なぜ子供は宿題よりゲームをやりたがるのか?
「好き」を生み出す、最もシンプルな方法

どうやればうまくなれるか。なぜうまくなるのか #1/2

飽きやすいはずの子供も、なぜゲームにだけは熱中するのでしょうか? たこ焼き屋の店主を勤める傍ら、少年たちにサッカーを教えている田仲正明氏が、「上達する」よりも「好きになる」ことに主眼を置いた、飽きさせない指導法を伝授しました。(TEDxKagoshima 2014より)

お父さんは子どもの前でカッコつけてしまう

田仲正明氏(以下、田仲):みなさん、携帯電話切ってますか? 僕も今切りました。なぜなら、たこ焼きの注文が入ったらまずいからです。

(会場笑)

「ごめんね、今日TEDx出てるからたこ焼き焼けないんだ、明日来てね」って言わないといけないですからね。

たこ焼きやってると、いろんなお客さんが来て、いろんな立場の人が来ます。たまに来る人でちょっと面白い人がいて。お店があって、駐車場がだいたい5~6m先にあるんですけど、駐車場で車を停めて降りて、革ジャンを着て、店にやって来て「たこ焼き1人前お願いします」って言って、革ジャンを脱ぐ人がいるんですよ。

(会場笑)

ちょっと面白いなと思って話してたら、その人と運動会の話になったんですよね。運動会ってやっぱり、子どもの前でお父さんってカッコよくありたいんですよ。今ちょっと、その辺で大きく頷いた人いましたね。気持ちわかります。今度飲みに行きましょう。

子どもの前ではカッコつけたいんですけど、そこで何を血迷ったか、200m走とかにエントリーしちゃうんですよ(笑)。もう最後の50mなんて、それが50kmに感じるくらい足が動かない。

それでね、その革ジャンのイケメンのお兄ちゃんに「いやあ、走れなかったよ」「身体がついてこなくてね、この年になると」って話をしたら、そのお兄ちゃんが「わかるけど、仏教的にはちょっと違うんだよね、その考え方」って……。

ぶ、仏教的? イケメンのお兄ちゃん、仏教って言ったよ、と思って。そのお兄ちゃんが教えてくれました。仏教では、ついていけない身体、つまり、精神はもう200m走ってるんですよ。でも身体は150mで止まってるんですよ。じゃなくて、150mでもうハアハア言って、足が止まっちゃう身体についていけてない精神だよ、って言うんです。

なるほど、面白いねって話をして、でもじゃあ何で仏教なのって話をしてたら、その人が普段の格好が革ジャンだけど、車の中に法衣が入ってたんです。法衣(ほうえ)わかりますか? お坊さんのちゃんとした格好。お坊さんが法事の帰りにたこ焼きを食べに寄ってた。っていうのが、たこ焼きやってるとわからないんで、すごいなーなんて話をしてたんですけど。

子どもに「サッカー教えて」と言われて気付いたこと

ちょっと困ったことが起きまして、お父さん、またカッコつけないといけなくなったんです。彼は10歳。名前はコウといいます。皆さんのなかに、10歳を経験してない人はいないですね? ちょっと10歳の頃を思い出してください。何かに夢中になってたことがあると思うんですよ。僕の世代とかだと、ちなみに僕は三国志っていうマンガに夢中になってました。

人それぞれいろいろあると思うんですけど、彼も今夢中になっていることがあります。さて、何でしょう?

(会場笑)

……そう、彼が夢中になってるのはサッカーです(笑)。そこでサッカー教えてくれって言うんですよね。まかしとけと。お前は10歳でしょ、まだこの世に生まれて10年でしょ。でも俺ね、お前が生まれる10年前からJリーグ観てるからね。

(会場笑)

(消滅したJリーグクラブの)フリューゲルス知ってるからねって、教えてあげるよって言ったんです。こうやってやるんだよって。

……僕、大事なことを忘れてたんです。僕ね、ブラスバンド部出身なんですよ。やったことないやって思って、でも、お父さん強がらないといけないから、ライセンス取って一応教えることにしたんですね。こんな風にして教える人が多いんですよ。じゃ、リフティングを5回やってください。

田仲:おお! 出来たね!

(会場拍手)

うれしいね。じゃ、ちょっと10回やってみよう。

田仲:……7、8、9、10、OK! 多分、こういう感じで物事を教える人が多いと思うんですけど。5回出来たら10回、10回出来たら20回、30回、50回、100回、150回、200回って感じで、だんだん増やしていく。

でも子どもって、やっぱり飽きるんですよね。飽きてきて、もういいじゃん、しんどい、今日はやりたくない、宿題もしないといけないし、時間割もまだしてない、みたいな感じになってくると、強烈なライバルが現れます。それが……ゲームです。

田仲氏が取り入れた指導法

ゲームってやっぱりすごいんです。彼が言ったんですよ、サッカー教えてくれって。で、僕ブラスバンド部出身なのにライセンス取りに行ったんです。なのにゲームしたいって言うんですよ。勝てないんですよね、ゲームに。

なんとかしてサッカーやろうぜっていう風に言ってたんですけど、どうしてもゲームしちゃうんで、ちょっと僕もゲームやってみたんですよ。スマートフォンにアプリ入れて。そしたらちょっとわかったんです。ゲームってこういう構造になってる、だから子どもはハマる。じゃ、そのハマる仕組みを応用してサッカーを教えたらどうなるんだろう。ということでやってみたのが、こんな感じ。じゃ、インステップ。

田仲:もうちょっと高く、胸めがけて。もうちょっと、ちゃんと当てよう。大丈夫、(会場の)皆はおにぎりやと思ったらいい。

田仲:もうちょいやな。えっとね、ミートして欲しい。リフティングでミートして、5回でいいから、ちゃんと無回転でミートするって意識で、5回だけやってくれる?

田仲:OK、OK。そこで当てる。やってみよう。

田仲:うん。かなり、強いね……。

(会場笑)

ありがとう。こんな感じで、今やったことは、リフティングの練習に、インステップキックの練習をただ混ぜただけなんです。ただ混ぜただけなんだけど、それが結果にすぐに反映される、という形をメニューとして入れてみました。じゃ、コウ君帰ろうか、ありがとうございました。

(会場拍手)

子どもはなぜゲームに夢中になるのか

ゲームの本質って何かって知りたくて、僕もやってみたんですよ。やってみたら、主人公が敵を倒すっていう。敵を倒して、姫を助けるってゲームだったんですけど、最初、主人公が敵を倒すんですね。弱いんですよ、その敵が。そして倒すと経験値が貰えて、自分のレベルが上がるんです。

自分のレベルが上がると、強い敵が現れて、そいつを倒すんですよ。そいつを倒すと、またレベルが上がって、最後ボスをやっつけて姫を救出する、みたいなゲームだったんですけど、ゲームって、時間かけて費やしたら、その努力は必ず報われるようになってるんです。だからゲームって面白いんですよ。そのスパンがすごく短いんです。

努力する、反映される。ああ、気持ちいい。努力する、反映される。うわあ、気持ちいい。好き! ってなっちゃう。だから僕、ゲームに負けるなって思って、同じ仕組みを取り入れたんです。

好きにさせるために教える

ものを教えるって、多分、そういうことになっていくんじゃないかって話です。そもそも、世界の富っていうのは、まず農業の時代がありました。商業というか農業というか。インドでコショウを調達して、イギリスに持って行ったら、めっちゃ売れた、儲かった、とか。みかんを嵐の中、和歌山から江戸まで持って行った、儲かった、とか。アービトラージ、差益が富だった時代があるんですね。

その後、産業革命が起こって工業の時代がやってきます。工業って何をしますか? いろんな所から原材料を調達します。調達して集めて、工場で加工して出来上がった製品が売れます。付加価値が富です。という時代があって、農業の時代は当たり前ですけど、イギリスで売る、インドで調達する。じゃ、イギリスとインドの言葉を覚えなきゃいけないよね、それをメモ出来るように書けないといけないよね、計算できないといけないよねって、読み書きそろばんになるんです。

読み書きそろばんって、寺子屋じゃないですか。寺子屋って、皆さん、寺子屋に行ったことがない人が多いと思いますけど、僕ももちろんないですけど、(会場の皆さんのように)きれいに座ってないんですよ。ある者はちゃぶ台にこっち向いて座って、ある者はそいつと向かい合わせで座って、ある者は壁に向いてひとりで勉強したりってことをやりながら、出来なかった子のために先生はすぐそこで待ってるんですよね。で、先生のところへ持ってきて「出来ましたよ」っていう風にやってた。それが読み書きそろばんの、寺子屋のアーキテクチャ。

で、工業の時代。工業の時代は、さっき申し上げたように工場があって、そこで安定的に加工してっていうその"労働力の共有"が必要なんです。ということは、大事になってくるのは、皆が一律に、こんな感じで(会場の皆さんのように)一律に皆座って、一斉に先生のほうを向いて、知ってる先生と、知らない生徒がいて、その持ってる知識を同じタイミングでポンっと提供することが出来る。

すると、知らなかった生徒がその情報や知識を埋めることができる。そしてそれを埋めたかどうかを確認するのが試験なんですね。っていうようにして、教えるっていうのも歴史があった。 で、今。ポスト工業時代。工業の次の時代ってなんだろうってところになってます。

まあまあ見えてるように、今の富の象徴はイノベーションです。中にあるものは既にある。でも、組み合わせ方、優先順位のつけ方、再構築の仕方によって、新しい価値というものが生まれて、その新しい価値は皆さんの生活をちょっと破壊して、ちょっと進化させて、ちょっと変化させて、その価値というものが皆に認められるっていう時代が今来てます。

今、その時代が来て、「イノベーションってどうやったら教えられるんだろう」。これ、お父さんちょっと考えるんですよ。イノベーションって、これ(スマートフォン)作った人は絶対デジタル好きなんですよ。他でも何でもそうです。イノベーションってことが至るところに起きてて、至るところに起きてるイノベーションを起こした奴って、それが好きな奴なんです。

なので、どうにかして彼にはサッカーを好きにさせたいんです。普通、サッカーを教える人は、サッカーを上手くしたいんですよ。でも、違う。サッカーを好きになれば上手くなる。上手くなるのは好きになるためだっていう風に教え方を変えてる。というのが、お父さん、唯一のやせ我慢です。

ちょっと好きになるために、ちょっと上手くなる

今日はお父さんの話をしたけど、実は今日ってお母さんの日ですよね。お父さんっていうのは、やせ我慢を使って何とか良い環境、アーキテクチャを作ろうとする。お母さんは、家庭とか、そういうもののアーキテクチャを使って、お父さんにやせ我慢をさせにくるんですよ(笑)。

この両輪が何とか回って、それが子どもに伝われば、何とか教育、家庭に関してですけど、家庭に関しては何とかなるかなという風に思ってるんです。ちょっと楽観的に思ってるんです。

別に、100点採らなくていい、とかはないですよ。それは100点採って欲しいし、ちゃんと遅刻も欠席もないように行って欲しいし、宿題もちゃんとやって欲しいし、前の日の夜にちゃんと時間割を綺麗にやって、机も綺麗にしてて欲しいけども、もっと大事なことが多分ある。

それは夢中になるとか、好きになるとか、これやってたらもう他は何もいらないとか、そういうことが、10歳くらいのとき皆さんもあったと思うけど、それを忘れさせへんために今、どうやって身につけさせるかなんですよ。そこから先は何とかなる。心にどうやって火を灯すか。そこを考えて、今日も喋りに来ました。

皆さんが何に夢中になってるかわからないし、夢中になってるものを忘れてるかもわからないけど、ちょっと思い出して。ちょっと上手くなったら、もっと好きになるから。ちょっと好きかもしれないことは、ちょっと上手くなりましょう。そしたら多分、もっと燃えてくることがあると思います。

<続きは近日公開>

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2 近日公開予定

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