「選択肢が少ないほど人は幸せを感じる」 心理学者が証明した、幸福のメカニズム

The Surprising Science of Happiness #1/2

脳内で幸福を作りだす際に1番の障害になるのが「選択肢」の多さだと語るハーバード大学の心理学教授・Dan Gilbert(ダン・ギルバート)氏。選ばなかった未来を過大評価してしまう厄介な脳の性質とは?(TEDより)

自然発生的な幸せと人工的な幸せの大きさは変わらない

ダン・ギルバート氏:私たちがいる社会においては、人工的に作り上げた幸福は、二流の幸福であるという強い思い込みが普通です。

どうして、そう思ってしまうのでしょうか? 理由はとても簡単です。なぜならば、欲しいものが手に入っても入らなくても、私たちが自然に生まれた幸福と人工的に作った幸福に同等の幸福を感じるならば、経済が回らなくなってしまうからです。

私の友人であるマシューリカードには大変申し訳ないのですが、僧侶で溢れているショッピングモールは、そこまで儲からないと思います。

僧侶は、そんなにものを欲しがらない。なので、彼らが人工的に作る幸福は、自分がまさに望んでいるものを手にするという幸せと同じくらいリアルであり、その幸福は長続きします。

私は科学者なので、修辞学的ではなくデータを使って説明していきます。

人工的に幸福を作りあげる実験

はじめに、一般的な成人が人工的に幸福を作りあげることを、証明するための実験データをお見せしましょう。

これは私のデータではなく、自由選択に関する50歳の人のデータです。実験は簡単です。その実験とは、6つのアイテムを、被験者にそれらを好きな順にランク付けしてもらう内容です。

ひとつの例なので、皆さんに予め何を使うかお伝えしておきます。モネの絵です。被験者はこれらのモネの絵を、1番好きなものから1番気に入らないものへと順に並べます。

ここでひとつの選択肢を出します。「予備の絵がまだクローゼットにあります。 今日の実験のお礼にひとつ差し上げます。3番目と4番目の絵が残っています」という選択肢です。少し難しい選択です。なぜなら、2つの残っている絵も、他と比べてそんなに好きではないからです。

しかし、自然に人は3番目のアイテムを選ぶ傾向があります。4番目の絵よりは好きだったのですから。

その後、15分後もしくは15日後かもしれませんが、被験者の前に同じ絵を並べ 、再度ランク付けをしてもらいます。

「今はどうですか」と聞いてみると、どうでしょうか。彼らが幸せを人工的に作り出す様子を見てください。

こちらが何度も行われている結果です。幸せが作り出されていますね。もう1度ご覧になりますか? 「私が選んだ絵は思ってたより、ずっといい!」「選んでない方の絵は良くない!」

これが人工的に作り上げられた幸福ということです。みなさんの反応は如何でしょうか?

記憶健忘者の実験による証明

次に私たちが行った実験をご説明します。

この実験は、入院中の前向性健忘症の患者と共に行いました。患者の多くは、コルサコフ症候群という多発性の神経障害にかかっています。

彼らはこれまでにお酒を飲み過ぎたため、新しい記憶を覚えておくことができないのです。要するに幼児期の記憶はあるのですが、我々が部屋に入り自己紹介をして、部屋を離れ、また戻ってくると彼らは我々を忘れてしまうのです。

私たちは、モネの絵を病院に持って行き、患者にそれらの絵を1番好きなものから順に並べてもらいました。そして、先ほどの実験と同様に3番か4番かを選んでもらいました。 他の被験者と同じように、患者も 「ありがとうございます、先生。新しい壁掛けにします 3番を下さい」と言います。

3番の絵はまた後日宅急便で送りますと言って、全ての荷物を持って私たちは部屋を出ました。それから30分待って、部屋に戻り「戻りました」と話しをしました。

患者との会話ですが、「先生すみません 私は記憶障害でここにいるのです。お会いしていたとしても思い出せません」

「覚えていない? さっきモネの絵を持ってきました」

「すみません、全く覚えていないんです」

「大丈夫。ただ、これらの絵を好きなものから順に並べてもらえるかな?」

さあ、彼らはどうするでしょうか。まず最初に、彼らが本当に記憶健忘症かどうか確かめましょう。患者に自分が選んだ絵はどれかと尋ねました。彼らはどうやら適当に答えているようです。こちら緑が正常者です。

みなさんに同じ質問をしたら、全員自分の絵がどれか分かるでしょう。しかし、同じことを記憶喪失の患者に尋ねたデータである、ピンク色の図からわかることは、彼らには自分の絵を選び出すことが出来ないのです。

お話したように、正常者は幸せを作り出すのでした。絵の表からわかることは、最初の順番と2番目の順番はこのように変わります。

正常者は「自分が選んだ絵は予想より良かった。選ばず残った方は思っていたほど良くはなかったな」と言います 。

なんと、記憶健忘者も全く同じ結果になりました。彼らも自分が選んだ絵だとは知らないのにも関わらず、自分が選んだ絵を選びました。これらの患者が幸せを作り出したということは、彼らは本当に絵に対する喜び、美的感覚を変えたということです。

選択の自由は、人工的な幸福と相性が悪い

自分が選んだ絵だから好きになっているわけではないのです。なぜならば、彼らにはそれが自分の絵だとは分からないのですから。このようなグラフから、このことは多くの人間の持ちうることだということはおわかりだと思います。

この心理的に防御するシステム、言い換えると、幸福を作り出す能力は私たち全てに備わっています。しかし、この能力を人並み以上に使いこなせる人もいます。

またこの能力を、より効果的に発揮できる状況も存在します。自由というものは、意思決定をし、またその意思を変える能力のことだとします。

自由は、自然に生まれる幸福と相性がいいと思います。なぜなら、数多の魅力的な未来から、各々が最も楽しめるものを選ぶことができるからです。

しかし意思の決定や 変更における選択の自由は、人工的に作り上げる幸福とは相性が悪いです。その理由をご説明します。

ディルバートという漫画に次のようなやりとりがあります。

A「ドッグバードのテクニカルサポートです」

B「プリンターが白紙ページばかり出します」

A「無料でもらえる紙になぜ文句を言うんですか?」

B「無料!? でも、この紙も自分の紙ですよ?」

A「あなたの紙の荒い紙質と、無料の紙の紙質とを比べてみてください。バカか嘘つきしか、同じだなんて言いません!」

B「言われてみれば確かに絹のようです!」

Aの同僚「なにやってんの?」

A「人々が変えられないものを受け入れるための手助けをしているのさ!」

心理的防御のシステムは、私たちが迷ってしまった時に最も効果的に働きます。

迷ったときに働く心理的防御のシステム

これはデートと結婚の違いと同じではないでしょうか。ある男性とデートに出掛けると、彼が鼻をほじりました。もう彼とはデートに行きません。

では、あなたと結婚した彼が鼻をほじったらどうでしょう? あなたは優しい人だから、その手でケーキは触らないでね、ではないでしょうか。つまり、物事に適した幸せを見つけることができるということです。

さて、このことから私がお伝えしたいのは、このような機能は一般的には知られていないことです。さらには、その知らないと不利なことが起こりやすいということです。

こちらはハーバード大学で行った実験です。白黒写真のコースで、学生らに参加させ、暗室の使い方も教えました。

まずカメラを持った学生は、キャンパスを歩き回ります。好きな教授や寮の自室、ペットの犬など、ハーバードの思い出が詰まった12枚の写真を撮ってもらいます。それからカメラを回収し、印刷紙を準備して出来のいい2枚の写真を選びます。

次に6時間かけて暗室の使い方を教え、2枚を現像させます。2枚の見事な8×10の、思い出の詰まった光沢写真を前に、我々は学生に 「どちらかを手放さなければならないのだが」と言います。

「1枚手放すのですか?」

「そうです。 授業のプロジェクトの証拠として、1枚必要なので、どちらか決めてください。 あなたに1枚、私に1枚です」

ここからがこの実験の2つのケースです。1つのケースでは、学生に次のように言います。

「写真はまだ私が持っているから、もし気が変わったのなら、これから4日間、実際に本部に送るまでは、いつでも交換できます。君の寮まで届けてあげます。メールを下さい。一緒に決めよう」

一方で、 残り半分の学生には全く正反対のことを言います。すなわち、「すぐに選んで下さい。2分後にはイングランドに発送します。君の写真は大西洋を渡っていくので、これが最後の別れだ」ということです。

次に、それぞれのケースの学生半数に、手元に残した写真と手放した写真をこれからどれくらい気に入るかを予想してもらいます。残りの学生はひとまず寮に帰して、それから3日から6日ほどかけて、写真への好感度や満足度を調査します。その結果をご覧ください。

選択肢の少なさが幸せをつくる

まず最初に、こちらが学生達の予想です。彼らは手放した写真より手元に残した写真のほうが好きになるだろうが、統計的に意味のあるほど大きな差にはならないだろうと考えます。 つまり、その差はほんの僅かであり、交換できるかできないかは問題ではないということです。

それは大間違いということがわかりました。次のようなことがわかったからです。

交換する前もその5日後であろうと、手元の写真しか残っていない人や選択肢のない人、 絶対に変更する気が無い人が写真に非常に満足したのです。

一方、頭を悩ませ考え続けた人は「交換すべきか? この写真でよかったのか? もしかしたらこっちはよくないかも? いい方を手放したかも?」という考えに悩まされました。

彼らは自分の選んだ写真が好きでなかったし、実際、交換期限が終わってもまだその写真が好きにはなれませんでした。

なぜならば、交換が可能だという条件は人工的に作り上げる幸福と相性が悪いからです。

選ばなかった未来を過大評価してしまう

さて、こちらが最後の実験です。

先ほどとは違うグループのハーバードの学生を集め、「写真コースをしているんだけれども 2パターンあって、どちらかに参加して欲しい。2枚写真を撮ったあと4日間考える時間があるコースと、2枚写真を撮ったらすぐにどちらか決めて決して変更はきかないコースがある。どっちに参加したい?」

なんと66%、約3分の2の学生が選択の変更がきくコースを好んだのです。

そうです。 66%の学生が、最終的に写真に大きな不満を覚えてしまう条件を選んだのです。なぜならば、彼らは人工的に幸福が生まれる環境を知らないからです。

シェイクスピアは、ご存知でしょうが、物事を上手く表現します。私の話も、こう表現しています。

「物事の善し悪しなんて本当は存在しない。我々の思考がそのように見せるだけだ」

素敵な詩ではありますが、100%正しくはありません。本当に物事の善し悪しは存在しないのでしょうか。

胆嚢の手術とパリ旅行とは本当に同じものなのでしょうか。これはIQテストの質問のようです。両者は100%同じではないのです。

より誇張された文章で、しかしより真実に近いことを近代資本主義の父、アダム・スミスがつぎのように述べています。こちらは読み込む必要があります。

「人類の生活における苦悩や無秩序の多くは、永続的状況とそれ以外の状況との差異を過大評価しているところから起こるようだ。いくつかの状況は疑いなく他より好ましいものであるが、それらのどれも、慎重さや公平さの規律を犯すまでの情熱をもってして追い求める価値はない。また未来の心の平穏さは、自らの愚行の記憶による恥、自らの不公平な行いへの恐怖や後悔によって乱されるべきではない。つまり、他より優れているものもあるのだ」

ひとつの未来を選び抜く力を持っておくべきです。けれどもその選択が異なる未来の差異を過大評価することによって、強引でせっかちになってしまうとリスクが生じるということです。

何かを選んだ後も別の何かを探してしまう

希望は限られたものであれば、楽しむことができます。けれども希望が無限であると、我々は嘘をつき、人を騙して物を盗み、他人を傷つけて本当に価値のあるものを犠牲にするのです。

同時に恐怖が限られたものであるなら、我々は用心深く慎重で分別をもって行動できます。しかし、恐怖が限りなく大きいものであれば、我々は無鉄砲になり臆病になります。

私がこれらのデータを使って、皆さんに伝えたかったことは、私たちの願望や不安は、自分たちで作り出すため、どちらも大げさなものとなり、その結果、何かを選んだ後も絶えず、別の何かを探し求めているということです。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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