32歳はもうおじさん?

坪田朋氏(以下、坪田):各社のデザイン部門の役割りについて、ちょっと話が堅くなってるんですけれど。いきなり話飛ぶんですけど、ねじさんっていつもどんな感じでデザイン考えてるんですか?

佐藤ねじ氏(以下、佐藤):今、(それまでしていた役割の話を)用意してて……。

(会場笑)

坪田:すみません(笑)。

佐藤:デザインをどう考えているかですか?

坪田:カヤックさんって個人プレイヤーが多いかなと思うんです。

佐藤:そうですね。

坪田:組織としてカルチャーを作っている部分と、僕の想像だと活躍できるフィールドを会社で用意して、個人プレイヤーが皆勝手に過ごしてるな、みたいな感じなんですけど、どんなふうに過ごされてるんですか?

佐藤:そうですね。その話の前に、僕32才なんですが、どこまでおじさんかがさっきから気になってたんですけど……。

坪田:確かに。

赤坂幸雄氏(以下、赤坂):小さい頃ドラゴンボール見て育ちました?

佐藤:育ちましたね。

赤坂:じゃあ、おじさんですね(笑)。

佐藤:だいぶ広いですけど。今、どこからどこまでがおじさんだろうと思って、頭がね。

坪田:僕ももうすぐ35歳なんですけど、もうおじさんってことらしいんですよ。最近新卒が入ってくると、22とかじゃないですか。インターンとか20とかなんで、「俺もうそんな年齢なの?」みたいな、結構衝撃なんですよね。

最近おじさんと自虐的に呼んでるんですけど、一番最年少なおじさん(笑)として、お願いします。

身の回りのことすべてが「デザイン」

佐藤:デザインのこと考えていかなきゃ。そうですね。村越さんとか僕もよくWebでウォッチしてたんで、普通にメモしてたんですけど、「対話が大切」って、その通りだなと(笑)。あまりそういうこと、教えたことあったのかな。教えたっけな、周りに。

僕はわりとデザインを広めに考えるほうではありまして、結構都合の良い言葉で使ってるんですけど。例えば、さっきのおじさんの話もですけど、「おじさんとはなんだ?」もそう(デザイン)だし。

会議をやってて、会議も一個のデザインですね。会議のありかたとか、机もそうだし、会議の秒数設定とか分数とか。結構わりと全部をデザインと捉えて考えていくところはありまして。それをちょっと変なふうに解釈するっていうのはあるんですけど。

だから今年は、例えば採用の方法をどういうふうにしていくかというのもあるし、会議のあり方を変えようと、デザインレビューするそのレビュー会をデザインし直そう、みたいな。格好よく言うとですね。

会議って机に座って、みんなパソコン開いてカチャカチャ……、あのカチャカチャは本当にこの会議のメモとってるのかどうかが怪しいカチャカチャいっぱいあるじゃないですか。

坪田:確かに。今日来てくれてる人もカチャカチャしてますからね、みんな(笑)。

佐藤:そうするとやっぱり集中できなくなるので、そういうことができない方法にしようっていって、例えばパソコンをずらっと机に一列に並べて、みんなが立って展覧会方式っていうんですかね、順番に説明受けていくんじゃなくて、みんなでだらだら見ながらやっていったほうが、ちゃんとした細かいレビューチェックになるとか、そういうことをやったりとか。

なんかね、レビューチェックってちゃんとやると怖い感じになって。前にグッドパッチさんで1回お話聞いて、レビューをちゃんと毎朝やってく、と。毎週月曜日でした?

村越悟氏(以下、村越):そうですね、毎朝。

佐藤:そんな話聞いたりして、そこから「レビューのあり方を考える」っていうのがあるんだなと思って。今まではレビュー会をデザインの領域として考えてなかったんですけど、それを聞いてレビューも1個の領域なんだなみたいに、そんな感じで捉えてます。答えになってますかね?

各社のレビュー文化はどう違う?

坪田:なってます。確かにレビューって各社の文化出るところですね。カヤックさんは、今みたいなスタイルだし。グッドパッチさんは全社でやってるんですよね?

村越:そうですね、毎週月曜日の朝、全社で全プロジェクトを隔週で見ていくみたいなことやってます。

坪田:これはすごいなと思います。うちはあまりレビューしないです。実は。みんな個人やチームで頑張って作って承認、みたいな、パーミッションレスの今日話したスタイルです。

デザイナー間で言うとSlackというチャットツールがあるんですけど、そこにばんばんと画像貼っていってもらって、テキストでクイックで返信していくみたいなスタイルでやってるので、正式にレビュー会みたいのはあんまり設けないですね。早く作ってユーザーに触ってもらってチューニングして行けばいいじゃん、みたいなスタイルが多いし好きです。

DMMさんとかどうですか?

赤坂:全く同じで、うちもいろんな事業やってるので、各サービスにデザイナーが1人、2人っていうような担当でやってるんですね。

なので「自分が担当しているサービスはこれだ」「自分がこのサービスを大きくしていくんだ」っていうふうに責任感を持たせるにはすごく良いんですけれども、相談相手が非常に少ない。

小チームが沢山あって、その中にデレクター、システム、デザイナー、事業の人だったり、マーケッターだったりっていうのが存在して、それぞれが独立して動いていくようなかたちではあるんですけれども、今そのかたちを変えていきたいなと思って。

で、そう思ったのが、グッドパッチの村越さんの「ちゃんとレビューしてるんだよ」という話。「あ、うちもパクろうかな」と思って。

こうやって外に出るといろんな会社さんのやり方だったり、今こういうこと試してるけど、こんな失敗しちゃったとか、そういったところも聞けるってこともあって、僕自身もネットワークを広げていきたいなと思ってますし、先ほどの南場さんもネットワークを広げるべきだということで、本当にその通りだと思ってます。

僕自身もDMMのデザイン部の体制だったりとか、例えばレビュー会を作っていこうだとか、そういうふうに考えが変わっていくので。

みんなもこの先どこかの会社に入って組織の中でやるってなったときにも、自分が組織を作るひとりだと思って「もっとこうすべきだ」「ああすべきだ」「DeNAさんこんなことやってるんだって」、みたいなふうに言っても良いですし。

自分がこうしたら良いんじゃないかっていうことは、みんなそれぞれ考えて、ちょっとでも良くするためにいろいろと意見を発信するということをしていってくれると、正直ここに座ってる僕らが結構楽できるっていうふうに繋がっていきます。

(会場笑)

坪田:そうなっていってほしいですよね。そして思ったより時間がないことがわかったので、次にいってもいいですかね?(笑) 赤坂さん、3時間くらい喋っちゃうので(笑)。

デザイナーのキャリアはどう作る?

次のスライドは「キャリア醸成の仕組み/文化」。これは自分のキャリアというより、会社としてキャリアをどう置いてるかみたいな話だと思うんですけれど、デザイナー集団として今第一線で皆活躍している感じのグッドパッチさんどうですか? 

村越:そうですね。ちょうど組織的な課題がこの部分に今来てるかなと思っていて、キャリア醸成、デザイナーのキャリアってどうやって作っていったら良いのか、どうやってその人を育成していったら良いのかという話があって。

今日LT(ライトニングトーク)で喋ってもらった4人の話を聞いてると、結局みんな自分で機会を作り出すことをしていたり、何かしら自分から仕事をとりに行って、その中でやっていったことが結果として広がっていって、自分の視座もあがって、今第一線で活躍してる若手になっていたりって感じなんですけど。

そういう人を再現性高く育てていくためには、どうしたら良いかっていうのをまさに今考えていて。

今日、南場さんの話聞いてたときに、モチベーションの源泉みたいな話があったと思うんですけれど。そういうところをメンバー一人ひとり把握して、仕事、会社人としてではなくて、個人として一番テンションあがるポイントに、より近しい仕事がきたら、そういうものをあててあげて、より自発性が出る環境を作っていったりとか。

そういう配置の適正化をやっていくことで、本人のスキル以上のパフォーマンスが出る状況を作っていってあげたり、そこから出た結果もちゃんと会社として評価をしていったり。

適正なポジションだったり、役割りにあてていって、そこに更に責任を与えていくところで伸ばしていければいいなあと、今妄想していて、それをこれからかたちにしていく段階ですね。

成長を続ける人に周囲も導かれる

坪田:素晴らしいですね。もう100点満点の答えみたいな感じで(笑)。グッドパッチのメンバーは本当に皆モチベーション高いですよね。この前たまたまグッドパッチの、のがちゃんっていうデザイナーが上げていた「グッドパッチで働くべきたった2つの理由」(のスライド)を見たんですけど、感動しましたね。

村越:のがちゃんは本当にすごくて、自分から仕事とりに来るし、ぎらつき感がやばいです、本当に。

坪田:肉食なんだ(笑)。

村越:超肉食ですね。「グッドパッチ一番のデザイナーに早くなるんで、どんどんやらせてください」みたいな感じ、で自分からとりに来て、かつそれをかなり精度高くこなしていくので。

その結果自分自身も成長していくし、良い循環がまわっていってるなと思っていて、その成長スピードに僕自身もすごく刺激もらったりしてますね。

坪田:じゃあやっぱりそういうモチベーションのあがる仕事をちゃんとアサインしたり、マネジメントしてるって感じなんですね。

村越:というところに持っていきたいなと思っていて。今は全部が全部そうだとは限らなかったりとかするので、なるべくそこの精度を上げていきたいと。個々人が変なところでモチベーションが下がったりテンションが下がったりして、自分本来のパフォーマンス出せないというのが結構不幸だと思ってるので。

そこのギャップを極力少なくしてあげて、のびのび仕事ができる状況を与えたときに出す成果をちゃんと評価したい、という感じですね。

坪田:いいですね。こんなまともなことをやってる会社、そんなにないんじゃないかなと思うんですけど。

カヤックの仕事は挙手制で決まる

ちなみに、逆にカヤックさんって、ちょっとゆるいみたいな感じで申し訳ないですけど(笑)。

佐藤:落ちた(笑)。

坪田:めっちゃ自由な感じじゃないですか。話しを聞く限り、結構社内は破天荒なイメージを勝手に持ってるんですけど、どうやって案件を決めてるんですか?

佐藤:またこれテーマとちょっと違うんですけど(笑)。

坪田:違って申し訳ないです(笑)。俺が聞きたいことを聞いてる感じになってて、すみません(笑)。

佐藤:案件は、僕はクライアントワークなんですけど。ほかにゲームチームとかもあってそれは結構長い単位でやるんですけど、クライアントワークは一応立候補制になってて、結構ゆるいですよ。例えば、猫の案件がきたら「私、猫好きです」みたいな人が集まるみたいな。

一応、村越さん的なものもちょっと注ぐんですけど、「今君はUIやったことないし、ここでやっておこうぜ」「この案件サイズ小さいから、ちゃんと全部やれるから良いよ」ってことはうっすらあるんですけど、どちらかというと立候補制です。意外におもしろいですよ。

坪田:じゃあ、案件入ってきたら、「こんなの入ってきたぞ」とシェアがあって、「私やりたいです」みたいに?

佐藤:そうそう、毎週デザイナーだったらアサイン会議があって、そこでもちろんリソースとかありますね。それ以外のところでいくと、相性とか、しょうもないのもありますけどね、佐藤だから佐藤全員集めてみたいな(笑)、たぶん意味ないですけど(笑)。

坪田:それマジ意味ないですね(笑)。でもそこから生まれる何かがあるんですね、きっと。

佐藤:あとはエンタメ系のコンテンツがカヤックは多いので。ちょっと前の渋谷で『バケモノの子』展、サイネージとかああいうのを作るときには細田守さんが大好きな人が集まるとか、そういうのはありますね。はい。

坪田:うちもちょっと似てるところがあるかもしれないですけど、僕のマネジメントスタイルとして、好きな仕事をしないとメンバーのモチベーションも上がらないし、技術も学べないと思っていて、基本は立候補制というか、「こういうのやりたいです」みたいな声があがってきたら、限りなくそれに近づけるようにアサインをする事が多いです。

目標にコミットしてあげることの大切さ

いきなり話がずれちゃったんですけど、すみません。元のキャリア醸成の仕組みでいうと、ねじさんどうですか?

佐藤:良いんですか、僕が答えて?

坪田:ああ、もう全然。

佐藤:キャリア醸成。すごく思うのは、僕がいつも意識してるのは、目標にコミットしてあげるということですね。目標のディレクションというか。やっぱりいろいろブレるじゃないですか。今いろんなことに情報が多すぎるので、集中がブレるんですけれど、「今年はこれを絶対」「12月31日のときにこれになってる」みたいな。

さっきののがちゃんさん、グッドパッチで一番になるみたいのはすごい素晴らしいし、そういうモチベーションが高い人は良いんですけど、そうじゃない人もいますよね。あと、欲張りな人とか。

UI全部覚えて、アフターエフェクトとか映像も全部覚えて、となると、大体何もできないまま終わりになるんで。そこにコミットしてあげるということが、結構大事かと思いますね。

坪田:確かに。

佐藤:間違いないです。はい。

坪田:さっきの、わりえもんさん(割石裕太氏)の話ではないですけれども、何かやると決めて発信して有言実行するみたいなスタイルも、自分を追い込む意味では、結構大事だったりしますよね。

佐藤:わーりーは、元々、カヤックなので、まさにずっと目標面談をやっていて、「外にもっと出たほうがいい」みたいな話をしたよね。前に確か。しましたよね?

客席の割石裕太氏:はい。

佐藤:で、彼はカヤックを辞めて、Fablicに行っていて、それは、あまりネガじゃないんですよ。その彼の目標に沿っていく時に外に出ていって、その先にそういうのがある。だから、僕としては1個のポートフォリオというか、そういう結果になってすごくいいなと思いますし。

坪田:そうですね。僕、わりえもんさんと、あんまり面識なかったんですけれども。半年ぐらい前から、やたらネット上で、アイコンを見かけるようになって。大体デザインのイベントで見かける印象です。

なんかこうスマイルマークみたいなアイコンのシールをみんな貼っていたり、うちの若いデザイナー達もなんかやたら、わりえもんの話してるんですよ。今日、2回目ぐらいなんですけれども素晴らしい方だなと思いました。

その土台をカヤックで作って、実際にチャレンジしているみたいな感じなんですね。

佐藤:多分みんな、1月1日とかに、何か書くじゃないですか。何か思ったりするんだけれども。その時の思いを本当に12月31日まで保てるかとか、そのためにどういうふうにタスク分解するかみたいな話を、サポートするというか、話せるのは1つの大事なことかなと思いました。

坪田:そうですよね。特に、僕よく言うんですけれども、ネットの技術って2年に一度ぐらいのスパンで大きく変わっていくんですよね。UIデザインは、元々プロダクトデザインのデザイン作業と近しいところがあるので、今もそれに近いプロトタイプ開発をしています。

Web業界の3年前はUIデザインという言葉はあまり言われていなかったので、このタイミングで自分のスタイルを変えて、発信して、今年はこれを頑張るぞみたいな宣言やPRを、若い子にはもっとしていって欲しいと思います。

自分の軸を時代に合わせて変えていくスタイルが、大事だと思うので、若い子はどんどん発信していくといいですよ。わりえもん並みに自分のアイコン外に出していくぐらいの積極性があって良いかなと思います。すみません、何かダシに使っちゃって(笑)。

制作協力:VoXT