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休みたいあなたのための「休み方」講座(全6記事)

休日に寝すぎて月曜がつらい、土日に倒れ込むように休む…… ついやりがちな“NG行動”と、専門家が教える効果的な休み方

20年間「休み方」について研究している片野秀樹氏の著書『休養学』の刊行記念イベントが透明書店で開催されました。科学的に正しい休養法について、本書の内容に沿ってポイントを紹介しました。本記事では、効果的な休養の取り方やおすすめのタイムマネジメント術を語ります。

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「いかに楽に過ごすか」を追求するのは怠けではない

片野秀樹氏(以下、片野):(休み方のポイントについて)「効率や生産性を追求してほしい」ということです。効率や生産性を追求するということは、しっかりと休んでおかないと生産性が高まるような仕事ができなかったり、活動ができなかったりするわけですよね。そこは休養とつながると思ってます。

あとは、「いかに楽に過ごすか」を追求してほしいと思ってます。これは怠けではまったくなくて、自分自身で(楽な過ごし方を)追求していって楽にできたら、苦労するよりいいですよね。

長野弘樹氏(以下、長野):そうですよね。

片野:結果が同じだったらば、楽をしたほうがいいんですよ。

長野:間違いないです。

片野:でも、楽をするためには効率や生産性を追求しなければいけない。そこを追求するためには、捨てるべきものは捨てなきゃいけなくなるんです。ですから、ある程度は自分自身で必要なものと必要でないものを取捨選択せざるを得なくなると思います。

「全部やりたい、全部欲しい」というのは、おそらく無理だと思います。なので、捨てるものは早めに捨てて、「いかに楽に、効率良く進むか」というところを追求していただいたほうがいいかなと思います。

長野:なるほど。いや、めちゃくちゃ片野さんらしい回答だなと思いました(笑)。アカデミックじゃないけれども、逆のことを言う人が多いんじゃないのかなって。

特に「休め」という本って、ほかにもあると思うんですよ。考えることを放棄するじゃないですが、「頭を空っぽにしてとりあえずのんびりしようぜ」みたいな啓発をしている人はけっこういるなと思っていて。一方で(片野氏は)「休みたいんだったら効率や生産性を追求しろ」と。

片野:はい。生産性・効率を追求するんだったらば、しっかりと休んでおかないと追求はできませんよと。

長野:なるほど。なんかおもしろいなと思います。

片野:そうですか、ありがとうございます(笑)。

長野:「休もう」というと、「全部ほっぽらかそう」みたいな感じになりがちというか。

片野:でも目的が明確だったら、「じゃあ何のために休むんですか?」っていう。

長野:そのためには、効率や生産性を追求して、どうしたら自分が楽できるかを考える。休む時間が少しでも増えるとか、休みに充てられるのかを追求してほしいところですね。

片野:そうですね。それは大きい会社でも小さい会社でも同じような気がします。

長野:なるほど。しかも、サラリーマンだろうが自分が(会社を)運営していようが、これは一緒ということですよね。

片野:そうです。

仕事の時間は「オフタイム」から決める

片野:あと、3つ目がオフタイム。ここから仕事の時間を決めてほしいです。「朝起きて、会社に行って仕事を始めます」ということではなくて、その日に何をやらなきゃいけないのかって、ある程度はわかると思うんですね。そこに自分自身のエネルギーがどのぐらい必要なのか、わかるようにしておかないといけないと思います。

そうすると、前の日から「しっかりと休みをとっておかなければいけない」「夜更かししてはいけない」「深酒してはいけない」ということが、自然とわかると思うんですね。そうすると24時間の中でタイムマネジメントできると思うので、自分自身でそれをやっていただきたいなと思います。

もう1つ、「1週間」というところもぜひ考えてもらいたいなと思っていて。僕は「ウィークエンド」という言葉があまり好きじゃなくて(笑)。週末というと、カレンダーなんかを見ると土曜と日曜が一番後ろにきてると思うんですね。

それを見て視覚的にどう思うかというと、月曜日からスタートして、金曜日までずっといって「疲れた……なんとかここを乗り切れば土日で休める」という発想になるんです。

長野:確かに。倒れ込もうとしてますよね。

片野:そうですよね。仮にカレンダーが土日が前にあったらどう変わるかというと、「土日で月曜から金曜までの準備をしよう」という発想に変わるんですよ。

長野:なるほど。

片野:これって大したことじゃないんですが、自分自身の意識の問題なんですね。事前にタスクを考えて、その中で準備をするか・しないかを考えていただきたいなと思います。

海外の人が驚く、日本人の“時間の感覚”

片野:1週間の中で「この土日はしっかり休んでおかないと、次の1週間がなかなか乗り越えられないぞ」と考えると、「土日をどうやって過ごそう」という発想につながるんですね。どうやってしっかり休養して、電池を充電するかという発想に変わってくると。

カレンダーで週末は土日が後ろにあるというのは、残念ながらISOで決まってるんですね。ISOのカレンダーの仕組みです。ただ、アメリカのカレンダーは日曜が前にくることがあるんですね。もともとヨーロッパも古くはそうだったんですが、ISOができてからは、ヨーロッパはだいたい後ろに土日がきちゃってるんです。

長野:もう統一されたんですね。

片野:はい。アメリカは未だに日曜が前にきてると思うんですが、それだったらば土曜も週の始めに持っていっちゃったり、自分の発想次第なので、自分自身で簡単なカレンダーを作ってもいいと思います。

「この週は、月曜から金曜までの間にこれだけの仕事をしなきゃいけないんだったら、土日はこうやって休もう。これで自分自身のエネルギーを高めておこう」という発想に変えていただけると、週末がしっかりとこなせて、生産性や効率の追求につながるのかなと思ってます。

長野:気持ちの持ちようとか、考え方次第みたいなところがあるんですね。言葉としては「週末」と言うけれども、休みをどこに持ってくるかで準備や意識がちょっと変わってきて、気持ちの持ちようも変わってくるよということですよね。

片野:はい。海外から来た人が一番驚くことは何かというと、「日本は1日何時間あるんですか?」って聞かれる時があるんですね。

長野:え、どういうことですか?

片野:「1日何時間ですか?」と言ったら、24時間ですよね。でも、ふだん電車に乗る時に「25時」って見たことないですか? テレビ欄で「28時」って見たことないですか?

長野:あります(笑)。

片野:「それってどこにあるんですか?」って聞かれるんです。生活の中で、みなさん何気なく普通になっちゃってるんですが、それってちょっとおかしいんですよね。つまり活動すること、オンタイムを後ろにどんどんずらしていってるんですよ。

忙しいと「睡眠時間の削減」で帳尻を合わせようとする

片野:そうすると何が減るのかというと、自分の休養時間をどんどん減らしていて、睡眠時間も減らしてるんですね。

長野:休養する時間が減っちゃう。

片野:朝は5時からスタートするのに、29時までとかあるんですよ。それ、いつ休むんですか? という。

長野:0時がなくなってますよね。

片野:なので、そこは注意したほうがいいと思います。みなさん、リセットしなきゃいけない時は、24時は24時なんです(笑)。本当は25時はないんです。24時間の中でどういうふうにタイムマネジメントするかを考えなければいけない。

長野:なるほど。それが、この「24時間」だと。これって、最初に話した「疲労感」と「疲労」の乖離の話にもつながってくるのかなと思いました。「28時」といったズレを商業的なもので作ってるから、休養がとれなくて、疲労感と疲労のズレがちょっと出たりとか。

片野:だんだん時間的にも麻痺してくると思います。最終的にどこで帳尻合わせようかというと、みなさんは睡眠時間の削減をすることが多いと思うんですね。夜、ずるずるとなんとなく過ごしていて、25時、26時と、なんかまだ1日が終わってないような感覚でいる。そこから寝ても、朝起きる時間は変わらないんですよ。そうなると睡眠時間を削ってるんですよね。

日本人って、労働時間は(他国と比べると)それほどないけど、睡眠時間が短いと最初にお話ししたじゃないですか。そういうところにも理由があるのかなって思ってます。

長野:なるほど。私はGoogleカレンダーを使ってるんですが、実はGoogleカレンダーって(週の始まりを)日曜からにできたりするんですよ。今のお話を聞いて、ちょっとやろうかなと思いました(笑)。

片野:ぜひぜひ。

休日に夕方まで寝ると“時差ボケ”が起きる

長野:慣習的に、「月曜からが一般的だから」「見慣れているから」という、なんとなくな理由で私も設定を月曜からにしてるんです。ただ、日曜始まりや土曜始まりにすると、意識がまたちょっと変わって、それこそ「楽にしよう」というのができるのかなと思いました。

片野:そうですよね。だから、「週末はウィークデーのための準備だよね」というふうに考えていただけるといいと思います。

長野:「土曜日にスケジュールを開こう」というのは、本著にも書いてありましたね。……ネタバレしてしまった。

片野:いえいえ、大丈夫です(笑)。「休むこと=寝ることではない」というお話にもつながるんですが、「ソーシャルジェットラグ」というものがあるんですね。これは社会的な時差ボケのことなんですが、例えば「週末は昼まで寝よう。夕方まで寝ちゃおう」みたいな人、いるじゃないですか。そうすると時差ボケが起こるんですね。

長野:飛行機に乗ってないのに、勝手に時差ボケを起こすんですね。

片野:そうなんです。夕方まで寝ていたら、夜に寝られないですよね。それで月曜日を迎えるとなると、当然、朝ほとんど寝れない中で会社に行くことになる。それって生産性高いですか? というと……。

長野:良いパフォーマンスを出せないですよね。

片野:出せませんよね。なので、翌日の準備のために決まった時間にしっかりとお休みになる。おそらく、良いパフォーマンスが出せること自体が、自分自身のストレスの減少にもなると思うんですよね。

長野:休養というか、ちゃんと休めてるのかどうかわからないんですが……私は前日の準備をするんですが、「明日はこれがあるな」というのを見ると、気絶したくなって寝る、みたいな(笑)。

片野:(笑)。

長野:夜はできる体力がなくて、早く起きてやったりするんですが、次の日のカレンダーの詰まり具合を見たりして「もう寝ざるを得ん」みたいな(笑)。

片野:ありますよね(笑)。

長野:「明日もがんばらないかん」って思うと、眠くなるんですよ。

片野:なるほど。

長野:土日ではないけれども、明日はすることがなかったりすると、夜に「まだ〇時間遊べるぞ」みたいな考え方になる。だけれども、「明日はこれだけのタスクがあるよ」と、先を見る・準備をするという考え方になると、「休もうか」となる。考え方ですよね。

効果的な休養のカギを握る「DRIC」とは

片野:最後になるんですが、ぜひみなさんに覚えて帰っていただきたいことが、この「DRIC」というやつです。これは勝手に私が作ったんですが(笑)。

長野:(笑)。

片野:Dは「Distance」、Rは「Relax」、Iは「Input」、Cは「Control」という、この4つの言葉の頭文字を取ったのがDRICなんですが、これを、先ほどの休養の7タイプにうまく組み合わせていただけたらいいかなと思っています。

1番目のDistanceって何かというと「距離」です。仕事やストレスからいったん距離を置くことによって、自分自身の休養につなげるための方法です。

距離を置くというのは物理的な距離でもいいですし、心理的な距離でもいいんです。ストレスが高かったら会社からいったん離れるとか、会社の仕事から目をそらすとか、目をつぶって瞑想するのでもいいと思ってます。なんにしろ、もし休みたいんだったらちょっと距離を置くことが大切です。

2つ目がリラックスすること。可能な限り力を抜くということです。ここには「お笑い」と書きましたが、お笑いでも落語でも、あるいはストレッチでもいいと思います。自分自身に合ったリラックスする方法をとっていただきたいということです。

3つ目がインプットです。アウトプットばかりだと休養にならないんですね。何かを学習する、何かが熟達して上手になっていくという、インプットは休養になるんです。

仕事でも考え方をちょっと切り替えていただいて、「いつも自分は仕事で疲弊してアウトプットばっかりだ。でも、もしかしたらそれが自分の熟達のためになっていたり、インプットになっている」と考えると、心の安らぎにつながるんですね。

もちろん仕事以外でもいいんですが、何を学習したり、熟達したりする。「インプットや行動自体が、自分自身の将来のための投資行動だ。今は将来のために投資しているんだ」というInvestmentな発想に切り替えていただけると、リラックスにつながるかなと思います。

長野:確かに。責任とか日銭を稼ぐとかで仕事をしてると、この発想にはなかなか至らないかもしれないです。

一日の中で、数十分でも“わがままな時間”が必要

長野:何かのスキルが向上しているとか、「学ぶのがおもしろいな」って思うと、それはストレス解消につながっていると。

片野:こちらの書店(透明書店)もそうですよね。いろいろなインプットがあると思うんですよ。

長野:確かにそうですね。いろんな資料があります。

片野:良いインプットだらけだと思うんですね。それ自体はストレスではなくて、むしろ休養やリラックスにつながっていたりする。これは発想なんですが、そういう切り替えもできるのかなと思います。

長野:おっしゃるとおりです。

片野:最後が大切なんですが、コントロールです。これはちょっと乱暴に書いたんですが、「わがままになる」ということです。

どういうことかというと、自己決定権を持つということです。自分自身の行動や活動の中で、相手に合わせる、あるいは家族に合わせるなど、自己決定権を持っていない活動はストレスなんです。ですから1日の中で、自分で決定することができる行動をとっていただきたいと思います。

10分でも20分でもいいんです。「これは自分の時間なんだ」という自分の時間であれば、わがままになっていいですよね。わがままというのは、自分があるがままになるってことですから、好き勝手にするということではないんです。ほかの方に迷惑はかからない自分の時間なので、自分がやりたいことを決めて、やりたいことをやるようにしていただきたいと思います。

言葉を変えると「マイペース」にもつながると思うんですが、他人のペースに合わせるのはなかなか疲れるんですよ。なので、もしリラックスしたい、休養をとりたいなら、少しだけでも自分のペースを考えていただきたいです。

ご家族やどなたかとご一緒にお住まいならば、「ここは自分が決めさせてくれ」とご両親とお話ししてください。例えば日曜日のお休みは、子どもや旦那さんに合わせてどこか行くのではなくて、「今日は私のペースで、私に合わせてみんな活動してもらえませんか?」とか。

「私はちょっとストレスが溜まっているので、休養をとりたい」というお話をすれば、十分ご理解いただけると思うので、そんな日があってもいいのかなと思います。

DRICを頭に入れながら、7つの休養タイプなんかを上手に使っていただけると、生活が少し変わってくるかなと思います。

長野:(DRICと7つの休養タイプを)組み合わせる。1個、いいですか? すごく素敵だなと思ったのが、発音するために便宜上DRICって並べてるかもしれないんですけど、順番が素敵だなと思って。

片野:えっ、そうですか。

長野:まずはストレスと距離とってあげて、そのあとにストレッチだったり自分の趣味でほぐしてあげる。それで余裕ができたら、なにかしら考え方を変えてみて、インプットしたり活力を高めていく。最後のコントロールは、その上でも「わがままでいていいんだよ」という、この順番がなんか素敵だなと思って。

別に最初にわがままがあってもいいかもしれないんですが、なんかこの順番がきれいだなって勝手に思いましたね。

片野:ありがとうございます。

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