老後に休むなら今休もう!
1年間の長期休暇が、あなたのキャリアと人生にもたらすもの

長期充電休暇のちから #1/2

ヤフーや米グーグルなどにも広がる"大人の夏休み"こと、サバティカル休暇制度。7年ごとに1年間の休暇を取るというデザイナー、ステファン・サグマイスター氏が、長期充電の必要性とその効果を説きました。(TEDより/この動画は2009年に公開されたものです)

大好きな仕事にも"飽き"はやってくる

私はNYでデザインスタジオをやっていますが、7年ごとに1年間のサバティカル(長期研修休暇)を取り、仕事に追われて忙しい間にはできないこと、新しいことをする時間を設けています。

その年、私達はどんなクライアントの対応もしませんでした。

(会場笑)

1年間、完全に会社を完全休業しました。そしてご想像の通り、その間、素晴らしい、ワクワクする時を過ごしました。

元々、私は大好きな音楽とデザインを一緒にやるために、ニューヨークにスタジオを設立しました。

そして私達は、皆さんもご存知の有名アーティストのミュージックビデオやアルバムジャケットを手掛けてきました。加えて、多くの無名アーティストも。いくら好きでも、好きなことをすることにだんだん慣れてしまい、それが当たり前になってしまうんですね。そして私は好きなことでも、だんだんとそれに飽きてきてしまうのです。

そしてそれが仕事にも表れて、同じようなものばかりデザインしてしまうようになってしまう。これはガラスの眼球のダイカット。そしてこれは香水瓶のデザインでまたダイカット。とても似ていると思いませんか?

仕事を3つのステージにわけると?

そこで私は1年間、オフィスを閉めることにしました。人生の25年を教育・学びに費やし、その後40年必死に働き、最後の約15年間ほどをリタイヤするのが一般的な人の生涯だと考えられます。そこで私は、リタイヤした後の15年間のうち、5年の時間を、必死に働く40年間の間に上手く分配して休暇を取れるようにすればいいのではないか……と考えました。

この方が、私には合っていると思ったのです。しかしそれよりも大切なのは、このやり方であれば、サバティカルを取ることによって得る新しい発見や生産性向上によって、仕事に戻った後に会社の発展により貢献できる。更に大きく考えれば、それが社会貢献にも繋がります。リタイヤ後に同じ5年という年月を、たった数人の孫のために役立つ時間とするよりも有益だと思います。

(会場笑)

2年前にこのTEDに登場したジョナサン・ハイトは、彼の仕事を3つのレベルに分けていますが、これに強く共感します。

1番目は「ジョブ」。私も仕事を「ジョブ」として、お金の為にやっている部分があります。木曜日には、すでに週末の楽しい予定のことで頭がいっぱいになることがあります。仕事の忙しさでおかしくならないように、趣味を持ったほうが良いかもしれない、そんな状態ですね。

「キャリア」となると、俄然張り切ります。しかしそれと同時に「仕事が人生のすべてなのだろうか」と思い悩むこともあります。これが2番目。

3番目の「天職」は、金銭的な見返りがなくてもやらずにはいられない、そんな状態です。私はスピリチュアルな人間ではありませんが、自然の中で過ごしたいと思いました。初めてのサバティカルはニューヨークで過ごしましたが、次の7年目のサバティカルには全く違う経験がしたいと思いました。

バリで湧いてきたインスピレーションの数々

ヨーロッパやアメリカはもう知りすぎていて、魅力を感じなかった。そこでアジアに行くことにしました。中でも、最も景色が素晴らしいと思ったのはスリランカとバリ島でしたが、スリランカでは内乱が起きていたので、バリで過ごすことにしました。

そこは本当に素晴らしく、工芸の盛んな場所でした。バリ島に到着したのは2008年の9月。到着してすぐに仕事にかかりました。バリ島、その土地にいることで素晴らしいインスピレーションが湧いてきたのです。しかし、それよりも先に必要だったのは防蚊剤・蚊取り線香でした。バリ島はとても蚊が多い。

そして、バリ島で私が滞在していた家の近所にたむろし、朝の散歩中の私を襲ってくる野良犬達へ、どうにかして仕返ししなくてはなりませんでした。

そこで私達は1頭ずつ、1枚のTシャツに、合計99頭の犬の肖像を入れたTシャツをデザインしました。

ささやかな仕返しとして、ちょっと彼らを脅かすようなメッセージ「犬はこんなにたくさんいるのに、料理してやるレシピが無い」を背中にプリントしました。

(会場笑)

ニューヨークを出る前に、スタジオをリモデルすることにしました。私がいない間、その工程全てを人に任せることにしたのです。そして私は、家具を探し始めました。気に入ったものはいくつかありましたが、気に入ったものほど値段が高すぎた。そこで、バリ島で家具をつくりはじめました。そして、ここでも野良犬のデザインを使いました。

このようにまだ終わっていないんですが。

そしてこのランプが仕上がった頃、私の野良犬達への復讐も終わりを迎えました。

(会場笑)

そして、コーヒーテーブルも作りました。このテーブルは「今この瞬間を生きる “Be Here Now”」と名付け、330のコンパスを入れました。

そして、中に磁石を隠し入れたエスプレッソカップもつくって、常にテーブルの中のコンパスがカップのほうを指すようにしたのです。

(会場笑)

そしてこれはとても「よく話す」。主張の強い椅子です。

バリ島で初めて瞑想をしました。でも私は知っています、人の幸福について聞くのは、本当につまらない、ということを。なので、ここではスピリチュアルなことや幸福について語ったりしませんのでご安心下さい。

googleも採用しているサバティカル休暇

皆さんご存知の方が多いと思いますが、この方はTEDでもお馴染みのダニー・ギルバートさんです。

彼の著書をTEDブッククラブから購入しました。一年のサバティカル中に読んだので、購入してから四年間は読まず仕舞だった本です。そして読んで驚いたことには、彼もまたサバティカル中に幸福について執筆していたことを知りとても嬉しくなりました。ここで、何人かサバティカルを取ることで成功している人々をご紹介したいと思います。

彼はフェラン・アドリア。

彼のレストランは「エル・ブジ」といって、バルセロナの北に位置します。そして彼は現在世界一のシェフであると言われています。このレストランは毎年7か月間だけオープンしており、残りの5か月はレストランをクローズし、キッチンスタッフ全員で更なる美食の追求に費やしているとのことです。年間で来店できるのはたった8,000人。エル・ブジで食事をしたいお客様の予約は、約220万件入っているそうです。

私が取っている7年毎に1年休む、というサイクルは、私が私の時間の12.5%を仕事から離れて過ごしていることを意味します。私の会社よりも成功している企業を見てみましょう。

「3M」は、1930年代からすべてのエンジニアが仕事外で好きなことができる時間を15%確保できるようにしています。そしてそれが、彼らの生産性やクリエイティビティを高めることに繋がっています。Scotchのテープも、サバティカルシステムを導入したことから誕生し、ポスト・イットも3Mでのサバティカル中にアーサー・フライが発案したのです。

もちろんGoogleも、ソフトウェアエンジニアに20%の時間をやりたいことを追求するサバティカル期間として与えていることは有名です。会場の皆さんの中にサバティカルシステムを導入したことがある方は、どれくらいいますか?

ありがとうございます。会場の5%くらいですね。皆さんの近くに今手を挙げた方がいれば、あとで研究休暇制度は有益か否か、ちょっとお話を聞いてみてください。今後やりたいことがある場合、もうすでにそれをやったことがある人、そして私がやろうとしている方法よりも上手くやっている人に話を聞くことが一番です。

せっかくの休暇、上手に活かすには?

私がサバティカル制度を導入しようと考えた時、まずそれを絶対にやると決めて、いつから休暇に入るか、スケジュール帳に書き込みました。そして後で、「あぁ、やっぱりそんなことバカなことはできない!」と尻込みすることがないように、会う人会う人に休暇を取ることを宣言しました。

(会場笑)

初めてのサバティカルは悲惨な結果となりました。当時、サバティカルに計画は必要ない、計画を持たないことによってインスピレーションが生まれるのだと思っていました。

しかしそれは違いました。計画がないことによって、ところどころで小さな依頼が来るたび、私はそれに対応していたのです。仕事の依頼ではありません。仕事の依頼にはもちろんNoと言いましたから。例えば、日本のデザインマガジンとのやり取り等で、私はせっかくサバティカルを取っているのにも関わらず、休暇中の自分自身のインターンをやっているようなものでしたね。

(会場笑)

そこで私はやりたいことのリストをつくり、優先順位を決めました。更にそれらに費やす時間を割り振り、日々の予定表をつくりました。学校の時間割のような感じです。

ちょっと表を見てみましょう。月曜は8時から9時まで執筆、9時から10時まで今後のことを考える時間。まぁこれはあまり上手くできませんでしたけど、このような感じです。計画を立てることによって、やっとサバティカルらしくなってきました。

サバティカルの結果、私はデザインへの情熱を取り戻し、楽しみ、経済的にも長期的に見て成長しました。休暇中のインスピレーションによってデザインの質が上がり、価格を上げることに繋がったのです。そして最も重要なポイントは、1年間のサバティカル中にインスピレーションを得た全てが、次の7年間の仕事に集約されているということです。

休暇後に挑んだプロジェクト

1年のサバティカル後に出てきた、いくつかのプロジェクトをご紹介します。

いつも思うのですが、「同じであること」をよしとする考え方が浸透しすぎている。皆が足並み揃えて同じことをする。いつも同じである必要はないのです。レム・コールハース建築のコンサート会場で、ポルトガルのポルトにあるカーサ・デ・ムジカにロゴのデザインを依頼されました。

建物の形をベースにせずにロゴを考案したかったのですが、それは違いました。レム・コールハース氏(カーサ・デ・ムジカを建てた建築家)が、ポルト市へのプレゼンで「集塊状に重なり合った建物の意味」を話していたのですが、その意味をきちんと理解したからです。建築の専門用語がたくさん並んだスピーチの意味を、ロゴデザインの視点から読み解きました。そして気が付いたのです。建物そのものがロゴであるということに。

そこからは仕事がはかどりました。建物を形として捕え、あらゆる角度から検証します。

友人に頼んで「カーサ・デ・ムジカ ロゴ ジェネレーター」なるソフトウェアをつくってもらい、色をつけてみました。

このソフトウェアはスキャナーと接続していて、ベートーヴェンの肖像等、どんな画像でも取り込むことができる。そしてソフトウェアが取り込んだ画像から、カーサ・デ・ムジカ ベートヴェンロゴを一瞬で表示します。これは例えば、ベートーヴェンのポスターをデザインしたい時に役立ちます。このようにロゴとポスターの色がマッチするからです。

他にも、ザッパの音楽が演奏されるイベント時には、それ専用の色のロゴ作成が可能。フィリップ・グラス、ルー・リード、ケミカル・ブラザーズ、これらは皆カーサ・デ・ムジカで公演したアーティストですが、彼らのイベント毎にオリジナルロゴを作成。

同様に、カーサ・デ・ムジカ内部の方々、例えば代表やディレクター等の肖像画を取り込んで、彼らオリジナルのロゴを作成し名刺に載せる。カーサ・デ・ムジカには 本格的な専属オーケストラがいますが、彼らのロゴはこの彼ら専用のツアーバスに載っています。

12人の小規模なコンテンポラリー・オーケストラもいて、自分たちのグループ名をリミックスしています 。

このソフトウェアの便利なところは、基本的なロゴから発展させた広告ボスターをつくることができる点です。ドナ・トーニ、 ショパンやモーツァルト、 ラ・モンテ・ヤング等。ロゴの形からタイプグラフィーに展開させることができる。家族向けイベント、毎週のイベント、その他教育サービス等のポスターをつくることもできます。

広がる"デザイン"の可能性

次に、当時その時まで、私は商業的・広告の観点からのみデザインと関わってきていました。ビジネスとしてデザインを売ることは当然です。私の両親は2人ともセールスにいましたし。しかし、「どうしてデザインを広告ビジネスとしてだけ捉えてきたのだろう?」と考え始めました。「他にもデザインの可能性はあるのでは?」と。

すると、全く違う分野での仕事が舞い込みました。皆さんの中にもご存知の方がいらっしゃるかもしれません。TEDでも過去に「Things I’ve Learned in My Life So Far」というトークで紹介したことがあるので。今日は中から2つお見せします。

こちらをご覧ください。これは違った熟度のバナナを壁に敷き詰めて「自信が成功を生む」という文字を入れました。NYにあるギャラリーのオープニングで、このように展示しました。そしてこれが、それから1週間、2週間、3週間で真っ黒、4週間、5週間と経ち……。

「自信」の文字が少しだけ真っ黒になったバナナのなかから浮き上がっているような、いないような。

ギャラリーを訪れた人が上の写真を送ってくれました(笑)。(展示物のバナナとバナナ・リパブリックの紙袋をかけて)。

(会場笑)

そしてアムステルダム市から、広場で何かやって欲しいとアプローチがありました。板石に沿って硬貨を並べていきました。中央銀行から250,000の色の濃さが違う硬貨を入手。ピカピカのもの、キラキラのもの、中間くらいのものから、とても古くて真っ黒なものまで。

100人のボランティアの方々の手を借りて、1週間ほどかけて「執着心は人生を台無しにするが、仕事をする上では必要である」というメッセージを完成させました。

ここでの狙いは見てくれる皆さんに、「ここにある硬貨を取れるだけ取ることもできるけど、素敵だからこのまま残しておいたほうがいいだろうか?」とジレンマを感じてもらうこと。ここで1週間ほどボランティア100人が作業している間、地元の人々がとても興味を持ち、応援してくれました。

作品が遂に出来上がった最初の夜、ある男性が大きなプラスチックの袋を持って現れ、硬貨を拾い集め始めたのです。それを見た近所の住人が、警察を呼びました。警察は現場検証、この作品から硬貨を盗もうなどけしからん、この広場のアートは守られるべきであった、皆のためのアートである……と思ったのでしょう。彼らはすべての硬貨をかき集めて、証拠品として警察本部に持ち帰っていきました。

(会場笑)

このあたりですね、警察が全部集めて持ち帰ろうとしているとことです。完成してから8時間後には硬貨のアートはなくなってしまいました。

(会場笑)

そして今は、大きなプロジェクトをバリ島でやろうとしているところです。幸せについての映画を撮ろうと思っています。ブタさんにタイトルコールをしてもらうおうと思いましたが、上手くいかなかったので、今度はガチョウさんに頼みました。もっと優雅に美しくやってくれるかと思いましたが、少しやりすぎで装飾性が高すぎた。

バリ島のスタジオはモンキー・フォレストから非常に近く、サルさん達はとても幸せそうに見えたので、彼らにタイトルコールをお願いしてみました。上手くやってくれましたが、バナナの文字が読みにくい、という問題が残りました。やはり自分で描いたアイディアは、自分で形にしなければ納得いくものができませんね。

今後2年、私達はこの映画に取り組みます。2年は長いですし、幸せについての映画などあまり意味がないと思う方もいらっしゃることでしょう。そんな皆さんは是非、この男性に会いに行ってみてください。

ビデオの男性:(リズムにのって)フッツフッツー、フッフー! 生きるって素晴らしい! 生きてるって幸せ! 生きててサイコー!

(会場笑)

ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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