1日に220億回見られる「いいね!」ボタンができるまで--Facebookデザイナーの苦悩

あなたの(そして何十億人の)ための巨大なウェブデザインの方法 #1/2

FacebookやYouTubeでユーザーエクスペリエンスデザインを担当してきたMargaret Gould Stewart(マーガレット・グールド・スチュワート)氏。彼女がFacebookの「いいね!」ボタンをデザインした際に痛感した、巨大システムの中にある些細な部分をデザインする難しさ。地球規模のデザインをする際に必要な「大胆さ」と「謙虚さ」とは何かについて語っています。(TED 2014より)

日常に溶け込んだ「気にも留めないデザイン」

マーガレット・グールド・スチュワート氏:デザインという言葉を聞いた時、何を思い浮かべますか? 

きっとこういったものを思い浮かべるでしょう。手に取ることの出来る繊細な工芸品やロゴ、ポスター、マップなど、ひと目で意味がわかりやすい古典的で流行に左右されないデザインではないでしょうか?

しかし、今日私がお話ししたいのはそういうデザインではなく、きっと皆さんが毎日見ているのにも関わらず、気にも留めていないようなもの。常に変わり続けているのに、とても身近なものについてです。

私が今日お話ししたいのは、デジタル上のユーザー体験におけるデザインで、特にシステムをデザインすることについてです。

このデザインアシスタンスはとてつもなく大きいために、規模を理解しづらいのですが、例えばGoogleは毎日10億件以上の検索を処理しています。YouTubeには毎分100時間以上分の映像がアップロードされています。

これはアメリカの大手放送会社3社が過去5年間に放送したよりも多くの映像が、たった1日でアップロードされているのと同じことです。Facebookでは12億3千万人以上の人の写真やメッセージやストーリーが発信されており、これはネット人口の約半数で世界人口の6分の1に値します。

規模の大きなデザインは、小さな部分が重要

これらは過去に私自身がデザインに携わった製品ですが、規模がとても大きくこれまでに無いデザインなので、考えるのはとても大変でした。しかも、規模が大きいデザインの本当に難しい点は、「大胆さ」と「謙虚さ」。この2つの組み合わせが必要な点です。

大胆さとは、全世界が欲し必要とする何かを作っていると自分が信じることです。そして謙虚さとは、自分や自分のキャリアのためでなくそれを使う人々のため、その人々の暮らしをより良くするためにデザインすることです。

残念ながら、人類のためのデザイン学入門編という授業はどこの学校にもありません。なので、こういった製品に携わる私や他のデザイナーたちは模索しながら独自に学び、そして改善していき、規模の大きなデザインにおける最善の枠組みを作り出してきました。

今日は私たちが何年もかけて学んだことをお話ししたいと思います。規模の大きなデザインにおいて、まず知っておかなければならないこと。それは、ささいな部分がとても重要だということです。非常に小さなデザイン要素がいかに大きな影響をもたらすかを示す良い例を次に話したいと思います。

1日に220億回見られる「いいね!」ボタンができるまで

私たちのブランドの進化につれて、他とそぐわなくなったFacebookの「いいね!」ボタン。このボタンを管理するチームは、デザインをより現代風に変更することを決意しました。

こんな小さなボタンだから、単純で簡単にデザインできると思うかもしれませんね。ですが、違いました。このボタンにはデザインする上で多くの制約があったのです。縦横は決まった設定値以内におさめ、多言語にも対応可能にしなければなりませんでした。昔ながらのウェブブラウザで表示すると美しさを欠いてしまう、最新のグラデーションやボーダーも使えません。この小さなボタンのデザインには本当に苦労しました。

そして、これが新しいバージョンの「いいね!」ボタンです。このプロジェクトを率いたデザイナーは280時間以上をこのボタンのデザイン変更に費やしました。つまり数ヶ月にも渡りました。なぜこんなに小さなものに、そんなに多くの時間を費やしたのか。それは、規模が大きなデザインを作る場合にはそもそも細部などというものは存在しないからです。

このかわいらしい小さなボタンは、750万以上のウェブサイトで1日に平均220億回も閲覧されています。史上最もよく見られたデザインの1つです。こんな小さいボタンとその裏にいるデザイナーにかかるプレッシャーは多大です。ですから、こういう小さなデザインは細部にまでこだわる必要があるのです。

報告の多くは、自分が写っている写真の削除希望

では、次に理解していただきたいのは、データをともなうデザインの方法です。

このような製品を作る時には、その製品がどのように使われているかについての膨大な情報を集め、デザインを決めるのに役立てます。しかし、数値が全てというわけでもありません。わかりやすくするために例をあげてみましょう。Facebookではずっと以前からコミュニティの基準に違反する写真やスパム、嫌がらせなどを報告できるシステムを採用しています。

大量に報告を受けていますが、実際にコミュニティの基準に違反したものはほんのわずかしかありません。ほとんどの場合が典型的なパーティーにおける写真でした。たとえば仮に、私にローラという友人がいて、カラオケの飲み会で酔っぱらった私の写真をアップロードしたとします。

念を押しますが、これはあくまで例えばの話です(笑)。余談ですが、Facebookで上司や同僚に自分の恥ずかしい写真を見られてしまうことを心配する人がいますが、私のようにFacebookで働いている人は為す術無しです(笑)。

とにかく、多くの写真が間違ってスパムや嫌がらせであると報告されました。チームの技術者の1人はこのことを事前に予見していました。彼はシステムの真の目的とは違う、何か別の問題が起こるだろうと思っていましたが、それは正しかったのです。報告を受けたケースを検証すると多くは自分が写っている写真の削除希望でした。

気持ちのやりとりをデザインする

これはチームが考えたことのなかった展開でした。そこでFacebookは友人に写真の削除依頼メッセージを送ることができる新しい機能を追加しました。しかしこれはうまく機能しませんでした。実際に友人にメッセージを送ったのはたったの20%でしたから。

チームは壁に打ち当たりました。そこで調停の専門家に相談してみたり、婉曲表現の普遍原理について学んだりしました。私はそんな原理が存在することすら、この研究をするまで知りませんでした(笑)。そして、ようやく面白い事実を発見しました。

友人に写真の削除依頼をする以上に効果的なのは、その写真でどんな気持ちになったかを友人に伝えることだったのです。その経験が今にどのように活かされているかと言うと、仮に私がこの写真を見つけたとします。スパムでも嫌がらせでもありませんが、Facebookに載せて欲しくありません。

そこでFacebookに報告して「私がこの写真に写っていて嫌だ」と言います。

それから更に掘り下げ、「なぜこの写真が嫌なのか」と聞き、「恥ずかしいから」と答えます。

すると、友達にメッセージを送るよう促されます。そして、ここからが決定的な違いです。

この写真に関して私がどう感じるかをローラに伝えやすくするような特定の文章が薦められます。この少しの変化が大きな影響をもたらしました。以前はたった20%の人しかメッセージを送らなかったのに対し、現在は60%以上の人が送るようになりました。

調査によると、写真をあげた側とあげられた側の両方が良くなったと感じていることがわかりました。また同じ調査で友人の90%が、自分がもし悲しませるようなことをしているとしたら教えてほしいと思っていると答えました。残りの10%については定かではありませんが、こういう時に「友達解除」機能が役に立ってくるのでしょう(笑)。

「芸術+科学」でデザインする

こういった決定は非常に微妙なのです。もちろん私たちは決断を伝えるのにたくさんのデータを使用します。しかし反復やリサーチ、テスト、直感、人情などにも多々頼ります。これこそが芸術であり、科学なのです。

このような製品を作るデザイナーは「データ駆動型」と呼ばれることがあります。これは私たちの心を乱す言葉です。

こんなに多くの人々の期待が集まった製品をデザインしているのに、私たちが厳密にテストをしていなかったとしたら、それは大変無責任なことです。

でも、データ分析はデザインのインスピレーションには絶対になりえません。データは良いデザインをより良くすることは出来ても、悪いデザインを良くすることはできないからです。

次に理解すべき原則は、加えられた変更を世界に発信する際には通常以上に注意を払う必要があるということです。私はよく冗談で、「変化を受け入れてもらえるようにユーザー体験をデザインする」ために費やす時間は、そのデザインの変更自体にかけた時間とほぼ同じであると話します。

長い間使用してきたものに変化が加わり、新しい方に慣れるまでには時間がかかるのと同じことです。みなさんも体験したことあるでしょう。事実、私たちは悪いデザインほど効率的に使いこなします。ですから、長い目で見れば良い変更であっても、実際に変更されてしまうと驚くほどイライラしてしまうのです。

これがユーザー発信のプラットフォームならなおさらです。なぜならそこにあるのは実際にそのユーザーのコンテンツですし、そのプラットフォームが自分のものであるかのような感覚で使用しているからです。

さて、私は数年前YouTubeで働いていた頃、より多くの人にビデオを評価してもらう方法を模索していました。

TechCrunchはYouTubeの仕様変更をどう評価したか?

そのとき興味深かったのは、データを見てみるとほとんどの人が最高の5つ星しか使用せず、最低の1つ星をつけるのは少数の人のみでした。さらに2つ星、3つ星、4つ星を使っている人はほぼ皆無でした。

そこで私たちはデザインをシンプルに良いか悪いかの2種類で投票できるモデルに変更することにしました。全てのユーザーにとってより簡単になるはずですでしたから。しかし、思った以上に5つ星評価は浸透していました。製作者たちも評価システムを好んでいましたし、何百万人もの人々が以前のデザインに慣れ親しんでいたのです。

そこで私たちはユーザーに、より早く変化に適応し、新しいデザインに慣れてもらうためにある施策を行いました。それは、データやグラフをコミュニティと共有し、私たちがしようとしていることを開示するといった手法です。その過程では大きな業界にも協力を仰ぎ、結果的に私のお気に入りサイト「TechCrunch」の見出しになりました。

「YouTube、自らの5つ星評価を『使えない』と評価」

(会場笑)

デザイン変更時のクレームは、製品への愛の表れ

さて、多くの人々が使うような製品デザインを変更する時には、それに対する反対意見は付き物です。最善を尽くしていても、例によって抗議ビデオやクレームメール、セキュリティチェックが必要な小包などが大量に送られてきます。

そんな時に私たちが忘れてはならないのは、ユーザーがそれほどまでにその製品に対して思い入れがあるということ、そして製品が彼らにとって非常に大切であるということです。

このように私たちはデザインの細部まで気を配る必要があります。デザインの過程ではデータの正しい使い方を認識し、変更の導入には細心の注意を払わなければなりません。規模の大きなデザインにおいて、この考えを持つのは必要不可欠でしょう。

しかし、これは基礎的な部分を理解していなければ何の意味も持ちません。では、基礎的な部分とは何か。それは、誰のためにデザインをしているのか、ということです。

全人類のためにデザインするという目標を立て、熱心に努力を積み重ねていくと、いつかどこかで必ず現実の壁にぶち当たるでしょう。たとえばサンフランシスコで携帯が圏外になってしまったら、ケータイのナビで新しくできたコーヒー店を検索することすら出来ずにイライラするでしょう。

でも電源を確保できる場所がなくて、ケータイを充電するために4時間も車で移動しなければなかったとしたらどうしますか? もしも公共図書館がなかったら? 住んでいる国に報道の自由がなかったら? これらの製品はどんな意味を持つのでしょうか?

地球規模のデザインに必要なのは「大胆さ」と「謙虚さ」

これが世界の大多数の人々にとってのGoogle、YouTube、Facebookの姿です。ネットをこれからはじめる50億人のうちの大多数も、これを見ることになるでしょう。価格の安いケータイのデザインは、デザインの仕事として魅力的ではないかもしれません。

しかし世界のためにデザインをしたいのならば、自分がいる場所のためではなく、人々がいる場所のためにデザインをしなければなりません。

では、どうしたらこんなにも大規模な構想を把握できるのか。自分の殻の外へ飛び出し、自分がどんな人々のためにデザインをしているのかを実際に見て聞いて理解することが大切なのです。製品を英語以外の言葉でも使ってみて、ちゃんと同じように機能するかを確認します。実際にそのケータイで彼らと連絡を取り合い、彼らの現実を把握します。

地球規模でデザインする意義とは何か。製品を改善、進化させることは難しく、時には苛立たしい仕事です。しかも同時に「大胆さ」と「謙虚さ」が求められ、神経が擦り減ってしまいます。謙虚さの部分ではデザインへのエゴの対処が大変でしょう。

これらの製品は常に変化を続け、私のキャリアでデザインしたものは全て消えて行きました。そしてこれからデザインするものも、いつの日か全て消えて行くでしょう。でも、残るものも確かにあるのです。

それは、自分の理解をはるかに超えるほど大きなものに携わるという果てしない興奮と、世界を変えることができるという希望です。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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