宇宙にも終わりはやってくる

ハンク・グリーン氏:みんなすべてのことはいつか終わるって知ってるよね?

君と君のモルモットとバクテリアが一緒のバスタブに入っている感じとか、『リアルハウスワイフ』のテレビシリーズのようなものだよ。全部いつかは終わるよね。しかも君はそれを知っている。でも同時に、とても大きくて永遠に続きそうに見えるものにも終わりはくるんだ。例えば、地球とか太陽とか銀河系とか、そして宇宙とかね。

終わりは突然訪れるものではない。でも宇宙でさえもなにか違うものに変化するかもしれない。それは僕たちが認識すらできないものかもしれないね。そしてパッと消えてしまうかもね。

それがどのくらい確実に起こるのかを知るにはたくさんの議論が必要だ。だって僕たちが宇宙について知らないことはきっと宇宙を埋め尽くすくらいたくさんあるんだからね。でも天体物理学者や宇宙論者、そして素粒子物理学者はとても頭のいい人たちで、こういうことについていつも考えているんだ。だから今のところ、彼らが考えているのは地球と太陽系とそして宇宙に将来的になにが起ころうとしているのかってことだ。それについて知るのはいいことだよ。念のため、ほかの心配の種を使い果たすかもしれないからね。

宇宙は1億3,000万年くらいのズレがあるとしても、大体137億歳くらいなんだ。でもそれはずっと今と同じであったわけじゃない。宇宙は理解できないほどに高温な特異点と呼ばれる高密度部分として、ビッグバンによって生まれたとされている。

ビッグバンと呼ばれていても、それは君たちが思うような爆発ではないよ。そして宇宙は空間に広がったわけではないんだ。だって宇宙が生まれる前には空間というのは存在しなかったからね。代わりに、ビッグバンは宇宙のどこにでも存在する空間との同時出現だと考えられる。理解できるかな? 僕には無理だね。

でもこういったことについて学んでいる人々は、宇宙はビッグバンから一切広がってはいないんだと言っている。でも空間自体は伸縮していて、物質を生んでいるんだ。だから宇宙は単独で、熱くて、電子かなにかよりも小さい高密度なところで始まったんだ。しかも100分の10億分の1兆分のまた1兆分の1秒の高齢期でね。

そしてこの場所は膨張と呼ばれる現象のなかで起こる光の速度よりも速く拡大していったんだ。亜原子粒子の大きさからゴルフボールになるような感じで、宇宙は倍の大きさに拡大する現象を最低でも90回繰り返したんだ。それが宇宙だ。

そこからもう少しゆっくりのペースで宇宙は大きくなっていき、拡大するにつれ、冷やされてかたち作られていったんだ。例えば、ビッグバンのたった1秒後、クォークと呼ばれる物質を形成する基礎が亜原子粒子になり始めたんだ。それはプロトンとニュートロンのようなものだ。

宇宙暗黒時代から太陽系が生まれるまで

そしてそれから38万年後、宇宙が冷やされ、密度が低くなるにつれ、これらの粒子は僕たちでも認識できるような形に変わっていったんだ。そして原子になるために互いがぶつかりあい始めた。原子の核にあるプロトンとニュートロンは電子の小さな軌道とともに結びついた。ヘリウムのような最初の最も明るい電子、リチウムともちろん水素も現れ始めた。

この時点で、宇宙は粒子の密度の高い霧からなにか透明なものに姿を変えたんだ。でも星がまだ形成されていなかったから、宇宙は完全なる暗黒になっていった。目に見える光を放つ大きな物体が何もなかったから、ビッグバンの後38万年から4億年の間は宇宙暗黒時代が続いたんだよ。

でもそれから5億年後、ガスの塊は崩壊を始め、最初の星や銀河が形成された。重力は物質をもともとの場所に引き戻していくにつれ、宇宙の拡大はだんだんゆっくりになっていった。

ビッグバンから35億年後、なにか奇妙なことが起こったんだ。重力よりも強力な力がこの引き戻す力を超え、宇宙の拡大を進めたんだ。この力は暗黒エネルギーと呼ばれ、物理学上もっとも理解されない事象として研究対象となっているんだよ。

僕たちがわかっているのは、それが絶えず上昇傾向で宇宙を拡大させる反発力であるということだけだ。だからこの時点で、君たちはきっとなぜ宇宙の行く末を予測するのが難しいのかきっとわかったよね。僕たちがもっている情報は全然完全じゃない。暗黒エネルギーのようなことを見つけ続けるし、「あぁ、わかったよ。それのプロセスにはちょっと時間がかかるね」みたいな感じかな。

とにかく、ビッグバンの90億年後の少し南側で、僕たちの住む太陽系は生まれたんだ。そして、僕たちの小さな美しい惑星が現れた。そして僕らがここにいるってわけさ。でも僕たちにこれから一体なにが起こるんだろう? だってすべてのことには終わりがあるだろう?

熱力学の第2法則は時間が経てば、宇宙の物質やエネルギーの拡散化、つまりあらゆるレベルでの一般的な増加における無秩序は星や僕たちの太陽を取り込み、燃料共有に疲れ果て、惑星は星からの助けがなくなり、そして銀河は崩壊するんだと教えてくれる。宇宙の本来の自然に関わるについてはまったくわかっていないんだ。

だから、もしかしたら終わりというのは別のかたちでやってくるかもしれない。実際、とっても頭のいい人たちは違った感じで起こると考えているんだよ。でもみんなが賛成することが1つだけあるんだ。それは終わりはいつか来るだろうってことだよ。この地球上で、寒さ以外で心配する必要があるものはないんだ。

例え、すべての終わりが起こったとしても、君たちはそこにはいないと思うよ。それは僕もそうだし、僕たちの遠い遠い遠い先の孫もいないだろうね。彼らはきっとどうにかしてやり過ごすと思うよ。だって地球上では物事は常に変化しているからね。それは生きることを可能にするけれど、同時に不死に繋がることはないよね。

これから10万年後、ナイアガラの滝は浸食され、エリー湖に入っていくだろう。月が地球の周りを回る速度が遅くなれば、僕たちは毎日うるう秒を時計に追加しなくちゃいけなくなるよ。もし地球温暖化がそれに手を加えなければ、僕たちには新たな氷河期がやってくるだろうね。星の動きは地球から見えるほとんどの星座を見えなくしてしまい、占星術師たちはきっと本当に困惑するだろうね。

100万年後、地球で巨大噴火が起こる

そして次の100万年で、僕たちの惑星は時代遅れの悲劇的な絶滅を起こすような出来事に直面する。これは地球の歴史のなかの過去400万年で一定周期ごとに起こってきたことなんだ。地球の歴史という単位のゲームを変えてしまうのに十分なほど度々起こってきた、巨大噴火が起こったことによるとされている。考えてごらん。噴火が強大で、硫酸が火山灰と混ざって、世界中で10年間くらい日光が遮断されてしまい、この惑星が火山の冬に突入することを。

昔は頻繁に起こっていたんだ。僕たちはかつてそれを乗り越えた。なんとか、だけどね。何人かの科学者は、7万年前に起こったインドネシアのトバ火山の噴火によって1,000組程度の人類しか生き残れず、そこからまた地球上で繁殖していったんだと話しているんだ。そして彼らはやり遂げた!

そしてこれから10億年の間に、恐竜を絶滅させたのと同じくらいの隕石が地球を直撃するだろう。だって宇宙のなかでの事象は、お互いがたまにしかぶつかり合わないほど離れているわけではないからね。そして宇宙の巨大な石は、地球ができてからずっと衝突してきているんだ。実際、それが今までに地球で起こった大規模絶滅の原因だと言われている。もちろん、ぶつかる前に破壊できるんじゃないかと考える人もいるけど、10億年後に人間がどこにいるかなんて誰がわかるんだい?

君たちがこの動画を観ている2億5,000万年後にはミルキーウェイにサーキットを作って、地球上のすべての大陸は一緒になって超巨大大陸になっているかもしれない。

ここで僕たちは太陽がだんだん大きくなっていることについて考えなくてはならない。だってそれがまさに次に起こることなんだからね。6億年の間に一般的に星の中年危機と呼ばれる赤色巨星の時代に入る。この赤色巨星は水素をすべてヘリウムに変えてしまい、それが温度を上昇させ元のサイズの100倍にまで広げてしまうんだ。

太陽が地球を飲み込むまでにおそらく数十億年かかるだろうが、その光度の発達は地球の気候に変化を与えるだろう。例えば、海水が蒸発したりとかね。13億年のうちには、すべての植物も動物も死滅するだろう。そして生き残るのは地球の極の水たまりのなかのバクテリアと古細菌くらいだろう。16億年の間は、そういった極限性微生物さえも厳しい時間を過ごすことになるだろうね。

太陽は大きくなった後、しぼむ

約35億年の間に、地球の表面は金星と似てきて、地球の軌道はその拡大とともに広がるだろう。でも今から79億年後の太陽が水星や金星、そして地球を飲み込むまでは、まだ太陽ほど巨大でもないだろうね。

何人かの研究者はもし人間がそんな長い間を生き抜く方法を見つけていたら、通り過ぎる彗星を投げ縄で捕まえて、より幅の広い軌道に乗せることができると言っているよ。もしくは、タイタンのような土星の衛星に移住できるかもね。だって今の時点で完璧な場所だと言えるからね。79億年あっても最悪な状況には至っていないだろうね。

でも楽観主義は大好きだ。とにかく、今から80億年後には太陽は白色矮星になり、その時点までに今の大きさの半分になって、144億年後には人間の目では見られないほどに冷却されているだろうね。でも太陽はずっと頑張っていたよね。だから僕たちを温め続けていてくれる間は感謝しなくちゃね。

その後、僕たちのソーラーシステムは使えなくなる。現状、宇宙に何が起こるのかは言えないんだ。すべての天体物理学者たちはもちろん考えがあって、その考えには辛いニックネームがついているんだ。ビッグリップとかビッグクランチとかビッグフリーズとかね。どのシナリオが合っているのかは暗黒エネルギーによるね。覚えているかもしれないけど、僕たちはその件について全然情報がないんだ。

まずビッグリップから始めよう。この考えでは、暗黒エネルギーによる拡大の確率は上限なく上がり続けているんだ。物体の間にかかる重力から亜原子粒子を支える強い力と弱い力への物質的な基礎力のすべてを超えるほどに強大になっているんだ。

そして銀河団が離れ離れになり、星のシステムが消えること以外に、物質のかたちすべて、つまり分子と原子が引き裂かれて、忘れられるだろう。物理学者のなかには、これは170億年後には起こり得るかもしれないと言っている人もいるね。

もしくは、ほかの可能性としては、1,000億年後には暗黒エネルギーは時間とともに消え去り、宇宙の拡大の加速は止まることもあり得るんだ。この場合、暗黒エネルギーが弱まれば、重力は最終的に主導権争いに勝ち、宇宙の物質はすべて元どおりに戻されるだろう。この結論に行き着くのがビッグクランチだ。

でも最近では、有望なのはビッグフリーズなんだよ。このシナリオでは、熱力学的エネルギーがなにも残らないほど全てのものが広範囲にまで広がるまで、暗黒エネルギーが宇宙に分解を続けさせるとしているんだ。なんの動きもなく、熱もなく、生き物もいない。星たちは燃え尽きて、新しい星たちは形成されなくなり、宇宙は冷たく暗い無のなかに消えていくだろう。

こんなことは100兆年くらいの間は起こらないとされているから、安心してくれ。でも今まで話した内容は、単なる奇抜なアイデアなのではなく、世のなかで最も話題になっている説なんだよ。

宇宙学者の何人かは、宇宙の熱エネルギーが増えると、なにかとても込み入った存在になり、自己を意識した物質となるだろうと言っているんだ。僕は宇宙が巨大な脳になるかもしれないと考えた人が好きだな。かっこいいじゃないか。

でもこれが素晴らしいところなんだよ。宇宙学者たちはこんな疑問についていつも討論してるんだよ。例えば、宇宙って本当にあるの? 僕たちは実在するの? 宇宙っていくつあるの? 宇宙ってビッグバンのサイクルで終わりなく何度も何度も繰り返されるの? どうしてスクランブルエッグは元に戻すことはできないの? とかね。 だって宇宙空間のなかにある小さな石から宇宙の性質を考え出そうとするなら、馬鹿げた質問なんてないだろう?