2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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石田真康氏(以下、石田):みなさん、よろしくお願いします。このセッションは『宇宙ビジネスのフロンティア』ということで、ほかのセッションに比べるとぶっ飛んだ話が多いと思いますが。
宇宙のセッションと聞いている方が、どれくらいのことを知っているかによって、何を話すのかが難しいのです。
先にいくつか質問をしたいと思います。みなさま、SpaceXという会社をご存知の方はどのくらいらっしゃいますか?
(会場挙手)
石田:あ~これはほぼ90パーセントくらい? Blue Originという会社をご存知の方はどれくらいですか?
(会場挙手)
石田:なるほど。10パーセント。Orbital Insightという会社を知ってる人?
(会場挙手)
石田:職業的に知っているみたいですよね(笑)。なるほど。わかりました。(登壇者の)みなさん、なんとなくわかりましたか? ありがとうございます。
あとは今日、ビジネスとテクノロジーでどちらかと言うと、ビジネスっぽい話が聞きたいという方はどうでしょうか?
(会場挙手)
石田:テクノロジーのほうを聞きたいという方は?
(会場挙手)
石田:難しいですね!(笑)。きれいに半々というのは、すごくやめてほしいという感じなのですが(笑)。
(会場笑)
石田:では、両方の話をするということで。わかりました。ふだんみなさんは、宇宙関係者にディープな話をすることには慣れちゃっているとは思いますが。なんとなくオーディエンスのみなさんの期待値がわかったと思います。
“宇宙ビジネス”となんとなく一言で括られてしまうことが多いのですが、実は何をやっているのかについてはかなりバラけてきているので、1番最初にそれぞれぶっちゃけ何のビジネスをやっているのかということを簡単に話してもらってから、ディスカッションに入っていきたいと思います。中村さんのほうから順番にお願いします。
中村友哉氏(以下、中村):アクセルスペースの中村です。先ほど石田さんからご紹介があったように、宇宙ビジネスは多岐にわたります。意図的なのかどうかはわかりませんが、今日は衛星関係のビジネスをやっている方が多いということです。
みなさん、ロケットと人工衛星の違いはおわかりですよね?(笑)。ロケットに入れて打ち上げられるものが、人工衛星ということになります。
人工衛星といってもいろいろな役割があるのですが、我々アクセルスペースが作っている人工衛星は、地球を観測するための衛星ということで、みなさんが1番想像しやすい地球観測衛星だと思います。
まあ、某国の某基地を見たりする画像がよくニュースに出てきますが、あれと同じようなことをやっているとまでは言いませんが、基本的には同じです。宇宙からカメラを使って、地表の写真を撮るということをベースとしたビジネスになるということですね。
その写真をどうお金に変えていくかということに関しては、おそらくこのあと話をしていったほうがいいでしょう。基本的なところに関しましては、我々自身が衛星を打ち上げて、そこから写真を撮って、それを使ったビジネスを展開していくということを行っています。
石田:だいぶわかりやすい解説から入った感じでいいですね(笑)。
中村:ありがとうございます。
石田:白坂先生も同じく衛星をやっていると思いますので、何が違うのかということをわかりやすくお願いします。
白坂成功氏(以下、白坂):大学の立場で言うとなにもしゃべれなくなるので、ちょうど2月にシンスペクティブという宇宙ベンチャーを作りました。これは今、内閣府のプログラムで作っている人工衛星を活用するベンチャーなのですが。
中村さんが(言っていたのは)カメラですね。カメラというのは、太陽の反射光を捉えて地球がどうなっているのかを見るんですね。我々がやっているのはレーダーの衛星であり、自分たちで電波を出して、自分たちの出した電波の反射波を見るんです。
ですから、これは夜ですとか、雲があるところ、カメラだとなかなか見ることができないところをより見えるようにしようということです。
地球の半分は夜であるということと、地球の被雲率と言うのですが、雲がかかっている率が40パーセントから50パーセントなので、だいたい宇宙から見ると地球の4分の3が見えていないという状態の、その4分の3をどちらかと言うとメインターゲットにしています。
補足を言うと、本当はテクノロジーが違うので、カメラと見える情報が違うんですね。撮れる情報が違うので、本当は補完的にもっともっと活用があるのですが。ざっくり言えばそこが違う。
中村さんたちと一緒なのですが、衛星の技術を使ってこれをどうビジネスにしていくかというところをやるベンチャーだというかたちになります。
石田:中村さんがやっているものと、見えるものというのは、何がどう違うのですか?
白坂:レーダーは反射波を見るので、どちらかと言うと形状が見えるんですね。分解能、解像度というものがありますよね。解像度がちっちゃいと通常は見えないと思うんですが、どちらかと言うと反射の度合いなので、例えば細い棒が一本ポンと立ってると、反射がすごくピーキーに立つので、分解能によらずそれは見えるんです。
例えば有名な写真だと、ペンタゴンを上からカメラで見ると、なんとなく芝みたいなものがバーっとあるのですが、レーダーで見るとポンポン、ポンポン明るいのが立つんですね。ですから、たぶんあそこにはなにかがある。けれども、カメラではわからないような情報が見えたりする。
見えるものの情報が違ってくるので、これをカメラの画像と合わせて「何だろう?」というようなことをやったりするのがやり方なんですね。すみません、ちょっとマニアックです。
石田:いいですね。どんどん、どんどんマニアなほうに入っていく感じがして(笑)。
白坂:今の話でわかりますよね?(笑)。原理ではありませんが、イメージではそんな感じです。
石田:では岡田さん。岡田さんがやっていることを、これまたわかりやすく。
岡田光信氏(以下、岡田):こんにちは。今、宇宙がゴミだらけになっています。
石田:(笑)。
岡田:え? わかりやすいでしょ?
(会場笑)
岡田:古い人工衛星や、ロケットの第1弾は海に落ちるのですが、第2弾、第3弾はぐるぐる回っている。それらがどんどん溜まってきたんですよね。
それが衝突を繰り返していて、破片になった。破片も全部秒速7、8キロで飛んでいるので、ほかの衛星を爆発させる力もあるわけですね。これによって連鎖反応が起きています。
今、そのゴミを小さくなる前に除去しなきゃいけないというのが、宇宙業界のコンセンサスです。それを除去する会社です。
除去衛星なので同じ衛星なのですが、宇宙業界のカテゴリーで言うと、軌道上サービスという新しいカテゴリーになるし、ましてや除去サービスというのは我々が世界で初めてなのです。
これは何が変わってくるのかというと、GDPが宇宙で生まれます。今までGDPというものは、各国の輪で出来ていると思うのですが、これからは宇宙でGDPが生まれます。これだけじゃなくて、おそらく2030年ぐらいには宇宙で3ヶ所くらい消費地が生まれていると思うんですよね。
国際宇宙ステーションの新しい版と、月と火星のような感じです。そうするとGDPというのは、そこで加算されていくようになってくるので、たぶんみなさんが生きてる間には、GDPが地球版と宇宙版を足していくらというように。そんな時代が来ると思っています。
石田:おもしろいですね。宇宙GDP。ちなみに岡田さんの言っている宇宙のゴミというのは、あれですよね、数年前にやっていた映画の『ゼロ・グラビティ』で1番最初のほうにバーンと出てきて、宇宙飛行士を危険にした、あれが宇宙のゴミですか?
岡田:あれが宇宙のゴミです。フジテレビに呼んでいただいて、あの映画の本当と嘘について説明したことがあるのですが (笑)。
石田:ちなみに、どのへんが本当でどのへんが嘘なんですか?
岡田:あの映画を見たことがある人はいますか? 『ゼロ・グラビティ』。
(会場挙手)
岡田:ありがとうございます。ありがとうって私じゃありませんが(笑)。
(一同笑)
岡田:デブリというものがブワーッと飛んでくるのがわかると思いますが、あんなん見えません。秒速8キロというのは、鉄砲の弾の40倍の速さなので見えるわけがない。見えるうちに死んでます。
(会場笑)
あれは映画用にすごくスローにしたものになってます。あと、あの連鎖衝突の速度が早すぎます。連鎖衝突というのは1回起きると、宇宙は広いので1回拡散しますから、次の衝突というのはよくわかんない。
たぶん2年後とか、そんな感じになってくる。あれではまた90分後に連鎖衝突が起きるのですが、そうしたことにはなりませんね……というものになります。
石田:ありがとうございます。
石田:ディスカッションにどんどん入っていきたいと思うのですが、今回テーマが『宇宙ビジネスのフロンティア』となっています。
宇宙というのはそもそもがビジネスになるものなの? という話がここ数年くらいあって、まあなんとなくビジネスとして回り始めているんじゃないかと漠然に思っているぐらいで。実際にどれくらい売上が上がっているの? 誰がお客なの? といったあたりに、おそらくいろんな疑問がみなさんもあるのではないかと思います。
御三方から見て、みなさん個人として起業されていますが、従来宇宙というものは国がやっていたものじゃないかという見方があると思います。中村さんは、起業されてからもう10年くらいになりますよね?
中村:今年の8月でちょうど10年です。
石田:おめでとうございます!
中村:ありがとうございます。
(会場拍手)
石田:ちなみに、日本で10歳を超えた宇宙ベンチャー企業は何社あるんですか?
中村:え? あとPDとか?
石田:中村さんだけですか?
中村:10年目を迎えるのは……かもしれない。わかりませんが。
石田:もうベンチャーと言っていてはダメですかね。
中村:あ、そうか(笑)。
石田:大手企業にそろそろなってきたのではないでしょうか。
中村:それはどうなんでしょう。オールド?(笑)。我々本当は、ニュースペースと呼ばれるカテゴリーのはずなのに、すでにオールドカテゴライズされてしまったと。
石田:ちなみに、10年間やってくる中で、この領域がビジネスとして起業家がチャレンジできるようになってきたのは、一体何の変化が大きかったのだと思いますか?
中村:それはやっぱり、いろいろあると思いますよ。10年前と今ではぜんぜん環境が違いますから。10年前に宇宙ベンチャーをやろうと思うなんて、普通はクレイジー中のクレイジーですね。おそらく、グロービスで学んでいる人たちがやってはいけないことだと思うのですが。
(会場笑)
中村:当時どうして起業したかと言うと、やっぱり自分たちが学生時代に人工衛星を作るということをやっていて、それをなんとか続けたい。自分たちが培ってきた技術を社会に還元したいという想いが非常に強かった。
ほかにやっている会社がなかったから起業という選択肢を選んで、かつウェザーニューズというすごいエンジェルのお客さんがついてくれたからこそという、ほとんどラッキーで起業できたようなものでした。
普通に起業のステップを踏もうと思ったら、スタートできなかったと思います。今はやっぱり、当時とはぜんぜんビジネスに対する考え方も変わって来ています。
それはやはり、ウェザーニューズさんに対しては専用の衛星をしていたのですが、それをやっていくだけではなかなかビジネスとしてスケールしないというところがあって。
今ではもう当たり前ですが、自社で衛星を作って、そこから得られるデータをお客さんに対して提供していく。そうすると、お客さんは当然ながらリスクフリーでデータを使えますから、安心して使えるし、どんどん普及していくことができます。まあ、それを今やっているわけですが。
まず宇宙データを使ったことがない人が多かったということと、あとは使えるようにするための技術がぜんぜん成熟していなかったということが大きいと思うのです。
我々は衛星で地球のデータを撮りまくり、それを使ってビジネスをしようと思うと、それこそビッグデータやAIといった今流行りの言葉がありますが、その技術がなければ実現できません。
例えば、衛星から地球上を毎日撮影したデータを取ってこようと思ったときに、データ量は年間数ペタバイト、7、8ペタバイトなんですね。我々が起業したとき、2008年にそれをやろうと思ったら、その7、8ペタバイトをどこに貯めておけばいいのかということで(笑)。技術的にフィージブルじゃなかったわけですよね。
これがやはり、地上技術の発展によって、これまでは考えられなかった宇宙の大量のデータをうまくビジネスに使えるような環境が整ってきたということは、非常に大きいと思います。
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