人への憧れが原動力--子どもが起業家になれる街「マーブルタウン」とは

How to ignite your spirits Matsubayashi Yasuhiro TEDxNagoyaU

先進国各国で「将来に希望が持てるか」といったアンケートを取った際、日本は数値が最下位という結果が出ています。コラボキャンパス三河の松林康博氏は日本に希望を灯すため、小学生から若手社会人までを対象に、スタート地点に「あぁ、なりたい」を組み込んだ教育を実施しました。(TEDxNagoyaU2014 より)

日本は先進国で一番希望が見つからない国

松林康博氏:皆さんこんにちは。私のプレゼンを始める前に2つ見てもらいたいグラフがあります。まず1つ目は「将来に希望が持てるか」ということに対するグラフです。

こちらを見ていただくと「日本が(先進国で)一番希望が見つからない国」であるということがわかると思います。もう1つ見てもらいたいグラフがあります。

「努力すれば報われるか」ということに対する回答のグラフです。こちらも見てもらうと同じく日本の(「とてもそう思う」という)数字が低いということがわかるかと思います。

努力しても報われないと思っていて、人間頑張ることができるものなのでしょうか? 人生を明るく照らしてくれるものは何かと考えた時、僕は、それは希望だと思います。

希望とは、将来に対する明るい見通しのことを言います。「昨日よりも今日」「今日よりも明日」「毎日がもっと良くなるんじゃないか」という明るい見通しをもって生きていられる。

それほど素晴らしい年の取り方っていうのはないんじゃないかなと僕は思います。じゃあ、どうやったら自分の将来に明るい見通しを持つことができるんだろうか?

誰が自分の将来に明るい見通しをくれるんだろうか? 僕は、あなた自身こそが最も自分の人生を明るく照らすことができると信じています。

今日の私のプレゼンは「illuminate your heart by yourself.自分自身で自分の心を照らすには」というテーマで始めたいと思います。よろしくお願いいたします。

(観客拍手)

ありがとうございます。今日は全部で3つのことをお話します。僕たちが誰に対して、そしてどうやって希望を灯しているのか。また、(希望を)灯された彼らがどうやって自身の希望を灯し続けているのかという、その3つのことをお話したいと思います。

まず1つ目。誰に対して僕たちは(希望)を灯しているか。

僕たちは小学生から若手社会人までを対象とした「教えない教育」というものを行っています。僕らが「教えない」というポリシーを掲げているのは、人間誰であろうと自分自身の足で歩くことができると信じているからです。

小学生と大学生ではあまりに対象が違うんじゃないかと思われるかも知れませんが、大切なところは一緒だと僕たちは考えています。そのためのスタート地点は「あぁ、なりたい」という存在を一緒に(教育へ)組み込むことです。

「あぁ、なりたい」からすべては始まる

まずは小学生の事例からお話したいと思います。僕たちは「マーブルタウン」という事業を行っています。

この写真は、子供たちが開演1時間前から並んでいる写真です。今の世の中、こんなにわらわらと子供たちが並ぶようなものがあるかっていうとなかなか少ないんじゃないかなと思います。

「マーブルタウンって何なの?」ということでもう少し説明させていただきます。「マーブルタウン」とは、子供たちが2日から4日間かけて街を作っていく事業のことです。

子供たちはまず住民登録をして、ハローワークから仕事をもらっていきます。警察官だったり、アナウンサーだったり、銀行員だったりという職業体験をすると、10分間で10マーブルという(独自の)給与が支払われます。

そして、なんと10%は「税金」として徴収されるという仕組みになっているんです。この10%徴収された税金はどうなるかというと、この後に街で行われる選挙で選ばれた町長が自分たちで新しい公共事業を起こす際に使われます。

中には、自分で商品を開発して起業する子もいます。それがすごい簡単ではありますが、僕たちが行っているマーブルタウンという事業の内容になります。

人工の街で子供が起業や政治に奮闘

「あぁ、なりたい」という存在がいると、どういうふうに子供たちが力を発揮するかということを少しお見せしたいと思います。

こちら、よく見ていただくと、何かのゲームのキャラだったりどっかのゲームのキャラみたいなものがあると思うんですが、これは子供たちが自分で作ってきたものなんです。

それからこれ。これも子供が自分で作ってきたものです。

それから、ちょっとこの写真だとわかりにくいと思うんですけど、見ていただきたいのが左下のほうですね。ちょっと拡大します。

これは何かというと「ガチャガチャ」です。(スクリーン上を)この赤い丸で囲んだところを見ていただくとわかるんですけども、ペットボトルがあってそれを回すと箱の中からガチャガチャが出てくるんです。

中には、自分で映画館を開業した子どももいます。この子は自分で動画を撮ってきて、編集して、光の入らない空間を作ることで、映画館を開いたんです。僕たちはこの子供たちに対してどういうふうに作ればいいかということは教えていません。

彼ら自身が「あぁ、なりたい」と思って動き出したんです。彼らがこのような商品を開発するのには1ヵ月ぐらいの期間がかかります。

じゃ、マーブルタウンの中で「あぁ、なりたい」と思える存在とはどういう存在なのかというと、もう何度も僕たちのマーブルタウンに来てマーブルを稼ぐ猛者になった(小学校)高学年の小学生がそうです。

低学年の子たちはそういう高学年の子たちを見て「自分もああいうふうになりたいな」と思って動き出すわけです。「いやいや、お店屋さんごっこしたいだけじゃないのか」って言われるけど、そんなことはありません。

政治に興味を持っている小学生ってなかなか少ないんじゃないかなと思うんですけれども、マーブルタウンの中での事例を1つお話します。

(スクリーンの)右下にいる、王冠をかぶった子がこの町の町長さんです。彼は自分自身で国家を作詞作曲してきたりとか「この街がどうあるべきなのか」というサミットを1人で仕切ったりしてきたんですね。そしたらどうなったかっていうと、こうなったんです。

今まで(マーブルタウンの住民)140人中だいたい2人しかいなかった国王の立候補者が7人にまで増えたんです。僕の小学校600人いたんですけど、生徒会長に換算してみると28人が立候補するというすさまじい事態がこの街では起きているってことです。

それが「あぁ、なりたい」という存在の大切さです。小学生だけではありません。次に大学生における実際の事例も説明します。僕たちは半年間の長期実践型インターンシップというものを行っています。

インターンシップとは、企業の中で就業体験をするものになりまして、普通は5日間とか長くて2週間ぐらいのものなんですけれども、僕たちはこういう特徴を持っています。

1つ目。経営者と一緒に新規事業を実際に立ち上げるという経験をするということ。2つ目。大学の期間中は週に3日、夏休みとかであれば週に5日間企業のもとに行きます。半年間という期間ですが、国内でも最長クラスのインターンシップに当たります。

なぜ彼らはこのような過酷な道に踏み出してしまったんだろうか。それは2つの「あぁ、なりたい」という存在(があるから)です。1つ目は実際に半年間インターンシップをすることで大きく成長した経験者を見てです。

もう1つ、それは夢を追う経営者との出会いによってです。「あぁ、なりたい」という存在がいれば、小学生であろうと大学生であろうと大人であろうと、すべてはここから始まるのだと僕は思っています。

では「あぁ、なりたい」という存在がいた時にどうやって近づいていけばいいんだろうか。僕たちはそこでキャンパスというものを用意しています。そこには失敗と挑戦を繰り返せる空間があります。

「他者からの評価」が子供の興奮を与える

先ほどのマーブルタウンでいえば、3つ気を付けていることがあります。

1つ目ですが、大人は極力「教えないこと」っていうのを意識しています。2つ目は「保護者は進入禁止にすること」です。3つ目は“マーブル”という「擬似通貨を用意すること」となります。

「保護者という怒る存在がいない」「失敗しても大丈夫」という空間を作った結果、なんと(現在)マーブルタウンの起業率は40%です。多分、日本で一番高い起業率を誇る街なんじゃないかなと思います。

もう1個、僕らのキャンパスには大切なものを用意しています。それは通知表です。

マーブルタウンが終わった後、僕らのもとにはさまざまな声が届いてきます。「商品が売れた」ということだったり、(僕が知る限りでは)「稼いだマーブルを何回も数えて寝れなくなってしまう」という子供たちがいるんですよね。

あと「次回に向けていつかわかんないんだけども、もう既に商品開発している」というような声も届くんです。なぜ彼らがそこまで興奮してしまうか。それは見知らぬ他者が認めてくれたということがうれしいからです。

もうひとつ、大学生に対して、僕らが用意しているキャンパスを紹介します。

(ここでは)新規事業を経営者のもとで行うというインターンシップをしているわけなんですけれども「新規」だから会社の中で誰もノウハウを持っていないんです。失敗しても不思議じゃないので、(大学生たちは)思い切ったチャレンジができるんです。

そしてもう1個、通知表は社会人と同じ評価基準を用いています。確かに過酷かも知れません。しかし、だからこそ自分の自信につながるんです。

真似できる成功は希望となり、他者を照らす

もう少し具体的にインターンシップの事例を1つ紹介したいと思います。補聴器屋さんでインターンシップをした時のものです。

彼女は楽天で初めて補聴器業界のネットショップというものを作りました。ゼロから、半年間で売上が約270万円ぐらいの店を作り出したんです。

その結果どうなったかというと、実は今、楽天に複数の企業の参入が相次いでいるという状態が起きています。

(つまり)「真似できる成功は希望となって他者を照らすことができる」ということなんですね。それぐらいかなり難しいチャレンジではありました。「あぁ、なりたい」という存在、それから挑戦と失敗ができる空間を用意すること。

それが僕らの「教えない」教育の最初のスタート地点になります。では、最後に、どうすればその灯った希望を彼ら自身の手で灯し続けていけるのかということを残りの時間でお話していきます。

そのために大切なキーワードは「試行錯誤」という言葉となります。「試行錯誤」とは、やってみたいことが複数ある状態です。マーブルタウンの中では、真似したい手本というのがたくさんいます。

彼らはそういう手本となる人を見て、お店を出す場所を変えたりだとか、(商品の)陳列を変えたりだとか、声の大きさ変えたりだとか(さまざまな工夫をこらしていきます)。

商品の値段を上げたことで、販売個数が増えた子もいました。そういうような形で、彼らは失敗を失敗と思わずにチャレンジを続けていっています。大学生に対してはどうかというと、同様に「その道の成功者」というものを用意しています。

先ほどのネットショップであれば、楽天で実際に1位取った人に意見を聞きにいける環境を用意しています。人間と人間との交流なので、実際にどういう(取るべき)行動を教えてもらえて、それがなんなのかっていうのはわからないんですよね。

ですが、それによって成果を得た時、彼らは「今回チャレンジしたから、初めてこの成果が生まれたんだ」と言います。それが、彼らの次の挑戦の原動力につながっていくんです。

実際にそんなにうまくいくものなのかということでいえば、10個あれば(成功例は)1個ぐらいだと思います。ですが、実際に僕が見ていて思うのは、彼らはそう簡単に絶望しません。

それは選択肢があるからなんです。「1個目はダメだったけど、2つ目、3つ目といけば、どこかでうまくいくんじゃないか」と思っている間って、人間なかなか絶望しないもんなんです。

そういうふうに、いろんな(挑戦の)数を試していく中で、彼らは少しずつ少しずつちょっとした成果を手に入れ始めます。そうすると、じょじょに後ろを見始めます。「今回自分がうまくいったのは何でだったんだろう? あの時失敗したのは何でだったんだろう?」と自分たちの行動を振り返り始めるんです。

今までは人の真似をしていただけなのが、じょじょに自分のほうに心の関心が向いてくるんですね。

「自分の質問の仕方が悪かったのかな?」「いやいやいや。真似の仕方が悪かったのかな?」。じょじょに、彼らはうまくいかどうかは自分次第であるということに気づき始めます。そうすると、こういうサイクルが回り始めます。

「試してみる」。で、うまくいったか失敗したか「振り返る」 、もっとうまくいくように「改善する」。(そして)改善したら、やっぱ試してみたくなる。このサイクルが、じょじょにじょじょに機能し始めるのです。

自分で自分をよくするというサイクルが動き出すんです。そうすると、やがて「昨日よりも今日」「今日よりも明日」「もっと自分はよくなれるんじゃないか」という希望が彼ら自身の中に灯り始めるんです。

「そんなに世の中うまくいくのなら苦労はしませんよ」って話なんですけども、そういう時に僕らが言っていることっていうのがあります。

先ほども出てきましたけど「『comfort zone』という場所を飛び出せ」と言っているんです。comfort zoneとは「快適な空間」のことをいいます。見ず知らずの人のところにいるよりも、知ってる人たちと一緒にいた方が快適です。

サッカーでもアウェーで戦うよりもホームで戦う方が楽です。そういう心地のよい空間を飛び出せということです。最初は確かに、comfort zoneを飛び出ると非常に不快です。

よくあるのが、インターンシップの一番最初で会社の電話版をする時ですね。敬語間違えたりだとか、対応遅くて怒られたとか、そういうことがあったりするんですけど、数十回くらい繰り返すと、じょじょにその空間にいることに慣れてくるんですね。

確かに「電話番に出た」っていうのはすごく小さな成果かも知れませんが、毎日こういうチャレンジを繰り返すということを僕らは大切に考えています。(もし)数十回繰り返したとしても「怖い」「不快だ」ってまだ思うのであれば、思うにそれはcomfort zoneを一気に外に飛び出しすぎなんです。

自分自身を照らせる人は誰かを照らすことができる

僕たち大人の役目は、程よい大きさであるチャレンジの場所を用意し、小さな成果を毎日たくさん積み重ねていってもらうということなんです。人前でプレゼンをしたければ、まずは一人の人に対しうまく話せるようになろう。

そして、5人、10人と、じょじょにそういう(弱点克服の)段階をうまく設けていくことを僕らは意識しています。もちろん成果が出ないこともあります。

(例えば)人前で話すことができなかった時。ですが、仮にそうであったとしても、自分の苦手を克服し続けたということは、彼らの次のチャレンジのための大きな勇気となっていきます。そうはいっても、まだ辛いこともあるのかも知れません。

そういう時に大切になるのは一緒に頑張る仲間だと僕は思っています。やっぱりインターンシップをやっていると、互いに悩みが似ていたりするんですね。そういうふうになると、彼ら自身はお互いを励まし合います。

その中で、じょじょに互いが互いを照らし合うという状態が生まれてくるんです。いつの間にか、照らされるはずの存在であった彼らが火を灯す側へと少しずつ少しずつ変わっていきます。ここで皆さんに一度少し考えていただきたいなと思うことがあります。

「社会に出ることへの不安」の正体とは一体何なのかということです。わかりやすくいえば就活ってことですね。それはとどのつまり、この火を灯す時に、誰かに何かを与えられるかどうかという話だと思うんです。

大学までというのは、知識を与えられ、服を与えられ、お小遣いを与えられるというような「与えられる」生活をしてきてるんです。ですが、就活で面接に行った瞬間にこう聞かれるんです。

「あなたは何で貢献できるんですか?」「あなたは何を僕にくれるんですか?」と。懇切丁寧に教えたり与えたりすればするほど、実は与える側から与えられる側に転換できないんです。

これが就活の一番の大きな問題だと僕は思っています。僕は、自分自身を照らすことができる人というのは誰かを照らすことができる人だと思います。

そして「あぁ、なりたい」という存在とコラボして、挑戦と失敗を繰り返し、comfort zoneを飛び出し続ける。

苦しい時には一緒に仲間がいればいい。

そうすれば、誰であろうと自分自身の心を照らすことができると僕は信じています。以上で僕のプレゼンを終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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