マイナスイメージから始まったリファラル採用

宇田川奈津紀氏(以下、宇田川):最初にネオキャリアの方にお会いしたのは、3年半くらい前です。渋谷のガード下の大衆居酒屋に、ある共通の友人を通してお会いしました。そこにネオキャリアの副社長が、すごいオーラを放って座ってらっしゃったわけですね(笑)。

大衆居酒屋ゆえに申し訳ないと恐縮していたところ、「いや、いつも接待なので、こういうところが落ち着くんですよ」とお話しされていて(笑)。一瞬で、怖い方という印象から逆にすごく気さくな方だなと思いました。

そのときに「もしよければ、ネオキャリアに来ていただけないですか?」というお話もいただきました。私自身は、ネオキャリアって……「ブラック??」という悪いイメージがあったんです。目標達成するまでは徹夜しても帰れないような。

それで、その場はとりあえず穏便にお名刺交換だけして笑顔で帰ろうと思って、帰らせていただきました。すみません(笑)。だから、西澤社長に面接ではじめてお会いしたときに「会社のイメージが悪いですよね。なぜですか?」と切り込みましたよね? 

西澤亮一氏(以下、西澤):そう言っていましたね(笑)。

宇田川:そのあとも、ちょこちょこネオキャリアの噂は、耳に入ってきていましたが、私の前に現れる現ネオキャリアと元ネオキャリアの人間が、みんな同じことを言うんです。

「ネオキャリア、めっちゃいいよ。宇田川さん、もうネオプロパーみたいだもん」「西澤さんに会いに行ったほうがいいよ」「会いに行って、西澤さんの言っていることが正しいと思うなら、宇田川さんはネオに合うと思うけどな~」と言うんですよね。

私と会った元ネオキャリアの人たちは、口を揃えて、「いつかネオキャリアに帰りたい」って言うんですよ。「今の自分では力になれない。だから、今は外で学んで力をつけて、その上で戻りたい。それくらい良い会社だと思ってるし、メスライオンにも合っていると思う!」と、20人くらいにリファラルされたんですよ。

私と関わってくれた元ネオキャリアと、現ネオキャリアの人たちがみんないい人で、嘘をつかないし、めちゃくちゃ仕事もできる。それこそ、こんなにワンストップで自分一人で仕事を回せる人たちはIT業界にもいないんじゃないの? って。そんな人たちが、みんな口を揃えて言うものだから、そこからネオキャリアに少し興味を持ち始めたんですね。

いったん起業をやめて、サラリーマンとしての道へ

宇田川:でも、私はその時、人工知能やIoTを加速させていく業界にいたので、これから生き残っていくのは、やっぱりそういうテクノロジー分野に力を入れている会社じゃないかなという思いがあって。それに、ネオキャリアは人材系というイメージがあったので、「人材系はもうやり切ったから、帰りたくないな」という気持ちはありました。

ただ、自分が前職でjinjer(人事管理システム)を知ったときに、びっくりしたんですよ。そもそも自社で開発したら、数億~数十億円もかかる世界ですよね。それを、こんな低価格で提供しているネオキャリアって、なんでこんなことを始めたんだろう。この人たち、どこに向かっていくんだろうと思っていました。

すると、HR NOTEの編集長が来てくれて、「ネオキャリアのエンジニアは300人を超えているけど、エンジニアがもっと必要になってくるんです! 宇田川さんだったら採れるでしょ!」と言われたんです。

そのときの私は、前職で上場もして、自分の目標は達成していました。もう土台は作ったので、自分がこの給料でこの仕事をするのは給料泥棒なんじゃないかなと思い始めていました。

私の給料を2分割して2人を採用したほうが会社のパワーになるんじゃないかと考えていて、世の中が「メスライオン」と呼んでくれて必要としているのなら、起業しようと思っていたんです。

それで、ネオキャリアにはコンサルティングに入る予定だったんですけれど、いろいろな事情が重なり断念せざるを得なくなってしまって。私に仕事をお願いしたいと言っていただいた会社全部に頭を下げに行ったら、全社が「宇田川さん、これからどうしますか? うちに来てくれませんか?」とい言ってくれて、ああ、40歳になろうとしている自分でも値打ちがあるんだなと思ったんです。

西澤:(笑)。

宇田川:ネオキャリアも、西澤社長が何回も出てきてくれて「うちで宇田川さんのやりたいことをなんでもやったらいいよ! 宇田川さんって、たぶんあと2、3年くらいしたら独立しちゃいますよね?」と言っていたんです。覚えてますか?

西澤:覚えてます、覚えてます。

宇田川:私は西澤社長に「お前みたいな若造が!」と怒られるつもりで会いに行ったんですけど、すごく笑顔で「何年いてくださいますか? その間に、うちのキャリア採用の組織を作っていただきたい」というお話をいただいて、こんなふうに言ってくれるんだ……と思いました。私がやりたいのは、攻めの採用やダイレクト・リクルーティングの加速、大規模のリファラル、会社が人の採用において強くなることでした。

生命力の高そうな経営者がいれば会社は存続する

宇田川:私は前職時代に、会社が一夜にして大暴落して潰れる恐怖を味わって会社は本当に人で崩れていくということが、すごくよくわかりました。それで、潰れない会社を作るために、一番生命力が高い経営者のところで働こうと思ったんですよ。自分より生命力が高ければ……(笑)。

西澤:会社の持続性は高そうですよね(笑)。

宇田川:どんなことがあっても、仁王立ちで立ち続ける経営者がいれば、「社長があそこまでやってるんだから、私もやろう!」という気持ちになれると思ったんです。

社長は「宇田川さんはどうなりたいんですか? うちはシェアを取り切ってナンバー1になりたい」とおっしゃっていました。私ももともと営業マンなので、ナンバー1を取りたいという言葉に感化されて「本能」に火がついてしまいました(笑)。

「入社します」とお電話で済ますこともできたのですが、それは嫌だったので、西澤社長や副社長にお集まりいただいて、頭を下げて「女性としての魅力はゼロですが、今までの経営者に唯一認めていただいたのが仕事です。私にネオキャリアの看板を担がせていただきたいです!」というお話をしました。

西澤:最後に、ヤクザの嫁のような状態で言っていましたね(笑)。

宇田川:そうなんです(笑)。私は、「仕事を糧に前向きに生きていきます」という宣言をしたら、西澤社長が手を叩いて喜んでくれて(笑)。今だからお話できるのですが99.999パーセントまで他社に決まっていた気持ちをグッと(ネオキャリアに)向かせたんです。

西澤:カルチャーフィットという意味ではよかったですね(笑)。宇田川さんみたいな方が10人くらいいると大変ですけど、5人くらいまでならすごくいいです。

宇田川:そうですよ。ものすごく草の根分けて供給すると思います(笑)。

西澤:宇田川さんは、中途のマーケットでは圧倒的な力と採用力を持っているんですよ。外から見ていても、宇田川さんがブランディングをしているからいい人材が採れているのがわかるので、「是が非でも、ああいう人が欲しいよね」と、よく会議で言っている代表的な1人だったわけです。

3年半前はうちの副社長がお声がけして、そのときはダメだったんです。そして3年後にたまたまご縁があって、メスライオンが動くらしい! 山が動くらしい!と(笑)。

宇田川:やめて、やめて(笑)。

採用のカギは、ラブコールの回数と接触頻度

西澤:メスライオンが動くらしいという話を聞いて、僕も直接はお会いしたことがなかったので、ツテを辿って会わせてくださいと。

最初にお会いした印象は、本当にイメージどおりのパワーと負けん気と、あとは決めたことはやる人だなと思いました。外から見ていると個人主義の人なのかなと思ったんですけど、ぜんぜんそうではないんだということもわかりました。

宇田川:あ、うれしい。

西澤:組織にアジャストしながらオーナーシップを持っていく。最初の面談で、まさに一番欲しい人物像だと思いました。それまでは、実際に会って話してみないと、どうなんだろうなというところはあったんですよ。

宇田川:ちょっと尖りすぎてるんじゃないかなと(笑)。

西澤:尖りすぎていると、いまのうちのような会社だとうまくアジャストできないところがある。どうなんだろうなと思っていましたが、最初に話したときに「これは絶対に採りにいくべきだよね」と。

本当に、採用はラブコールの回数と接触頻度なので、できるだけ短い期間でどれだけ想いを伝えるかということで、とりあえず口説き続けようという感じでした。

宇田川:本当にそうです。断りに……。

西澤:断れないようにしよう、という。

宇田川:戦略に負けました(笑)。

西澤:やっぱり人は、何回も会って、嫌いじゃない人に「好き」といわれると……。

宇田川:はい、気持ちが動きますよね。

西澤:嫌いだったらちょっとあれなんですけど、宇田川さんはもともとネオキャリアを好きな人だったと思うので、戦略勝ちですかね。

宇田川:そうですね。でも、ネオキャリアに入ろうと思えて、社長に負けて良かったんです。社長に負けてうれしいですよ。

西澤:僕自身もいろいろなお話をしていくなかで、お互いにとってベストな選択だという自信もありました。それは面談でもお伝えしていたと思います。

宇田川:外から見ていて「西澤さんはもっと怖い人だ」と勝手に思っていたんです。いい意味ですごくギャップがあって、なんでこんなに穏やかなんだろうと思いました。

西澤:昔は「詰め澤」といわれていたので。

宇田川:(笑)。

経営者が前に出るべき時と、見守るべき時

西澤:最近、すごく(穏やかになったと)いわれますね。もともと「鬼澤、詰め澤」キャラだったので。副社長の加藤(賢)がよく言っているんですけど、僕は、経営者としていまの自分がどういう人格を持つべきかを意志から落とし込んで、自分自身を演じているそうなんです。だから、昔から誰かに対してキレたことはないんです。淡々と理詰めで話す感じですね。

宇田川:私は戦国武将がすごく好きなんですけど、会ってお話をしていく中で冷静の中に激しさと情熱があって西澤社長は家康だと思いました。相手が出て来るのを待つ感じの方なのかなと思いました。

西澤:そうですね。「待つ」というところに関連して、僕がすごく好きな例え話があるんですが、本当に優秀なリーダーとはどうあるべきかというものです。砂漠の中でオアシスを探しに行くときは、とにかくリーダーが「こっちに行こうぜ」と言って、みんなを引っ張っていきます。

ただ、オアシスにたどり着いて、そこに壮大な街を作るとき、リーダーは後ろでみんなを見ていなければいけないんです。つまり、「これは間違いない」と思ったところでは、リーダーが出てくると人が動かなくなるから、グッとこらえてニコニコしながら見ていなければいけないという例え話なんです。それは本当にそうだなと思っています。

自分が口出ししたり、現場に出るのはよくない。(部下と)一緒にお客様のところへ行っても、部下が僕のほうをちらっと見るので、そこは口を出さないように心がけています。

また、2007年4月くらいに新卒が大量に入ってきて、そのあたりで離職率が高い時期があったんです。そのとき、僕はいわゆるスーパーマイクロマネジメントをしていて、150人いても、全員の顔と名前とパートナーの名前、KPI、今日は何件アポを取っていて、どれくらい進捗が遅れているのかなどを、全部わかっているような状態でした。

宇田川:すごい。

会社が伸び悩んだ時期に、チーム制へ方向転換

西澤:でも、そのときに売上が止まってしまったんですよね。社員数も伸びなくなって、社員が100人~150人で推移して、売上も2年くらいは20億円くらいの状態で推移していたんです。こんなに一生懸命仕事にフルコミットしているのに、なぜ会社が伸びないんだろうという時期がありました。

そうしているうちにリーマンショックが来たんですが、そのときに社員といろいろ話して目が覚めました。「やっぱり、自分が作りたい会社をもっと明確に作らなきゃいけない」と感じたんです。

そして、現場に降りて役割分担を決めたら、すごくうまくいったんですよね。自分が全部やるよりもチームでやったほうがうまくいくと認識して、一歩ひいて、まずは彼らに任せるようにしました。

ただ、背骨をきちんと作らないと会社としてうまくいかないと思ったので、ネオキャリアブックという400ページくらいの冊子を作り、守ってほしい大切な考え方を伝えて権限を渡しました。

そこから、会社が倍々で伸びていった経験をしました(笑)。2011年~2012年頃ですね、経営者があまり表に出ないほうが伸びるという気づきを得ました。中小企業の100人の壁といったりもしますが、それまでの自分のスタイルを変えないといけないフェーズだったんでしょうね。

その時に大事だったのは、たぶん企業の文化なんです。ネオキャリアは、カルロス・ゴーンさんの影響も一部あって、コミットをとても大事にしています。コミットというのは約束なので、自分が口にしたことはきちんと達成すべきだということなんですが、この考えがブラックかどうかはマインドの話だと思うんです。

例えば働き方に関して、昔は野球のように、延長戦がどんなに続いても、暗くなって試合ができなくなるまでやり続けるのがビジネスだよねと(いう考えでした)。「プロだからこそ、時間ではなく成果で仕事をしている」と言っていたんですが、いまは世の中の流れや我々の会社の規模拡大も含めて、ルールが変わっています。

一流のビジネスパーソンになるための時間術

西澤:野球ではなく、サッカーに変わった。つまり「45分×2回、アディショナルタイムで何対何で終了」というルールの中で勝利しなければいけないわけです。そうすると、働く時間は決まっているので、ギリギリまでやるのではなく、今度は空いた時間をどう使うかがすごく大事なんです。

例えば僕らが部活をやっていたときは、サッカーにハマっていれば、家に帰ってもボールを蹴ったり、ご飯を食べながらボールを転がしたりしていたんです。うちの息子もサッカーが大好きで、2人とも朝5時に起きて昨日のアジアカップの準決勝を見てるんですよ。

宇田川:お子様の純粋さがかわいいですね。

西澤:そのくらいハマると、「クリスマスプレゼントは?」「ブラジルのユニフォーム!」とか、「お正月のお年玉で何買うの?」「クロアチア(のユニフォーム)!」とか、ユニフォームだらけなんですけど(笑)。

ビジネスも一緒で、(仕事に)ハマれば、空いた時間も本を読んだり、セミナーに行ったり、人と会って話をしたり、自分で悶々と未来のことを考えたりと、やっぱり、仕事に触れ続けていくはずなんですよね。

これはブラック云々ではありません。空いた時間の使い方が、ビジネスパーソンとして一流になるために欠かせないプロセスだと思っているんです。新卒には、いまだにそう言っていますね。

宇田川:めっちゃいい! あ、めっちゃいいとか言っちゃいました(笑)。私もスタンスが一緒なんですよ。前職では、新しい業界でいろいろな職種の人たちがいて、見聞きすることのすべてが斬新だったんです。だから、自分の人生やスキルを豊かにするために、この時間をどう使うか(を考えました)。

例えばCTOとランチに誘って、「コードが書けない人間と話はしたくない」と言われて……この人に好かれるにはどうすればいいのかを考えて、プログラムを書いて勉強をして話し掛けに行ったら「俺はバカは嫌いなんだ、1回しか教えない。それで理解しろ!」と言ってもらいました。

30代前半くらいまで、そういう時間をずっと体感してきました。お金よりも自分が成長できるような時間を過ごすことで、その先の人生がより豊かになり、できることが増えると感じました。

西澤:そうですね。

ワークとライフのバランスは、年代や志向によって変化する

宇田川:だから、ネオキャリアに入社して40歳になって、正直に言うと毎日苦しいですよ(笑)。前職では、目をつぶってでも人事の仕事を回せていたんです。100人くらいの会社の人間が、いきなり3,000人の会社の責任者になったので、もう天と地がひっくり返ったような驚きと苦しみの連続でした。

答えを出すために毎日仕事に向き合いたかったんです。だから私は「仕事ストップ」といわれると、あれもこれもやりたいのに、ちょっと待ってくださいよ、という感じはありますよね(笑)。

西澤:新人研修で、よく「ワークワークバランス」という話をしていたんですよ。もちろん、人生はワークライフバランスであるべきだと思います。でも、20代はとにかくインプットとアウトプットを増やして、年を重ねていくにつれてライフが多くなっていくと思うんです。宇田川さんは、たぶんずっとワークの人なんだと思うんですけど(笑)。

宇田川:(笑)。

西澤:そこはブラック云々の話ではなく、仕事のスタンスの話なので、ちゃんと伝えないとずれてしまうとは思いますね。

宇田川:結局、会社の理念に共感する人が残って、会社を大きくして上に上がっていく感じですよね。

西澤:そこの考え方が一致する人とは、一緒に働いていけると思っています。

宇田川:私は傍から見ていて、そういう働き方はブラックではないと思っています。ある程度の時間の制限は必要ですけれども、本当に仕事と向き合いたい人は「早く帰れ」と言うのは苦痛ですし。

でも、21時にはPCがシャットダウンされるこの会社に入って、メンバーが定時の18時半までに本当に仕事ができているか、やり切ったかを確認して、どうしたら限られた時間で実行できるのかを考えるのが責任者だと思っています。私は、ネオキャリアはそこがちゃんとできていると思っているんですよね。

西澤:僕らの会社って、けっこうバカ正直じゃないですか。

宇田川:はい、本当にそう思います。素直な人が多すぎる。

西澤:素直でいい人が多いので、外側のイメージをよく見せるような小手先のことが嫌いで、本質(的なこと)をちゃんとやっていれば、会社のイメージは良くなると思っていたんです。「経営はチームであって、経営者が目立つとつまらない、出たくない」という無駄なこだわりがあったんです(笑)。

でも、そうしたことが重なって、社外取締役の方々からは、「ネオキャリアは巨大だけど、情報量が少ないから、外からはよくわからない会社だ」といわれました。

元ソフトバンクの嶋(聡)さんが社外取締役で入ってきたときも、「西澤くん、経営者の責任として、ブランディングはきちんとトップが意識してやっていかなきゃいけないよ」といわれて。確かにそうだなと思って、最近は反省して表に出るようにしているんです(笑)。