世界一キケンな海峡を、53時間かけて横断!
64歳のスイマーが語る、絶対に夢を叶えたい人のための3箇条

夢は決してあきらめるな #1/2

64歳でキューバからフロリダまでを泳ぎきったダイアナ・ナイアド氏が、その53時間にわたる遠泳で体験した恐怖や仲間の支えなど、壮大な海の旅を紹介。決して夢をあきらめなかった彼女だからこそ語れる、夢を実現させるために大切な3つの考えとは?(TEDWomen 2013より)

人生という旅は、その道のりが大事

ダイアナ・ナイアド氏:この海岸に立つのは5度目の正直でした。キューバの海岸から、あの遠くの地平線を眺め、再び言い聞かせるのです。「この広大で危険に満ちた大海原を泳いで渡りきってみせる」と。

私もこれまで4回も挑戦しましたが、世界中のトップクラスの遠泳選手が1950年から挑み続けているにもかかわらず、(キューバから米フロリダ州への海峡横断を)まだ誰も達成していません。

私のチームは、過去4回の挑戦を誇りに思っています。30数名のサポートチームで、リーダーは親友のボニー。何時間、何日間も泳ぎ続けた後で、もう残っていないものと思っていた闘志の、最後の一滴を呼び覚ましてくれるのです。

チームのサメ専門家は世界一です。大きなサメが水面下で私を狙っています。海の生物の中で最も毒性の強いハコクラゲもこの海域にいて、前回の挑戦時には危うく命を落とすところでした。

160キロ以上ある水域はもちろん、環境自体が過酷です。海流に渦巻き、そして地球上で最も予測の難しいメキシコ湾流を泳いで渡らなければならないのです。

ところで、おもしろいことに、挑戦前にジャーナリストや人からよく尋ねられるんです。「ボートや人や機材は同行するのですか?」って。いったい何を想像しているのでしょう? 1人で星を頼りに泳ぎ、口にくわえた狩猟用ナイフで、捕まえた魚を生きたまま皮をはいで食べ、脱塩装置でも引っ張って飲み水を作るとでも?

(会場笑)

もちろん私にはチームがついています。専門家チームが。勇敢で、新しいアイディアと科学的な発見にあふれた人たちです。世界中の大規模な遠征と同じです。私たちは長い旅をしてきました。古代ギリシア時代から盛んに人生とは何か、議論されてきましたよね?

人生という旅は目的地に達することよりも、その道のりが大事ではないでしょうか? 私たちがたどってきた道のりは、スリルに満ちています。まだ対岸には着いていませんが、誇りに思い、ゆるぎない決意を抱いていました。

セオドア・ルーズベルトの格言

60歳になっても、20代から挑戦し続けた夢をあきらめず、夢に見て、心に描いていました。今日、世界で最も有名な、キューバとフロリダ間の海峡を思い浮かべました。その想いは深く、魂の奥深くに根差したものでした。60歳になって、スポーツ界に名を残すとか、1番乗りになりたいというエゴから発したのではありません。

常にそういう気持ちもあることは否定しませんが、それよりももっと深い問い、「あとどのくらい生きられるのだろうか?」という問いからです。現実を直視しましょう。私たちは皆、死に向かって生きています。どうしたらいいのだろう? 

後悔しないで生きていくためにどうすればいいのか? この1年間、トレーニングに励みながら、セオドア・ルーズベルト大統領の有名な格言を自分の言葉で言い換え、頭に思い浮かべていました。

「快適な椅子に座って、人のやることを批判したり、傍観したければそうするがいい。だが、勇者はリングに上がり、血に汚れて、幾度となく失敗しても恐れず、気後れせず、勇敢に生きるだろう」と。

もちろん、私は向こう岸まで泳ぎきりたかった。それこそが目標だったからです。今年は道のりより目的地に達したことのほうが一層嬉しかった、と言ったら、浅はかだと思われるでしょうか。

(会場拍手)

忍耐は人間に与えられた偉大な特質

でも、道のり自体も価値のあるものでした。この夏まで誰もが……科学者、スポーツ科学者、持久力トレーニングの専門家、神経学者、私のチーム、そしてボニーでさえ、不可能だと言ったのです。できるわけがないと。それでも、ボニーはこう言ってくれました。

「でも、挑戦するなら、私も最後まで見届けるわ。一緒に行くわよ」。そうして、私たちはスタート地点に立ちました。沖を眺めながら、最初の1かきを始めるまで、別世界にいるような気がしました。

マリーナ・ヘミングウェイの岩の上に立ち、頭上にはキューバ国旗が風に揺れ、チーム全員がそれぞれ、ボートの上から拳を突き上げ「ここだよ、一緒に行くよ」と言っているのが見えました。 ボニーと視線を交わし、口から出たのは、今年の目標として、トレーニング中に繰り返してきた言葉でした。

「道を見つけよう」。誰にでも夢があり、行く手を遮る壁があります。人生には悲しみや不安がつきものです。でも、自分を信じ、信念を持っていれば、打ちのめされても再び立ち上がることができます。忍耐とは人間に与えられた偉大な特質であると思えば、道は見つかるのです。 ボニーは私の肩をぐっとつかんで言いました。「フロリダまでの道を一緒に見つけようよ」

生涯忘れられない「53時間」

ついに、スタートです。それからの53時間は、強烈で生涯忘れられない経験でした。気分は最高に高揚していました。私は信仰心が強いほうではありませんが、メキシコ湾流の真っ青な海の中で、息継ぎしながらどこまでも続く大海原が目に入ると、この青い地球への畏敬の念を抱かずにはいられません。

頭の中のプレイリストには85曲ほど入っていて、特に真夜中になると、音楽がかかるのです。明かりは全く使いません。明かりをつけるとクラゲやサメがやってきます。サメは明かりに集まる魚が目当てだからです。

だから、真っ暗闇の中を進むのです。こんな真っ暗な闇は、誰も経験したことがないでしょう。自分の指先の一寸先も見えないのです。ボートにいるボニーとチームの仲間は、何一つ見えない中でも、腕が水面を打つ音で、私の位置がわかるのです。泳ぎながら、私は頭の中のプレイリストに聞き入っていました

(会場笑)

私を鼓舞したジョン・レノンの『イマジン』

実際は、きついゴムキャップをかぶっているので、何も聞こえませんが。ゴーグルをつけ、首を1分間に50回ひねりながら、頭の中で歌っているのです。「天国というものは無いと想像しな♪ドゥドゥドゥドゥドゥ♪むつかしいことではないよ♪ドゥドゥドゥドゥドゥ♪」1,000回でも続けて歌えます。一種の才能でしょうね。

(会場拍手)

「僕のことを夢想家だと言うのかな? でもこう考えているのは僕一人ではない♪」222回目。ここまで来るたびにリピートして、また「天国というものは無いと想像しな♪」に戻るのです。こうしてジョン・レノンの『イマジン』を1,000回歌い終わると、9時間45分泳いだところでした。きっかり。

そこで問題が発生しました。もちろん、問題はつきものです。吐き気に襲われ、海水のせいで気分が悪くなりました。クラゲから完全防護するためのマスクをつけているのですが、つけていると泳ぎにくいんです。

マスクのせいで、口の中は擦れて痛いのですが、クラゲの触手からは守られます。さらに、体温も低下し始めました。水温は29度ありますが、それでも体重が減り、カロリーを消耗してしまうのです。

チームが待機しているボートの側面に近づくと、私がボートに手を触れても、チームがボートから下りることもできませんが、ボニーとチームは、私に食料を手渡し、調子はどう、大丈夫? と声をかけてくれました。

実はその時、タージ・マハルが見えていたんです。目の前に。全く別の次元にいたんです。「わあ、こんな所でタージ・マハルに出くわすなんて夢にも思わなかった。何てすごい。これを建てるのに何年かかったんだろう? (手を振りながら)うわー」なんて。

(会場笑)

チームのルールを破ることを決意した、親友のボニー

チームには基本ルールがあって、ゴールまでの距離を、私には決して知らせないことになっていました。実際、距離がどれくらいあるか、わからないのです。ゴールまでの間に何が起こるか、天候や潮の流れがどう変わるかもわかりません。それに、これだけクラゲよけで身を守っていても、クラゲに刺されるかもしれません。

それだけはどうしても避けたいことでした。でも、3日目の朝、私が苦しみ、かろうじて泳いでいるのを見て、ボニーはそのルールを破ることに決めました。「こっちに来て」と、私をボートの側面に呼び寄せると、「あそこを見て」と言ったのです。明かりが見えました。

夜よりも日中のほうが泳ぎやすいので、朝が近づいているのだと思いました。白い光が水平線上に並んでいました。「もうすぐ夜明けね」と言うと、ボニーは答えました。「いいえ、あれはキー・ウェストの明かりよ」。ゴールまであと15時間だったのです。普通のスイマーにとっては長い時間でしょうが。

(会場笑)

15時間の遠泳トレーニングをどれほど積んできたことか。

漠然とした「できるだろうか」ではなく、日々周到に計画し、準備した

ゴールが見えてきました。無意識のうちに 水をかく回数を数えるのをやめ、歌うのも、スティーヴン・ホーキングの言葉や宇宙のパラメータを引用するのもやめました。ただ自分の夢について、なぜ、どのように夢を追ってきたかを考えたのです。

先ほど言ったように、60歳になった時が転機でした。漠然とした「できるだろうか」ではなく、日々周到に計画し、鍛練し、そして準備しました。そのことは誇りに思っています。でも、そのうちにこう考えることにしました。高望みすることをよく「星に手を伸ばす」と言いますが、私の場合は「地平線に手を伸ばす」ことでした。

そして、私が証明したように「地平線に手を伸ばす」時、届かない人もいるかもしれませんが、人間的にも精神的にも、何と強くなったことか。地平線に手を伸ばす時、何と強固な人格の土台が築かれことでしょうか。

いざ海岸が目前に迫ってきたとき、ちょっとだけ悲しい気持ちになった自分がいました。大旅行が終わってしまうのです。

チームみんなの力で成し遂げた壮大な海の旅

今ではたくさんの人から言われます。「次は何をするのですか? 素晴らしかったです! コンピューター上のあの小さな点を追跡していましたよ。次はいつ挑戦するのですか? 今度も楽しみにしています」。

この人たちが追跡していたのはたったの53時間。でも、私は何年間もかけて挑戦したんです。もうこんな壮大な海の旅はないでしょう。でも、大切なのは、私たちの人生の日々が大旅行だということです。あの海岸にたどり着いた、というより這い上がった時、自惚れているように聞こえるかもしれませんが、実はそのためのスピーチを何度も練習していたんです。

(会場笑)

ボニーが、私の喉の奥が腫れあがっているのを心配し、医療チームをボートに呼び、私が呼吸困難になっている、と相談していました。あと半日か1日海に浸かっていたら、どうなっていたことか。

「気管切開」という言葉が聞こえたような気がしますが、幻聴だったかもしれません。そうしたらボニーが、医師に「呼吸ができるかどうかは心配じゃないけれど、せっかく岸についてスピーチができなかったら、彼女が怒るから」と言ったんです。

(会場笑)

でも実際、トレーニングを乗り切るためにモチベーションを保とうと、あれだけスピーチを練習したのに、現実は違いました。たくさんの人がいて、私のチームもいて、本当にリアルな瞬間でした。やり遂げたのです。私1人の力ではなく、チームみんなの力で成し遂げたのです。決して忘れません。永遠に私たちの記憶に残るでしょう。

夢を実現させるために大切な3つの考え

岸にたどり着いた時、実際に口をついて出たのは、次の3つです。1つ目は、「絶対にあきらめるな」。その言葉のとおり生きてきました。ソクラテスも「生きることは行動することである」と言っています。「絶対にあきらめるな」とは決して口先だけではありません。実際、私はあきらめませんでした。行動でもって示せたと思います。

2つ目は、「何歳になっても夢を追うことができる。年齢は関係ない」です。 64歳で年齢、性別を問わず誰にもできなかったことをやり遂げたんです。 今が私の人生の絶頂期だと確信しています。

(会場拍手)

ありがとう。

最後に、海岸で言ったのは、「世界でもっとも孤独な挑戦だと思うでしょう。そういう面もたくさんあります。しかし、別の意味で、最も大切なのは、チームプレーだということです。私をすごいやつだと思うなら、ボニーを紹介します」(笑)。

ボニー、どこ? どこにいるの? あそこにいるのがボニー・ストールです。

私の大切な親友です。

(会場拍手)

勇敢で恐れを知らない自分であり続ける

ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(アメリカの作家・思想家)はこう言っています。「目標を達成したことは、目標を達成するまでの自分の成長ほど重要ではない」と。確かに、私はこうして今、皆さんの前に立っています。

遠泳を達成してから3ヵ月の間にオプラ(オプラ・ウィンフリー‐アメリカの有名なテレビ番組司会者)の番組に出演し、ホワイトハウスのオバマ大統領の執務室にも招かれました。皆さんの前で話す名誉を与えられ、出版社と大型契約も結びました。

これらは全てすばらしいことで、過小評価するつもりはありません。どれも誇りに思いますが、でも実際、こうして胸を張っていられるのは、日々そしてこれからも、勇敢で恐れを知らない自分であり続けるからだと思います。

ありがとう。 カンファレンスを楽しんでください。

ありがとう。ありがとう。ありがとう。

(会場拍手)

どうもありがとうございます。 自分の道を見つけて下さい!

(会場拍手)

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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