世界最大のライカーズ刑務所・元囚人が語った、少年受刑者が“更生できない”本当の理由

少年の僕が拘置所で学んだこと #1/2

世界最大のライカーズ刑務所で約400日間を過ごした元囚人のIsmael Nazario(イスマエル・ナザリオ)氏は、現在出所後の人々を支える活動を行っています。少年受刑者が刑務所内で更生できない理由を語り、彼らに手を差し伸べる必要性を語りました。(TEDxNewYork2014より)

世界最大のライカーズ刑務所に収容され気づいたこと

イスマエル・ナザリオ氏:私達は拘置所や刑務所の雰囲気を変える必要があります。特に、若い受刑者のためにです。ニューヨーク州には16~17歳を機械的に逮捕して、成人として裁く刑務所があります。それは全米に2つしかない刑務所の内の1つです。

この雑なしきたりが、若者達を殺伐とした環境に送り込みます。そこでは刑務官の目もおかまいなしで、なんでもアリです。そこには彼らが才能を伸ばしたり、再更生するための場所はなかなかありません。犯罪責任を課す年齢を18歳にくり上げるまでは、このような若者達について考える責任が私達大人にあります。

私の経験をお話しましょう。私がまだ18歳にも満たない頃、約400日間をライカーズ島で過ごしたことがあります。それに加えて約300日間の独房生活の経験もあります。

そこでわかったことがあります。独房の扉や窓の前で、1日中全力で叫び続けたとしても、ただ疲れるだけなのです。そこにいる間は何もすることが無いので、独房の中でウロウロしたり、自分に話しかけたりします。思考もだんだん激しくなります。その時、自分自身の思考が最悪の敵になるのです。

刑務所は人を更生させるための場所であって、より凶暴に、無気力にさせるための場所ではないはずです。しかし若者達への出所プランがないので、大抵何も身に付けることなく社会に送り出されます。そして、再犯を防ぐためのプランも十分ではありません。

看守には受刑者を変える力がある

しかし看守が、そんな問題を解決できる可能性があるのです。看守と囚人を善悪で分けることは簡単ですが、実際はそんなに単純なことではありません。

考えてみると、彼らも普通の人間ですよね? 地域に従事してはいますが、彼ら自身もまたその地域の一員です。ロボットではないですし、特別というわけではないのです。皆同じなのです。

男性看守は女性看守とイチャついたりしますし、高校生がやる遊びみたいなこともします。面倒な人間付き合いもあります。女性看守はゴシップも好きですしね。ごまんといるそんな看守達と、ごまんと付き合いがありました。特にモンローという看守、彼についてお話しましょう。

1対1でケンカしてくれる刑務官

ある日、彼は私をA扉とB扉の間に引っぱりだしました。建物の北エリアと南エリアの間でしたね。同じ部屋にいた若い囚人と、つかみ合いになったのが原因でした。

私が、同じフロアで勤務中の女性刑務官を見たくて、彼の勤務を妨害したと捉えていたみたいです。そして彼は、私の胸をきつめに殴りました。私はすぐにはやり返しませんでした。彼らのエリアでやりあっても勝ち目がないと分かっていたからです。それに彼がその気になれば、すぐに援護が来るような状況でした。

なので私は彼の目を見ました。おそらく、燃え上がるフラストレーションや怒りが私の目には映っていたと思います。すると彼はこう言いました、「その目は君自身にトラブルを起こす。ケンカがしたくてたまらない、そんなふうに見えるから」と。

すると彼は自分の装備がついたベルトを外し始めたのです。彼はシャツとバッヂも外して、「ケンカしよう」と言ってきました。そこで私は、「ナシにしてくれるか?」と彼に聞きました。これはライカーズ島でよく聞くフレーズで、誰にも何も告げ口しないことを確認するものでした。

「ナシにする」と彼は言った後、私にも同じことを尋ねてきましたが、私は返事さえしませんでした。そして彼の顔面を殴りつけ、ケンカが始まったのです。彼が私を壁に押しつけ、もがいている最中私に、「満足か?」と言ってきました。勝ち誇ったかのようにね(笑)。私の頭の中では私が勝っていましたが(笑)。調子に乗って私も言いました。

「全然大丈夫。そっちは?」

彼も言います、「全然大丈夫」と。

そしてお互い体を離し、お互いをリスペクトし、彼は私と握手してタバコをくれました。信じられないかもしれませんが、ライカーズ島ではこうして1対1でケンカしてくれる刑務官がちょくちょくいます。

彼らも私も、そんな独特な環境を理解していますし、こんな感じでトラブルを解決することができます。最後は自分も相手も潔く立ち去る。それだけです。

少年刑務所に求められること

中には、「自分自身が収監されている」と感じる刑務官もいます。さっきのような独特な環境の理由はここにあります。ある意味、囚人と看守は共存しているのです。しかしながら、思春期にある囚人や精神に問題がある囚人と適切に接するためには、施設が看守に適切なトレーニングを行う必要があります。

若い囚人の出所後の人生を左右するのは、収監時に接した看守だったりします。なので若い囚人には看守がメンタリングを行えばいいのです。社会復帰のためには、心の変化を起こすような見識も重要です。

次に重要なのは、より良いプログラムで未成年者をサポートするということです。ライカーズ島で独房に入るというのは相当なことでした。そもそも独房監禁とは、人間の精神や肉体、感情を破壊するために生み出されたのです。

最近、アメリカの法務長官はある報告書を発表しました。ニューヨーク州の10代の囚人に対する独房監禁を禁止するというものです。

当時独房にいた私の正気を保つ唯一の方法は、読書でした。できるだけ勉強しました。手に出来る物は全て読みました。それとは別に音楽や短編小説も書いていました。

若者に有益なプログラムとして、個人的に有効だと感じたのは、アートセラピープログラムでした。絵の才能がある子はその才能を伸ばせますし、音楽に感心のある子だっています。例えばですが、作詞や作曲を勉強する音楽のプログラムだってアリです。

出所後の犯罪計画を立てる若者達

思春期の子ども達がライカーズ島に来て収監される建物を「C74 RNDC」といいますが、「グラディエーター・スクール」と呼ばれています。なぜならストリートから、「我こそが最もタフだ」という若者がやって来て、すでに5つのエリアに収監されている、同じく「自分が1番タフだ」と思っている若者達に囲まれる。そんな環境だからです。

そうして若者の集団同士が、我こそはと衝突し合います。

正直、そのような雰囲気は非常に危険ですし、若者にとっては害悪です。私達はそういった施設をサポートする必要があります。そこにいる若者達は、「かつてのストリート時代のライフスタイル」を維持する必要などないと気づくべきなのです。

残念なことですが私が刑務所にいたとき、出所したらどんな犯罪を犯すかについて話している人達がいました。

「出所したら知り合いのツテでヤバいことやらかす」

といった具合です。こんな会話を聞くと私はいつも、出所後すぐに犯罪を犯す彼らを指して、「刑務所早戻りプラン」という名前をつけていました。そんな人達の出所後の生活がどれだけ続くのでしょうか。リタイアした後はどうするのでしょうね。年金とか健康保険とかも気になりますよね。歯科治療とか(笑)。

(会場笑)

とある受刑者との出会いが人生を変えた

いいことも言っておきたい。私が出会った人の中で、最も賢く、素晴らしく、才能のある人々は、刑務所にいる人達でした。ポテトチップスの袋を何とも美しい写真のフレームに加工できる人や、無料で配布される石鹸で最高の彫刻を作ったり……。それはもうミケランジェロの作品が、幼稚園児の作品に思えるほどでした。

21歳の時、私は最高レベルの警備で知られるエルマイラ矯正施設にいました。いつもの訓練所でトレーニングを終え部屋から出ると、広場に知り合いの年長囚人がいるのが見えました。彼はただ空を見ていました。言っておきますが、彼は終身刑の服役者で、すでに20年の刑務所生活を経験していました。

私は近寄って、「オー・ジー、元気?」と声をかけました。彼は、「元気」と言いました。そして彼がなぜ空を見上げていたのか尋ねました。何かすごい物でもあるのかと思ったのです。自分で見ろと言われたので見てから「雲……?」と答えました。

(会場笑)

「他には?」と聞かれたので、たまたま見えた飛行機を言いました。するとこんな会話が続きました。

「正解、じゃあ飛行機には何が乗ってる?」

「人」

「人はなにしてる? 飛行機はどこにいく?」

「そんなこと知らない。知ってたら宝くじの番号でも教えてほしい」

「もっと大きい目で見てみろ。自分たちがここにいる間、人が乗った飛行機はどこかへ行く。でも自分たちはここに閉じ込められている」

つまり、彼が言っていたのはこういうことです。

「行き交う飛行機は行き交う人々の人生そのもの。彼らの人生はめまぐるしく動いているのに、私達の人生は前に進めずこんなところで止まっている」

少年受刑者に必要なこと

その日から私の何かが変わったのです。小さいころは頭もよく、自信過剰と言われたりもしましたが、建築家か考古学者になりたいと思っていました。

現在はフォーチュン・ソサエティーで働いています。更生プログラムにおいて、再犯のリスクが高い人のためのケースマネージャーとして働いています。そこでは出所した人達が社会復帰するための、彼らに必要な更生サービスを教えています。

もし私が、15歳の自分に接するとしたら、一緒に座って教育しようと思います。そしてこう言いたい。

「ぼくはきみ。きみもぼくも同じ。君がしようとしてることは分かる。なぜなら自分も過去に同じことをしたから。アイツとアイツとアイツとはつき合うな」

そう言うでしょう。行くべきでない場所についても話しますし、学校に行けとも言うでしょう、必ず将来役に立つので。こういうことを若い少年少女に伝えなければいけないのです。大人の受刑者とは区別すべきですし、子ども達の手に負えない暴力のある環境は避けるべきなのです。ありがとう。

<続きは近日公開>

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