ネットサービスの利用者はどのくらい増えているのか

鎌田和樹氏(以下、鎌田):ここまでがUUUMの紹介であります。最終的には「動画をつくりましょう」と思ってもらいたいんですけど、ちょっと広い話をしたほうがいいと思うので、動画業界の話をしたいと思います。

これは僕が企業さんからお金をもらってセミナーをさせていただくときの内容を抜粋したりしているので、ちょっと企業寄りだったりマーケティング寄りかもしれないんですが、どういうところで活動していくのかが分ると思うので、お話を聞いていただきたいと思います。

Created by Tech Spartan

これはTechSpartanというイギリスのメディアが出している調査票ですね。簡単に言うと、一番上が「2013年にどんなことがありましたか」、二番目が「2014年にどんなことがありましたか」ということを1分間の中で表しているわけです。

一番上のFacebookのところに46万と書いてあるのは、2013年は「1分間に46万人の人がログインしていました」ということを言っています。2014年になると、みんな当たり前に増えていっていますね。これ、増えるのは当たり前なんです。そもそものインターネットユーザーが3億人ぐらい増えているので。

YouTubeでは1分間に300時間の動画が上げられている

特徴的なのはこれを伸び率に直しているもので、そうするとYouTubeは197%で、圧倒的に伸びている動画プラットホームなんです。

わかりやすく言うと、2013年は100時間分の動画が1分間の間にアップロードされました。その100時間が、今は300時間になっているということです。どう考えても、動画とかソーシャルプラットホームみたいなものが一番伸びています。そういう動画プラットホームができつつあるんです。

YouTubeは公開されている情報しか出せないんですが、例えば月に60億時間分ぐらい見られている。そして今、10億人の人が使っていますよ。先ほどの300時間もそうですし、こういうような超巨大な動画プラットホームです。

そうは言ってもこのご時世なので、Facebookもそうですし、Instagramもちょっと前からそうですし、Twitterも短い動画を上げられたり、皆さんが使っているSNSは、全部動画を使えるようにしています。こういうようなことが当たり前に世界で起こっている。

日本の動画市場はまだまだこれから

ちょっとだけスマホの話をします。何かと言うと、普及率ですね。青がテレビで、オレンジがスマホです(左から米国、欧州、日本、中国)。日本は均衡していますけど、中国だと当たり前のようにテレビよりもスマホを持っている人のほうが多い。右側の一日当たりの接触時間になると、ほとんどテレビを見ていません。テレビを見ているのは欧州ですね。

僕もそうですけど、朝とか家にいる時間よりも、日中に外で活動している時間のほうが多いのでテレビを見るよりスマホだよね、ということがわかるかと思います。

その中で接触時間と年代。まだシニア層と呼ばれる人や30代40代の方はテレビのほうが多いですけど、それ以外の10代とか20代はテレビよりもインターネットで、さらにスマホで見ていますよ、ということがわかるんじゃないかなと思います。

意外なほど伸びているんじゃないかと最初のスライド何枚かで言いましたけども、これはオンライン動画の売り上げが、テレビのどれだけを占めているかというグラフです。

国によってどれぐらいオンライン動画が伸びているのかを言っているんですけど、日本は1.5%しかないんですよね。中国では13%なので、10倍違います。絶対額ではなくて割合なので、何が言いたいのかと言うと、まだまだネットでビジネスをしようとか、ネット動画に企業さんがお金を払うのは、めっちゃ少ないということです。

動画配信サービスがオリジナルのコンテンツを作っていく

じゃあなんで少ないのか、いろんなことがありますけど、ひとつわかりやすい例として、今年上場するHuluの話をしたいと思っています。

海外ではSVODと呼ばれるサブスクリプションのビデオオンデマンドサービスが主流になってきています。

日本ではテレビで動画を見る、コンテンツを見るということが当たり前ですけれども、アメリカとかだと、ケーブルテレビしかり、民法じゃないところでコンテンツを取得しているのがわかると思います。

こういった会社が何を考えているかというと、例えば「House of Cards」ですけど、自分たちで動画をつくるんですよね。ドラマをつくるという言い方が正しいかもしれないですけど。

Huluもそうですが、こういう会社はテレビ局にお金を払って、例えばキムタクのドラマを買って、月額何ドルかで提供してマネタイズをしています。

ここで言いたいことは、当たり前かしれないですが、そういう会社が「自分たちでコンテンツをつくっちゃおうぜ」ということになってきている。実際それを世の中に配信して、しかもエミー賞まで取った。

こういうように、多くのサービスが変わってきていますね。Huluを見ている人も多いのでわかりやすいと思うんですけど、もちろんHuluも自分たちでコンテンツをつくっています。

日本って3年ぐらい遅れてアメリカの情報が来ると言われているんですけど、今、日本のHuluは吉本の芸人を使って動画をつくっていたり、自分たちだけのコンテンツをつくっていっているんです。

「Huluだからつくるんでしょう」みたいなことをたまに言われるんですけど、それこそ、皆さん、ECを買っているじゃないですか。Amazonや楽天を使ってる人も多いと思いますけど、このあいだAmazonがレーベルを立ち上げたというニュースもその一環で、Amazonはゴールデングローブ賞みたいなものをつくろうとしています。

映像配信に関係しているとかではなく、とにかく、今海外ではコンテンツをつくることに対して注力されていますし、その結果、プラットホームは自分たちでコンテンツをつくるという形態になっているというのが、今のアメリカの考え方ですね。

YouTubeより2日早く見れる「Vessel」

海外の人はYouTube以外にも動画サイトを使っていて、今何を使っているかというと、「Vessel」というサービスで、これはおもしろいです。

わかりやすく言うと、ヒカキンがいるとすると、Vesselがヒカキンに「あなたの動画、2日早くうちに出してくれませんか?」と言うわけです。「えっ、無料で見れるYouTubeの動画を2日早くVesselにだせばいいんですか?」「そうです」「その2日分、早く見たいユーザーからお金をもらいます」と、こういう仕組みです。

ユニバーサルとかの音楽レーベルもそうですけれども、このVesselに自分たちのコンテンツを出すところが増えています。3日から1カ月の間独占して「うちのほうが早く見れますぜ」とやることで、ユーザーからすると「今まで見ていたコンテンツが、Vesselじゃないと見れなくなる。それはちょっとお金を払ってでも見たいよね」となるんですね。

Vesselとしては、それをヒカキンとかのクリエイターにお金で返してあげるわけです。しかもYouTubeよりいい料率で返すんです。

ゲーム実況で言うと、「Twitch」とかですね。これはライブのゲーム配信のプラットホームなんですけど、今この瞬間にゲームしているところを、みんなで見たりするんです。YouTubeはそのあと、アーカイブされます。日本でいうとニコニコ動画とかを想像していただければいいと思います。

こういったサービスが、今めっちゃ広がってきています。それから、日本だとオリコンがわかりやすいと思うんですが、海外だとビルボードというのが音楽チャートの一つの指標になっています。そのビルボードの中に、2013年ぐらいからはYouTubeの再生回数が組み込まれています。

それこそAKBじゃないですけど、握手券があれば、一人の人が何枚もCDを買うわけですよね。それに対して「でもそれって本当にコンテンツの評価なの?」という疑問もあると思うんですけど、海外ではネットで何回見られたというのもチャートに反映させたりして、非常に進んでいると思います。

海外における動画広告の事例

その一環で、企業さんがネット動画に対してお金を出稿することが増えているので、ここからは動画をふんだんに使ってきたいなと思っています。

たとえばネットの広告協会みたいな人たちが、訴えかけるのに動画を使ったりしています。これは動画を見てもらったほうが早いと思います。

鎌田:見てわかるとおり、簡単に言うと「差別はあかんよ」ということです。「骨になったらみんな一緒なんじゃないですか?」ということを、ネット動画で配信しています。

本当はもっとたくさん見てもらいたいんですけど、例えばこれはVOLVOのネット動画で、YouTubeでは再生回数が7,800万回になっています。

この中の何人かは見たことがあるかもしれないですが、トラックは細かい動きができないと思われているけど、トラックとトラックの間で人間が足を伸ばして突っ張ったまま、長い距離を走っているんですよね。「これだけ精密な動きができるものが、私たちの手によってつくられました」というPRの動画になっています。

車のメーカーさんはこういうのを最初にやることが多くて、HYUNDAIのつくった、国際宇宙ステーションにいるお父さんに向かって娘がまさかのメッセージを書く動画は、もう5,000万回ぐらい回っていたりもします。

こんな感じで、去年ぐらいから企業さんがネットで動画広告を使って宣伝をするのがすごい流行ってきています。

もう一個だけ事例を紹介します。

鎌田:個人的にはピーッの部分が何を言っているのか、すごい気になるんですけど(笑)。この動画は元々テレビのCMだったんですけど、それだけじゃなくてネットやろうということで出したら話題になった動画ですね。

これからはコンテンツがメディアになる時代

動画、動画と言っていますけど、皆さん、BuzzFeedというサイトを知っているんじゃないかなと思います。この会社は確か2006年ぐらいからの会社で、みなさん「バイラルメディア」という言葉を聞く機会も多いんじゃないかなと思いますけど、このサイトの数字が2013年と2014年でドカンと変わっているんですね。

これは再生回数ですけど、サブスクライバーという登録者数が100万人から900万人ぐらいに増えています。中でも有名なのが、犬にタランチュラのぬいぐるみを持たせてドッキリを仕掛けまくる動画で、これは全世界で1億回以上回っています。

ナイキとかもそうですけど、ネットの動画はもちろん、動画コンテンツ自体が非常に価値のあるものなので、それに付随してビジネスが生まれちゃうよ、というようなことをお伝えしたいと思います。

海外は、本当にひとつ動画をつくるだけじゃなく、「つくった動画をこうしましょう」とか、「視聴者が見たデータをさらにこういうように使いましょう」ということをする会社が1,800ぐらいあるらしいんです。それぐらい、動画コンテンツというものが重宝していますし、そこから付随してビジネスが生まれているのが現状のトレンドになっております。

日本だとちょっと先なのかもしれないですけど、海外のケーブルテレビでは、CMもパーソナライズして配信して、Aさんが見たらこういうCM、Bさんが見たら別のCMみたいな形で、リターゲティングじゃないですけど、その人にとって最適なCMが、近々テレビでも流されるんじゃないかなという状況です。

ちょっとおさらいとして、先ほど出てきましたけれども、テレビよりもスマホなんです。よく言っているんですけど「バナー広告なんてもう終わっていて、当たり前のように動画広告ですよね」ということをお伝えさせていただいています。

さらに言うとしたら、プラットホームなんて本当はどこでもよくて「これからはコンテンツがメディアになる時代ですよね」ということを、よくセミナーでお話させていただいています。

確かに動画プラットホームとしてはYouTubeが今一番素晴らしいものだと思いますけど、それって結局、皆さんのコンテンツの力があるから成り立っているものだということがお伝えしたかったことであります。

アメリカのティーンの間ではハリウッドセレブよりもYouTuberが人気

三つ目です。そんな市場背景を踏まえて、そんな中で活躍しているクリエイターの紹介をしたいと思います。

まずもう一回、YouTuberはどれくらいすごいかを皆さんに見ていただきたいんですけど、これはアメリカの「Variety」というメディアが13歳から18歳の人たちに「誰が好きですか?」というアンケートをとった結果です。

聞いてみると、1、2、3、4、5番目まで、全員YouTuberなんです。これを出すと「おかしくない?」ということを言われるんですけど、14位がジョニー・デップ、20位がレオナルド・ディカプリオといった中で、上位がYouTuber。

当然、若者なのでYouTubeを見ている時間が多いかもしれないですけど、アメリカではあたりまえのようにこういうふうになっています。

何人か紹介していくと、例えばFreddie Wongという人。詳しくは検索してもらいたいと思いますけど、29歳で眼鏡の、直接会ったときはちょっとぽっちゃり系で、この人はなんなんだろうみたいな感じがあったんですけど、YouTubeを代表するトップクリエイターの一人です。

もちろん動画もつくりますけれども俳優とか、映画監督とか、ミュージシャンとか、VFXとか、多彩な技術を使って動画をつくったりしています。例えばリアルマリオカートの動画をつくったりしていて、これも実際に動画を見てみましょう。

鎌田:こんな感じで、この技術が認められていろんな映画作品をつくったり、最近だと、バトルフィールドというFPSのゲームの映像をつくったりしています。

でも出身はもちろんYouTubeです。先ほどのマリオカート動画で「お前何?」みたいな形で認められて、今ポンポンお仕事がある。仕事があるって言っても、多分仕事を求めてもいないと思うんですけれども、彼のように活躍の場をYouTubeの外に広げている人がいます。

クオリティの低いパロディ動画でブレイクしたSmosh

次はSmosh。日本の人はほとんど海外のクリエイターを知らないと思うんですけど、実は海外の人が日本のマリオカートとかを紹介するので、日本の商品が勝手に海外で知られていたりするんですよね。

余談ですけど、漫画の『涼宮ハルヒの憂鬱』が海外でブレイクしているのは、誰かが勝手に翻訳を付けて、勝手にYouTubeにアップしたのがきっかけだったりします。

Smoshという有名な2人がつくっているコンテンツは「ポケモン・イン・リアルライフ』というもので、再生回数4,400万回という、狂ったような再生回数です。じゃあすごくクオリティが高いのかなというと、これはちょっと違っているので、見てみましょう。

鎌田:驚くほどのモンスターのクオリティの低さ(笑)。「そこは映像にしなかったんだ」と思いながらでも、たくさんの人に楽しまれています。

Michelle Phanという28歳のYouTuberがこの間日本にも来ていましたけれども、彼女は今多分、全世界でNo1の女性YouTuberです。これも有名な動画なんですけど、レディ・ガガの音楽を使いながら「Bad Romance」風のメイクをしたり。

彼女の場合はビジネスも立ち上げるんですね。ICONと呼ばれる、女性が雑誌で見るような物事を全て動画で届けていくことをやっていたり。このあいだ日本に来たのは、自分でプロデュースした「エム」というメイクブランドのプロモーションだったり。

日本だとサブスクリプションの化粧品って少ないんですけど、海外だと月に1,000円払うと毎月試供品とかが送られてくるサービスが「Birchbox」とかいろいろあるんです。

彼女は「イプシー」という化粧品のサブスクリプションサービスをリリースして、年商142億円とか。

意味不明なのは、元々有名だった個人のクリエイターがレブロンとかランコムとか、女性の化粧品メーカーさんとタイアップして化粧品をつくったり、そこから自分のブランドを立ち上げたりしています。

ミシェル・オバマと一緒になにかをしたり、それぐらいYouTuberって、僕がヒカキンに久しぶりにあったときに思っていた偏見は全然違っていて、本当に憧れるべき職業に変わっていっていると言えます。

そこに富と名声がどっちもついてきていないかと言うと、ちゃんとお金もついてきているし、それで生活するということが当たり前のようになってきているんです。

YouTuberにとって顔出しは必須ではない

これはアメリカの一例ですけれど「車に乗りながらスマホを見ちゃ駄目ですよ」という当たり前のようなことを広告で配信していきたいといって、アメリカ政府がYouTuberに依頼をするんですね。

どこかの制作会社とかじゃなくて、国が認めている。僕たちも内閣府とか県庁とか、そういう固いところからも仕事をいただいたりしているので、「YouTuberだからね……」ということは、もうなくなっていることがわかるんじゃないかなと思います。

いろんな話が出てますけど、海外の事例ばっかりだし、やっぱり海外の話でしょ、とたいがいの人は思っていると思います。ここからは、うちの会社の事例をお話していきたいなと思っています。

先ほど、冒頭お話させていただいたように、いろいろなことができるクリエイターがいます。パックをしたりするビューティー系なクリエイターがいたり、ゲーム実況をしたり、おもちゃをウェブで紹介する人がいたり、マルチなクレイターがうちには多数存在しています。

ただし、顔を出さなきゃいけないとか、そういうわけではないんです。さっきまでの話をしていると、「ビジュアルのいい人が顔を出して有名になればいいんじゃない?」とよく言われます。

でも、違うんです。普通に手しか出てこない人だっている。手すら出さない人もいます。

先ほど出てきたMichelle Phanがすごいなんて言っていましたけれど、Michelle Phanより全然すごいです。こういうチャンネルが普通に存在している。

たこらいすさんという人もいます。クリエイターさんってなぜかこういう変な名前を付けちゃいますよね。ヒカキンも言われてみれば変な名前なんですけど。

この人はマインクラフトという、権利フリーでYouTubeで実況していいゲームのゲーム実況をしているんですが、自分の声すら出したくなくて、読み上げソフトで実況をしています。本当に自分の情報をYouTubeに出すのが嫌なんですね。

PockySweetsという人はゲーム実況をしている学生です。高校の担任の先生が「将来どこで働きたいですか?」と聞いても、「僕はどこにも行かずにYouTuberになるんで大丈夫です」みたいな(笑)。

でも、そんなことが当たり前のように行われている。別に顔を出さなくても成立しているYouTuberはたくさんいます、ということが言いたいことであります。