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『下流予備軍』刊行記念トーク・セッション(全7記事)

お給料は「苦しいこと」の対価なのか? 商社→タレントへ転向した堀口ミイナ氏が、好きなことを仕事にする理由

2017年9月19日、文禄堂高円寺店にて、書籍『下流予備軍』刊行記念のトークセッションが開催されました。登場したのは、著者で公認会計士の森井じゅん氏と、フリーアナウンサーの天明麻衣子氏。そして後半からは、商社からタレントへ転向した堀口ミイナ氏もゲストに迎えて、格差や女性の社会進出など、日本が抱える社会問題について、熱いトークを繰り広げました。単なる貧困とは異なる「下流予備軍」とは一体なにか? かつての一億総中流社会から変わりつつある、日本の「今」を読み解きます。

ひとりではトイレにも行けない大企業

堀口ミイナ氏(以下、堀口):大手の会社で、机の上に飲み物を置きながら仕事をしちゃいけないっていう謎の部署が(笑)。

天明麻衣子氏(以下、天明):なんでダメなんですか?

堀口:そういうのが嫌いな部長が1人いて、みたいな。たぶんそういう話だと思うんですけど。

(一同笑)

森井じゅん氏(以下、森井):機器関連の物がある所で水こぼしちゃいけないとか。パソコンがあるからとか聞いたりしますね。

堀口:自分が1日の大半を過ごす場所が、飲みたいときに物が飲めて、行きたいときにトイレも行けないような職場ではやってられない。でも大企業ってわりとそういうのがある。私も実際トイレに行くタイミングは相当見計らってました。

気にする人は気にするし、周りからどう見られるかみたいな。トイレ行き過ぎじゃないか、みたいな。けっこうそれでみんなで悩んで(笑)。

天明:意外とみんなに話してみれば同じことを思ってる人は何人も。

堀口:そうですね。それも、そのとおりだと思います。

働き方改革と終わらない仕事のギャップ

天明:どうですか、大手広告代理店の社員が自殺した後に働き方改革というのは一気に盛り上がったと思うんですけど、なにか実際に働き方について相談があったりとか(ありますか?)。

森井:働き方についてはありますね。企業側から質問されることも、もちろん働いてる方からもあるんですけど。

やはり企業側としては、残業はさせたらちょっとまずいなという雰囲気がでてきてるのは確かです。でも、正直組織の中にいる以上、仕事量というのは変わってないわけですよね。持ち帰って仕事をしていたり、みんなが持ち帰っているから、私も持ち帰らなきゃ、になったりとか、そういったことも起こっていて。

なにかが劇的に変わって、働き方がどれだけ変わったの? というと、正直あまり変わっているとは思えない状況がありますね。一斉消灯します、と言っても、じゃあそこで本当に仕事が終わっているか? と言ったらそうでもない、というのが現状なので。なんとも言えないところ。

天明:実際のところそれまで終わってなかった仕事が終わるわけがないですものね。量が変わっていないとすると。

森井:そうなんです。あと、大手代理店のお話ですが、もちろんお客さんあっての仕事だったりするので、お客さんから22時ギリギリに「明日までに仕上げてよ」って言われたら、やらなきゃとか。そういった今までやってきたことがいきなり「できなくなります」って言うのはやはり難しいところはありますよね。どういう方向でやっていくか、っていうのはすごく難しいところだと思います。

一般にも、そんな大手じゃなくても、小さいところからなんですけど。どっちかと言うと過剰サービスになっているところが日本ってやはり大きいと思うんですね。例えば、スーパーひとつ、コンビニのレジひとつそうなんですけど。

アメリカとかだと「next!」とか言って(笑)。そんなに丁寧な対応じゃないんですよ。待たせて当たり前だし、いきなり携帯電話で話し始めちゃったりとか、かなり雑だったり。日本はすごくサービスレベルが高くて。

堀口:すごく素晴らしいけど息苦しいですよね。

森井:そこまで上から指導されているんだなとか。指導の現場とかも見たことあるんですけど、みなさん声出し合ってやってらっしゃったり。低賃金でどこまでレベルを求めるのかっていうのはすごくあると思います。それの大きくなったのが今回の事件であって、どこまで求めるのかっていう……。

「好きなこと」に理由はない

天明:最後に「好きなことをすること」で、これどなたが?

堀口:これ私ですね(笑)。

森井:好きなこと。

天明:これが、堀口さんの理想とする働き方、っていうことなんですか。

堀口:はい。やっぱりたくさんお金をもらっていても、好きではないことを1日10時間とか12時間とかってやっている人が、幸せだったりなにかを積み上げていってるとは私には思えないんですね。少なくともなんとなくそう思ったから4年目で辞めたわけです。

好きか好きじゃないかってある意味自分で決めてないんですよね。決めてますか? 決めてないでしょ、誰も。生まれたときからなぜかわからないけど、これが好きでこれも好きで、でもこれはあまり好きじゃないみたいな。

天明:理由ってないですよね。

堀口:理由ってないです。「なんで好きなんですか?」みたいな。「うーん」ってなんとかひねり出すみたいな。でも本当はそれは頭で考えちゃってるだけのもので、本当に好きな理由っていうのはわからないわけですよ。

お給料は「苦しいことの対価」なのか?

堀口:なんの話がしたかったかだいぶ逸れてしまったんですけど。でもみんな自分で決めてない。それほど深く、自分の幸せに大きく影響する、好きっていうものをもっともっと追求していかないと、絶対幸せにはなれないと思うんです。

だけどみんな仕事は、「楽しいことが仕事であるはずがない」とか、「苦しい思いをするからお金がもらえるんだ」とか、その辺は全部正直、ごめんなさい迷信です。そういうことを言う上司は私にもいました。三菱商事でも、しかも活躍しているわりと尊敬している上司から「いや、大変なことやるからお金もらえるんでしょう」みたいなことを言われたことがある(笑)。

天明:仕事は苦しくて当たり前みたいな感覚ってあります。

堀口:でもそうじゃなくて生きている人はたくさん見てきているし、いるので、やっぱりこの長い人生どこかで勇気を持って踏み出して、好きなことにチャレンジしないといけないと思うんです。それは自分が持って生まれた好きっていうものに対する、ある意味リスペクトだと思うんですね。

好きなことをやってると良いのは、当たり前のことなんですけど、うまくなれる。たくさん時間をかけても苦にならない。しかも楽しそうにやっているので、人が良くなっていく。性格が良くなると愛されるので、仕事も増える。友達も増える。良いことしかないんです。しかも程度が低かったら余計同情してもらえて友達も増えるかもしれません。

なので、やっぱり好きにこだわって仕事を選ぶ。しかもこれから人生長いので。今から生まれる人たちなんてみんな100歳まで生きるって言われてる中で、嫌いなことを長い間やってて人生いつまでも終わらなかったら、それって本当ただの苦行になっちゃうので。

やっぱり好きなことをやって稼げるようになるっていうのを、まずは目標に据えるっていうのがいかに大事なことか、っていうのをちょっと伝えたいなと思ってここに書きました。

現状維持に未来はあるか?

堀口:今は正直前の会社に勤めていたときと比べて、安定もないです。来月仕事がちゃんと……まぁ来月くらいはあるかもしれないですけど(笑)。1年後仕事があるのかわからない、っていう状況の中で、でもがんばれるのは、今の仕事が好きだから、っていうのがすごくあるんですね。なので本当に勇気を出してみて良かった、と思うんですけど。

やっぱり好きなことをやってるっていうのはすごく自信になります。お金稼げてても稼げてなくても自信になるので、それは自分の実感としてあったので。やっぱりそういう世の中であってほしいなっていう期待ですかね。どうですか?

森井:本当にその通りだと思います。本の中で書かせていただいてるんですけど、損失回避というのがあって。「損はしたくない。だから現状維持」ってなってしまうことが多いんですね。自分が行動することで、そこからなにかマイナスがあったら嫌だ、ってどうしても思ってしまうと思うんです。

天明:そうですね。

森井:そういった中で、自分が本当は判断して、自分が決めたんだから、自分が責任を負うっていうのが……自分が責任を負うっていうか、結果を受け入れてまた進んでいくっていうのがやはり理想です。けど、なかなかそうはできない状況がありますよね。

私たちが生きていく中で、自分が選択するって正直嫌なんですよ。とくに日本で教育を受けてきていると、やることは言われていて、言われたことをやって、それをうまくこなしていくのが成功というか。それが100点であって、自分でこれをやるって決めて、やったことってあんまり評価されない。

その中で私たちは生きてきてしまったので、なかなか自分で選択をして、自分で思うようにやるってすごく難しいんです。でも、今世の中は変わってきていて、正社員であっても明日どうなるかわからないんです。だから、現状維持がそんなにおいしいものではなくなっているっていう現状があります。その中で私たちは常になにかを選んでいかなければいけない、考えていかなければいけない、っていうのはこれからも考えていかないとなと思います。

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