「とりあえず3年は我慢」に意味はあるのか?
若者こそ知っておくべき、“今を生きる”という働き方

『下流予備軍』刊行記念トーク・セッション #7/7

2017年9月19日、文禄堂高円寺店にて、書籍『下流予備軍』刊行記念のトークセッションが開催されました。登場したのは、著者で公認会計士の森井じゅん氏と、フリーアナウンサーの天明麻衣子氏。そして後半からは、商社からタレントへ転向した堀口ミイナ氏もゲストに迎えて、格差や女性の社会進出など、日本が抱える社会問題について、熱いトークを繰り広げました。単なる貧困とは異なる「下流予備軍」とは一体なにか? かつての一億総中流社会から変わりつつある、日本の「今」を読み解きます。

ドライだから生きていきやすいアメリカ

天明麻衣子氏(以下、天明):ではここで、そろそろお時間になりましたので、質問タイムに移りましょうか。いろいろ働き方について話してきましたけれども、今日イベントにお越しくださったみなさまで、質問のある方がいらっしゃったら、挙手をお願いいたします。

質問者1:アメリカの会社について聞きたいのですが。

森井じゅん氏(以下、森井):はい。

質問者1:アメリカの会社というのはやっぱり日本と違って、仕事できないとすぐクビになるんですか?

森井:もちろんそういった側面もひとつにはあります。ただ、日本で言われているほど……例えば日本で、じゃあクビにならないか、終身雇用守られているか、って言ったらそうではないですよね。実際、日本でもクビになることはあるし、アメリカでももちろん。けど、そんなにステレオタイプではないのは確かです。そんなに、いきなり「今日クビだ!」っていうのはなかなかないです。

私がカジノで経理をやっていた時にあったのは、カジノで経理をやっていると、ギャンブルやっちゃいけないんですね。他のカジノ店で、経理の子がギャンブルをやっていることがバレて、その場で「お前もうストップ!」「もう動くな!」って言われて、そのまま出された、という人はいますけど。そういった、なにか法に触れるようなことでない限り、けっこう通常の仕事ではそんなことはないです。

ただそれこそ、トップの金融機関だったり、そういうところでは今日まで、とかはあったりもします。だけど給与保証が少しあったりとかもあるので。とくにアメリカでは……海外いろんな国でも、金銭解決っていうのがあって、解雇する場合には、お金で解決しようってなるんですよ。

日本ではあまり法整備が進んでないんですけども、「会社を解雇された。いきなり無一文」ではなくて、きちんとお金で交渉して、自分の生活費はちゃんと出るような仕組みもあるんですね。なので、解雇っていうものが生活に与える影響が、日本とアメリカでは格段に違う。解雇されてもまだ生きていけるから。

天明:ドライな部分が逆に良い面もある、っていうところ。

森井:そうなんです。ドライだからお金で解決しよう、お金で解決してもらってるから、その間キャリアアップするなり他の転職先見つけるなりできる。でも日本はなかなか金銭解決できないので、解雇されたら「えっ、明日からどうすんの?」となってしまう。っていうのが、やはり大きな違いだとは思いますね。

貧富の差をカバーする流通のしかた

質問者1:貧富の差っていうのはどうなんですか? やはりすごくあるんですか?

森井:貧富の差はもちろんあります。とくにお金持ちの人が群を抜いてお金持ちなので、そういう人たちと比べると、やはり貧富の差は日本よりは大きいのかなと思います。でも、やはり最低賃金のことを考えても、そこまで貧しい人がいるかって言うと、どうだろう? ちゃんと仕事を、一般のパートとかでもしていれば生活していけるようなレベルであったりもするので、そこまで貧富の差が激しいとは感じませんでした。

質問者1:そうですか。いろいろ見てるともらっている人ともらっていない人の差がはっきりしてるようで。集計があまりないように見えるんですけど。

森井:むしろ日本が落ちてきている感があるので。みんな一緒みたいな感じですけど、もともとは日本もけっこう幅があったんですよね。ただ日本は中堅が落ちてきているから、ある意味みんな一緒なレベルになっていますけど。そういう意味で言えばアメリカでは中堅が確かにあまりない。けど、すっごいトップの人はもらっているし、下の人たちは最低レベルで生きてるし、っていうのはありますね。

天明:アメリカって寄付やボランティアの文化が盛んで、お金持ちの人も自分の持っているお金を出したりとか。あとけっこうボランティアの人が教会とか、ホームレスの人たちに活動したりとかそういう話を聞きます。

森井:本当にそのとおりで、すごく貧しいところっていうのは、寄付とかそういったものでかなりカバーされている。教会が大きなハブになっていて、いろんな人が教会を通じて、お金を流していったり、食べ物だったり、現物でもなんでもそうなんですけど。いろんなものが流れている経済があるんですね。だから日本の場合、行き詰まってしまうと誰にも助けを求められないところが、アメリカに行って、ちょっとその日暮らしになってしまったときに、助けてくれる場所がいっぱいあるというのは、あると思います。

ただ、アメリカもそんなに良いことばっかりでもなくて、大手の小売店がひしめき合って、街を支配するようになってくるんですよね。そうすると、最低賃金ギリギリで働いている人たちは、家族で1人働いている人がいれば食べていけるようなものではなくて、2人働いて、二馬力で働いても、ある程度食料補助を受けたりするようなレベルにまで落ちているところもあるのは事実です。

「何にも染まらない」人にポジションはない?

質問者1:日本の会社っていうのは、先ほど言いましたように大昔から知っているんですけど、アメリカの会社はやっぱり新卒を優先するんですか? それとも関係ないですか? 日本の会社は絶対新卒を優先するんですけど。

森井:新卒優先は基本的にはないですね。だからある意味では日本の方が新卒に優しいとは言えるかもしれない。ある程度アメリカでは、どんな勉強をしてきて、どんな仕事をしてきたかっていうのが、大きな採用のポイントになってくるので。日本で新卒で「何色にも染まっていません!」って言ったところで、アメリカでは「えっ! このポジションなんだけど何をやりたいの? そこと合ってるの?」っていう話になってしまうので。

向こうではこのジョブがあるっていうのが先なんですね。だからそのジョブに自分の資格とかバックグラウンドが当てはまると思えば、採用してもらえるし「何色にも染まっていません!」って言っても誰にも評価してもらえない。

天明:デメリットというか、経験のないことがマイナスに響くポジションもある、っていうことですか。

森井:はい、そういうところもありますね。

質問者1:大手企業の中の大半が、新卒しかとらないですもんね。

森井:日本ではそうですね。そういった面もちょっとずつ変わっていけば良いなと思っています。

安定していないロールモデルを知ること

質問者2:私は学校の先生なんですが、たぶんこれからキャリア教育とかがすごく変わっていくだろうなと思って。僕も、変えていかなくちゃいけないなと思っていて。

新卒一括採用がだんだん崩れていくかもしれないし、年功序列とかそういうところもなくなっていく中で、メンバーシップ型からジョブ型に変わっていったりするときに、前職を前提にみんな就職活動するっていうふうに、今の中高生からしたらけっこうそうなっているんじゃないかと思うんですけど。中高生に対してどういうキャリア観を伝えるべきか。みなさんに学校で話してほしかったりするんですけど(笑)。どんな話をしたいと思いますか?

森井:私、中高生向けにお話をしたりすることもあるんですけど、やはり一番は、その会社に入ったからと言ってそれで終わりではない。最初が最後ではない、というのを伝えるようにはしています。その中で一番大事なのは、仕事をしていてその先を見るということ。「もしその会社つぶれちゃったらどうするんだろう。自分って今武器持っているのかな?」っていうのを常に意識してもらうように話はするようにしています。どうですか? 中高生に向けて。

堀口ミイナ氏(以下、堀口):中高生に向けて。無形資産って、さっきでてきた表の言葉がすごくお気に入りなんですけど。生まれてから、みんなが有形資産を持っているわけじゃないので、好きな無形資産を、いつでもいろんなかたちでお金に換えられる能力を高めていくと、自分も楽だし周りも楽だよ、みたいなメッセージはすごく良いと思います。

やっぱり、それって好きなことが強いと思います。料理を作れるでも良いし、語学でももちろん良いし、数学的な能力があったらいろんな会社でそれを活かすこともできるし。でもその有形資産が好きなことじゃないと、やる気が出ないので。まだピュアなうちに、すごく辛い思いをしてとか、親の期待を背負ってとか、これから老齢化社会でみたいな、あまり暗い話っていうよりは、明るい方向に気持ちを持っていってもらえると良いなって思います。

森井:本当にそのとおりで、いろんなことに興味を持っていくということ。いろんなことに自分のアンテナを立てて、世の中ってどうやって動いているのかなっていうことも含めて。中高生になってくると、選挙のことも教えないといけないとかもあったりすると思うんですけど、「自分の一票はなんの役にもたたないよ」っていうような無力感が蔓延してきているところがあるので、自分が何をしたいのかとか、自分の興味が何なのかとか、自分ってどんな影響力を持ちうるのかとか、そういったポジティブなところも含めて伝えていっていただきたいなと思います。

堀口:あとロールモデルはすごく良いと思います。例えば、ゲームがすごい好きで、この子ちゃんと働けるのかなって思ってた大学の友達が、今はゲーム会社ですごくバリバリ楽しそうに働いているので。そういういろんな好きなことが、実はお金になって仕事になるんだよ、みたいな。そういうのも良いと思います。いろんなロールモデルを示してあげられると。

天明:そうですね、やっぱり、日本だと石の上にも三年みたいな、なんとなく「3年は我慢しろ」みたいな風潮がありますけど、この「3」になにか意味があるのかな、って私は疑問に思っていて。なので3年たたなくても他に好きなこととか見つけたら、そっちに移るのが私は良いかなと思います。

好きなことをやるのは大事だし、やるなら、早ければ早い方が良いと思っていて、それはやっぱり好きなだけだと、なかなか最初はお金にならないと思うんですよね。それをどんどん極めていくほど、それが自分にお金となって返ってくると思うんですけど、お金になるまではちょっとタイムラグがあるので。そこを耐えられるのは失う物のない若いうちだと思うので、なにか自分の好きな物がみつかったら、早いうちに方針転換するのもありかなと思います。

一度諦めたキャリアに対してできる支援

質問者3:僕のキャリアというよりも、妻のキャリアなんですけど、僕が転勤で大阪から東京に移る際にちょうど出産が重なって、妻が仕事を辞めることになったんですね。今、息子が1歳ちょっとで保育園に入れなくて。妻のキャリアを考えてもすごく申し訳ないなというので、「ごめんね」とか「いつもありがとう」みたいな声はかけてるんですけど。

妻に対して旦那はどういう声かけとかアドバイスの応援をしてあげたらいいのかなとすごく思っていて、そういうアドバイスがあればぜひ教えていただければと思います。なかなか保育園にも入れないっていう現状もあって。

森井:そうですね。キャリアを一度諦めるざるを得なかったということですよね。

質問者3:そうです、はい。

森井:それはやはり今の日本の問題点で、ブランクができたり空白ができると、すごく難しいという状況があります。ただ、今この状況の中でも、新卒しかとらないわけではないし、なかには自分の居場所を見つけられることもあると思うんですよ。そのチャンスっていうのはまだ転がってる。自分でもしかしたら起業できることもあるかもしれないし、可能性っていうのはいっぱいあると思うんですよね。

きっと夫として、「サポートしてあげられるんだよ」っていう「こんなこと助けてあげられるんだよ」育児だったり、家事だったり、そういったことを言ってあげるのが、一番本人が「あ、サポートされてるんだ。じゃあ私なにかできるかもしれない」っていう自分の可能性を考えられるようになるんじゃないかなと思います。だから奥さんを支えてあげることがきっと一番の、彼女にとっての、キャリアを考えるきっかけになると思うんですね。

日々に追われていると自分の先とかって考えられなくなってしまう。いっぱいいっぱいになってしまうので、そういった意味で足元というか今身近なところを支えていってあげるのが一番良いんじゃないかなと思います。

天明:どうですか、堀口さんはなにか奥さんに対して伝えたいことは(ありますか)。

堀口:素敵な旦那様だなーって(笑)。あなたならきっと大丈夫というか。彼女も幸せでしょう、と思いました。

(会場笑)

常に次を考えて、今を生きる

天明:女性の方とかとくに、女性であり妻であり母でありみたいな、いろんな顔を持たなくてはいけないのに、なかなか自分の思いを優先することは難しいかもしれないですけど。でも本当に自分がやりたいことだったら、その思いを持ち続けてほしいなって。今は叶わないかもしれないけど、数年後には叶うかもしれないから、それはずっと自分の胸の中であたためておいてほしいなと思いました。

森井:いっぱいいっぱいになってしまうと、どうしてもいろんなことが見えなくなってしまうので、余裕っていうのが必要だと思います。その中でアンテナをいつも立てて、もしかしたら前のキャリアとは違うかもしれないけど、新しい可能性っていうのはいっぱい転がっているので、それに気づけるような環境づくりっていうのは、旦那さんだからこそできるのかなとは思いますね。

質問者3:ありがとうございます。

天明:じゃあちょっとお時間がきてしまいましたので、これで『下流予備軍』発売記念イベントを終了とさせていただきます。それでは、最後に森井さんからメッセージをいただきたいと思います。

森井:はい、下流に転落しないための一番のポイントとしては、常に次を考えて今を生きることだと思うんです。やはり、堀口さんもおっしゃってたように、楽しいことをする、好きなことをする、っていうのは今を生きることだと思うんですね。現状維持に流されるのではなく、自分で意識をしてアンテナを立てて、いろんなものを選んで生きていく、それの繰り返し。それが将来につながっている、っていうのを考えて生きていっていただきたいと思います。

天明:ありがとうございました。

下流予備軍 (イースト新書)

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