もしも、お腹の子が「ダウン症」とわかったら…?
"知りすぎる時代"に人類は幸福になれるのか

Knowledge is power? #1/2

2013年から始まった新出生前診断は、胎児がダウン症かどうか、妊娠初期に極めて高確率で見極められるようになりました。他にも、将来の病気リスクを判定する「遺伝子検査サービス」の開始など、私たちが得ることのできる知識は増える一方。この知識をより良い未来へつなげるため、私たちにはどのような力が必要なのでしょうか?

「知識」は本当にチカラなのか?

佐倉統氏:こんにちは。「知識は力なり」とは有名なフレーズですね。皆さんもよくご存知でしょう。そして、多くの皆さんが共感するフレーズでもあるのではないでしょうか。しかし、「知識は力なり」とは真実でしょうか? 

現代においても、知識は本当に力なのでしょうか? 私は科学論の研究者です。今日は知識とは何なのか、そして今日私達が生きる社会において、知識の役割とは何なのかについてお話したいと思います。

「知識は力なり」というフレーズは、17世紀初期、正確には1620年代に誕生しました。

今から約400年も前になりますが、当時から現在までに、例えば政治制度、経済状況、工業化、そして教育のスタンダード等、社会のほぼ全ての分野が著しく変化しました。情報量、そして知識の量が劇的に増えたのです。知識や情報が世に溢れかえっているとも言えます。

知識や情報が溢れかえると、それが物事を良くするのではなく、逆に混乱を起こすこともあるのです。

遺伝子医学や遺伝子学について考えてみましょう。現在では、個人の遺伝子情報を読み取ることが可能です。しかし、読み取れてしまうからこそ、私たちが将来どんな病気にかかる可能性があるかがわかってしまう。

現在までは、病気を予期することは不可能でした。しかし、今この時代を生きている私たちは、自分が将来患う病気の可能性を知ってしまう。しかもその病は不治の病だとしたら……。

自分が将来患う病気を知ることが、幸せであると言えるでしょうか……!?

電気信号で本能は抑えられるのか

次に、神経科学、脳科学から例を挙げます。

脳深部刺激療法という神経外科の治療法があります。

脳深部に電気的刺激を送り込むことにより、パーキンソン病患者の痛みを緩和したり、てんかんを和らげる治療です。

数年前、この脳深部に電気的刺激を与えることが、患者の食欲を抑えることに繋がることがわかりました。

つまり、肥満患者の治療にも脳深部刺激療法は有効であるということです。私たちは、この治療法を用いて、治療することが難しい肥満患者をも治すことができる知識と技術を得たわけです。

しかし、食欲を脳深部に刺激を与えることで抑えるなど、本当に可能だと思いますか? 食欲とは基本的欲求であり、とても抗うことができない強い欲求です。脳深部に電流を流すことで食欲を抑えこむなど、とても難しいことのように思えます。

実際、私たちがこのように考えるとおり、人間の食欲を抑えることはとても難しいことを、ある実験が証明しています。

脳深部刺激療法を受けて食欲をコントロールされていたある入院中の肥満患者は、深夜になると、彼の脳内に電流を送っているマシンのスイッチを自ら切り、病院内の冷蔵庫へと一目散に駆けて行き、食べ物を詰め込めるだけ口に詰め込んでいました。結果、脳深部刺激療法を受ける前よりも体重が増えてしまいました。食欲のような人間の基本的欲求は人工的に抑えることはとても難しいのです。

ダウン症の出生前診断が両親にもたらすもの

最後に、ダウン症候群の例を挙げましょう。

想像してみてください。もしあなたがダウン症候群を患う子どもを、お腹に宿す妊婦だったとしたら。産むか産まないか、選択しなくてはなりません。どちらに決めるにせよ、それはとてもとても難しい決断であることでしょう。

妊娠中に胎児の状態がわかることは、時には良いことです。現在では出生前診断により、妊娠初期でも胎児の状態をとても正確に知ることができます。

つまり私たちは、胎児の様子を知ることができる「知識」と、それを知った上で決断を下すことができる「力」があるということなのですが、知ることが本当に幸せなことなのでしょうか? 

研究の結果、胎児がダウン症候群であると知った多くの妊婦やそのパートナーは、とても混乱することがわかりました。つまり、妊娠初期の段階で胎児の障害を両親に伝えると、彼らの混乱はその分長引くだけ……という結果が出ています。

これから生まれてくる子の障害を知ることは、とても辛いことです。つまり、知ること「知識」は、必ずしも「力」であるとは限らない、ということなのです。

「知識」のみならず、選択する「力」、ものごとを決定する「力」が必要なのです。

この「力」は私たちの想像力からやってきます。この決断を下したらどうなるか、自分はどう感じるか、常に考えてみるようにしてみてください。決断を下した後の自分を想像してみて、それが素晴らしいもので、自分が幸せであると感じたなら、そのとき皆さんは「知識」を真の意味で「力」にし、皆さんの「想像」を「現実」にすることができるのです。

「知識」は「力」になり得ます。しかし、そうなるかどうかは皆さん次第です。そして皆さんの想像力にかかっています。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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