超高層ビルの挑戦

ハンク・グリーン氏:世界中で人口は増え続けています。国連によると、世界の人口の半分以上、約54パーセントは都市部に住んでいます。そしてその数は、2050年までに66パーセントまで上昇すると言われています。

このことは多くの疑問を浮かび上がらせます。その1つは、どうやって多くの人々がうまく住居を確保するのかという問題です。

近年、エンジニアと建築家たちはこの問いに対する答えをデザインしようと試みています。そして、これまでより多くの人が暮らせるように、大きく高さのあるますます野心的なデザインをするようになっています。

これらの構造のある部分は、空へまっすぐ伸びていて、他の構造は周りの環境と調和するようになっています。そしてそのいくつかは、物理の巧妙な技巧を活用しているのです。これらの構造のすべては技術的に建築可能ですが、それらのほとんどは費用が関係するために大きくはなりえないでしょう。

いまだにこういった巨大な構造は、どれだけ高く建物が建築できるか、同様にどこに建てられるのか、そしてどうやってエンジニアが自然の力を使うことができるのかということに挑戦しています。

それは、未来の都市がどのように見えるのかということについて、ある非常に素晴らしいアイディアを示しています。

アメリカでもっとも高い10の建物といえば、シカゴについて語らないわけにはいきません。シカゴはそのうちの4つが存在するのです。そしてシカゴは、2005年にもっとも高いビルの所在地になれるはずだったのです。

シカゴスパイアを立てる計画が紹介されました。それは、610メートルの高さで、シカゴのウィルスタワーやニューヨークのワールドトレードセンターを抜いて、西半球で一番高い建物となるはずでした。

本当のビルの天才デザイナーとは、どれだけ高いかを設計するのではなく、どれだけ風の問題を解決するかが大事です。風が強い都市と言われているにもかかわらず、シカゴはアメリカでもっとも風が強い都市ではありません。実際、その中でも上位20都市の中に入っていません。

ミシガン湖での風の発生は、建物にとてまだ深刻な問題を引き起こしえます。これは、1マイルの3分の1の高さになります。ここでの主な挑戦は、流体力学の現象にあります。

風が、スカイスクレーパーのような長く長方形のものに当たると、2つの突風に分かれ、その1つが片方に沿って突進します。これらの突風はこの構造の周りを動き、そして後ろに戻り、空気の渦巻きを作り出します。

これらの渦は、ビルを前後へ引っ張り、構造に多くの圧力をかけます。これがシカゴスパイアが長方形にデザインされなかった理由で、その代わりにらせん形にデザインされました。デザイナーは、シカゴに流れる川の上を上っていく、煙のスパイラルを象徴するようにビルを描きました。しかし、それはまるでスクリュードライバー、または大きなドリルのような感じでした。

風がこのようならせん構造のものに当たると、風がその溝の部分に巻き込み、大きな渦を両サイドに作るかわりに、表面をカーブし小さな渦を作り出します。そのデザインは完全に問題を解決するものではありませんでしたので、より安定させるために、20このコンクリートの壁を土台に付け加えました。

残念ながら、私たちはシカゴスパイアを見ることがないでしょう。何年にもわたる計画の遅れや経済的な問題の後、タワーのための土地が2014年に廃棄されました。

ドバイやジャカルタの巨大タワー

もちろん、らせん形だけが風の問題をやっつける構造ではありません。ドバイのスカイスクレーパーされるナキールタワーを見てみましょう。

1,000メートルの高さで、ウォーターフロントの右側に位置しています。ナキールタワーは、絶対的に高速の風に直面します。

ビルの周りで直接的に風を受けようとするよりも、むしろ小さな渦を壊す方がいいですよね。そこでデザイナーは、ただ右方向へ風を流そうという異なる計画にたどり着きました。彼らは、タワーの長さを伸ばす垂直スロットを組み込み、ビルの中央に空洞を作ることでこの計画を実行しました。

基本的に、4つのビルを、まるでめちゃくちゃ高く重ねたドーナッツのように円になるような感じに分けて立てます。

このようなデザインだと、風はどこからでも吹くことができ、シンプルに通り抜けます。各タワーに加えた安定性は、他と繋がり、それぞれのタワーを行き来しやすいという利点があるスカイブリッジを経由してます。ナキールタワーの建設は2008年に始まりましたが、数年続く国の債務危機のあとで建設がストップしました。

次はインドネシアの首都、ジャカルタをみてみます。ここには別の巨大タワー、ジャカルタシグネチャータワーの計画があります。巨大なビルを立てる時、ほとんどの建物を建てるときもそうですが、ジャカルタにもある風の問題があります。しかもジャカルタは、地震という、より差し迫った問題があります。

ジャカルタは、火山が並ぶ環太平洋火山帯と太平洋に囲まれている高い震域に位置しています。

610メートルの高さのビルが地震に耐えれるかを確実にするためには、デザイナーたちは安全面を整えなければなりません。この取り組みの最初に、タイルという数々のコンクリートの柱をたてます。

1つの柱は少なくとも直径1.8メートルあり、地下90メートルまで埋め込まれます。最も際立っているのは、シグネチャータワーは、外骨格の種類もあることでしょう。これはビルの中心部分に建設される、外部のフレームで非常に垂直な柱と、ベルトトルッセスとよばれる水平な留め具があることです。

もしビルの中心部が傾くことになれば、他の部分が引っ張られるあいだ、他の外部のサポーターのいくつかを押します。この張力と圧縮の力の組み合わせは互いに競い合い、相殺します。したがって、建物の中心部は再び安定を取り戻すのです。シグネチャービルディングの建設はまだ始まっていません。しかし開発者は、2020年代の初期に完成するだろうと計画しています。

なんと東京に1,700メートルの巨大ビルが誕生?

環太平洋火山帯に位置している東京で、スカイマイルタワーというビルの建設が提案されています。ビルの名前が全てを意味しているように、もしこのビルが建設されたら、その高さは1,700メートルになると言われています。これはドバイのブルジュ・ハリファの2倍の高さです。

環太平洋火山帯に位置しているので、このスカイマイルタワーは絶対的に地震を考慮しなければなりませんが、これだけが問題ではありません。東京都は海抜44メートルしかありません。そして多くの沿海都市と同様に、エンジニアは洪水、津波、また気候変動による予期せぬ海面上昇といった天気事象も考慮しないといけません。デザイナーは東京湾の入口から向かって右側、つまり水上にスカイマイルタワー建設を提案しました。

このビルは、人工的な六角形の島々のどこかに建設される予定で、500フィートから5,000フィートの幅で、これらの6面の構造はブレーカーとしての機能を持ち、大きな波が建物の側面ではなく、波どうしがぶつかり消滅するようになっているのです。

タワーコンプレックスが東京湾の入口に位置してることで、エンジニアは建物の全てのシステムが、リスクが高まっている台風、嵐、そして地球温暖化によって起こるであろうその他の深刻な天気事象から、東京を守る役割を果たすことを期待しています。

スカイマイルタワーは非常に高いので、デザイナーはどうやってシャワー、飲み水、その他の生活に必要な水を上まで組み上げるのかという、新たな問題の解決に奔走しています。スカイマイルタワーのデザイナーは、非常に革新的な答えにたどり着きました。住民が水をクラウドハーヴェスティングによって手に入れるのです。これは少しサイエンスフィクションのように聞こえますね。しかしこの考えはとってもシンプルです。

おそらくすでに知っていると思いますが、雲は小さな空気に浮かんだ水の粒でできています。これらを捕まえるために必要なのは、強い素材でできた十分に小さい穴があるネットです。風が吹いて霧や雲がそのネットを通ったとき、水滴がネットにつき下へと流れ落ちるのです。

スカイマイルタワーでは、確保した水が処理されるいくつかのフロアごとに水を収容する場所の費用を計画しており、確保した水は重力で下の階へ運ばれ、水道管がいらなくなるというわけです。このタワーはとてもいい計画に聞こえますが、私たちがこの東京のタワーを見るまでには、しばらく時間がかかるでしょう。

タワーのためのデザインと島の周辺に関することは、2015年に提案され、多くのテストや計画が建設をする前に必要になります。それでもなお、このプロジェクトのために使われたお金はないのです。これは多くの巨大ビルプロジェクトは、人々が将来の工学的課題をどのように考えるのかという練習課題としての提案として、そして私たちが課題を克服するために、どういった新しい方法でデザインするのかという課題として有効です。

今から長い間、高いところに住んで、雲からえた水を飲み、安全なところで寝て、自然災害があなたの家を壊してしまうという知識が存在しない未来をあなたは思い描くかもしれませんね。それを実現できる人は、エンジニアです。しかし今のところは夢の話です。多くのメガ構造の建物は、実現するには素晴らしすぎますね。