世界中で金利が低下している背景とは?

佐藤秀哉氏(以下、佐藤):ということで、クラウドサービスを提供している会社さんとそれを基盤にしてサービスを提供している会社さんの変革の糸口を聞かせていただきました。

せっかく松本さんがいらしてますので、逆に金融業界から見て、クラウドが流行して、テクノロジーが進化することによって、どういう企業の変化を期待するのか? また変化した企業を金融業界はどう評価するのか? そのあたりのポイントをお聞かせ願えますか?

松本大氏(以下、松本):今、世界中で金利が低下していますけれども、裏にあるのはクラウドとかの利用によって企業活動するためのコストが下がっている。もしくは下げることが可能であるということがあると思います。おもしろいのは、これは金融の話で恐縮ですけれども、景気がいいときは金利が高いし株価も上がる。だけど今は、金利は低いんだけれども株価は高い。

金利が低いというのはふつう教科書だと景気が悪いと習うんですけれど、金利は低いんですけれども企業収益はすごく高いと。なにが起きているかというと、テクノロジーの利用によって企業活動のコストがすごく下がっている。もしくは下げられる可能性が出ているということだと思うんですよね。

なので、こういう現象が起きている1つの要因だと思うんですけど、逆に言うと、コストを下げるべくテクノロジーを使っている企業は金融市場でも高く評価されて、そういう使い方がされていないところは使っているところに比べて評価が低い。そういう選別が今後起きてくるかと思うんですね。

若干自虐的な話ですけれども、金融業界は株価が低くて、テクノロジー業界は株価が高いんですけれども、あらゆる業界のなかでクラウド的な意味でのテクノロジーの使い方がすごい遅れているのが金融業界だと思うんです。

金融業界自体すごいサーバーを使っているし、テクノロジーにすごい投資はしているんですけれども、クラウドを使ってコストを低くするということに関してはレギュレーションの問題もあって遅れているんです。そんなまだら模様ができているのかなというのは感じます。

金融業界のクラウド事情

佐藤:そういう意味ですと、最近FinTechという単語が流行り言葉になってきていますけど、金融業界そのものがやはりITをもっと積極的に活用すべきだと。

松本:活用すべきなんですけれども、株価の配信ではいろんな銘柄が目に見えない速さで、いろんな株価がつくわけですよね。「板」というんですけれども、その配信はすべてパブリッククラウドでつくってやっているんですよ。

マーケットが忙しい日と暇な日では、5倍くらい違ったりするんですよ。その売買高というかいろんな活動が。あるいは朝と午後でぜんぜん違ったり。明らかにそういう分野というのは、パブリッククラウドは向いていると思うんですよね。キャパシティをこう変えられるというのがどう考えても利用するほうがいいんですけれども。

日本だけじゃないんですけど、規制当局がその顧客情報はどこにあるのかとかですね。あるいは、情報はどこから配信しているのかとか。日本国内なのか外国なのかとかですね。ほとんど意味不明なことを言っていざというときどこにデータがあるかわからないと許可できないとか、本当に理解しているんだろうかということを含めていろんな規制がある、規制しようとしている。

そういうのがあって、金融機関はクラウドの利用が遅れているんですよね。ただこれからはクラウド上でも問題のない業務とそうじゃない業務と分けて、クラウドを使う部分というのは増えてくるとは思うんですよね。

佐藤:これ以上、ご質問を続けていきますと金融庁のなんとかになってきますのでそれは置いときまして。

逆に、最新テクノロジーを使っている会社のほうが積極的に評価されているし、そうすべきだというお話をいただきましたけれども、そういう意味で行きますと、今まで経営者の方とお会いして出資するしないを決めている世界だと思いますけど、これからはCIOですとかそういう方々がどういう考えで自社のテクノロジーを進化させようとしているのかというようなインタビューも必要になってくるということなんですかね?

松本:実際にアメリカではCIOやCTOもすごい投資家からの興味の対象なんですよね。ただ問題はここにもあって、投資活動をしているファンドに対してもテクノロジーの話がわかるかというと、必ずしもわからなかったりするんですよ。そういう意味でもう少し時間がかかりながらもこなれてゆくのかなという気はするんですけどね。

佐藤:なるほど。そうですね。なかなか仔細にわたったお話が多いんですが、専門分野にやっぱりみなさん閉じこもってしまいますので、そこから外に行こうとするとやっぱり壁があると。それは金融業界もそうでしすしIT業界も関係してくるかもしれないということなんですかね。

松本:秋好さんがさっきポケモンGOの話をされてましたが、僕もさっきから始めたんですけど(笑)。ああいうのがそういう壁を変えていくんじゃないかと思うんですけどね。たぶん金融庁の人もポケモンGOやっていると思うんですけど(笑)。いろんなところで実感としてだんだん壁を感じなくなる、ということがこれからもっともっと進むんじゃないかなと思いますけどね。

佐藤:そう考えますか(笑)。ありがとうございます。

日米のクラウド活用の違い

松本さんは世界でも活躍されておられる方やグローバルな視点、一応アメリカ人がおりますのでアメリカ人の視点から今の日本におけるクラウドの活用の度合いとそれが社会にどう影響を与えているか?

ジェイソン・ダニエルソン氏(以下、ジェイソン):合ってます。アメリカ人です。

佐藤:いや、小ネタはいらないから。

ジェイソン:ちょっといるでしょう。

(会場笑)

アメリカでとくにITの企業だとクラウドを使うと非常に成長スピードが速いことが期待できますよね。最近のシリコンバレーでは、ユーザーの数は1ユーザーから何百万・何千万ユーザーまでの時間差を非常に縮めてきています。

これはクラウドのおかげだと思います。必要に応じでサーバーを動的に増やしていったり標準化された技術であれば、サーバーをどうしようと考えなくていいんですね。自分に価値のあるものだけに集中する。

だからポケモンGOを例にすると、使おうとしたらポケモンだけに集中したいですよね。こんなにポケモンが集中するともっとサーバーが必要かなあという話よりも、一番おもしろい現象はどうやったら実現できるかなということに集中したいですね。

それは標準化されたものを使うとわりと早い段階からできます。サーバーだとこれはこうすれば解決できるので、じゃあポケモンはどうしましょうとか。

でも日本では、標準化されたものをそのまま使おうとしない例が多いんですね。テラスカイでしていることに若干触れるかもしれないですど、日本はカスタマイズをやりすぎ!

だから、もうそのままでいいのにSIerを入れてドデカイ案件を入れて一からやり直そうというのは、本当は特別な知識の特別なところだけに絞って、それ以外は自分の得意部門に投資したら、より競争できるんですけど、土台となる解決された一般的な問題をもう1回解決しようというところから始めている企業が多いと思いますね。そういう違いが大きいかな。

佐藤:久しぶりにまじめな話聞いたね。

ジェイソン:週に1回ぐらいまじめな話ししているかな。

(会場笑)

佐藤:うちに来てるのも週1回だよね。

(会場笑)

ジェイソン:合わせました。

佐藤:そうですか(笑)。ということで1つ目のご質問で……。

ライフネット生命は日本の成功例?

松本:ちょっといいですか?

佐藤:どうぞ。

松本:今のジェイソンさんの言われたことで思ったんですが、もともと金融機関って始めるのにすっごいお金が必要だったんです。というのは、全国の駅前に支店がないとビジネスにならかったんです。生命保険会社、証券会社ってだいたい駅前にみんないいビルを持っているんですよ。

それがインターネットができたんで、Web上につくることで一気にコストが低くなった。我々もできるようになった。でも、クラウドってさらにその先にあるんですよね。サーバーを可変で持てるからもっと安くなると。そうなるといろいろ競争する人が入ってくるんで競争も増えてよくなってくるんだと思うんですよね。

佐藤:そうですね。今まで固定でどうしてもかかっていた費用がはがされていって、本当の根幹の部分だけにコストをかけてお金になる。というところに絞ってきているような気がしますね。

ジェイソン:その1つのよい例がライフネット生命だと思いますよね。ちょっと言わせていただきたかっただけなんですけど、今ライフネット生命のCMをやってます。

(会場笑)

でも、もともとの古い知識のいっぱいある会長さんと今の技術をよくわかっている社長さんとの組み合わせ、これはおもしろいですよ。これは日本を変えるやり方だと思います。