山田玲司氏が嫉妬するリチャード・リンクレイター監督

山田玲司氏(以下、山田):今回、ピクサー回っつーんでいろいろ勉強してきたんだよ。いろいろ見てたんだけどさ。リチャード・リンクレイター。『スクール・オブ・ロック』『ビフォア・サンライズ』シリーズでお馴染みの。

そして俺のベスト2に入っている『ウェイキング・ライフ』のあいつだよ! イケメンのくせに頭が良くって、センスも良くって、ちゃんと恋愛とかもしてるっていうのでお馴染みの、リンクレイターなわけよ。

おっくん氏(以下、おっくん):そーなんすか。

山田:顔も良い男なんだよ。そんで、センスも良いんだよ。何から何まで悔しいの、リンクレイターが。

おっくん:え? 嫉妬?

山田:嫉妬。男の嫉妬ですわ! 「なんだよこれ、俺やりたかったやつじゃーん!」って!

おっくん:この世で最も醜いと言われている男の嫉妬ですか。

山田:ほんとに、アングリーボーイですわ。

おっくん:Jealous guyですね。

山田:I’am jealous guyですわ。それがさあ! 12年間かけて撮った『6才のボクが、大人になるまで。』っていう映画が公開されてたじゃん。そんで、リンクレイターじゃん。俺は『ビフォア・ミッドナイト』まで映画館に行ってんの。

で、リンクレイターじゃん、12年じゃん。でもね、いまいちね、絶賛の情報が来ないの。しかも、6才の男の子が毎年1回ロケして12年間経つわけ。

おっくん:そういうの好きですねー。リンクレイター。

リンクレイター氏が描きたいもの

山田:リンクレイターは時の流れっていうのがテーマなんだよ、あの人。移ろいゆくもの。だからホースで水をかけたら虹が出てその虹におばあちゃんが映ったんだっていう、あの『ビフォア・サンライズ』のくだり……お前見てねーだろ。

おっくん:いや、見た見た! 見たんだけど覚えてない。

山田:お前あれだろ、ジェシーは心つかむわけだろ。

おっくん:そうだっけ?

山田:そんで、移ろいゆくもの・過ぎてゆくものみたいなことを繰り返し繰り返しやってて。サイコーなわけよ。サイコーなんだよあいつは。なのに、もう1つって言うから映画館行ってガッカリするのやだなって思ったのと、あと、6才の子供が思ったよりイケメンに育ってないっていう情報が入って(笑)。

おっくん:それは別にいいでしょ(笑)。

山田:あとね、セミドキュメンタリーかなーって思ったら、どーなの? みたいな。でもリンクレイターは常に斬新な挑戦をし続けている男だから裏切るわけねーよなと思いながら、ずるするとさ。そしたら先週さ、DVD発売ですわ。まじか。映画館行かずに。

おっくん:終わっちゃった。

山田:しょうがないなーと思って。これ付き合わないわけにはいかないじゃん。3時間くらいあると。

おっくん:えー。

山田:もう「うぇ~」でしょ。イケメンにはならないわ、3時間だわ、しかも理屈っぽいから。

おっくん:そうですね。

本当に6才が12年後になるまでの経過を映画にした

山田:でも見たら、なぜ誰か、俺を殴ってでも「映画館に行け!」と言ってくれなかったんだと!

おっくん:なぜ言ってくれなかったのかと。

山田:もー最高すぎんべって話よ!

おっくん:へー。

山田:もーどーしよ、本当。ヤバいよ本当。何が言いたいかって、運転するシーンあんじゃん。アメリカのだだっ広い道を。ケンカしながら。カメラが2人喋ってるところをパッと映ったらその次のシーンどうなるかわかりますよね。

おっくん:え、わかんない。

山田:事故るんですよね。だいたいね、そんでこんなことか、こんなことかの連続で人生が進んでいく、みたいなドラマが多いじゃん。

おっくん:多い多い。

山田:12年間何にも起こんないの。

おっくん:追いかけたけど?

山田:追いかけたっつーか、脚本あるんだよ。

おっくん:あるの?

山田:だから要するに、大河とかでさ、子供時代からおじいちゃんまで1人の人が演じるみたいなのあるじゃん。あれをリアルでやってるんだよ。本当に6才が12年後になるまでの経過をやってるわけだ。それで、脚本はリンクレイターが書いてるんだよ。お父さん役がイーサン・ホークなんだよ。

おっくん:また!? 好きだなイーサン・ホーク!

山田:そうなんだよ! ゴダールにもさ、必ずお馴染みのやついたじゃん。そういう感じよ。ウディアレンもそうじゃん。でね、何も起きないんだけど、ただひたすらサイッコーなんだよ、人生って。みたいな映画なの。

もーヤバいぜ本当に。一番言いたいのが、子供から始まるじゃん。子供ってひたすら親から命令され続けているわけ。子供時代って基本的に「あれしなさい」「これするな」「あれしなさい」「これするな」ってずっと言われてるの。

おっくん:そうですね。

ちょっと変わったおじさんにだけはチラッと心を開く

山田:これ本当に主人公が言われ続けるの。でも、言っている親ってイーサン・ホークだからね。ダメ人間ですから。奥さんももう結構ダメなんだよ。で、イーサン・ホーク最初っから家入れてもらえないからね。

おっくん:……ていう設定でしょ!?

山田:そうそう。命令してくるやつが本当にバカっていう子供時代を思い出すわけよ。延々と。だんだん、心開かなくなるじゃん。見事に心を閉じるんだよ、子供が。ちょっと変わったおじさんだけにはチラッと心を開くとか。

ちょっといい感じの女の子だったら、ちょっと自分のこと喋っちゃうとか。この辺がまー、クソリアルなんだけど。2時間30分、これネタバレしないように言うけど、最後、親と子が逆転するみたいな感じになるんだよ。要するに抑圧の歴史の解放みたいな感じで終わるわけ。

おっくん:それネタバレじゃない(笑)?

山田:やっちゃった(笑)? つか見てほしいなーと思って。

おっくん:(ニコニコ動画のコメントにて)「映画館見に行ったけどサイコーだった」とかありましたよ。