「病室」みたいな部屋にいつまで住み続けますか?
借り手が内装をデザインする、常識破りの賃貸住宅がスゴイ

青木 純 at TEDxTokyo 2014 #1/2

日本の住環境は先進国でも最低レベルだというのは有名な話。では一体、限られた土地のなかでどのような住宅であれば、人々は楽しく過ごせるのでしょうか。そのひとつの答えを「行列ができる賃貸マンション」メゾン青樹のオーナー、青木純氏が語りました。(TEDxTokyo2014より)

まるで病室……日本の無機質な賃貸住宅を考える

青木純氏(以下、青木):今僕は、とてもハッピーです。さっきこのステージに立つ前に、あるメッセージをもらいました。住人さんの一人に、子供が出来たよ、という。

(会場拍手)

ありがとう。僕の仕事は、大家という仕事です。皆さんわかりますか? 大家。今、この写真を見てどう思います? 

皆さんの中で、自分の部屋の壁に頬を当てたことがある人、いらっしゃいますか? やったことのない人は、今日家に帰ってやってみてください。そのぐらい自分の部屋を好きになって欲しい、僕はそう思ってます。

日本の漢字には、深い意味があります。「住」という漢字、これは「人が主役」という意味があるんです。ご存じでしたか?

でも日本の住まい、特に賃貸住宅には、人が主役という姿を、少なくとも僕は全く感じません。これが一般的な日本の賃貸住宅です。

笑いが出ちゃいますね(笑)。病院みたいでしょ? 真っ白い壁に覆われて、真っ白いビニールクロスに覆われて、安っぽい床が張られてて……。「賃貸住宅だからこれでいいじゃん。2年間我慢してよ」。そんなメッセージが聞こえてきます。だれが住んでも一緒なんです。

で、ここに住んだ人が出て行った後、お部屋がどうなるかというと……こうなっちゃうんです。

せっかく綺麗にして住んでもらおうと思って、我慢してねって与えた空間が、こんな風になっちゃ、誰もハッピーじゃないですよね。その空間が楽しくないから、愛着がないから、その部屋を出るとそこに住んでいる人は、誰とも目を合わせません。

皆さんにも経験があると思います。マンションの廊下ですれ違った時、こんにちは、ハローと呼びかけても、目をそらす人が結構いる。これが日本の住宅文化です。僕はそんな賃貸住宅を、大家として、仕事としてやらなくてはいけなくなりました。

デザインするのは借り手自身! 住み手が作る新しい賃貸住宅

青木:その時に考えたこと。シンプルです。「人を主役に考えよう」。まずは壁です。一番つまんなかった壁を、住む人に選んでもらおう。真っ先にそう思いました。

この夫婦は自分たちで壁を選ぶ時に、部屋に入ってくるなり、「この壁、ぜーんぶ私たちのキャンバスですね」と言ってくれたんです。すごくうれしかった。彼らのキャンバスがどうなったか……こうなります。

いいでしょ? すっごくいい。壁紙を選ぶという、一つの行為。僕はこれを住まい手と一緒に、時間をかけてやります。その人の好きなものを探す。今まで人に対して、その人の好きなものを探すなんて、住まいを考える上では、特に賃貸住宅市場では全く考えなかったこと、それを僕はやったんです。

自分が選んだ壁紙だから、みんな喜んでくれます。そうなるともう、壁だけじゃ済まないです。床もかっこよくしたくなる。これ自分たちで貼ってくれるんですね。で、このようにブラインドを付けたり棚を付けたり、住まい手がどんどん素敵な空間を自分で作ってくれます。

この流れが出来ると、次に入る人たちもどんどん素敵な空間を作ってくれます。見てください。すごく個性的。

楽しいでしょ? で、楽しくなってくると、皆我慢できないです。選ぶだけじゃないです、自分で作るんです。

自分で壁を取り除いて、天井を上げて広い空間を作って、その壁をぬって、床を貼って……。そんなことを住まい手がしてくれます。一か月で出来た空間がこれです。

こういう空間を、住む人が自ら作ってくれる。欧米では当たり前の事かも知れないけど、日本では奇跡に近いチャレンジです。このように出来上がって……しかも最近はすごいんです。模型まで作ってきてくれます(笑)。

(会場笑)

「AとBどっちがいい?」て僕に聞いてくれる。他にも、こんな空間が出来たらいいって、パース(完成予想図)まで書いてきてくれるんです。信じられないでしょ? 彼らだけじゃなくって、プロのデザイナーがサポートしてくれます。プロのデザイナーがサポートしてくれると、一段と魅力的な空間が出来上がるんです。

大好きな空間から新たなコミュニティーが生まれる

青木:で、自分たちで作った空間ですから、そこの空間を好きになるのは当たり前です。大好きになる。一般的に日本の賃貸住宅は、住人はだいたい2年で出ちゃうと言いますけど、皆長く長く住んでくれます。こういう笑顔になる。

これ別に「笑って!」と言って、撮ったわけじゃないです。皆が自然に笑顔になってくれる。で、笑顔の連鎖がどんどんどんどん広がると、次に生まれるのはコミュニティーです。

皆が乾杯してお酒を飲んで楽しくなると、次に何するかというと、それぞれの部屋を巡り始めます。「お宅の部屋どうなってるの?うちはオレンジだよ。かっこいいね!」そんな声をかけながら回ってくる。結婚するカップルがいます。そうするとそのカップルを、住人みんなで祝福に行きます。乾杯の発声は、大家である僕です(笑)。

もう一つの家族みたいなコミュニティーが出来てしまって、このマンションの屋上ではサンバを奏でたり、ヨガをしたり……今日の午前中もヨガやってました。野菜を育てたり、それぞれが思い思いの方法で、コミュニティーをどんどんどんどん育てていってくれます。なぜなら、彼らが一番楽しみたいから。

ついにはね、びっくりしますよ……このマンションの屋上で、結婚式まで行われました。すごいでしょ(笑)。

(会場拍手)

公共の賃貸住宅の屋上ですよ。ウエディングドレス着ているんですよ! クレイジーでしょ?

こんなことが起きてしまう。皆で祝福です。で、こうやってコミュニティーが楽しくなってくると、皆自然に、これをもっともっと外に開こうと思うようになります。そうすると、外につながる空間が出来てきます。

マンションの中にキッズスペースが出来て、町の人の子供を預かったり、住人の子供を預けたり、そんなことが出来る空間が生まれたり。住むんだったら仕事もしたいよね、ということで、マンションの中に住人も町の人も利用できる仕事場が出来ました。

"楽しい暮らし"は世の中を変える

青木:今日もみんな、これをYouTubeで見てくれてます。こんなチャレンジは、一から作る新築の賃貸住宅でも出来るんです。このようにどういった暮らしができるかのビジョンを明確に描いて、それに共感する人を"建物が出来上がる前に"集めます。そうすると出来上がる前だから、皆で最後に色付けが出来るんですね。

住む人が新築住宅なのに、与えられるのではなく、最後に作り手になってくれるんです。仕上げをしてくれる。しかも自分たちが好きな色で、自分たちの手で。こういう文化が出来上がると、本当にどんどん楽しくなります。ピザ釜も作りました。皆ピザを食べに来てください(笑)。週末焼きます。これも住まい手みんなで作りました。

こういうことが出来てくると、どうですか? どこか懐かしい日本の風景が見えてきませんか?

昔の日本には長屋文化というものがあって、ドアから出ると皆がつながってて、顔を合わせて「こんにちは、元気?」とそんなコミュニケーションがあったんです。今じゃエレベーターの中でも、目を合わさない。

それがこういう風になってきました。皆家族です。僕もここに住んでいるんですが、僕の息子はこの家で「ただいま」を二回言います。皆の玄関と、家の玄関と。皆が家族。

こういう子どもたちが大きくなる時に、人が主役の住まい、もっと作りません? 絶対楽しいですよ! 住まいが楽しくなれば、町が楽しくなるんです。日本が変わります。ほんのちょっと発想を変えるだけで、簡単にできる事。見てください。

こんなに暮らしのデザイン力がある、暮らしの冒険家はたっくさんいます。この渋谷にも、この会場にもきっといるはずです。どうか日本の大家さんは、そういう人たちと一緒に、コラボレーションしてください。自分たちが楽しんで。そうしたら楽しい暮らしは、自分たちで手に入れることが出来ます。皆もいかがですか? どうもありがとうございました。

<続きは近日公開>

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