奇妙なヤポックの生態を紐解く

ステファン・チン氏:南米の熱帯雨林の下流に「ヤポック」という奇妙で小さな哺乳類が生息しています。

これは「ミズオポッサム」として知られており、水生の生活環境に適応した唯一の有袋類です。そして、水の中を居場所としているため、興味深い特徴が発達しました。オスにも同じく袋があるのです。

オスは、その袋をどう使っているのでしょうか? それはゴミなどを押し込むためです。ヤポックは夜行性であり、夜は小魚や甲殻類、昆虫やカエルなどの食物を探しながら川を泳ぐことに費やします。

彼らはカワウソやマスクラットの種でもありながら、キタオポッサムの親類でもあります。

同様に彼らは水中生活に適応しています。水かきのある足、撥水性の毛皮、そして舵として使用できる尾などです。水中生活に適応した特色が際立っています。ヤポックは、メスとオスの両方が袋を持つ、唯一の有袋類です。

メスはその袋を他の有袋類と同様に、子どもを育てるのに適した保護ケースとして使用します。

彼らは水生の生活様式を送っているため、メスのヤポックの袋は水密性(注:圧力が加わった環境下において密閉した液体が外部に洩れないこと)があります。母親が泳いでいる間、赤ん坊は安全に乾いたままでいられるのです。

オスの袋は水密性がありません、他の成長したオスのオポッサムや、成長したオスの有袋類とは違い、それが問題になっているのです。

若いオスの有袋類は袋がありますが、ヤポック以外は成長するにつれて失います。メスの袋のように、オスのヤポックの袋は泳いでいる間、安全で暖かくしているのです。陰嚢が繊細な袋を安全に保つのに役立ちます。袋がやや少し下垂していて、泳いでいる間に引きずってしまい、見えない物体に引っ掛けるからです。

陰のうと袋の関係性

袋が精巣を正しい温度に保ってくれるのでしょう。なぜなら、哺乳類は冷却したまま保つために体外に陰嚢があります。熱し過ぎると精子を破壊し、高温となった睾丸は男性不妊の原因になるのです。

しかし精子にとって冷却しすぎることは良いことではありません。あるいは水に濡れると冷却されるでしょう。水は空気よりも熱伝導率が良いので、より熱を早く失います。よってヤポックのこのユニークなシステムがあるのです。

他の水生の哺乳類も同様な問題に直面しています。彼らは袋がないので、生存可能な温度に接触するのに、何とか別の方法で工夫しているのです。鯨やイルカ、マナティーやアザラシなどの睾丸は内部にありますが、冷たい血流が、過加熱の極限から防ぐために、一種の冷却システムにつながっています。

アシカは、陰嚢を持っていますが、その垂下の程度はフレキシブルです。彼らは睾丸を出し入れすることができ、繁殖期の間中、冷却する必要があるときに外に出します。

カワウソは季節的な陰嚢を持つと言われています。彼らの精巣はあまりにも小さく、体外から十分に出ていないと繁殖できず、引きずったり、何ぶつかったりすることはありません

しかしながら、ヤポックの袋が、自然の選択によって繊細な精巣を助けるために存在していることは進化の系統から立証されています。もし正しくその場所にポケットがあればきっとそのように使うかもしれないからです。