イノベーションを起こさずにキャリアを終えたくない
中高年エンジニアが「ランドロイド」にかける夢

"0"から"1"を生み出す、世界一イノベーティブな企業へ - セブンドリーマーズの挑戦と未来ビジョン -

Associe Night' 18
に開催

2018年8月8日、日経ビジネス主催の「Associe Night'18」が開催されました。世界情勢がさまざまな要因で読みにくくなっている今、これまで以上に自己研鑽し、新たなチャレンジをしたいと考えているビジネスパーソンに役立つコンテンツを提供。セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの阪根氏やGA Technologiesの樋口氏らが登壇し、それぞれの挑戦の軌跡とこれからの展望を語ります。本パートでは、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの阪根氏が、日本にイノベーションを起こす取り組みを紹介しました。

「イノベーションを起こすテーマ選定」の3つの条件

阪根信一氏(以下、阪根):みなさん、こんにちは。セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ代表取締役社長の阪根でございます。今日はお時間をいただきまして、セブン・ドリーマーズの挑戦についてお話をさせていただきます。

まず、セブン・ドリーマーズはどういった会社なのかを簡単にご説明させていただきます。私たちは研究開発型ものづくりスタートアップですが、本当にリアルなイノベーションを起こしたいと思っています。日本から、なんちゃってではない本当のイノベーションを起こして世界に羽ばたいていきたいという思いでやっている会社です。

私たちは自分たちのことを「世の中にないモノを作り出す技術集団」と呼んでいます。特に大切にしているのは「Technology in Life」と言い、人々の生活を豊かにする技術を手がけるということで、BtoBではなくBtoCに特化した会社であるという意味です。

昨今、ソフトウェアでたくさんのイノベーションが起こっていることはご存じのとおりですが、歴史を見ていくと、やはりソフトウェアイノベーションが起こる前には必ず、ハードウェアのイノベーションが起こっていると思っています。

パソコンが生まれたのでいろいろな世界が広がり、スマートフォンができたのでスマートフォンのアプリができたということで、やはりイノベーションというのはハードウェア×ソフトウェア、このイノベーションかなと思います。そのハードウェア×ソフトウェアの技術の中において、当社の得意分野は製品開発力と測定分析技術、そして人工知能、AI技術です。

イノベーションをどうやったら起こせるのかについては、私たちはテーマの選定、これに尽きると思っています。テーマを正しく選べばイノベーションは必ず起こるし、テーマの選び方を間違うとイノベーションは絶対に起こらないと思っているんです。

当社の場合は、テーマ選定時に3つのクライテリアを用意しています。1つ目が、世の中にないものであること。2つ目が、人々の生活を豊かにするものであること。そして3つ目に、技術的ハードルが高いものであることです。

そして重要なのは、分野を問わず、自分たちが持っている技術や人的リソースを一切気にせず、テーマを選んでいくことです。分野を問わずに選んでいった結果、3つのバラバラの事業をやっている、そういったスタートアップになっているんですけれども、それぞれの事業についてご説明させていただきます。

世界初の全自動衣類折りたたみロボットを13年かけて開発

当社をおそらく一番有名にしてくれているのが「ランドロイド」という製品で、世界初の全自動衣類折りたたみロボットです。2005年から13年の歳月をかけて開発してきて、まだ発売していないというとんでもないプロジェクトなんですが、やっと来年の春に発売が決まりました。

洗濯をするという行為自体がたいへん面倒くさいのですが、我々の計算と調査によると、日本の平均的な4人家族で、ランドリー行為に対して一生のうちに充てる時間が1万8,000時間。そして、そのうちの半分がなんと衣類が乾いたあとにたたんでいる時間ということで、日数に直すと375日ですね。

(一生のうちで)9,000時間、375日が衣類をたたんで片付けている時間なので、ここを自動化することで、人々の人生に新たな時間を創造することができるであろうと思いました。すなわち、これができればきっと売れるであろうという仮説の下やってきたプロジェクトです。

(スライドを指して)ランドロイドがどんなものかというと、けっこう大きな物体で、冷蔵庫のような大きさです。下についている、まさに野菜室のような引き出しを開けていただいて、そこに乾いた衣類をランダムに投入します。

すると、あとはスイッチを押すだけで中のロボットアームが1枚1枚つまみ上げて、画像認識技術と人工知能でたたんでいって仕分けてくれます。そういった機械です。この製品は、画像解析技術、そして人工知能(A.I.)とロボティクス、この3つの技術の融合によってできあがりました。

折りたたむには、左から順に衣類をピックアップして、広げて、認識して、たたんで、仕分け・積み上げるという、この5つのプロセスから構成されているのですが、この最初のピックアップ、つまみ上げ以外の残りの4つのプロセスで人工知能が使われております。

衣類をロボットアームが持ち上げると、この瞬間に衣類の形状が変わりますし、もう1個のロボットアームで広げると、また形状が変わります。こういった柔軟物というのは、人工知能の解く問題の中でも一番難しい分野の1つなんです。

(ペットボトルを手にして)いまや、このような固形物であれば、これが何であるかというのは簡単に認識できるのですが、柔軟物は非常に難しい。そういう問題に我々は13年間アタックをしてきました。

ディープラーニングをもってしても認識できない「難題」

(スライドを指して)例えば、こちらにある長袖のシャツを「長袖のシャツ」と認識するためにディープラーニング(深層学習)を使っています。2万5,600枚の教師データ、画像データを使っても約80〜90パーセントぐらいの認識率にしかなりません。

しかし、その10倍の25万6,000枚を使うと95パーセントの認識率になります。そういうわけで、私たちは超ハイテクなラボの傍らで、黙々と衣類の写真を撮り続けている人もいるという、非常に手間のかかるプロセスをやり続けてきました。

ランドロイドは、ご多分に漏れずクラウドにつながっているIoTデバイスの1つですが、定期的に本体のソフトウェアやスマートフォンのアプリが更新されて、どんどん賢くなっていくデバイスでもあります。

一般的にたたむとされている衣類、家庭の中にある衣類はたたみます。ですが、できないことが3つあります。1つはボタンを留める機能がないので、ワイシャツをたたみたい場合は、ボタンを留めてから(ランドロイドに)入れることになります。もう1つは、衣類ひっくり返し機能がないので、裏返したまま入れたら裏返したままたたんでしまいます。

最後に、これはどうしてもやりたかったけれど、現段階ではできないこととして、靴下のペアリングがあります。人がやるととても簡単ですが、今のランドロイドの人工知能をもってしても、黒と紺の微妙な差とか、実は同じ色だけどテクスチャが違うものなどを認識できないんです。

一番最悪なのは、正しいペアでも片方だけが縮んでいるというものですね。いまだに認識率が50パーセントを超えないという難しい問題です。我々もやればやるほど、靴下のペアリングは人間か神様にしかできないと思っております(笑)。

これは来年発売の初号機には搭載されませんが、ランドロイド2ではなんとか搭載できるように技術者ががんばっているというところでございます。

ランドロイドには2つの便利機能・仕分け機能がついています。購入したあと、なにもしなくてもデフォルトでアイテム別に仕分けているのですが、同時にもう1つの便利機能、家族別仕分けモードというのがあります。

こちらは1回だけ非常にシンプルな登録プロセスをしていただく必要があるのですが、それさえしてしまえば、あとは家族別に仕分けるということで家族別に分けてくれます。

自動で洗濯物をたたんでくれる「衣類コンシェルジュ」

ランドロイドは本当に面倒くさい家事をやってくれる下請けロボットでもある一方、スマートフォン上で、自分の持っている衣類がどれだけ着られているか、もしくは着られていないか、それを管理できるオンラインクローゼットでもあります。

同時に、パートナーのファッションテックスタートアップのエアークローゼットさんとも提携しています。例えば着ていない衣類に対して「こういうコーディネートはどうですか?」とか、「もういらなかったらメルカリで売っちゃえ」というようなことを提案してくれる衣類コンシェルジュでもあります。

https://youtu.be/mvwYd03ssB8

ランドロイドは大きなボックスなので「中に人が入っているんじゃないか?」ということをよく言われるんですけれども、そうではないという証拠ビデオです。

重要な部分はちょっとモザイクをかけていますが、基本的に、下のロボットアームで衣類をつまみ上げて、この状態では何の衣類かさっぱりわからんというところを、衣類を展開していくことで何の衣類かを認識します。ある程度これで想像がついてきますが、例えばここまで広げると「あっ、これはTシャツだね」ということがわかります。

これで終わりではなくて、幅、縦の長さ、えりの前後を見て、どこに折り目をつけてたたんでいくのかを考えます。そして、前と後ろが間違っている場合はひっくり返しながら、このようにたたんでいきます。これを1枚1枚繰り返して、ピックアップトレイと言われるところに最後の1枚が終わるまで重ねていく。そういうロボットです。

2005年から2015年までの約10年間は我々が独自で開発を進めてきましたが、いよいよ量産化技術に突入するということで、最高のパートナーを呼ぶことができました。パナソニックさんや大和ハウスさんからご出資をいただき、ジョイントベンチャーをつくって来年の出荷に向けて全力で進んでおります。

いよいよ発売が近づいたということで、表参道のまい泉通りにランドロイド・ギャラリーという、1階と地下1階の2フロアを用意しています。ランドロイドという世界初の製品、誰も体験したことのないマシンを体験いただける場所です。

1階は、パートナーで上場企業のきちりさんがプロデュースするカフェを運営していただいているコラボフロアです。そこでもランドロイドを体験できますし、地下1階には、予約制でランドロイドのある生活を体験していただけるショールームをご用意しております。

これがランドロイドの歴史ですが、先ほど申し上げたので繰り返しませんが、(発売は)いよいよ来年というところでございます。

日本ベンチャー大賞の技術革新賞を受賞

その中の2つの事業を時間の関係でさらっと説明させていただくと、(スライドを指して)鼻の中に入れるチューブがありますが、これは医療機器です。世界初、いびきと無呼吸症候群を解消するワンディ・ディスポーザブル・デバイスの「nastent(ナステント)」ですね。nasal airway stentの略でnastentという製品です。

こちらは2007年から開発をして、2014年にヨーロッパ・日本での医療認可を取って発売をしております。こちらが一時よく流していたしていたCMです。

https://youtu.be/rGfflmZusfY

こういうふうに、鼻の中にスッと入れるものです。時間があればここでライブデモンストレーションをしたいところなんですが、今日は割愛させていただきます。

こちらは発売してちょうど4年になりますが、これまで150万本以上を売ってきた製品です。この事業の魅力はマーケットサイズですね。日本だけでも中等症(注:重症と軽症の間)以上のいびき患者は3,000万人、世界では9億人の患者がいると言われていていますが、ほとんどライバルがいない状況です。

こちらが、2007年から開発をして、そして2014年から日本で発売しています。昨年からはフランス、オランダを始めとして、ドイツ、スイス、イタリアでも販売を開始しています。今まさに中国のCFDAとアメリカのFDAの認可を今年度中に取れるよう進めているという計画で、世界展開をしております。

最後にカーボン・ゴルフシャフトも開発しています。ゴルフをされる方にとっては非常に重要な製品ですね。ゴルフをされない方にとってはどうでもいい製品なんですけれども、世界最高精度で世界初の完全オーダーメイドのゴルフシャフトの開発、販売をしております。こちらもちょっと飛ばさせていただきます。

ということで、いろいろな挑戦をしてきた結果、昨今ではいいことも起こるようになってきました。まず、私たちが非常に欲しかった日本ベンチャー大賞の技術革新賞というものをいただくことができました。

また、Startup World Cupというイベントが世の中にはありまして、そこの日本代表に選んでいただいたというような幸運なことも、少しずつ起こるようになってきました。私たちは、本当に世界で一番イノベーティブな会社になることを目指してがんばっているところでございます。

以上が会社の案内です。ここからほんの少しだけ、このお時間の中で、イノベーションについて私たちがどう思っているのかを少しご説明させていただきます。

「日本ではイノベーションは起こらない」を覆す

ちょっとパーソナルな話になりますが、ちょうど私が中学、高校の頃にソニーのウォークマンが世界を一世風靡していました。とくに中学の頃ですね。ちょうどその頃、実は私の父もスタートアップを立ち上げました。

脱サラして立ち上げたところで、あまり家にお金がなかったので、残念ながら私はソニーではなくてアイワのウォークマンを持っていました。それは気に入っていたのですが、近くの友達は一回り小さくて音の良いソニー製品を持っていてうらやましいなと思っていました。憧れの製品だったんです。

その後ソニーはいろんなものをどんどん世界に出していきました。僕たちが中高校の頃は、もう世界の家電の基準を決めているのはすべて日本であって、製品がどんどん世界に羽ばたいていくのを見て、子ども心にというか、青春時代にすごくワクワクしていたのを覚えております。

一方で、すばらしい日本の企業たちもだんだん大きくなって、もちろんいまだにすばらしい会社ばかりですが、国内外からは「日本ではなかなかイノベーションが起こらないんじゃないか」というようなことを言われるようになってきました。私は「そんなはずはない。日本でこそイノベーションは起こるんだ」と思っています。

そんなイノベーションを起こすために最も大切なことは、冒頭でも申し上げましたけれども、やはりテーマの選び方だと考えています。正しくテーマを選べば、イノベーションは必ず起こる。

テーマを選んだら、次は人がやっていないこと、世の中にないものをつくることですが、そうなると技術者たちも先のゴールをイメージしにくいんですよね。なので、そのゴールを明確にして「いついつまでに、こういうものをつくるんだ」ということを明確化することが大事です。

最後は、月並みな表現になりますが、諦めずに最後までやること。諦めてしまって途中でやめるとただの失敗になりますが、最後までやれば、これがイノベーションになると思っています。

テーマの選定のポイントについては、これは大学での研究ではなくてビジネスなので、やはりニーズから選んでいくことがなによりも大事。これはシーズなのかニーズなのかということをよく言われますが、私はもう100パーセント、100対0でニーズからだと思っているんです。

99パーセントのアイデアはすでに誰かが取り組んでいる

なぜかというと、30〜40年前であれば、おそらく自社が持っている技術や人的リソースを使って、その先イノベーションを起こすんだと言ってもなんとかなったかもしれません。ですが、いまや世界中で天才技術者たちがとんでもない資金をファンド等々からドーンと集めて、もう全速力で命を賭けてマーケットに対してイノベーションを仕掛けていっている企業がバンバン見えるんです。

そんな中で、たまたま当社の中にある得意技術や人的リソースをうまく使って「イノベーションを起こせ」というような、そんな都合のいいイノベーションはもはや起こらないと思います。そんなことに固執せず、自分たちの得意なところも忘れて、世界中の人々が求めるニーズからテーマを選ぶことがすごく大事なんです。

そして、「世の中にないモノを選ぶ」というのも、当たり前の話ですね。すでに誰かがやっていることはイノベーションではありません。私たちはBtoCですから、日常生活の中にヒントはいっぱい転がっていて、「こんなものがあればいいな。あんなものがあればいいな。じゃあこれやってみよう」というテーマがたくさん思い浮かびます。

最初にやるのは、特許・論文の調査です。1人でも1社でも、例えば海外の大学や企業がやっていることが分かる論文・特許が1枚でも見つかると、もうそのテーマはやらないということでスクリーニングをかけていきます。

このプロセスで(案が)一番たくさん落ちるんですけれど、だいたい可能性としては99パーセントぐらい、自分たちがふと思いつくものは誰かがやっているという残念なお知らせがわかってしまうわけなんです。つらいですが、ここを徹底して誰もやっていないことをちゃんと確認してから進むというのが重要です。

そして最後に、これは当社独特のクライテリアで、技術的なハードルの高いものにしか挑戦しないこと。裏返せば、やっぱりビジネスは競争の排除が非常に大事だと思っているんです。

難しいものをやれば初期投資もかかるし時間もかかります。大変なことですが、その製品をつくり上げたときには、もう敵はいません。ニーズもあるし、売れるはずだ、ビジネスとして成功するはずだ、というロジックで我々はやっております。

未知のものに挑戦する「恐怖」をどう乗り越えるか

ゴールを明確にすることが、テーマが決まったあとの重要なポイントですが、私たちも実際に経験しました。例えば、洗濯物自動折りたたみ機をつくろうと思った2005年に、日頃から「新しいテーマに挑戦したいんだ。イノベーションを起こしたいです」という非常にガッツのある技術者たち2〜3人を集めて「ぜひ、これをやるぞ!」と言ったんですよ。

でも、その技術者たちは「いやいや、そういうことを言ってるんじゃないです」と言うんです。「そういうんじゃないですから」ということですね。「なに言ってるんだ。新しいことをやりたいと言ってたじゃないか」と言うと、「いやいや、そうなんですけれども、このテーマではないです」と答えました。

「なんでだ?」と訊くと、「いや、これってあれですよね。世界中、誰もやっていないテーマなんですよ」と返ってきました。「そうだよ。2年間かけて、初めて特許・論文を調査しても誰もやっていないエリアをやっと見つけたんだ」と言うと、「あっ、そういうことですか」。

「そうすると、日本のそうそうたる家電メーカーも海外の家電メーカーもやっていないということですか?」と訊かれたので、「そうだよ。誰もやってないんだよ」と言うと、「あっ、じゃあできないってことですよね?」となったんです。

「なぜそのそうそうたる大企業ができないことを僕たちができると思うんですか。バカじゃないですか?」ということで、そもそもやろうともしてくれない、そういうところから始まりました。

ことあるごとにいろんな方が意味もなくブレーキをかけてくるんですよ。経理部長も「もういい加減にしてくれ」とか、もういろんなことを言ってきました。まぁ、こういうことが起きるんですね。

やはり人は目に見えない、ぼやっとしたことに対して挑戦するのが非常に怖いんです。恐怖心を覚えるものなので、ここで大事なのはゴールを明確にして、「こういう製品で」ということを見せないといけない。

当初のランドロイドのケースでいうならば、人間がたたむところを想像すると、結局、目と頭と手を使っています。じゃあカメラと人工知能とロボットアームでできるんじゃないかと思ったんですね。

であれば、安全性や価格を考えると、箱の中に入っていて、下から入れて真ん中から取り出すようなものじゃないか、というようなスケッチをある程度私のほうで描きました。「こんなものをこの3つの技術の融合でつくっていこうじゃないか」というようなことを言うと、「まぁまぁ、わかりました」みたいな感じでスタートをし始めるんです。

乗り越えるべき壁は「人・時間・金」

あとは最後の、諦めないこと。人がやっていないことをやろうとすればするほど、なぜか無駄なブレーキがいろんなところからかかってきます。当然、当社みたいな研究開発型スタートアップだとあらゆる困難がやってきますので、これを諦めずにやりきるというところが大切だと思っています。

では、少しハードウェアベンチャーとしての話をします。これはハードウェアベンチャーに限らず、ソフトウェアベンチャーももちろんだと思いますが、乗り越えなければいけない壁というのは、よく「人・モノ・金」と言いますけれど、私は「人・時間・金」かなと思っております。

すべてにおいて、いろいろなハードルがどんどんやってきます。その中でも、我々にとって一番大きなハードルは常に資金調達です。とくにハードウェアベンチャーは初期投資も非常に大きいですし、それから開発期間にしても、ものすごく時間がかかるので、ここはもう本当にとんでもなく大きな壁となります。

私たちも2014年の夏に、ちょっと詳細は割愛しますけれども、「いよいよ資金調達が成功するぞ」となったときに、経理部長からは「7月末はもう越えられません」と言われていたんです。

けれど、最初に投資すると言ってくれたベンチャーキャピタルの振込が8月末にしか間に合わないということだったので、なんとか経理部長に支払いを若干遅らせてもらったり、いろいろ工夫をして、「なんとか7月末を越えられます」となりました。

「だけど、8月末はもう絶対越えられませんよ」という話があったんですけれど、「心配するな」と言いました。当時10億集める予定で、3億を出資したいというところがほぼ決まりまして、「8月末に3億入ってくるから心配するな」と言っていたんですね。

残り7億を集めなきゃということで、8月の頭に事業会社様を証券会社から紹介していただきました。KISCOさんという、この会場の近く、日本橋にある化学系の商社さんです。

そこの会社の、僕より若い社長に「リードベンチャーキャピタルが3億は出してくれるので、残り7億のうちの3億を出してもらえませんか?」と伝え、そのあといろいろ話をしていくと「7億出してもいいですか?」と言ってくれました。

「もちろんです」と答えました。苦労して、半年以上かけて、やっと投資していただけるところが見つかった矢先に一気に決まったんです。「なんだ、終わっちゃったよ」と喜んで、久々にちょっとリラックスしたお盆休みを家で家族と楽しんでいたら、プルプルとベンチャーキャピタルから電話が鳴り、「すぐ来てください」と言われました。

困難を乗り越え続けることがイノベーションのキー

本社に伺ったら、「すいません、阪根さん。出せなくなりました」と言われたんです。「えっ、減額ですか?」と言ったら、「あっ、いえいえ、ゼロです」というふうに言われてしまいました。

いくら説得してもぜんぜんダメで、その日の夜は横で寝ている家族を見ながら、「この家族と社員たちをあと2週間で路頭に迷わせてしまうのか……」と、悲惨な思いをしていました。

翌日、落ち込んでもいられないので、7億出すと言っていただいていたKISCOさんの岸本社長のところに行って、「リードベンチャーキャピタルが降りると言ってきたのですが、御社の気持ちは変わらないでしょうか?」と訊くと、「ご心配なさるな」と言ってくれました。

「ベンチャーキャピタルが出すから我々が出すと言ったわけじゃない」。「私たちの判断で決めたのでご心配しないでください」と言われまして、「ありがとうございます」と答えました。

「ところで、なんとか8月末に振り込んでいただけませんか?」と訊くと、「それは無理だ」という返答でした。「いくらなんでも、取締役会が9月の中にしかないので、それ以前に振り込むことはできない」と言われました。

「そうですか……」、「それならば、なんとか8月末に3億貸していただけませんか?」と言ってみたら、「それはできるかもしれない」ということで、奇跡的に3億の融資を受けてなんとか8月末を乗り切りました。

そのあとの7億も増資です。出資していただいてつながり、最終的には15億円のシリーズAを終えることができたのは本当に岸本さんのおかげです。このようなことが、話せばいろいろあります。そういったことを乗り越えて、今はトータルで100億円ほどの資金調達も幸いにして達成し、前に進んでいるところでございます。

いろいろやっていると、困難は必ずやってくるんだということを日々痛感しております。これを乗り越え続けることが、イノベーションへのキーだと思っております。

AIロボット開発に中高年スーパーエンジニアが参戦

最後に、最近すごく感じていることがあります。今、ランドロイドの開発は、50数名のセブンドリーマーズの技術者と、パートナーのパナソニックさんからも数名来ていただいて、約60名のチームで製品の最終段階の開発を行っています。

当社の約50名の技術者たち、スタートアップのAIロボット技術者と言うと、若い人が侃侃諤諤しながらやっているようなイメージを持たれることが多いと思います。しかし、当社の三田にあるラボのドアを開けるとおじさんしかいないという、実はとっても平均年齢の高いベンチャーでございます。

なぜそうなっているかというと、2015年の10月に初めてCEATECという家電ショーで発表をしてドカーンとメディアに取り上げていただいたら、やっと僕らがかけた募集にたくさん人材が集まるようになりました。見てみると、すばらしい学歴ですばらしいキャリアの方々ばかりで「おお!」と思っていたら、ほとんどが53歳以上だったんです。

よくよく聞いてみると、その人たちが20代で就職した頃は、ちょうど日本の家電メーカーが世界を席巻していた時代。「よし!」と思って、ちょっとリーダーになってきた30代になると、お隣の近くの国に負けないように「同じ品質もしくはそれ以上のものを安くつくれ」という指令に変わってしまった。そうしているうちに今度は早期退職制度という話になってきたんですね。

「結局イノベーションを起こすこともないまま、キャリアを終えるのは嫌だ」と思っていたところにランドロイドのニュースを聞いて、居ても立ってもいられなくなったという方からたくさん応募をいただいたんです。今、ランドロイドの開発の最終段階も、このようなスーパーエンジニアたちが支えてくれています。

私は、この日本を「人材バンクジャパン」と呼んでいます。このような技術者が、まだまだゴロゴロいる国なんですね。イノベーションを起こしていくために、唯一、テーマさえ正しく選んでゴールを明確にすれば、それを実現してくれる技術者がこの国には山のようにいます。

日本から必ずイノベーションは起こるし、日本でこそイノベーションは起こると信じています。私たちはそれを証明するための一端を担えるよう、これからも全力でがんばっていきたいと思っています。どうもご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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