うでしょう? たまにおもしろいこと言います(笑)。何ヶ月かに1回。今年一番ヒットしたのは、6月か7月。豊中キャンパスが全国で一番気温が高かったんですよ。39度ぐらいのときに、「今、日本で一番アツい大学、大阪大学。熱中症にご注意下さい」って呟いたんです(笑)。たまにおもしろいこと言います。是非フォローして下さい。

忘れてはならないのがこれですね。まだ公開はしていないのですけど、もうFacebookのページは作っている。これはどんどん好きになってもらうための工作のひとつとして、絶対外してはならない。

これはYouTubeのオフィシャルアカウントです。

こんなの阪大らしくないイメージだと思うんですが、ここにも鳥を使って、未来を志向する阪大をイメージしている。

「大学って簡単に動かせる」みんなが同じ方向を向いている大学へ

あとで、お話もありますけど、O+PUSというものを使って、皆さんにUI、大阪大学がどう考え、どう進んでいくのかをお伝えしようとしているものがあります。僕らが今何を考えているか。

今、総長が100-10-100構想というものを進めています。100周年に世界トップ10を目指す。そして、未来基金100億円集めますよっていう構想なのです。それをどうやって皆さんにお伝えするのか。

「こんなもの、はっきりいって、総長が言っているだけじゃないのか!」

というのを、どうにかして伝えて、皆さんがユニバーシティアイデンティティとして100-10-100構想を理解して、行動のアイデンティティとして考えを確立して、進んでいければいいなと思います。是非考えて頂きたいキーワードが、大学を知って、おもしろがって頂きたい。この職業なので、僕は思ったのですが、大学って結構簡単に動かせる。ような気がするのですよ。今日は、僕らとお知り合いになれたと思うので、是非何か言ってもらって、おもしろがって頂きたいなと思います。

僕のトークはこんなもので終わらせて頂いて。ありがとうございました。

(編集協力:伊藤勇斗)

<続きは近日公開>

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