辺野古に新しい基地は造らせない

翁長雄志氏(以下、翁長):本日、普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋め立て承認を取り消しました。

県は、去る7月16日、埋立承認の法律的な瑕疵(かし)を検証する第三者委員会の検証結果報告を受け、関係部局において内容等を精査したところ、承認には取り消しうべき瑕疵があるものと認められたことから、承認取り消しに向けた意見聴取および聴聞の手続きを行ったところであります。

聴聞手続きにおいて、沖縄防衛局長から、陳述書が提出されたところですが、聴聞の主宰者からの調書、報告書の内容についても十分に参酌(さんしゃく)して、予定される不利益処分について検討しました。

その結果、承認取り消しが相当であると判断し、本日付で、沖縄防衛局長に対し、公有水面埋め立て承認取り消し通知書を発出したところであります。

今後も、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む考えであります。

沖縄の考えが理解されることがなかった

記者:9月14日に取り消しの方針を表明してから約1ヶ月。正式に承認を取り消して率直な感想を。

翁長:知事就任から約10ヶ月というところでしょうかね。今日までいろんな形でこの問題は、多くの県民や国民の目に見ていただきながら、今日まできたような感じがしております。

なかなか前半、交渉すらできなかったですが、4月ごろから閣僚との意見交換ができるようになって、なおかつ1ヶ月間集中協議ということで、いろんな閣僚と議論をすることもありました。

なかなか意見が一致をせずに、そしてその集中協議が終わったら工事を再開するということでしたので、取り消しの手続きを開始して、本日承認に対して取り消しを行ったところです。

思い返してもなかなか沖縄の考え方、思い、今日までのいろんなこと、ご理解をいただけるようなものがなかったような感じがします。

これから、こういった裁判を意識してのことが始まっていくが、いろんな場面場面で私どもの考え方を申し上げて多くの国民や県民、そして法的な意味でも政治的な意味でもご理解をいただけるような、そういう努力をきょうから改めて出発していくという気持ちです。

前知事の「埋め立て承認」、決して容認できない

記者:承認の取り消しに至った理由は。

翁長:県外移設を公約して、当選をされました知事が承認をしてしまいました。埋め立てのですね。それについて、私自身からするとそのこと自体が、容認できなかったわけですが、ある意味で法律的な瑕疵があるのではないか、そしてそれは客観的中立的に判断をしていただいて、そういった方々がどのように判断をしていただけるかということで、第三者委員会ということで、環境面から3人、法律的な側面から3人の6人の委員のみなさん方に、今年の1月26日ですか、お願いをしました。

そして7月16日に法律的な瑕疵があったということが報告されました。大変詳しく説明がございました。私どももそれを検証した結果、法律的な瑕疵があるという県としても判断したわけでありまして、そういったことをベースにしながら、このような形で取り消しに至ったと思っています。

今後、政府とはどう対話していくのか?

記者:知事が取り消したことによって、政府が対抗措置を取ると思うが、県として、どういう対応で臨むか。

翁長:法的な対応措置というのはいくつか考えられるわけでありまして、その意味でいうと、それぞれ一つ一つ想定をしながら、説明をすることは今この場所ではふさわしくないと思います。

私どもも正しいと思っていることを、どういう場所になるか分かりませんが、しっかりと主張をして法律的な意味でも政治的な意味でも、県民や国民のみなさま方がご理解いただけるようなことを、しっかりと沖縄側の主張をしていきたいと思っています。

記者:先月取り消しを表明して、意見聴取や聴聞など沖縄防衛局に対する手続きをとってきたが、防衛局が意見聴取にも聴聞にも応じず陳述書を出すという対応だった。防衛局の対応についてどう思うか。

翁長:集中協議のころから、ある意味で溝が埋まるようなものがまったくないという状況でした。その1ヶ月間の集中協議の中でも私どもの方がいろんな思いを話をさせていただいたわけですが、一つ議論があったのは防衛相との抑止力の問題だけで、それ以外は閣僚側から意見というか反論というものはありませんでした。

沖縄に寄り添って問題を解決しようという思いが内閣には欠ける

そういったような沖縄県民に寄り添って県民の心を大切にしながらこの問題を解決していきたいというような気持ちがあの集中協議の中にもなかったわけでありますが、今回、ある意味で取り消しの手続きの中で意見の聴取、聴聞の期日を設けてやったわけですが、応じてもらえなかった、まあ陳述書は出してもらいましたけど、聴聞には応じてもらえなかったということから考えますと、沖縄防衛局の姿勢というよりも、内閣の姿勢として沖縄県民に寄り添ってこの問題を解決していきたいというものが、大変薄いのではないかというような気持ちがあります。

私どももあらためて、いろんな協議の中から意見を申し上げたいと思いますし、広く県民国民、場合によっては米国の方にも、あるいは国際社会にも訴える中で、この問題を解決していければいいのかなと思っています。

記者:承認取り消しという行為自体がこの問題をめぐって、どのような歴史的な意義があるか。防衛局の方で有力と言われている私人と同じ立場で不服審査をする。その後政府内での判断になると思うが、政府のこの問題に対する向き合い方についてどう考えるか。

翁長:今回、承認の取り消しに至るわけでありますが、これはある意味で沖縄県の歴史的な流れ、あるいは戦後の70年の在り方、そして現在の沖縄の過重な基地負担、0.6パーセントに74パーセントというですね、過重な基地負担、こういったこと等がですね、まずしっかりと多くの県民や国民の前で議論がされるところに一つは意義があると思います。

国という大きな権力に対峙しているという意識

もう一つは日本国全体からしても、地方自治体がこのようなところまで国にある意味では追い詰められると。私たちからすると日米両政府というのは大変大きな権力を持っておりますし、法律的な意味合いから言っても大変ある意味で大きな権力を相手にしているなというような感じをしています。

そういたしますと、基地問題はある意味では沖縄が中心的な課題を背負っているわけであります。これから日本の国の全体として地方自治の在り方が本当に1県、あるいはある地域に対してこういったこと等が起きたときの日本の将来の在り方というものについて、多くの国民に見ていただけるのではないかと思っております。

そういう意味からすると一義的に沖縄の基地問題、歴史等と含めてのことでありますが、日本の民主主義というそういったものに対して国民全体が考えていただけるような、そういうものになればいいのかなと思っております。

それから法律的な面は私が答えると、間違ってもいけないですが、一つ今日までよく言われていることの今の質問なので、お答えしたいと思います。私人として国がそういう訴えをするということは、私たちからすると非常に無情ですね。それはできないだろうと思っています。

それから、国が同じ国の中でそういったものに判断を下すというのも、今いう国と地方自治という意味からしても、いろんな意味合いからしても、多くの方々が疑問に思うことではないかなと思ってますので、これはこの辺り言わせてもらって、あとまた詳しいことがありましたら、またお聞きをしてからにしたいと思います。

沖縄が背負ってきた歴史を国民にも理解してほしい

記者:今回の知事の重い決断の背景に日米安保と負担の在り方について、知事の強い思いがあると思う。知事の10カ月のさまざまな行動の中で本土でも辺野古の埋め立てに関する世論調査、だいぶ数字に変化が現れている。きょうの重要なタイミングで、特に本土の多くの国民に日米安保と負担の在り方について、どう行動してほしいか。

翁長:さきほど来、あるいはこの1年といってもいいですし、この数十年といってもいいですが、0.6パーセントの面積に74パーセントという過重な負担を沖縄は負わされてまいりました。なおかつ、戦後の二十数年、ある意味で日本国から切り離されて、日本人でもなくアメリカ人でもなく法的なもの、ある意味で守られるものも何もないような過ごした時期もありました。

そういった中で何を沖縄は果たしてきたかといいますと、よく私がやっているのは自負もあるし無念さもあるというのは、日本の戦後の平和、あるいは高度経済成長、そういったこと等を、安全保障とともに沖縄が保障をしてきたというような部分は大変、大だと思っております。

その中で沖縄県民の人権や自由や平等、そういったものが、民主主義という意味でも認められるようなことがなかったということがあります。

これはひとえに、沖縄1県に抑止力を含め基地の問題が閉じ込められて、本土の方々にご理解をいただけなかったというようなことがあったと思いますので、私は昨年の選挙では日本国民全体で日本の安全保障は考えてもらいたいということを強く訴えました。

そして1県だけに安全保障を押しつけるということそのものが、日本の安全保障にとっては大変心もとない、やっぱり日本全体で安全保障を考えるという気概がなければ、日本という国がおそらく他の国からも理解されないだろうと、尊敬されないだろうという話もしてきたわけです。

そういう最中、大変国民の理解も得にくいところであったんですが、この1年間、今日報道のみなさまおいでですので、多くの方々がいろんな角度からこの問題を県民や国民に掲示をしていただきましたところ、世論調査のほとんどで、まずは辺野古には基地を造ってはいけないというような本土の方々の理解が進んでまいりました。

パーセンテージはまちまちでありますけど、ほぼ10パーセント近くそういった方々が増えたというのは、この1年間で私どもが主張してきたことがご理解いただくような入り口に入ってきたなというようなことでは、大変心強い感じがしています。

沖縄問題もさることながら、地方自治という在り方、そして日本の国の民主主義、あるいは中央集権みたいな格好に最近なってきてまいりました。こういったことなどの危険性、日常から非日常に紙一重で変わる一瞬を止めきれるかどうか。

変わってしまってからのものは、過去の歴史からいうと大変厳しいものになろうかと思いますので、そういうことも含めてみんなで議論していけるようなものに、この沖縄の基地問題が提示できればありがたいと思っています。

代わりの基地を差し出せ、という理不尽な要求

記者:辺野古の埋め立てを認めないということは、普天間を日本国全体でどうしてほしいという思いか。

翁長:普天間をどうするかということであります。私は菅官房長官ともそうでありますが、一つには普天間飛行場の原点は戦後、県民が収容所に入れられている間に強制接収されたものであります。それ以外の基地もすべて強制接収されたわけで、沖縄県民自ら差し出した基地は一つもありませんよという話をさせていただいています。

まず一義的には普天間の危険性除去をするときに、辺野古に移すということは、自分で土地を奪っておきながら、代わりのものを沖縄に差し出せというような理不尽な話が通るかというのが一つ大きなものがあります。

もう一つは辺野古という、大浦湾という美しいサンゴ礁の海、ジュゴン、ウミガメがいるようなところをこうも簡単に埋めていいのかということも含めて国民の皆さん方にご理解いただきたいなと思っています。

意見を言うことは対立なのか?

記者:県民に寄り添うことを狙って沖縄担当相に島尻安伊子参院議員を就任させた。島尻担当相は最初の記者会見で「辺野古が唯一の選択肢で何としても進めなければならない」と述べた。これについてどう思うか。

翁長:沖縄問題は大変、言葉遣いに気を使うところでありまして、一昨年の前知事の承認についても声を枯らして話をするようなものも大変、はばかられるものがございます。島尻安伊子参院議員が今回、沖縄担当相になりましたけども、県民にとってもいろんな思いがあろうかと思います。

沖縄県は、ある意味で基地問題も含めできるだけ多くの方々を包含(ほうがん)して、よく私たちは日本政府と対立していると言われるんです。意見を言うことそのものが対立と見られるところに、日本の民主主義の貧弱さがあると思いますね。

他の都道府県で国に物を申したときには、対立とか独立とか言われないのに沖縄ではそれも言われる。

そういうことからすると、私が去年の選挙でオール沖縄、イデオロギーよりもアイデンティティーということで、より多くの人が100パーセント自分の考え方を主張するというよりも、一定の水準と言いますか一つの目的と言いますか、そういうもので心を一つにしてやっていこうというようなものが今日の翁長県政のベースになっているわけであります。

そういうことからしましても、政府のやることに対して、私もいろんな思いはございます。就任された中から改めて沖縄の将来を目指して、一つ一つ頑張っていくということで多くの県民、国民にも理解を得ていきたいと思っています。

これから長い法廷闘争が始まる

記者:法廷闘争になるが、結論が出るまでに長い時間がかかる間に工事が進み既成事実化も進む。あらゆる手段を使って造らせないという思いと、法廷闘争の限界をどう考えているか。

翁長:法廷闘争についても、政府を相手にするわけですからそう簡単でないということだけはよく分かります。そしてある意味で、工事を再開して埋め立てを場合によってはどういう状況で進めるかどうか分かりませんが、そういうことがあったとしても新辺野古基地は造れないだろうと私は思っています。

今回、国連でも訴えをさせていただきましたけども、世界のメディアも注目していただくような状況になっているわけです。国内で10ポイント程度、基地を造っちゃいかんという考え方に変わってきたところがあります。

あそこの現場は本当に戦争を体験したといいますか、それに近い世代があんな遠いところに不自由なところに毎日、1年以上も通っているわけです。そういったところで理不尽な工事をすることの難しさは大変だと思います。

それから沖縄県と名護市も決意を持ってこのことについて当たっていますので、そういったもろもろを考えましたら、あれは10年間でできると言ってますけれども、できるまで普天間をそのままにしておくこと自体が固定化であるんですよね。とんでもない話なんです。

あそこに順調に造った場合には普天間の危険性は除去しているというような話でありますが、そうではなくて普通にいっても10年間は固定化するという話。

これを防ぐという意味では、5年間の運用停止を前知事に約束をして5年間で空を飛ぶものがないようなものの状態にするということが普天間の危険性の除去ということだと思いますので、それすらも米国政府から反対されて、なおかついま一歩も動かないということからしますと、この多くの国民や県民の皆さんにご理解いただきたいのは、10年間そのままにするというのは固定化でないのかどうかですね、これもよく考えていただきたい。

沖縄は200年間も基地に脅かされなければならないのか

万が一、15年延びたら15年間固定化であります。それができるようなことがあれば200年間沖縄に国有地として、私たちの手の及ばないところで縦横無尽に161ヘクタールを中心としたキャンプ・シュワブの基地が永久的に沖縄に国の権限として出てくるようなところがあるわけです。

普天間の固定化を避けるというのも重要な意味がありますけれども、もう一つ向こうに200年にわたって県民の意思とは関係なくそこに大きな基地が出来上がってきて、自由自在に使われるようになる。

いま中国の脅威が取りざたされていますけれども200年間、そういった脅威は取り除かれないという認識でやっているのかどうか、今日までの70年の基地の在り方についてどのように反省しているのかですね。日本国民全体で考えることのできなかったことについて、どのように考えているのか。

私は、中谷防衛相と話をした時に、こういうことでおわびの言葉もありました。『今はまだ整ってないから、沖縄が受けるしかないんですよ、よろしくお願いします』という話もされていたが、私はこう申し上げた。

たくさんの人が聞いている時に申し上げたので、おそらく20、30年後の防衛相も同じような話をしていると思いますよ、とそのように話をさせていただいたんです。ですから、こういったことを踏まえると沖縄の置かれているものがよくご理解いただけるのではないかなと、そう思っています。

翁長知事に責任を転嫁する日本政治の堕落

記者:知事が移設を阻止するための手段を講じると、必ず東京では移設が進まなくなる、固定化だ、翁長知事に責任がある、と喧伝(けんでん)される。責任論や責任の所在についてどう考えるか。

翁長:私はまさしくそれが日本の政治の堕落だと言っているんですよね。私に外交権があるわけじゃあるまいしね、沖縄県知事は当選したら内政といいますか、教育や福祉や環境は捨てておいて年中上京して、他の市町村や知事に、頼むから受けてちょうだいよ、沖縄は大変なんだよと言って歩くのが沖縄県知事の責務になるのかどうかですね。

こういったことを踏まえて考えますと、日本政府からこういう話をするのは、まさしく日本の政治の堕落である上になおかつ自分の意思で日本の政治を動かしているかどうかさえ日本政府には試される。

日米地位協定、日米安保も含めて、基地の提供について日本政府が自主的に物事を判断しながらアジアのリーダーになろうとしているのか、世界のリーダーになろうとしているのか。あるいは日米安保というものが、自由と平等と人権と民主主義というものを共通してもっている国々が連帯するような、そういったものをつくり上げようとしているわけです。

自国の県民にさえそういったことについてできないような政府が、私は日米安保、もっと品格のあるものにしてもらいたいと思っているので、大変残念なことであります。

私も日本国民の一人として、その意味からすると品格のある民主主義国家として成熟した日本になって初めて、アジア、世界に日本が飛び出て行ける、沖縄の役割も日本とアジアの懸け橋としてアジアの中心にある沖縄の特性を生かして、平和の緩衝地帯というようなことも数十年後には考えながら沖縄の未来を語りたいにもかかわらず、ただの領土として、基地の要塞(ようさい)としてしか見ないようなものの中でアジアの展開があるのかどうか、日本の展開があるのかどうかということは今のような沖縄がこれを邪魔するからできないんだというような姑息(こそく)な、あれだけの権力を持って姑息な言葉を流すというのは、やはり日本の政治の堕落だと言わざるを得ないと思っています。

記者:来年は宜野湾市長選、参院選、県議選と普天間問題が争点になりそうな選挙が続く。取り消しが与える影響の考えを伺いたい。

翁長:今回の取り消しというよりは、これから節目節目でいろんなことが起きると思いますので、事の本質が県民にもご理解いただけると思いますし、国民の皆さんあるいは世界の方々にご理解いただけると思います。私は一つ一つの選挙の節目節目で、そういったようなものがチェックされていくのではないかと思っています。