東日本大震災、知識だけでは命を救えなかった--地震学者・大木聖子氏による“科学の限界”を伝える活動

the Lives cannot be Saved by Knowledge #1/2

地震災害に関する知識が普及している日本においても、なぜ震災による「理不尽な死」がなくならないのか? 地震学者の大木聖子氏は、東日本大震災をきっかけに科学の限界を感じたと語る。彼女が考える、命を守る理想の防災教育とは?(TEDxUTokyoより)

地震学者になると決意したきっかけ

大木聖子氏:みなさん、こんばんは。日本人のみなさんの前で、英語でスピーチをするのは変ですが、英語でノミネートされてしまったので仕方ありませんね。

(会場笑)

大木聖子です。まずみなさんにこれは何であるか当てていただきましょう。

日本のみなさんはもうご存知の方は多いと思いますが、これが地震予測システムです。大地震の震度や、主要動が発生するまでのタイムラグを表示します。日本で地震が発生するたび、私はこれで情報を得ます。私は地震学者で、公に情報を提供する立場にあるからです。なぜ私が地震学者になったかお話しましょう。

17年前に神戸で地震があった日、私は普段通りの1日を過ごしていました。私は東京の高校生で、神戸で何が起きているのかわかっていませんでした。帰宅すると、何ということでしょう、全てのテレビ番組がこの壊滅的な災害を報道していました。

私と同じ年ごろの少女が、瓦礫に向かって叫び続けていました。「お母さん!お母さん!」彼女は、母親に向かって呼びかけていたのです。私は、温かな夕食を食べていました。どうしてこの同じ瞬間、彼女は叫び、一方で私は夕食を食べているのか、私には理解できませんでした。

その晩、私は地震学者になることを決意しました。11年後、私は東京大学で地震学の博士号を取得しました。

地震大国日本に求められるリテラシー

では次の質問です。これは何でしょう。

実に、全ての地震のうち10%が日本で発生しています。我々が暮らしているのは地表の1%ですが、その10倍の地震が起こっているのです。

つまり、日本に住んでいる以上、我々は地震について知る必要があります。地震についての高いリテラシーが要求されるのです。そこで私は、地震について社会に情報を広めるいろいろな努力をしました。学校の子供たちに講義を行いました。

この中学校の子供たちは、東北の子供たちです。津波について教え、津波からどうやって逃れるかについて教えました。東日本大震災の1年前の事です。ではここで、地震のリテラシーについて考えてみましょう。

2004年、マグニチュード9の地震がスマトラを襲いました。スマトラ島沖地震では、20万人の死者がでました。日本で我々が受けた10倍の被害です。

ある調査では、インドネシア人のうち地震と津波の関係性について知っている人はわずか3%であるという結果が明らかになりました。

日本では東日本大地震の前であっても、97%が知っていました。もちろん日本には高い防波堤がありますし、津波警報システムがあります。私は、自分は正しかったと思いました。人命を守るためには、地震のリテラシーは非常に重要であると。

研究者は科学の限界を伝えるべき

しかし、この映像を見て私は完全に打ちのめされました。

あの日、宮古市で撮られた画像です。3mの津波警報しか発令されておらず、町は8mの防波堤に囲まれていました。そしてご覧のように、10mの津波が町を襲ったのです。

地震学者として、彼らに大変申し訳なく思います。100人以上の方々がこの地域で亡くなりました。この町の、全ての方々には、地震と津波との関係性の知識がちゃんとあったのです。しかし3mの警報が人々を無防備にし、8mの防波堤が巨大な津波を人々の目から隠しました。

1週間以上、私は避難者リストの中からこの子供たちの名前を捜しました。私は子供たちに正しいことを伝えただろうか? 実際の津波より小さな数値の警報が出されるかもしれない事を、津波は防波堤をたやすく乗り越えてしまうかもしれない事を、子供たちに教えればよかった。

研究者は知識の弱点を、現在の科学の限界を、世に伝えるべきです。地震のリテラシーは、死者を20万人から2万人に減らすことはできますが、知識だけでは死者を0人にはできません。

我々は皆、リテラシーの更にその向こう側に行かなくてはいけません。私は、今でも自分に何ができるかわかりません。いまだに答えがわかりません。

現状の避難訓練の欠点

しかし私は、学校教育に希望の光を見出しました。

日本の学校では、年に数回、地震の避難訓練をします。通常はこのようなアナウンスが流れます、「訓練、訓練。机の下に避難してください」。

これが子供たちの様子です。しかし実際の地震では、何が起こるでしょうか。

これは阪神淡路大震災の時に、コンビニの防犯カメラで撮られた映像です。この後、画面は暗転します。この状況で、強い揺れのなか、誰が放送室に行けるでしょうか。

たどりつけたとしても、何ができるでしょう。機械は壊れています。そこで私は提案します。教育を、訓練を、積極的に自分の命を守るため何をすべきか、自分の力で考える、という方向に変えるべきです。

従来の避難訓練は、子供たちを、教師の指示に従うよう指導します。しかし最新の避難訓練の基準は、自分の命を守るために何をすべきか、子供たち本人が決断するよう指導すべきです。

知識だけで人の命は救えない

私は子供たちに、いろいろな状況下で避難訓練をさせました。音楽室や、図書室など、机がない所ではどうしたらよいか、自分たちで考えてもらいました。この避難訓練を2年続けた後、東日本大震災がこの学校を襲いました。

偶然その日、学校で撮影された動画を見ていただきましょう。

(動画が流れる)

子供たちは、体育館で卒業式の練習をしていました。子供たちは、すぐに命を守るために正しく行動しました。

これは私がお見せする最後の映像です。3.11の大震災は、私の胸元に「知識だけ、解説だけでは人の命は救えない」という事実を突き付けました。

まだ道半ばでありますが、私は子供たちへの学校教育に望みを賭けています。10年後、彼らは22歳になります。何人かは学校の先生になるでしょう。

さらに10年後32歳になり、彼らの多くは結婚し、親になるでしょう。私はそうなってはおりませんが。これも深刻な問題ではありますが、今日は脇に置きましょう。

(会場笑)

20年後の日本の災害に対するポテンシャルは、まったく変わってくるでしょう。現在よりずっと改善されているはずです。私は、3.11で失われた2万人の人命を無駄にはしないと誓います。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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2 近日公開予定

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