偏見の原因となる誤解を捨て去るための4つのルール

How not to be ignorant about the world #1/2

私たちは世界のことをどれだけ知っているでしょうか? 当たり前だと思っていたことが、実は事実とは大きく違っているということはないでしょうか? 医師、公衆衛生学者のハンス・ロスリング氏と、その息子でギャップマインダー財団理事長のオーラ・ロスリング氏は、偏見があることによって、人々は無知になっていると考えます。小さい頃の教育や、日常で見ているニュースなどによって、私たちは偏った情報を受け取っています。このことによって、ものごとを正しく判断できず、偏った見方をしてしまうのです。では、このような偏った考え方を捨て、無知から脱却するためにはどのようなことをするべきでしょうか? ものごとを一般化して考える方法とその大切さについてロスリング父子が語ります。(TED-SalonBerlinより)

自分が無知であることに気づく3つの3択問題

ハンス・ロスリング氏:皆さんに3択問題を3つお尋ねします。(手元の装置を示し)この装置を使って回答してください。

第1問です。「自然災害による年間死亡者数は、20世紀を通じてどれくらい変わったでしょうか?」。A 2倍以上になった、B 世界中でほぼ変わっていない、C 半分以下になった。A、B、Cで答えてください。たくさん回答が集まりましたね。大学でやった時よりずっと早いですね。学生はもっと遅いですよ、ずっと考え続けていますからね。皆さん、とっても優秀です。

では、次の質問にいきましょう。「世界で30歳の女性が学校に通った年数は何年でしょうか?」A 7年、B 5年、C 3年。Aでしょうか、Bでしょうか、Cでしょうか? お答えください。

次の問題です。「世界で極度の貧困生活を送る人々の割合は、この20年でどれほど変わったでしょうか?」極度の貧困というのは、日々の食事にも困るという状態です。A 約2倍になった、B ほぼ同じである、C 半分になった。A、B、C、どれでしょう?

チンパンジーにも劣る正解率

では、答えです。このグラフは、1900年から2000年までの世界の自然災害による死亡者数を示しています。1900年には洪水や、地震、火山の噴火、干ばつなどの自然災害のために年間約50万人が亡くなっていました。それがどのように変化したのでしょうか。

ギャップマインダー財団(ハンス・ロスリングと息子オーラらが設立。スウェーデン・ストックホルムに拠点を置く)では、スウェーデン人を対象にアンケートを実施しました。こちらがスウェーデン人の回答です。2倍が50%、ほぼ同じが38%、半分と答えたのは12%でした。

こちらは災害の研究者による最も正確なデータです。上下した後、第2次世界大戦以降は下がり始め、下がり続けて半分よりもだいぶ少なくなっています。ここ数十年間で、世界は災害から人々の命を守れるようになってきました。このことを知っているスウェーデン人はたったの12%です。そこで、動物園に行ってチンパンジーにも聞いてみました。

(会場笑、拍手)

チンパンジーは、夜のニュースなんて見ませんから、当てずっぽうです。スウェーデン人は当てずっぽうよりも悪いですね。会場の皆さんはどうでしょう? 皆さんの回答です。

チンパンジーのほうが上ですね。

(会場笑)

でも、いい線いっています。スウェーデン人よりも3倍上です。でも、それで満足しては駄目です。スウェーデン人と比べちゃいけませんよ、もっと上を目指さないと。

先入観による思い込みが、無知を促進する

さて、次の答えは女性の就学年数です。男性は8年間です。女性は何年間学校に通ったでしょう? スウェーデン人の回答はこうでした。ヒントになりますね。正答はたぶん、スウェーデン人が一番選ぶのが少なかったやつですよね。

(会場笑)

さあ、見てみましょう。さて、さて、女性がほとんど男性に追いつきそうです。こちらはアメリカ人の回答でこれが皆さんです。さて。

おお、おめでとうございます。スウェーデン人の倍の正答率ですね。なぜこのような結果になったのでしょう? 世界には少女がとても苦められている国や地域があることを、誰もが知っています。学校を辞めさせられたり、ひどい話です。しかし、世界の大部分、世界のほとんどの人が暮らす、大多数の国では、今では少女も少年とほぼ同じ年数だけ学校に通っているのです。

だからと言って、ジェンダーの平等が達成したわけではありません。全然達成されていません。女性はいまだにひどい制限に直面していますが、今日では就学の機会はあるのです。さて、私たちは大多数の状況を見落としてしまいました。皆さんは最悪の場所を基準に答えているので、そこについては正しいのですが、世界の大多数を見落としているのです。

貧困についてはどうでしょう? 貧困がほとんど半分になっているのは明らかです。アメリカ人に尋ねたら、正答できたのはたったの5%でした。皆さんはどうでしょう? ああ、もう少しでチンパンジーに届きますね。

(会場笑、拍手)

ほんのちょっと、何パーセントの差ですね。先入観があるに違いありません。先進国の多くの人々は、「貧困は決して解消することができない」と思い込んでいるのです。そう思うのも無理はありません。現状さえ知らないのですから。未来について考えるにはまず、現在を知ることからです。

先入観ではなく、もっと大きな規模で考えなければならない

これらの質問は、ギャップマインダー財団が行っている「無知をなくすプロジェクト」の試験段階のものです。このプロジェクトは昨年、私の上司であり息子のオーラ・ロスリングが始めたものです。

(会場笑)

オーラは同財団の共同創立者で理事長です。彼が言うには、圧倒的な無知と闘うためには、もっと系統的になる必要があります。試験段階からすでに明らかになったように、大多数の人々の回答は当てずっぽうよりもまだ悪いのです。先入観についてもっと考えなければなりません。先入観の代表例の一つは、世界の所得分布に関するものです。ご覧ください。これは1975年の所得分布です。

各所得層の人数を示したものです。(長い釣り竿を取り上げ、グラフを示しながら)ここは1日1ドル……。

(会場拍手)

ここ、1日1ドルのところにコブが1つありますね、それから10ドルから100ドルの間にもう1つコブがあります。世界は2つのグループにわかれていたのです。ラクダの世界です。フタコブラクダのように貧しい層と豊かな層があって、その中間はあまりいませんでした。

それがどう変わったか見てみましょう。時代を進めていくと、変わったのは世界の人口が増加し、2つのコブが1つに合体し始めます。低いほうのコブが高いほうのコブと一緒になり、フタコブラクダが消滅し、ヒトコブラクダの世界になりました。

貧困層の割合は減りましたが、いまだに多くの人が極度の貧困状態に置かれているとはひどい話です。今でも10億人近い極貧層の人々がいますが、いずれはなくすることができるはずです。私たちの課題は、先入観を捨て、世界の大多数の状況を理解することです。それは次の質問にはっきりと現れています。

メディア関係者も世界をほとんど知らない

「世界で、はしかなどの基本的な予防接種を受けたことのある1歳児の割合はどれくらいでしょうか?」20%、50%、それとも80%でしょうか? さて、アメリカ人とスウェーデン人の回答です。スウェーデン人の答を見れば、正答がわかるというものです。

(会場笑)

あの国で国際保健を教えているのは一体どこのどいつでしょう? 何を隠そう、私です。

(会場笑)

これは、本当に難しいですね。実に難しい。

(会場拍手)

ところが、私たちの知識を正確に測定しようとするオーラの試みがマスコミで取り上げられ、調査結果がCNNのWebサイトで紹介されて、こういった質問も掲載されました。何百万という人が質問に答え、およそ2,000件のコメントが寄せられました。その一つがこれです。「メディア関係者でこの試験にパスしたやつはいないと思う」。

それでオーラに言われました。「この装置を持っていって。メディアの会議に招待されているんだから、これをマスメディア関係者に渡して、メディア関係者の知識を測定してきてよ」。さて、ご来場の皆さま、これがアメリカのメディア関係の会議での非公式結果を初公開します! さらに最近のEUのメディア関係者の結果です。

(会場笑)

ご覧のとおり、問題は人々がニュースを見たり聞いたりしないことではありません。メディア関係者自身がわかっていないのです。どうしたらいいだろう、オーラ? いい考えはあるかい?

偏った情報源が、人々を無知にしている

(息子のオーラ・ロスリング氏が登壇し、ハンス退場)

(会場拍手)

オーラ・ロスリング氏:考えはありますが、その前に、チンパンジーに負けてしまった皆さん、お気の毒さまです。でも、それは皆さんのせいではないことをお見せしますので、ご安心ください。

そして、今後チンパンジーに勝つコツをお教えしましょう。僕の話はそんなところです。

まず始めに、私たちはなぜこんなにも世界を知らないのか。全てはここから始まっているのです。これはフーディクスヴァルというスウェーデン北部の町で、私が生まれ育った場所です。この地区は大きな問題を抱えていますが、実際、それは皆さんが育った地区と全く同じ問題があるのです。それはあらゆる階級や集団を代表しているわけではないということです。とても偏った世界観を植え付けられました。これが無知を生み出す第一の原因です。個人的な偏見です。

私たちは住むコミュニティや出会った人々から異なる体験を得ます。さらに、学校に通うようになるとそれが次の原因となります。私は学校が好きですが、教師たちは時代遅れの世界観を教えがちです。自分たちが学校で学んだときのことを、そのまま生徒に教えるからです。決して悪気はないのですが。本もまた、出版されてから刻々と世界が変化し、時代遅れになってしまいます。教材の最新化もほとんど行われません。それで個人的な偏見という原因に、時代遅れの事実が加わるわけです。

その次がニュースです。

優秀なジャーナリストは、どんなニュースが特ダネになるかわかっていますし、人々もそういうセンセーショナルなニュースを読みます。変わった事件のほうがおもしろいですよね。しかも、自分たちが恐れる対象は特に大げさに取り上げられます。スウェーデン人がサメに襲われようものなら、スウェーデンで何週間も新聞のトップを飾るでしょう。

そう、これら3つの偏った情報源から逃れるのは難しく、私たちは情報攻めにされ、頭の中が奇妙な考えでいっぱいになります。

おまけに、人間を人間たらしめている直感があります。進化の過程では直感は役立つものでした。おかげで、物事を一般化し、非常に素早く結論を下すことができますが、恐れる対象を誇張したり、ありもしない因果関係を見つけ出したり、根拠のない自信を生み出したりもします。

「あなたは車の運転が平均より上手ですか?」と聞かれると みんな上手だと答えるのです。直感は進化の過程では役立ちましたが、世界観という点では真逆の結果を生み出しているのです。

上昇傾向にあるものを下降していると思わせ、その逆も同様です。この場合、チンパンジーが私たちの直感を逆手に取って、強みになるはずだったのに弱点になってしまいましたね。

データに基づいた検定試験で、無知度をチェック

では、どうすればこの問題を解決できるでしょうか? まずデータを測定し、それから修正する必要があります。データの測定よって、無知のパターンを把握することができます。昨年この試験プロジェクトを始め、世界全体でいかに無知が多いかがわかってきました。

私たちが考えているのは、これを気候や絶滅危惧種、人権やジェンダーの平等、エネルギー、金融など、グローバルな発展のあらゆる領域や側面に拡大することです。それぞれの分野には関連する事実が存在し、その事実に対する認識を広めようとしている団体があります。私はWWF(世界自然保護基金)やアムネスティ・インターナショナルやUNICEFとコンタクトを取り、人々にぜひ知ってほしいけれども、知られていないと思う事実にはどんなものがあるか、尋ねています。

そのような事実を集めているところですが、例えば250もの事実を集めた長いリストを作るとします。そして人々にアンケート調査を行って、最もできの悪かった事実を調べます。そうしてできたのが冒頭でハンスが紹介したような、 正答率の低かった事実の短いリストができたのです。そのような事実は簡単に見つかります。

さて、この短いリストで何をするのでしょう? 世界の知識についての検定試験を行うのです。大きな団体や学校、大学、または通信社などで、世界の知識があることを証明するのに使えるでしょう。要するに、チンパンジーレベルの知識の人は雇わないですよね。もちろんでしょう? 今から10年後、このプロジェクトがうまくいったら、面接試験でこういったおかしな世界の知識についてテストされるようになるかもしれませんよ。

そこで、実践的な攻略法をお教えしましょう。どうしたら正解できるでしょうか? もちろん、夜遅くまで様々な資料を読んで事実を丸暗記する方法もあります。でも、そんなことをする人はだれもいないでしょう。ハンスでさえ期待していません。そんな時間はないですからね。みんな近道をするのが好きですから、近道をお教えしましょう。

偏見を捨て、世界を正しく捉えるための4つのルール

人間の直感を再び強みに変える必要があります。一般化することができなければなりません。ここでいくつか誤解をひっくり返して、ざっくりルールに変えるコツをお見せしましょう。まず、誤解その1です。これはかなり広まっています。「何事も悪化している」。

どうですか、皆さんもそう思っているでしょう。もう1つの考え方は「たいていのことは良くなっている」です。

目の前の質問がわからなかったら、「良くなっている」はずだと思いましょう。悪化しているを選んではいけません。これで私たちの検定でもっと良い点が取れるはずです。

(会場拍手)

今のが1つ目です。次に「富める人と貧しい人がいて、格差は拡大している」。

ひどい不平等です。確かに、不平等な世界ですが、データを見れば、コブは1つでしたよね。答えがわからなければ、「大半の人はその中間にいる」と考えましょう。

それで正解できます。さて、次の先入観は、少女の就学率であったり、自然災害への備えができているなど、「社会的発展のためには、まず国も人々も豊かである必要がある」というものです。

いえいえ、違います。見てください、真ん中の大きなコブの国では、少女は既に学校に通っているのです。

答えがわからないときは、電気でも少女の就学でも「大半は既に手にしている」と考えることです。これはあくまでもざっくりとしたルールであり、もちろん何にでも当てはまるものではありませんが、このように一般化することができるのです。

最後の誤解を見てみましょう。これはおもしろいですよ。「サメは危険な動物である」。

答えはノーです。いえ、確かに危険ですが、私が言いたいのは、世界的な統計においてはそれほど重要ではないということです。実は私はサメがとっても怖いのです。自分の恐れるものについての質問、例えば地震とか、他の宗教かもしれないし、テロリストとかサメかもしれませんが、そういう問題を見たら、自分が問題を誇張しがちだと仮定することです。ざっくりとしたルールです。もちろん危険だけれども素晴らしいものだってあります。サメに殺される人はごくごくわずかです。

そう考えるべきなんです。以上の4つのルールで、恐らくチンパンジーよりもうまく答えられるはずです。

チンパンジーにはこうした一般化はできませんからね。これでひっくり返った世界を元に戻して、チンパンジーに勝てるでしょう。

(会場拍手)

将来を見据えた意思決定をするためにも大切な「系統的アプローチ」

それが系統的なアプローチです。さて、これは重要なことなのでしょうか? 貧困、極度の貧困を理解し、それとどう闘うか、またどうやって少女の就学を増やすか、そういったことは重要です。それが実際に向上しているのを見れば、理解することができます。

でも、豊かな側のことしか考えていない人にとっても重要なのでしょうか? 同じ理由で、非常に重要だと思います。現在の事実に基づいた世界観を持っていれば、将来どうなるかを理解できる可能性があるからです。1975年のフタコブのグラフに戻りましょう。私が生まれた年で、西側諸国、つまり現在のEU諸国と北米を見てみます。

さて、豊かさの点で欧米諸国とその他の国々を比較してみましょう。これは飛行機を使用して休暇で外国に旅行できる人の割合を示しています。1975年には「その他」の国々の人の割合はわずか30%でした。

でも、これも変わっています。まず、現在2014年までの変化を見てみましょう。現在では50:50になっています。

今はもう欧米優位は終わりました。いいことですね。では、今後どうなるのでしょうか? 大きなコブが見えますか? それがどう動いたでしょうか? ちょっとした実験をしてみました。

IMF、国際通貨基金のWebサイトには、今後5年間の国民1人当たりのGDPの予測データが載っています。各国の収入格差は変わらないと仮定して、このデータを使って、これが5年後どうなるかを予想することができます。実際にやってみました。

そこからさらに進めて、その5年間の変化がこの先20年間同じスピードで進むと仮定して、果たしてどうなるかを試算してみてみました。将来を予測してみましょう。2020年には「その他」の国々が57%となり、2025年には63%、2030年には68%、そして2035年には、高級消費者市場で欧米諸国がその他の国々に圧倒されるようになります。国民1人当たりのGDPのの予測に過ぎませんが、高級消費者市場の73%を「その他」の国々が占めるのです。

ですから、企業が将来事実に基づいた決断を下すためにも、この検定を使うのは良い考えだと思いますね。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

ブルーノ・ジュッサーニ氏(TEDディレクター):ハンス&オーラ・ロスリング父子でした。ありがとう。

<続きは近日公開>

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