「俺たちにやらせてくれ」
放水のプロ、東京消防庁が"任務外"の原発注水作業に至った経緯とは

Yasuo SATO [ 佐藤 康雄 ] - TEDxSeeds 2011 #1/2

今年の3月11日で発生から丸4年を迎える東日本大震災。世界中が心配した福島第一原発事故において、原発への注水作業という危険極まりない重大な任務を背負ったのは東京消防庁のハイパーレスキュー隊でした。同庁で警防部長を務める佐藤康雄氏が、事故当時の切迫した状況を生々しく語りました。(TEDxSeeds 2011より)

3.11発生時における東京消防庁の立場

佐藤康雄氏:こんにちは。このような素晴らしい場所で、またこのようにたくさんの素敵なみなさんの前で話せることを楽しみにしてきました。

この写真は3月19日、福島第1原発3号機の燃料棒貯蔵プール、これがカラカラになってしまったところへ、大量かつ継続的に充水するというミッションを成し遂げたあとの記者会見の写真であります。この写真をご覧になったことのある方、ちょっと手を挙げていただけますか? あ、嬉しいですね。見てない方もいらっしゃるみたいですが、その方は後でYouTubeでご覧ください。

(会場笑)

福島から帰りましてすぐにこの記者会見ということですので、髭を剃る間もありませんでした。今日はしっかりと髭を剃ってまいりました。

(会場笑)

今日は体験談をお話ししながら、みなさんを消防の世界に、ほんの少しですけれどもお招きできればなと考えております。と言いましても時間があまりありませんので、この舞台の上にいらっしゃる方には東京消防庁のヘルメットをかぶっていただいて、ご参加いただこうと思っています、ぜひおかぶりください。

ご協力ありがとうございます。

3月11日14時46分、東日本大震災が発生しました。マグニチュード9を超える史上4番目という超巨大地震。10mを超える、1000年に1度という巨大津波。10,000人の方がお亡くなりになり、5,000人を超える方が未だ行方不明であります。お亡くなりになった方にはご冥福をお祈りいたします。また被災された皆様には、心からお悔やみを申し上げます。

実はこの超巨大地震が東京にも被害を及ぼしたということは、あまり認識されておりません。震度5強の地震があり、34件を超える同時延焼火災がありました。東京の防災を担う私としましては、一刻も早くこの災害を収束させ、そして東北地方に非常に被害があるということですので、少しでも早く緊急消防援助隊を東北に送りたいという気持ちで一杯でした。

ところが徹夜が開けた翌12日、なんと福島第1原発1号機が爆発したではありませんか。飛行機がぶつかっても絶対に爆発しないと言われていたのに、なんで? 信じられませんでした。また14日になりますと、3号機も爆発しました。

福島第1原発にはみなさんご存知の通り、6機の原子炉がありますが、そのうちの1号機から4号機までが連続的に爆発したんです。これは電源喪失による冷却装置が働かないことによって、水が充足されていないことに原因があるということでした。

もともと原子力災害につきましては国家機密ということもありますので、国が対応することになっています。ということで自衛隊のヘリが2機、空中から充水しようということで果敢に向かってくれましたけど、非常に高い放射能エネルギーで、なかなか目的を達せられなかった。

そしてまた警察も国家の範疇ですので、放水車を出してくれて放水しようとしましたけれども、これもなかなか難しい。そういう状況でした。

この時、我々東京の消防は、本来は東京の消防庁ですから東京における任務を想定してやっておりまして、原発というのは任務にありませんが、これは放水の専門家である我々消防に依頼が来る可能性がある、じゃあその研究を始めようということで、部下たちと同時に始めたのがこの時であります。

隊員の被曝を防ぐために

東京消防庁には81の消防署があります。そしてそこには全部レスキュー隊がいます。その中から精鋭を募り4つのハイパーレスキュー隊を作って、東京消防庁の10ある消防方面本部の内、4つの方面本部に配置しております。これは阪神大震災の経験から、大きな災害があった時に派遣するためであります。

で、このいちばん下、右下にあります第二消防方面本部。これにつきましては、もう東北の気仙沼の方にすぐに行っております。残りは3部隊があります。

実は消防において、原発は任務にこそ入っていませんけれども、東京で放射能を使ったテロ、あるいは研究所で放射能が漏れた、こういったことを想定して、基準を作り、装備を作り、日々訓練してまいりました。

どんな基準かと申しますと、普通の時は1回で浴びる放射線被曝の限度は30mSv(ミリシーベルト)と決めております。ただし、人を助けるというような時については100mSvまで認めようと。ただし100mSvまで認めた場合には、その職員はもう決して一生涯、放射線災害には出さないという基準であります。

じゃあ今度原発に行く時にはどこまでを限界にしようかということ、これは先生にも入っていただいて検討しましたが、半径2kmぐらいの構内です。危ないと思って100mSvで逃げたら、100mSvを超えてしまいます。それでは80mSvにしようということをまず決めました。

それから、先ほど装備があると言いました。この右上の方にあるのが放射線防護衣ですが、私から言わせれば、これは「防護衣」ではありません。「防塵服」であります。なぜかと言うと、放射線の付いた塵は防げるんです、体内に入れないために。でも放射能そのものは電子レンジに人を入れたようなものですから、どんどんそんなものは突き抜けてしまうんです。

じゃあ何が大事かというと、時間で管理するしかないのであります。

現地にどの隊を連れて行くのか

3月17日、もう15日や16日になりますと、まず燃料棒を冷やすことが喫緊の課題、国民のみなさんも「どうやって冷やしてくれるんだろう?」とご心配だったと思います。

3月17日に、東京にいる全てのハイパーレスキュー隊を集めました。そして練っていた作戦、本当は3つあるんですけれども、それがいかに短時間で人が少なく被曝を少なくできるかということを実際にやってみました。

まだ現地では小雪が降るような、木枯らしが吹く寒いような季節でした。原発は海沿いにあります。風が強いんです。たまたま運よく木枯らしが吹く時ですので、風向きに対する影響も調べてみました。

実はこの時、現地に誰を連れて行くか、指揮官としていちばん悩みました。東京のハイパーレスキュー3隊を全部連れて行って留守にする……それは国難だからしょうがない。でもこの時、現地では400mSvもの放射線濃度だったんです。毎日100mSvぐらいずつ上がっていく。我々が行った時には1時間で600mSvぐらいになるんじゃないか。そうすると80mSvだと10分も活動できないかもしれません。

ですから、先ほど言った81ある消防署からレスキュー隊をたくさん集めて、その人たちにこの操作を教えるということにして、「お前たちハイパーレスキュー隊はその先生になってくれ」とこの場でお願いしました。

どの隊長も「いや、俺たちにやらせてくれ。俺たちが行く」「いや、だってお前たちには若い隊員もいるだろう?」と言ったんですが、「俺たちが行く。この日のために訓練してチームワークができているんだ」と。

悩みましたね。でも悩んだ末、ハイパーレスキュー隊で行くことに決めました。それでその日は各部隊にそれぞれ戻しました。ところが、戻ったその日の夜中、深夜0時50分、なんと内閣総理大臣から出場要請が来たんです。

本当はもっと被害を少なくするために縮小しようとかいろいろ検討しようと思っていたんですが、その余裕はありません。2時に正式に出場命令をかけて、また元の位置に集まれ、と。そして発隊式をやりまして、8時には福島に着きました。

予想以上にひどかった現場の状況

これが3号機が爆発した直後の航空写真であります。どういう作戦を取ったかといいますと、上の方にあります矢印、あれは海側にありますけれども、あそこに巨大な「スーパーポンパー」というポンプを据え付けて、そしてあの煙の出ているところ、ここが3号機でありますけれども、3号機の脇に「屈折式放水塔車」というものを設ける。

そして、そのノズルの角度、それからつなげるホースは事前につなげるだけつないでおく。そしてあの青の線、まっすぐ、これがいちばん最短ですから、150mmというこんな太いホースを車でパタパタパタと伸ばす。そしてつなげばあっという間に設定が完了する。私の考えでは、概ね7分ぐらいでできるんじゃないかなと読んでいました、この作業だけは。

東京電力と政府等と打ち合わせをしまして、東京消防庁は17時、夕方の5時から作業をしてくれということになりましたので、原発から20km離れたJヴィレッジを前進指揮所にしたのですが、そこで準備をして、みんな出動しました。

ところが、私はそのJヴィレッジで待っていましたけれども、原発っていうのは人里離れたところに作りますので、携帯無線も通じない、消防無線も通じない、衛星無線も通じないんですね。じっと待ちました。

その間、政府から5時も過ぎるとですね、「どうなってるんだ、まだか!」「そんなものはわからん!」と蹴っ飛ばしたんですけど、ガンガン来る。戻ってきた隊員に様子を聞きますと、想定以上に荒れていたんです。

※続きはこちら! 「半分は家族の元に戻れないと思った」 原発事故の最前線で戦った隊長が語る、ハイパーレスキューの真実

<続きは近日公開>

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