女性と子どもには世界を変える力がある

ヒラリー・クリントン氏:ここに参加できて、本当に光栄です。TEDWomenがワシントンで開催されるなら、是非とも参加しなくては、と思っていました。

(会場拍手)

こうして会場を見渡すと、友人の顔もたくさん見えますし、アメリカだけでなく世界中で、女性と少女の政策課題を推進するために、ものすごく尽力されてきた方々もたくさんいらしていますね。

さて、TEDWomenを開催するか否かについては若干議論がありました。TEDWomenがあるならTEDMenはどうするんだ、という意見もあります。でも、TEDWomenは正しい選択だったと思います。

なぜなら、女性も男性も一緒になって話し合わなければならないことが、まだまだたくさんあるからです。女性と少女に機会の輪を広げるために、私たちは何をすべきなのか。そして、幸運にもとても多くのものに恵まれている私たちが、自らの生活における人との繋がりのなかで、その大義に貢献するために、何をすべきなのでしょうか。

私たちは変化の主体としての女性と子どもの力を目にしています。女性と子どもには世界を変える力があると、私は心から信じています。今、光栄にもアメリカを代表して、国務長官として各地を旅しながら、私は女性と少女の権利と役割がアメリカの外交政策の中心的な信条となるだろう、ということをはっきりと掲げてきました。なぜなら、少女と女性が活躍している場所には、私たちの価値観も反映されるからです。

(会場拍手)

各国での女性の活躍に思うこと

米国政府の取り組みと、皆さんにも是非参加していただきたいことについてこれからお話しをする前に、ここで私が深く尊敬し、敬服するエリザベス・エドワーズ(民主党の政治家ジョン・エドワーズ氏の元妻で、弁護士、作家)のご逝去にお悔やみを申し上げたいと思います。

エリザベスはとても知的で、情熱家で、目的意識のある人でした。家族と友人に尽くしただけでなく、医療制度の向上とガンの根本的な治療法の発見にも尽力した人でした。今ここにいたら、みんなで集まって問題の解決策を探るこのイベントを歓迎したことでしょう。私も多くの方々と同じ気持ちです。エリザベスを失ったことで、1つの声を、とても熱心なブロガーを失いました。何度も全力で命がけで取り組んだ人でした。

エリザベスのような女性たちを、世界中のどこに行っても見かけます。キルギスから帰国したばかりなのですが、そこの女性大統領(ローザ・オトゥンバエヴァ氏)はソ連崩壊後の中央アジア初の女性国家元首であるだけでなく、旧ソ連諸国で初めての議会制民主主義の議長も務めているのです。

彼女の勇気から私も勇気を得ています。また、南アフリカのような国で、女性たちが文字通り自分たちの手で開拓したプロジェクトによる、女性たちの立ち直る力とやる気を実際に目の当たりにすると、誰もが前進し続けようという気持ちになります。

こうしている間にも、アメリカでもどこでも、このカンファレンスを決して耳にすることのない女性、また参加することなど想像さえつかないような女性もいるでしょう。そんな中にも、ここに集まった私たちと同じような人生経験をして、関わりをしている女性たちがいることはよくわかっています。

女性問題の解決は、国家の安定と成長に寄与する

アメリカは、女性と少女のエンパワーメントを国の外交政策の基盤と位置づけてきました。なぜなら、女性の平等は単なる道徳的な問題でも、人道的問題でも、公平性の問題でもありません。女性の平等は安全保障問題であり、繁栄の問題でもあり、平和の問題でもあるからです。

ですから、なぜ世界中どこでも、トップレベルでの議論に女性の問題を盛り込む必要があるかと言うと、それは私の個人的な公約だから、また、オバマ大統領の関心事だからというだけでなく、それがアメリカ合衆国にとって極めて重要だからです。

女性が働けば、あらゆる分野で経済成長を促進してくれるでしょう。たったの1年間でも少女が学校に通うことが出来れば、生涯を通じて収入が劇的に増加し、子どもたちが生き残り、家族が健康的に暮らす可能性が高まります。男女平等が実現したら、世界中がもっと安定し、安全になるでしょう。男女平等を否定すれば、ほぼ確実に国が不安定になります。

ですから、女性の隷属は、私たちの世界の共同安全保障に対する、また米国の国家安全保障に対する脅威でもあるのです。そのために、この2年近くの間、食糧安全保障から気候変動、世界的な健康問題から平和と安全の取り組みに至るまで、政府はあらゆる分野において女性の問題を主眼としてきたのです。

女性が議論の場に参加できる体制を整えたかった

私たちは現在、初の外交・開発政策の包括的見直しを行っているところです。私は国務長官に就任した時から、これを実施しようと決意していました。長年、国防省が「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」報告を行ってきたからです。私の目標の1つは、外交と開発を、国防と肩を並べるところまで高めることです。

私たちも前進していますが、国防省の予算は国務省の約12倍もありますからね。でも、私たちは自らを厳しく見直し、外交と開発を向上するためには何をしなければならないかを考えています。

連邦議会議員や市民、活動家、マスコミなどから、米国が私たちの理想とする外交政策と国家安全保障のアプローチのビジョンに近づきつつある、と言ってもらう必要があるのです。

さて、来週発表予定のQDR(「4年ごとの外交・開発見直し」報告)の中で、私が国務省の勤勉で有能なスタッフに命じたのは、必ず報告全体に女性の問題を統合するようにということです。特に女性の権利という章を設けることは望んでいませんでした。

(会場拍手)

どの議論においても、どの問題についても、女性を議論の場に参加できるよう確保したかったのです。また、TEDの姿勢と同様に、私たちは解決策を生み出し、パートナーシップを築き、政府、NGO(非政府組織)、民間企業など、あらゆる分野に働きかけています。

「女性と少女を支援する国務長官の国際基金」を通じて、民間企業と連携し、女性の地位向上に取り組む地域のNGOに少額の助成金を付与しています。

例えば、エイボン財団は、女性に対する暴力と闘うために寄付をしてくれ、それによってエジプト、トルコ、メキシコ、アルゼンチン、ジャマイカ、リベリア、カンボジア、インドのNGOに10の助成金を付与するという支援をしています。

女性に対する暴力との決別

私たちは皆さんのコミュニティ、皆さんの国で、女性に対する暴力という犯罪と闘うために何が出来るか、に焦点を当てています。アメリカでも女性に対する暴力を経験してきました。

家庭内暴力の話をするのを恐れたり、最悪の虐待でも言い逃れをされたり、隠蔽しようとされていたのは、それほど昔のことではありません。ですから、女性に対する暴力について「そういう文化だから、人間とはそういうものだから」という態度から決別するのに必要な道のりを私たちはよくわかっています。

私はある国に滞在し―当分の間、国の名前を言うのは差し控えますが―、そこの首相と幹部とこの問題について話し合いました。その国では、女性に対する暴力の発生件数がとても多かったのです。そこで私が得た反応は、ずっと昔、私がアーカンソー大学ロースクールの若手教授としてこの問題に取り組んでいた時に聞いた答えと同じでした。

いつ頃だったかしら、1974年? あまりに昔のことで覚えていませんが。それを聞いて、私はまだやらなければならないことがたくさんあると思ったものです。

私たちは、母子保健向上のためにイギリス、オーストラリア、そしてビル&メリンダ・ゲイツ財団と提携しています。母子保健向上の鍵は、誰でも家族計画を立てることができるようにすることですが、今私たちはそれを保健プログラムに取り入れています。

私たちは、特に困難な状況に置かれている女性たちの具体的なニーズに応える、画期的なプログラムを開発中です。例えば、コンゴ民主共和国では、女性に対する暴力と特に性暴力が蔓延しており、私たちはMobile Justiceイニシアチブを開発して、女性たちに加えられた暴力の証拠を集め、証言を記録し、送信して加害者を裁判にかけるのを支援しています。

女性が出かけて行き証言しなければならなくなる前に、証言を記録して携帯電話で送信できるのです。私たちは証拠の基盤の構築に取りかかっており、それを加害者の責任を問うために使用できるでしょう。

(会場拍手)

女性をエンパワーメントするためのテクノロジー支援

ここにいる皆さん、インターネット上の皆さんと手を組んで、もっと多くのことをしたいと思っています。例えば、ロックフェラー財団の協力で、私たちは女性と少女のエンパワーメントのための革新的アイデア賞を始めました。これは女性を政治的、経済的、社会的にエンパワーするためのクリエイティブな方法を奨励し、表彰するためのものです。

また、最近、繁栄と安定に役立つアプリを開発したアフリカ4ヵ国のモバイルアプリケーション開発者を表彰する、Apps4Africaというコンテストを実施しました。受賞したアプリの中にMamakibaというプログラムがあり、これは低所得の妊娠中の女性が出産前の健康管理と分娩費用の予算を組み、事前に支払うために役立つアプリです。

私たちはまた、技術革新がこれまでの進歩を促進する上で、大きな役割を果たしていることを認識しています。Apps4AfricaやMobile Justiceなどのプログラムに加えて、私たちはWomenイニシアチブを支援し、世界的な携帯電話の所有の男女間格差を解消し、携帯電話の技術を女性と少女のエンパワーメントのための開発ツールとして使用することを目指しています。

1月に国務省は、女性ばかりの技術代表団をリベリアとシエラ・レオネに派遣します。素晴らしい革新者と起業家の一団を派遣し、どうすればテクノロジーがこの2ヵ国の女性と少女のための機会を増やすことができるかを探る予定です。

若い女性に自分自身の可能性を教えるべき

ここで、少女の大切さについて触れたいと思います。多くの家族や社会が少女の価値を低く見なしていることが、数々の最もひどい虐待の原因となっています。少女たちは最悪の事態を免れたとしても、真っ先に学校をやめさせられ、食事を与えられるのも、治療を受けるのも、1番後回しにされることがよくあります。

また、あまりに多くの場所で、少女たちは自分たちに可能なことには限界があると教えこまれます。ですから、私たちは家族や国家に対して、少女を尊重するように説得し、少女自身に自分自身の価値と可能性を教える必要があります。

そのために私たちは、少女に対する考え方と扱いを変えるよう、宗教指導者や村の長老に働きかけ、男性と少年に対しても、自分たちの姉妹や娘たちの能力と固有の価値を尊重するよう促さなければなりません。

社会に対して、女性に投資するよう説得することは、貧困と闘い、開発を促進し、安定を広める私たちの取り組みの強化にもつながります。発展途上国だけでも6億人以上の少女がいるのです。アジア、ラテン・アメリカ、カリブ諸国、サハラ砂漠以南のアフリカの人口の4分の1以上を10歳から24歳までの少女と若い女性が占めているのです。

人々はよく中東や発展途上国のユース・バルジ(人口ピラミッドの若者層が突出して多い状態)を、若い男性の失業者としてのみ捉えがちですが、これには問題があります。少女の可能性についても活用法を考える必要があります。

今年4月に開催されたオバマ大統領の起業家サミットの場で、私はTechWomenというプログラムを発表しました。これはイスラム教徒が多数を占める国の女性と、米国のテクノロジー企業で働く女性を結ぶというものです。

全世界で私たちはネットワークを構築し、それぞれの社会で起業家やビジネスリーダーになるための一歩を踏み出している女性たちをエンパワーする機会を得ています。

ささやかな介入が1人の少女を救う

私のお気に入りは、ある10代の少女と雌牛についてのストーリーです。私たちが直面している課題だけでなく、チャンスについても考えさせてくれます。

その少女の父親は、娘に児童婚を強制しようと思っていましたが、少女は学校に通っていて、ひとつのNGOのプロジェクト(貧困家庭に家畜や小動物を供与し、住民の生活の向上をはかる国際NGO)からだと思いますが、学校に通い続けられるように雌牛をもらっていたのです。

父親が学校を中退して結婚するように娘に迫った時、少女は断りました。父親がなおも主張すると、少女はすぐに父親に言い返しました。そして、とうとう切り札を切ったのです。「家を出て結婚するなら、牛も連れて行きます。それは私のものですから」。

(会場笑)

どうなったと思いますか? 少女は学校をやめませんでした。児童婚を免れたのは、父親が雌牛を手放したくなかったからなのです。

人間の本質が現れるこの話の教訓は、それだけにとどまりません。ささやかな介入でも、少女の人生を変えることができるのです。この場で、またはオンラインでTEDWomenに参加されている皆さんは、素晴らしい仕事をされています。プレゼンテーションをして、ネットワークを築いています。

より多くのパートナーシップが世界でムーブメントを起こす

でも私たちにはもっとたくさんのパートナーシップが、メンタリングが、良いアイデアが必要なのです。そして、今回の、ワシントンのこの会場のエネルギーや興奮が、どうやったら世界的なエネルギーや興奮につながるのか、真剣に考える必要があるでしょう。

皆さん、是非インターネットで国務省を探してください。国務省には初の国際女性問題大使もいます。多くの皆さんがメラニー・バービア(女性・平和・安全保障研究所所長)をご存じだと思いますが、私たちは何年も前に一緒にVital Voices(若い女性のリーダーシップを育てるためのグローバル・パートナーシップ)を立ち上げました。

国務省の国際女性問題局と連絡を取って、イノベーション賞を獲得してください。米国政府が全力を尽くして、期待どおりの変化をもたらすことができるよう、手伝ってください。Vital Voices.orgThe Girl Effect(米国のナイキ財団などによって運営されている貧困、エイズ撲滅等を目的としたムーブメント)や、皆さんがご存じの他の大事な活動をしている素晴らしい団体のWebページにもアクセスしてみてください。

女性と少女のために私たちがともに協力して出来ることに、限界などありません。皆さんが、このカンファレンスをきっかけに、ご自分の夢や希望をさらにかなえるためだけでなく、世界中の少女1人1人が夢や希望をかなえるチャンスを持てるよう、万全の準備でこのカンファレンスに臨まれていることを、心から嬉しく思います。

ありがとうございました。

(会場拍手)