人口減少を受け止め「豊かな縮小」へ
人が集まる空間を住民の手で作るには

How to shrink positively | Ryohei Suzuki | TEDxUTokyoSalon - YouTube #1/2

人口減少をなんとか食い止めよう、どうにかしよう、という言葉が近年全国あちらこちらで聞こえてきています。実際に私達は何ができるのでしょうか? 町に住み続ける最後の1人まで豊かに暮らせるようにするために、移動販売車「たなカー」や住民の交流の場「ぷらっと」を作って活動している鈴木亮平氏が、これからの地域コミュニティのあり方について語りました。(TedxUtokyoSalonより)

移動販売車は物を売るだけじゃない

鈴木亮平氏:みなさんこんにちは、鈴木と申します。よろしくお願いします。ただいまご紹介いただきましたように、僕は今、東京大学で都市計画というものを学んでいるんです。その研究の中で、自分で感じたものっていうのを、自分でNPOを作って、今いろんな町で活動をしています。今日は春という事で、僕花粉症がひどいので、お聞き苦しいところがあると思いますけれど、そこはご了承いただければ、と思います。

ではまず僕のやっているプロジェクトから紹介したいと思います。

皆さん、買い物弱者って言葉はお聞きになったことはあると思うんですけど、この写真の地域も歩いて行けるところには、お店はもうありません。

バスも、路線バスがあるんですけれど、1日3本程度。行ける所も限られていると。もちろん高齢化となってくると、車に乗れない方も増えてくるので、買い物に行く場所がなくて困っている、というのが現状です。

この地域ではそういった方に対して、住民の方4名、女性なんですけど、週1回このような移動販売をして、買い物の場というのを地域に作っています。

で、ここに買い物に来るおばあちゃんたちがこのように、おしゃべりしながら、お茶を飲みながら、こうやって待っているんです。移動販売が来るのを楽しみに待っている。

例えば移動販売が終わった後も、そこで買い物したお菓子を皆さんで分け合って、少しお茶会をやったりとか、今の季節ですと花が咲いていると、「じゃあ、お花見をして帰りますかね」ということになって。もちろん買い物の場って大事なんですけど、それに付随して、ここに来ると友達と会える、近所の方とおしゃべりができるという、ふれあいの場というか、交流の場、楽しみの場というものになってると思います。

それってすごく大事だなって思っていて、どうやったらこういった空間というものが今後より持続的なものとなっていくか、さらに魅力的になっていくかということを考えていろいろ活動しています。

例えばこのようなベンチ兼商品台というような空間をしつらえたりとか、住民の方がやりやすいような会計のアプリを作ったりとか、車自体を少し改造して販売しやすいようにしたりとか、というようなことを今試みています。

限界集落の見守り役

これは島根県ですけど、もう少し山の中ですね。「限界集落」という言葉を聞いたことがあると思うんですけれども、この辺りの地域では、誰も住まなくなってしまった集落というのがすでに存在します。もちろんそこでも買い物に困ってる人がたくさんいて、こういった移動販売というものを皆さん利用しながら暮らしています。

この地域は本当に山の中で、40年くらいもういろんな業者さんが、自分の縄張りみたいな形で、移動販売をして皆さんに買い物の場を提供してるんですけど、改めて調査をして、客観的に見てみると、その縄張りの間に、やっぱり誰も行けてないような隙間っていうか、空白地帯が存在するんですね。

それを今、行政といっしょに把握をして、どう移動販売業者さんと連携して、コントロールしていくと、そういった地域が減っていくのか、買い物の場っていうのを、いろんな地域にもたらすことができるのかっていうことを考えています。

あと、この地域はですね、お隣さんが200メートル、300メートル、もっと遠いなんてことも良くあることで、こういった移動販売が1軒1軒お宅を訪ねて、そこでおしゃべりをしながら買い物をするスタイルなので、移動販売業者さんが、実はこの住民の方々の健康状態っていうのをすごく敏感に感じとっている。

例えば「このおばあちゃん、なんか前より歩き方が悪くなったんじゃないかな」「毎週同じものをたくさん買って少しボケてきちゃってるんじゃないかな」ということも分かるんですね。

こういうのは1つ大事な見守り、地域の見守りとしてすごく重要かな、と思うんですけども、一方で業者さん自身は感知してもどうやって対応していいかわからない。そこで今行政と連携しながら、そこに地域包括支援センターであるとか、民生委員さんであるとか、そういったものを連携させることで、移動販売を軸にした地域の見守りっていうのができるんじゃないかな、と思っています。

したがって業者さんも、行政と連携することで、もう少し販売しやすいような環境が整えられるんじゃないかな、ということも考えています。

個人の庭がパブリックな空間へ

ちょっと今、山側の方の話しをしてしまって、行ったことのない方はあまりイメージがわかないと思うんですけれど、続きのこの写真はまさにここ、柏の葉から2kmくらいですね、というところにある郊外型の住宅地です。

で、実はこういうところにも、買い物弱者という存在は潜んでいて、こういった住宅街って一斉に家を建てて、一斉に同じような世代の人が買って、みんな一斉に歳をとるので、今まさにこれから一気に全員が高齢者になってしまう、というような状況に陥っています。

もちろん今、車をみなさん運転できるのでいいんですけれど、それ故に地域の商店や商店街自体が衰退してしまったりとか、バス路線がどんどん縮小されてしまったりということが起こってきて、あと10年くらいですかね、先を考えてみると、じゃあ車に乗れなくなりましたってときに、歩いていけるところに何もないじゃないかっていう状況になってしまうと。

そういった将来のことも考えながら住民の方と、どうやって地域の中でみんなで顔を合わせて、みんなで集まれるような場所って作れるんだろうってことで、今取り組みが始まっています。

こういった住宅街っていうのは、実はあんまりパブリックなスペースっていうのはなくて、これは個人のお庭ですね。個人の素敵なお庭を使って、じゃあそこで、これはたまたま巣箱作りのワークショップなんですけど、オーガニックの草木染だったり、燻製みんなで作って楽しんだりとか、そういうようなプログラムを、プライベートな空間なんですけど、そこに挿入して、パブリックに使っていくというようなことが、これから有効なんじゃないかなと。

将来的にはそこに、生活サービスみたいなものも移動で持ってくるというようなことも想定しながら活動しています。

街角に目的があれば、町は楽しくなる

これも柏の葉から2kmくらいの別の住宅街なんですけども、郊外の住宅地ってこれから空き家とか空き地がどんどん増えていくと思います。

で、空き家とか空き地が増えてくると、防災とか防犯、もちろん景観の面からも良くないんですけど、これは小学生と一緒に、小学生が作りたいような広場ってものを一緒に考えながら、一緒に動かしながら、空き地を広場にしていこうっていうプロジェクトですね。

こうやって住民の手でそこに手を加えていって、住民の手で自分たちにとって必要な空間、子供の遊び場であったり、災害時に一時避難の場所だったりっていうのを生み出していくと、もう少しそういった課題に対して対応できるんじゃないかなと考えています。

今までいろいろ話してきましたけれども、すべてのプロジェクトに共通して僕らが狙ってることは、地域の中の、人が自然に歩いて行けて、顔を合わせられる、自然と集まれる空間ってやっぱり大事で、それを作っていきたいな、と考えています。

僕らはそれを「ぷらっと」と呼んでいます。ぷらっと歩いていける、町のプラットフォームですね。ただ、そういった場所があっても、そういう場所があるだけでは誰も行きませんし、みんなで集まろうっていうのもなかなか難しい。

そういうときに何かそこに行く目的、しかも地域にとって本当に必要な目的っていうものを埋め込んでいくことが効果的かなと思っていて、それは例えば買い物だったりします。移動販売車をやっていれば、人は買い物にくるし、移動の図書館であれば本を借りに来るし、移動の診療所を作れば皆さん相談に来る。

こういった移動する機能ってものに着目してるんですけど、それを僕らは「たなカー」と呼んでいます。街角に目的っていうものをそーっと置いてくれるような「たなカー」と、器として受け止める「ぷらっと」というもの。その「たなカー」と「ぷらっと」というアイディアを元に、地域の住民の方と町を良くして行こうと活動してるんですけども、そうやってどんどん町って楽しくなってくる、という風に思っています。

人口減少社会で豊かに縮小していくには?

実はこの取り組みの背景というか、僕らが抱えている問題意識は人口減少社会の到来です。ただ、僕自身は人口が減少すること自体は問題ではないと思っています。

むしろ人口減少をなんとかして食い止めようとか、そういうところばかりに力を注いでしまうのは、少し問題かな、と思っていて、今の僕たちのライフスタイルを考えてみると、人口が減っていくのは仕方がないのかなという風に思っています。

ただ、人口が減少していく、縮小していくっていうことを、きちんと受け止めて、じゃあその中でどうやって豊かな暮らし、楽しい暮らしができるかということを、僕は考えたほうがいいんじゃないかなと思っています。

これを今回は「豊かな縮小」って呼ばせていただいて、説明していきます。

例えば、山の中の集落で、30年後に誰も住まなくなってしまうことは、全然あり得ると思います。ただ、急に誰もいなくなるのではなくて、30年間かけて、人がどんどんいなくなって、縮小していくんですけども、その過程でやっぱり最後までそこに住み続けたいとか、自分が生まれて、自分が結婚して、自分が子供を生んで、大好きなこの町で最後まで暮らしたいと思う人が必ずいて、そういった方たちが最後まで豊かに暮らせるためには、どういうことをした方がいいのか、ということを考えています。その中に、その過程として「たなカー」「ぷらっと」というのが寄り添えるという風に考えています。

例えば郊外の住宅地ですと、先ほど言ったように空き地とか、空き家とか増えてるんですけど、そういったものをうまく活用していくことで、例えばこういった子供が遊ぶ広場になったりとか、市民農園にしてもいいですし、空き家を活用して作業のための休憩スペースにしてもいいですし。何か手を入れることで、豊かな居住環境というのが築けるんじゃないかなと考えています。

顔を合わせる場があればいろんなことができる

僕らは「たなカー」というのを、最初、買い物に着目して、移動販売を軸に考えて、買い物がやはり生きていく中で、生活していく上ですごくベーシックな行為かなっていうことで、これを切り口に進めているんですけれども、いろんな要素っていうのをどんどん絡めていくことで、広がりを持てるかなって風に思っています。

たとえば福祉ですね。先ほど言ったように、地域の見守りの場として、こういったものを活用できないかと。その地域では例えば大きな病院に行くとしたら、タクシーでないと行けません。タクシーに乗って、往復で大体1万円ぐらい。で、診察のために待ったりとか、診察後に薬を待ったりとかしてけっこう1日過ぎてしまう。そういったところっていうのは、医療っていうのがすごく身近な存在ではなくて、遠い存在になってしまっているんですね。

でもせっかく移動販売で集まったときに、みんなが顔を合わせられるんだったら、そこに例えば介護予防プログラムを挿入するとか、健康相談の場を設ける。行政と連携しながらそういった取り組みをしていくことで、そこに行けば誰かとつながっているとか、誰かに見守られているみたいな安心感を得られるような、地域にとって大事な場所になっていくんじゃないかなと思っています。

そういった場所にせっかく行くんであれば、じゃあみんなでお昼作って食べようかとか、地域の誰かを、住民の方を先生にして、教室でもやってみようかとか、そういうことが展開できるかと思います。

「たなカー」作りの楽しさ

これはまた別の地域なんですけど、農家といっしょに「たなカー」を作っています。

もちろんこの地域にも買い物に困っている方がいるんですけども、それと同時に自分が作った野菜っていうものを直接顔を合わせながら売りたいという方がいるんです。

せっかく売りに行くんだったら、近所の方が作った雑貨も売りたいなあとか、食育に関連する本を貸し出したいなあ、というようなことで、こういった展開を見せています。後はせっかく集まってくれたんだから、みんながとどまって楽しく過ごせるような空間というものを一緒に作れたらな、と考えています。

今の農家さんと「たなカー」の活動を一緒にしている中で、たまたま教育委員会の方に関心を持っていただいて、この町では小学校とか公民館と連携しながら、子供たちが「たなカー」を作るプロジェクトを進めています。

最初のアイデア出しの設計も制作も、販売・運営も全部大人がやったんですけれども、そういった中で、子供たちがまちづくりに参加できる機会だったり、何かを表現できるような。

子供たちが楽しいからやるということを、すごく素直に表現してくれて、自分が町のために動いたら、町の人が喜んでくれるし、それってなんか自分も楽しいってことをすごく素直に表してくれていて、それを見た大人にも、いろいろ考えが生まれるかなということで、非常に面白い展開を見せていて。

「豊かな空間」が町を変える

今まで紹介してきた地域っていうのは、実際縮小ってのはどんどん、過疎化、高齢化を受けて始まってきているんですけども、その中で住民の方たちから、そういった縮小の中でも、こういった空間があるといいよね、とか、やっぱりこういう空間が町には必要だよね、というところをいろいろ考えていて、縮小を受け止めながら、そういった動きを見せているんですね。

そこに対して、僕らは自分たちのことを「アーバンデザインパートナーズ」と呼んでいるんですけど、住民の方々のパートナーとして一緒に考えて、一緒に動いて、一緒に町を考えていければいいかなと考えています。

こういった縮小の中でも、人が自然と集まれて、気軽に集まれて、顔を合わせられて、おしゃべりできたり、過ごせたりというような空間が、非常に重要だなと思っていて、何かそこは豊かな空間だなと思っていて、縮小する上でも、そういった豊かな空間っていうものを考えていきたい、そういう風に思っています。

僕なんかは東京に住みながらやってまして、便利なところに住んでるんですけど。たとえばAmazonで買い物できますし、Google行ってなんでも調べられますし、Skypeで遠くの人ともおしゃべりできて便利なんですけども、なんかそれって実際にこういうような自分の体、物理的な身を置く空間というのはすごく大事なんじゃないかなという風に感じています。

この方たちは、それがうまく自分の地域の中に見つけられていて、そこがリンクしてるというか、自分がそこに住むって意味ってものと、自分が身を置く空間みたいなものがすごくリンクしていて、すばらしいなっていう風に思ってるんですけど、やっぱり普段僕らが暮らしていく中では、ちょっと見失ってしまう部分っていうのがあるのかなって思っていて、そこを今日皆さんともう一度、見つめ直す機会になればいいかなと思っています。

ありがとうございました。

(会場拍手)

(編集協力:吉成美里)

<続きは近日公開>

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