素顔の自分と英雄の顔…
“葛藤するヒーロー”に魅せられた漫画オタクが語る、本当の「自分らしさ」とは

Myths, misfits & masks #1/2

自分のアイデンティティに悩んでいたムスリム・アメリカンのSana Amanat(サナ・アマナット)氏の心の支えになったのは、大好きな漫画の「ヒーロー」たち。弱さを抱えた素顔の自分と周囲の期待を背負う英雄としての自分、その葛藤のなかで戦うヒーローの姿から彼女が学んだ、自分らしく生きるための方法を紹介します。(TEDxTeen2014より)

ヒーローは素顔の自分をマスクで覆い隠して生きている

サナ・アマナット氏:ここで、ある社会的・心理学的な専門用語を紹介します。「ステレオタイプ脅威(Stereotype Threat)」と呼ばれるものです。

「ステレオタイプ脅威(Stereotype Threat)」とは、「いち個人は、自分が属している社会的グループ(人種・宗教・性別など)に対するステレオタイプな批判、または肯定的なイメージの影響を受けることがある」という理論のことです。

当時の私はすごく怯えていたので、人々が私に対して何か悪いことを言っているのを聞くと、受け流すことが出来ずに全て本当だと信じ込んでしまい、 それが学問的にも社会的にも、他者の言動が自分の言動の結果に影響を与えていました。自分のベストを尽くして上手くいく日もあれば、どうにも上手くいかない日もありました。

基本的に、皆さんは本当の自分らしさに逆らった言動をしています。なぜなら、皆さんは他の人からの期待に応えようとしたり、皆さん自身の憶測を否定しているからです。皆さんは本当の自分をマスクで覆い隠して生きています。

では皆さんはどうやってステレオタイプ脅威から気をまぎらわせているのでしょうか? ……ここでもう1つ専門用語を紹介しましょう。

いわゆる「ミラーニューロン理論」と呼ばれるもので、これは、「人間の脳は(目の前の)相手がしている動作と同じように反応する」というものです。例えばもし、皆さんが私の目の前でとっても美味しそうなチーズバーガーを食べているとしたら、それを眺めている私の脳の中では、私も同様にとっても美味しいチーズバーガーを食べていると錯覚して同じ反応をするのです。

ではもしメディアが、自分が所属するグループ(ムスリム)に対してポジティブな内容を報道してくれたら、どうなるでしょうか? 脳はどのように反応するでしょうか? ものの見方はどのように変わるでしょう? テレビ番組の成功の秘訣はこれです。

アフリカン・アメリカンの家族が、彼らがアフリカン・アメリカンであるがために遭遇する様々な問題を解決しながら、幸せな家庭づくりを目指す過程を描いたコメディ番組があります。このコメディは同時に、彼らがアメリカの生活に適応しようとする姿を通して、「典型的なアメリカらしい家族とは何か?」というテーマを再定義しています。そしてそのストーリーは、影響力を持っています。

メディアは「憧れ」を発信すべき

私たちは、メディアは本来の人間らしさを失わせるものだという見方をしてきました。私たちはメディアが伝える話の内容を、より感情的な関連性を持って見ています。メディアが伝えるストーリーは、一瞬で私たちの内なる心に働きかけます。

それは心の落とし穴にも、ポテンシャルにもどちらにも働きかけますが、それでも私たちの、理想像にたどり着きたいという願望は尽きません。人々がお互いに本来の姿を見出すための、挑戦や努力の過程です。

こうありたいという願望は少なからず自分本来の心と結びついているはずなので、そういう意味で、それは神聖なものです。また同時に、私たちをアイデンティティー喪失の脅威から守ってくれます。

ですからミラーニューロン理論が意味するところは、大多数の人の反応にしたがうのは人間としてごく自然なことで、私たちは自分以外の大勢の人々を(無意識に)模倣することで、他の人々のことや自分自身のことを信じ込ませることができるということです。

ならばメディアは、ネガティブな内容ではなく視聴者・読者に勇気を与え、夢や憧れの対象となり、より自分の理想に近づくために挑戦するのを後押しするような……そんなポジティブなストーリーを発信するべきではないでしょうか? 

(会場拍手)

これこそが、まさしくスーパーヒーローのストーリーが担う役割です。漫画の歴史は、不適応の歴史でした。スパイダーマンの主人公、ピーター・パーカーは、元々学校でもいじめに遭うなど、周囲の環境に馴染めない少年でした。ある日放射能に汚染され、クモに噛まれた彼は、それによって超人的な力を手に入れると共に、重大な責任を背負うことになります。

彼がヒーローとして悪と戦う道を選んだことによって、結果として彼は恋人や、自分の人生における様々な選択を脅かされることになりました。それでもなお、スパイダーマンはヒーローであり続けます。彼は毎回、空中やビルとビルの間を自由自在に跳び回り、必ず悪者を倒します。さらに毎回、女の子を手に入れます。……正確に言うとスパイダーマンの場合は女の子「たち」ですね。ラブストーリーの要素も含まれているので(笑)。

支持される、弱さを抱えたヒーロー

75年もの間、私たちマーベルコミックスは、彼(スパイダーマン)をマスクで本当の自分を隠した状態に追いやってきました。彼は自分の本来の姿や欲求を内に閉じ込め、他者を救うヒーローとして現れました。ここに、私たちが彼をヒーローとして支持する理由があります。

なぜなら、私たちにも理解できるじゃないですか、彼の抱える葛藤を。私たちも自分自身の葛藤から抜け出したいと思っているから、彼がヒーローでありながら、時に私たちと同じように葛藤したり思い悩む姿に共感できるのです。

ヒーローたちは、正義のために、もしくは罪、穢れのない人々を守るために戦う道を選びます。正義のために戦う、なんて言うと聞こえはいいのですが、他者を救うのと引換えに、彼らはどれだけの自己犠牲を払っているのでしょうか? 彼らは正義のため、人助けのため、自分の命すら惜しまない覚悟で戦っています。

なぜなら、彼らは自分でヒーローになることを選んだからです。そして彼らは守る対象を選びません。相手が誰であっても、どんな理由があっても助けようとします。

私が幼い頃、テレビに釘付けになって『X−MEN』を観ていた理由は、驚くべき冒険の世界に連れて行ってもらえたからという理由だけではありません。「人と違っていてもいいのだ」と、教えてくれたからです。

実際、それは運命でした。だって……、誰だってヒーローになりたいじゃないですか? しかももし私たちの憧れの的であるヒーローが、本当は私たちのように悩みや弱さ・葛藤を抱えていたら、より親近感や現実味が湧くでしょう? 

本当の自分を探し続ける姿

なぜ、カマラ・カーンのようなキャラクターが、多くの人々に支持されるのでしょうか? 

そしてなぜ、初のアフリカン・アメリカンのヒーローである新スパイダーマン、マイルズ・モラレスのようなキャラクターが人々に支持されるのでしょうか? カマラ・カーンは、より大衆文化的な人気があり、子どもたちの憧れの的になっています。

彼女は世界中の少数派(社会的弱者)の人々を代表し、彼らの期待に応えるためにやってきました。私のようにベーガンで鼻が大きく身長が低いムスリム・アメリカンの女性や、性別・人種・宗教の違いから「自分が他の人と違うこと」について悩みを抱えている全ての人々にとって、彼女は待ちに待ったヒーローなのです。

本当のミス・マーベルのセオリーは、「本当の自分を探す」ことにあります。ミス・マーベルの主人公、カマラ・カーンは、自分のアイデンティティーと居場所を探していました。彼女は何度も何度も「自分とは何なのか?」という自問自答を繰り返し、内なる自分との対話・交渉を重ねていきます。「私の居場所はどこなのか?」「何のグループに属しているのか? 」……彼女にはわかりませんでした。

彼女は今でも「本当の自分」を探し続けています。しかし彼女は、「他の人から貼られたレッテルによって、自分の言動を制限したくない」ということと、「本当に自分が信じるものは何か?」ということだけはわかっています。

ですから本当は、カマラ・カーン扮するミス・マーベルの主人公は……皆さん1人1人なのです。今まさに悪に立ち向かおうとしているのは、あなた自身です。

本当の自分らしさの見つけ方

私の好きな言葉の1つに、こんな言葉があります。私はその言葉を書き出して、パソコンの上に貼って毎日眺めています。ルーミーという詩人の言葉です。

「物語に満足してはいけない。それよりも大切なことがある、自分だけのストーリーを作りなさい」

「自分の物語を曲げない」それが私たちの挑戦でした。どんなカテゴリーに該当するかに関わらず、私たち1人1人が自分自身の物語を展開しなければなりません。それは簡単なことではないでしょう。

毎日毎日、他の人から期待されたイメージを操作し、再びアレンジし、再び発見する、という作業を繰り返すのですから。しかし、自分の本心から1つ1つの言葉を紡ぎ出すことで、「他者によって作られたマスク」ではなく、マスクの下に隠れていた「自分本来の顔」に近づけることができます。おそらく、本来の姿がものすごく変わり者である場合もあると思います。

怖い? 不安? ……確かに、不安や恐怖を感じる気持ちも分かります。でも、「ありのままの、本来の自分」を見つけるためには、戦わなければなりません。やってみる価値はある。そうでしょう? 果敢に、勇敢に。実際、私はそうやって戦ってきました。だから、そう……次はあなたの番です。あなただけのストーリーを教えてください。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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