大学1年生でも受けられる、ユニリーバ・ジャパンの新卒採用

中嶋汰朗氏(以下、中嶋):島田さんはスタートアップの環境ではまったくないと思います。今いらっしゃる環境の採用やチーム、パフォーマンスに対しての考え方とか、ベーシックな部分をお伺いできたらと思います。

島田由香氏(以下、島田):そうですね。スタートアップに近い切り口だと、ほぼ関係ないかもしれないですね。ただ、私個人という意味ではいろんな知り合いがいて、友人が起業したとかそういう相談が来ることはあります。すべての実情を知っているわけではないですが、人事の観点からわかるところもあるかなと。

私がいる場で採用という切り口だと、新卒採用ですね。それともう一つは中途採用で、共通しているところと違うところがあります。私自身がプロセスにすごく関わるのは、新卒採用です。

中嶋:なるほど。

島田:ご存じかもしれないですけど、私たちは通年採用を3年ぐらい前からやっていまして。大学1年生でも受けられるんですね。本当はそれを高校生ぐらいまで下げたいと思っていて。

中嶋:さらに(下げる)。

島田:はい、さらに。「青田買い」と言う人もいるんですが、ずっと前から今の就職活動がバカみたいだと思っているし、企業の大小ではなくいかに自分のやりたいことや興味・関心があることに触れていくか。その気づきを、どれだけ若い時に得るかがすごく大切だと思っています。これは教育にも関わってくるんですけれども、企業にはその役割があると思うんですね。

ユニリーバは日本だと530人程度で、大きくないです。中小企業の分類です。でも全世界で17万人いて、190ヶ国でビジネスをしている。ほとんど地球というプラットフォームで……。

中嶋:地球がプラットフォームって言葉、今回で一番大きい言葉ですね。IVSの中で(笑)。

島田:本当ですか、やったー。でも、本当にそうなんですよ。だから今回のコロナでも本当に勉強になったし、これだけ地球規模でカバーしている会社だと、こんなことまで考えなきゃいけないのかとか。グローバルから見たら17万人いる大企業でも、日本だと中小企業。そういう観点から、人事とか経営の視点でお話できたらうれしいと思います。

中嶋:ありがとうございます。まさにグローバル企業の代表格だとは思うんですけれども。スタートアップでは自分たちが成長していくとかプロダクトを成長させていく上で、なかなかダイバーシティというものを日々意識してやれているかというと、そうじゃない部分があると思います。

だけどグローバルで見たらそれが当たり前になっていると最初の臣さんのお話もありましたけれども、なぜそうあるべきなのかについて、具体的なイメージが湧くかたちでみなさんに落とせたらいいなと思っています。

意思決定の精度を上げるため必要な、ダイバーシティ

中嶋:我々も採用をしていく中で、ついつい近いところにいる人たちの中で探し回っているんですけれども、会社の規模が大きくなると多様化していくので、意識せざるを得なくなる瞬間が来るとは思います。

ただ一方で、今から気をつけておく、知っておくことによって中長期で見た時に会社の戦力になっていく部分はけっこうあるのかなと。グローバルで戦える企業になるには、もともとそういう事業を展開されているわけなんですけれども、そこにおける「採用力の違い」みたいなものは大きくありますかね。臣さんどうでしょうか? 

村上臣氏(以下、村上):そうですね。まず日本のIT企業って、意外とドメドメなんですよね。

中嶋:ドメドメですよね(笑)。

村上:チームが日本人だけで、かつ日本語のサービスしかやっていないところがほとんどという意味だと、製造業やメーカーのほうが海外売上比率が20~30パーセントはある状況なので。地方の製造業のほうが、東京のIT企業よりもグローバル化が進んでいるのが、ファクトとしてあります。

そう考えると、なぜダイバーシティがチームに必要なのかは、その経営からすると意思決定の精度を上げることだと思うんですよね。

あとは多様な視点。日本であっても男女比って半々なわけですよ。それなのに、男性だけで意思決定された場合、例えばコンシューマー向けのサービスだと非常にまずいですよね。異なる視点がないと。

なので、いろんな視点が合わさって議論することで精度も上がっていくし、質が高くなっていくと思うんですよ。いろんな多様性のあるチームを作ることこそが、経営力が上がること。

中嶋:なるほど。それが戦力になってくるんだから、最初からそこに対して会社として向き合う姿勢が求められると。それはそうですよね。

村上:そうです。だから「グローバルいくぞー!」と言っているスタートアップは、チームがグローバル対応しているのかという……。

中嶋:(笑)。そもそもそこからだよみたいな。

村上:日本人だけでやっていたら「え、できるの?」って普通に思うじゃないですか。なのでやっぱりそういう視点ですよね。

中嶋:逆にそういう人がメンバーにいるからこそ、市場への理解もより深まるし広がるというところですよね。

村上:おっしゃる通りだと思います。

上場会社として社会に認められ、成長を続けるには

中嶋:志水さんは3年という短い期間の中でIPOまでされて。3年で上場というのはかなり大変ですけれども、代表として会社を引っ張られる中で、どういった採用をこれまでされてきたのか。

今だから「もう少しこうできた」というポイントも正直あるのかなと思います。その辺のお話をお聞かせいただければと思います。

志水雄一郎氏(以下、志水):はい。確かに設立から3年半でIPOしているんですけど、事業計画からすると2年半から3年ぐらいでIPOしたいと思ってたんですよ。

村上:早い!(笑)。

志水:そのスケジュールに乗って進めていたんですけれども、自分たちが「IPOしよう。IPO後も事業を伸ばしていこう」と思った時に、実はいろんなハードシングスもあって。

心技体で見ると、最初は技と体が整っていれば、心を成長させていけばいいと思っていたんですけれど。実際いろんなものが進化していってステージが上がっていくと、心の部分が整っていないと前に進まなかったということが実際にあって。それで、心が整えられるチームの組成に取り組んだのが、ちょうど証券会社の中間審査ぐらいですかね。

中嶋:けっこうぎりぎりのタイミングですよね。

志水:はい。そこでやり直したのがありますね。

中嶋:心の部分について、もう少しお伺いしたいと思います。実際にジョブディスクリプションや経歴を見るだけだと、なかなかメンタルや心の部分を見るのは難しいじゃないですか。そこはどう変えられていったんですか。

志水:そうですね。今マーケットにあるスタートアップって、本当にきらびやかなチームが多数あるなと思うんですよね。

中嶋:ありますよね。

志水:本当に優秀なメンバーを集められて、私たちも支えているんですけれども。でも自社がどうだったかと言うと本当に雑草軍団で。でもみなさんと同じようなストーリーを目指したので、やっぱりそこにぶつかるんですよね。雑草軍団のまま行こうとしたから。

中嶋:なるほど。

志水:でも実際に重要なのは、自分たちが上場会社として社会に認められて、その後も成長をし続けて、リンクトインさまやユニリーバさまのような企業体に持っていこうと思った時、そのストーリーを一緒に歩めるメンバーで会社を作らないといけなかったのは事実です。

もちろん今は上場しましたけど、さらに進化するためにはさらに優秀な経営陣を、常勤でも社外でも入れながら進化したいと思っています。

人生を大きく変える「最初の3年の体験」

中嶋:ユニリーバさんにぜひ聞きたいのは、新卒と中途がそれぞれいらっしゃると思います。日本企業だと新卒メインでやられている会社がけっこう多いじゃないですか。

一方で、中途で入ってきた方々には、その中でもしっかり活躍していくところに関してのフォローをされているものなんですか? 

島田:イエスかノーかで言ったら、もちろんイエスですね。ですけど、新卒と中途の採用理由が明確に違うので、育み方にも違いがあります。入ったうえでどうあってほしいか? の部分も違うワケですよね。

新卒採用は、どちらかと言ったら社会に対してのある意味、貢献の部分があると思っていて。学生という活動だけだった方が社会に出る。一挙手一投足が売り上げにつながる、もしくは利益につながる社会人であることを学んでいく過程の中で、どういう経験をして仕事の喜びを得ていくのか。私は最初の3年の体験が人生を大きく変えると思うんですよ。その観点では、私が最初にいたパソナでの体験は、本当に良かったなと思っています。

中嶋:良かったというのは? 

島田:「これやりたい!」と言ったら「やれば」って言われる環境で。「言い出した人がやって」みたいな。日本企業なんですけどちょっとベンチャー気質だったし、いわゆる外資系と似ているんですよ。新入社員だからどうとかないんですね。この仕事をしている1人のプロとして「あなた何したいの?」という。

中途の方はどちらかと言ったら即戦力ですよね。入ってすぐ結果を出すことを期待して採用するので、新卒とは育み方がちょっと違いますよね。

中嶋:採用動機がそもそも違うと。中途は即戦力というお話ですが、我々スタートアップも基本的には中途メインで伸ばされていると思います。逆に言うと、中途で活躍できるために会社としての後押しがあるのか、それとも結果が出ないとバッサリなのか。ここはどうなっているんですか? 

島田:パフォーマンスが出ないとバッサリということはないですね。とはいえ、出ないのに永遠に雇うか? と言ったらそれもないですよね。

中嶋:なるほど。

島田:サポートはすごくしますれども、まだまだ足りていないと思っています。やはりカルチャーやオペレーションのプロセスが企業によって違うし、そこで良しとされるものが企業によってあまりにも違うわけで。やっぱり人間って慣れるのに「3」という数字がすごく大切なんですよ。

最初の3日間、それから最初の3週間、それと3ヶ月です。大統領だってそこら辺を見ますよね。First 90 Daysとか100 Daysとか。

3という数字はマジックナンバーなので、人事としても最初のインダクションとか、サポートする意味では、その辺りに気をつけていますね。もっともっとできるかもしれないですけど。