フランス映画をテーマにトーク

中井圭氏(以下、中井):エンターテイメント・トーク番組、WOWOWぷらすとー!

(会場拍手)

中井:ということでね、本日は2016年6月21日、司会の中井圭です、よろしくお願いいたします。本日のお相手は?

福永マリカ氏(以下、福永):福永マリカです。こんばんは、よろしくお願いします。

中井:いつもと雰囲気が違う。

福永:ホントですよ。

中井:いつもはね、暗い部室みたいなところでね。

福永:そうですよ。

中井:暗い地下室みたいなところで閉じ込められているわけですよ。

福永:圧迫感がある。

中井:圧迫感があるね、みなさん分からないと思うんですけれどもね。それにスタジオに入るときに警備員のおっちゃんがですね、聞いてくるんですよね、「誰ですか?」。いまだに呼び止められますからね。今日は呼び止められることなく、会場に入ることができたわけですけれども。

今日ね、豪華生放送だって知ってた? 初?

福永:初ですよ。

中井:私、初?

福永:初ですよ。私、ここが壁じゃないことないですもんね。

中井:そうだよね、だいたい壁だもんね。

福永:だいたいホワイトボードですもんね。

中井:密室感があってね。なんかあったら犯人誰かみたいなね。3、4人のうち誰かみたいなね。

ということでテーマ。公開ナマ。フランス映画が好きすぎる、ということで。フランス映画が好きな人、ゲストを紹介してください。

映画評論家&TIFFプログラミングディレクターをゲストに

福永:この人に聞け、映画評論家の松崎健夫さんです。

松崎健夫氏(以下、松崎):よろしくお願いします。

中井:好き? フランス映画。

松崎:映画はなんでも好きですね。

中井:最近、健夫さん、キネ旬の星取りをされていますけれども。どうしたんですか? 健夫さんが星を取るのは珍しいなと思うんですけれども。

松崎:僕は基本的に、映画に点数を付けないんです。とはいえ、ベテランの評論家さんたちがみなさん通ってきた道ですし、240字くらいしかないんですけど、その中でほかの人が書かないようなことを書いてみようかなと思いました。

中井:同じ映画を何人かで批評するので、この人はこう思うんだって思うときがあったりするんですけど、健夫さんの文章、僕は好きですよ。

松崎:ありがとうございます。悪口は書かない。汚い言葉も書かない。

中井:健夫さんは基本的に、その人に会ったときに言えないことは書かないですもんね。

松崎:そうです。

中井:すばらしい、人格者です。そしてフランス映画も好き、と。ということでよろしくお願いいたします。

福永:そして。WOWOWぷらすとでもお馴染み。TIFF(東京国際映画祭)プログラミングディレクターの矢田部吉彦さんです。

中井:ぷらすとでもお馴染みだと思います。

矢田部吉彦氏(以下、矢田部):よろしくお願いします。

中井:矢田部さんといえばフランス。矢田部さんってフランスに住んでいましたよね。

矢田部:微妙に難しいんですけども。

中井:微妙ってなんですか。やめてくださいよ、違法なことを言うのは。ナマで。

矢田部:生まれはフランスなんですよ。

中井:生まれはフランス、言うてみたいわ。

矢田部:でもすぐに日本に帰国しちゃったんで。だから少しだけ住んでいました。

編愛コミュニティアプリ「シンクル」とのコラボ

中井:そうなんですねえ。でも、フランスに縁が深い印象があるんですけども。

矢田部:そうですね、小学校のときにヨーロッパに住んでいたんですけど。

中井:小学校のときにヨーロッパに住んでた?

矢田部:またもうやめてくださいよ。

中井:言うてみたいですよ、小学校のときにヨーロッパに住んでたって。わたし川西(兵庫県)ですよ。

矢田部:まあまあその、フランススクールっていうところに通っていたんですよ。

中井:えー、なるほど、何語で喋っていたんですか。

矢田部:フランス語でしたね、はい。

中井:何歳くらいから映画を観ていたんですか。

矢田部:映画は、小学校低学年くらいのときに、親にフランスの映画とかに連れて行ってもらってましたね。

中井:でた。英才教育じゃないですか。

矢田部:いやいや、べつに街に映画を見に行っていただけなんで。ま、そんなに英才教育でもないんです。

中井:健夫さん、小学校のときに映画はどこに行ってたんですか?

松崎:神戸とか明石に。

中井:(矢田部さんを指さして)仲間、仲間ですよ。こっち側。

松崎:僕もそっち側ですよ。

中井:いやいやそれでも、凄いですね。本当にスペシャリストです。筋金入りのフランスですよ。フランス映画が?

矢田部:大好きです。

中井:ということでね、今日は編愛コミュニティアプリ「シンクル」さんとコラボしてまして、アンステ、いつも言えないですこれ。アン、ス、ティ、チュ・フランセ、

矢田部:(流ちょうに)アンスティチュ・フランセ。

パーティーでも映画の話ばかりしていた

中井:いまちょっとフランス語でましたね。そう、そこでお送りさせていただいているのですが、健夫さんとは最近ここに来ることが多いですよね。

松崎:そうですね、この間もトークをこの場でやらせていただきました。

中井:あと、『裸足の季節』のレセプションもここでしたよね。

スタッフ:なんかパーティーっぽい服をきて写真を撮っていたじゃないですか、美人と。

松崎:あれは監督ですよ、監督。

中井:あの女性?

松崎:そう監督です。

中井:健夫さんと僕、お互い1人じゃ行けないよね、と言って2人で行ったんですよね。

スタッフ:だいたい、パーティーとか苦手ですよね。

中井:我々、パーティーでも端っこのほうにいつもいるんですよね。

福永:ホントですか?

中井:ホントホント。

スタッフ:いやこの2人、一緒に行ったパーティーのときに会ったんですけどね。照れちゃって下向いてずっと映画の話をしていましたよ。

中井:あのね、基本苦手なんですよ。WOWOWもねパーティーとかたまにあったんですよ。その時も端っこにいました。ぷらすとのみんなが全員端っこにいたんですよ。映画の話ばっかりしていた。なんでここで映画の話をしてんのやろ、とかいう感じでしたけれどもね。

いやいや、こういう番組があって我々は良かったなと思っている次第でございます。ということで福永さんお願いいたします。

福永:シンクルとはですね、匿名のシンクロするプロフィールで、話が合う人たちとの間で会話をしようというアプリです。

中井:触ってみたんですけど、操作性がいいです。なんていうかなめらか。直感的にいろいろ動かせるんで、あつかいやすい。説明書なんか見なくても、こうだなって動かせる。すばらしかったですけども。匿名で話ができるのもいいですよね。

福永:好きすぎる人たちが集まってるアプリということなんですかね。

中井:そう、好きすぎる匿名の人たちですよ。

松崎:フランス映画が好きっていう人たちも集まってましたね。いろいろと映画の名前が飛び交ってましたけどね。

スタッフ:圭ちゃんね、番組中にもシンクルさんの画面を見たり、コメントを見たりですね、していきますので。

今年のパルム・ドールは意外な結果だった

福永:そして会場のみなさまには、サントリーさんからオレンジーナの新しいラインアップの「ブラッドオランジーナ」をお配りさせていただきます。

中井:シチリア産ブラッドオレンジですよ。

福永:おいしいですよね。

中井:なるほど。前向きなタイアップですね。

松崎:映画的なシチュエーションに合うじゃないの。

中井:そういうことですよ。あ、さすが。批判をしない健夫さん。こういうことによって映画のことが知れわたっていくのはすばらしいことなんですよね。ニコ生でもこれうまいって書いてありますね。

中井:改めて、ぷらすとの本日のテーマ。お願いします。

福永:公開生。フランス映画が好きすぎる。有楽町朝日ホールと、TOHOシネマズ日劇で、6月24日から27日まで開催される「フランス映画祭2016」を記念してWOWOWシネマでは「ワールドシネマセレクション:フランス映画の宴」と称し、6月20日、11時半からフランス映画全7作品を放送します。

そして会場のみなさん、ニコ生のみなさんもジンクルを使ってコメントをお願いします。フランス映画の愛、お前の言ってる愛、なんか違うんだよ、についてお待ちしております。

中井:ちょっと待て待て。マリカ待て。なんで1回カンペを見た?

福永:すみません、今日ちょっと長いんですよ。

中井:長いんだ。はい、フランス映画特集、フランス映画が好きすぎるということでね。本日はフランス映画祭の見どころというところと、映画の偏愛ということを語っていきたいと思います。まず矢田部さん。フランスの前にはカンヌもあったと思うんですけど。今年のカンヌ映画祭。現地に行かれたと思うんですけども。

矢田部:行きました。

中井:いかがでしたでしょうかね。

矢田部:今年も充実はしていまして結構盛り上がっていたんですけども、今年一番言われたのがですね、クロージングのときに、今年ほど、映画中の評判と審査員が出した結果が食い違う年はないだろうっていうくらい、「えぇ!?」というくらいの受賞結果だったんですよ。受賞した監督、観客そろってびっくりしていました。

中井:日本にいても、なんかズレてる、みたいな声が聞こえてきました。

矢田部:そうなんですよね。パルム・ドールという一等賞を取ったのがケン・ローチという監督のイギリス映画ですけども。作品自体は悪い映画ではなかったんですけど、すごく評判になっていたドイツの『TONI ERDMANN』とか、ジム・ジャームッシュ監督の新作の『PATERSON』などはすごく評判も良く、僕も大好きだったんですけど、そういう下馬評でみんなが盛り上がっていた作品は一切賞に絡まなくて、なんじゃこりゃっていう感じで結果にはびっくりしました。

中井:こういうことって、健夫さん、ありえることですよね。

松崎:過去にもあると言えばあるんですけど、評論家の評価を作品ごとに統計したデータがあるんですけど、そのベスト10のうち受賞作がトップ5の中に1本も入っていない。評価の高かった作品が1本も入っていないっていうのは驚きでしたよね。

中井:びっくりだなあ。

映画賞レースの裏側

矢田部:賞を取るのは、例えばフランスでいうと、オリヴィエ・アサヤス監督の『PERSONAL SHOPPER』という作品があって、監督賞を取ったんですけど、僕も大好きな監督なので、そのこと自体にぜんぜん文句のかけらもないんですけど、オリヴィエ・アサヤスが監督賞を取るんだったら、もっとあの作品が取るべきだろうっていうね。けっこう複雑な思いでしたね。

中井:今年の審査員長ってジョージ・ミラーでしたよね。みなさん、比較されるのはアカデミー賞とかいわゆる三大映画祭といわれる。そもそもアカデミー賞というのはアカデミー会員、俳優とか監督とか7,000人くらいいるんですけど、投票権を持っていて票を投じた結果、1位になった者が賞を取りますよ、というのが受賞の方式なんですよ。

一方、映画祭における受賞というものは全然違うものであると。

矢田部:そうですね、ですから、僕も映画祭にはよく行っている立場ですから、審査員を誰にするかで賞の結果がまったく変わってしまうんで。ホントに審査員次第というところは大きいですよね。

中井:例えばカンヌだったら、コンペに上がるまでに(事務局の)ティエリ-・フレモーがいろいろと選定しているわけですよね。とすると、その段階で映画の色はもう出ているわけですよね。なんだけれども、最終的な結果はその中でも大きくズレてしまう感じですかね。

矢田部:そうですね。僕も東京国際映画祭で作品を選んでいて15本16本そろったときになんとなく色は出したつもりなんですけど、これなんかの賞を取ってほしいなと思った作品が賞を取ったことは一度もないですね。

中井:なるほど。いま、すごいことをサラっとぶっちゃけましたね。健夫さんこのあたりいかがですか。

松崎:特に、今回の例として出しているのが、過去にもティム・バートンが審査員長だったときにアピチャートポン・ウィーラセータクンが取るとか、イーストウッドのときにタランティーノとか。なんとなくこの審査員長のときはこの作品になるんじゃないかっていうことはあるんですよね。 

それは審査員長が変わっていたら、パルムドールは違う作品になった可能性があるということですね。今回のジョージ・ミラーに関しては、『マッド・マックス 怒りのデスロード』を見てみると、あれは近未来なんだけど、搾取する王様みたいのがいて、下の人たちが苦しんでいるという姿というのがある。

そういうのを見ているとケン・ローチの作品って、あれは保険の話ですよね、労災保険を受ける受けれないというところで困ってる人たちの話ということを考えると、元々ジョージ・ミラーってお医者さんからキャリアが始まった方で、自分が持ってる問題みたいのが出ている作品に対して自分だったら上げれるんじゃないかという気持ちがあったんじゃないかなと。

矢田部:それは確実にありますよね。やっぱり社会派のケン・ローチ、最後の作品になるかもしれないというところも受賞を後押ししたかなと思いますね。

中井:僕は審査員のことで少し気になることがあるんですよ。審査員長の権限ってどれくらいあるんですか。

矢田部:これは映画祭によって違うと思うんですよ。例えば委員の投票で決めようという祭もあると思うんですけど、その際は委員長が2票持っているとか。あるいは議論が揉めて終始が付かなくなった場合のときに、委員長に委ねますとか。

中井:基本はみんなで話し合いをして、この作品はこうだったよねとか。みんなで意見を出しながら議論を重ねて賞を決めていくんですよね。

矢田部:それが理想だと思います。ただ、じゃあここで1回投票してみよう、みたいなこともやっていますね。いい映画を2本出して、書いて出してみてと。この作品の名前が多く出てきたから、この作品について議論してみよう、とか。そういうこともやられていますね。

中井:なるほど。TIFFの場合はどうなんですか。

矢田部:基本的に審査方法は審査員の方々にお任せしているんですよ。

中井:ほー。

矢田部:投票でもいいし、審査員長が決めてもいいし、その年の審査員のみなさんの決め方でお任せします、みたいな。

福永:そうなんですね。

中井:ロジャー・コーマンのときはどうだったんですか。

矢田部:ロジャー・コーマンの時はやはり尊敬されていたので、ある程度話し合って、最終的にはコーマンさんにお願いしますといった感じでした。