致死率から被害を予測判断するのは早急

オリビア・ゴードン氏:世界保健機関より、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による致死率が予想以上に高まっていると発表されました。3月3日付けの発表によると、世界中の感染者の内、3.4パーセントもの人が新型コロナウイルスによって亡くなったのだそうです。統計によると致死率は2パーセントとされていたにも関わらず、です。

この発表に対して、ありとあらゆる反応がありました。あなたの胸の内はどうであれ、「この数字はとても不安定でつかみどころのないものであり、決して不変的なウイルスの性質を示すものではないのだ」ということを念頭に置くことが、今回の騒動を読み解く鍵となるでしょう。

現時点において、私たちはこの先、世界的にどのような感染の広がりを見せるのか検討もつきません。予測がつかないのです。しかしながら、このままでは被害の大きさに驚く日も遠くないことが考えられます。

なので、あなたがこの病の危険性、疫学者が言うところの病原性はどれほどのものなのかを突き止めようとするのは、当然のことと言えるでしょう。

致死率、もしくはその割合をはじき出すのは複雑そうに見えるでしょう。しかし、実はそんなことはありません。死亡者数を罹患者数で割ると致死率がわかるのですから。それを用いて他の突然発生の疫病と比較することだってできます。

例えば、季節性のインフルエンザによる平均的な致死率と、新型コロナウイルスによる致死率の比較を目にしたことはないでしょうか。季節性のインフルエンザによる致死率は0.1パーセントなので、これは新型コロナウイルスの致死率が季節性インフルエンザの34倍になることを示しています。

しかしながら、そのような比較は誤解を生みかねません。季節性のインフルエンザによる致死率の割合は季節によって変わりますし、新型コロナウイルスの致死率はこの先変わっていくでしょうから。ウイルスが及ぼす致命的な被害は、突発的な発生の状況に応じてその在り方を変えるものですし、私たちには早急に致死率を出そうとしたために大きな過ちを犯した過去が、すでにあるのですから。

国によっても見解はさまざま

とはいえ、3.4パーセントという数字は甘く見過ぎなのではないでしょうか。新型コロナウイルスは即座に命に関わるものではないからです。これまでに死に至った人々は最初に徴候が見られてから2〜8週間後に死亡しています。つまり、「この先の数字がどうなるかは、現在感染が確認されている人々の状況を見ないとわからないのではないか」と言えるのではないでしょうか。

また一方では、過剰反応とも言えるでしょう。ほとんどの地域では、明らかな症状が出ている人以外にはウイルス検査を行ってはいません。この致死率は大多数を占める無症状の人たちや、はっきりと症状の出ていないひとたちを含めた割合ではないでしょうから。

そういったことや、さまざまな点から、専門家より「突発的に発生した疫病の致死率を最終的に決定するには、数ヶ月要するものだ」と指摘されています。なので、現時点でコロナウイルスの収束地点を探すのは性急なのではないでしょうか。

現時点で、症状が軽いために見落とされている症例における考えの相違があります。「症状が軽い罹患者はそんなにいない」と提唱する専門家がいる一方で、「症状が軽い罹患者が数えきれないほどいる」と提唱する専門家もいるなど、専門家の間での食い違いも見られるのですから。(これを鑑みると、)実際の新型コロナウイルスによる致死率は1パーセント以下かもしれません。

韓国の例ですが、公的医療機関が3月9日に196,000人を対象に精密検査を行った結果、新型コロナウイルスによる致死率は0.7パーセントほどだったのだとか。対象者が現在回復する見込みのない重い症状の人たちだったなら、その数値は少し上がっていたでしょうが、それでも世界的な数値である3.4パーセントには及ばない数値でしょう。この結果は、「致死率が当てにならない」という新たな側面を示してくれているのです。地域差が関係してくるのです。

中国では、新型コロナウイルスの致死率が1パーセント以下から4パーセント以上に引き上げられています。このことから、公共保険施設や資金、政策なども致死率に影響を及ぼしていることがわかります。保険制度に負担がかかると死が忍び寄るからです。重篤な症状が見られる人々の数に対する医師の数や病院のベッド数、医薬品が不足し、最善の医療が受けられなかったら、助かる人も助からなくなってしまうのです。

アメリカのように、多くのひとがインフルエンザの予防接種についてくどくど言うのはそのためです。インフルエンザと新型コロナウイルスにはよく似た症状があります。インフルエンザの治療を行うと、新型コロナウイルスの治療をしなくても大丈夫だという可能性がでてくるのです。

私たち個人ができることは、とにかく感染予防をしっかり行うこと

私たちは、新型コロナウイルスの感染拡大を止めることはできなくても、非感染要因を知ることができればその拡がりを鈍くする手助けはできます。Twitterで「#Flatten The Curve」を付けて投稿している記事は、そういった関連記事です。今と同じ数の感染者が出るのなら、その感染者数を横ばいにすることによって、治療における機能不全を防ごうとする考えで、助かる人も増えるとされています。

「こまめに手洗いをする」「具合が悪かったら家でおとなしくしている」「必要最低限なもので過ごすことを心がける」。それらを実行することで、医療関係者たちは新型コロナウイルスにしっかりと向き合えるのですから。

また、それらの予防策は新型コロナウイルス対策としてだけではなく、(ほかの)ウイルスに感染する見込みも減らしてくれるでしょうし、致死率のことを考えるよりかはいいのではないでしょうか。

致死率は、公的医療従事者が新種の病原体の対策を立てるのに大いに役立つものですが、個々に対する危険性を伝えるという点においては、そうではないのです。

新型コロナウイルスと季節性のインフルエンザを比べてみましょう。この2つの疾患、それぞれが同じ致死率であったとしても、同じ危険性をはらんでいるわけではありません。

インフルエンザは幼児や高齢者、双方に高い割合の感染が見られるという分布を示しています。

しかしながら、新型コロナウイルスは、今のところ若者への影響はあまり表れていないようなのです。

最初の100,000の感染症例を見てみても、10歳以下で亡くなっている人はいません。その間も今年の季節性のインフルエンザによって125人もの子どもが亡くなっていますし、一般的に、子どもが今年のインフルエンザにかかると重症化すると言われています。

なぜ若年層にもたらされる影響が病によってこんなにも違ってくるのか、私たちにはわかりません。しかし、発生中の段階にある免疫系の異なった種類のウイルスに対する反応の違いなのでしょう。

研究者によると、年を取ったネズミの免疫系は、若いネズミの免疫系よりもコロナウイルスに強く反応したのだとか。似たようなことが人間の中でも行われているのではないでしょうか。

過剰な免疫反応は呼吸器感染を重篤な症状に陥らせるのでしょう。年齢のことを置いておくと、新型コロナウイルスに感染した時の体の反応に影響するのは、健康状態や過去の感染症なのでしょう。

ありとあらゆるところから算出される致死率から、それらのことを読み解くことはできません。それに、なにもこの大惨事の犠牲になることはないのです。この突発的な感染症の重大性を、単に致死率からではなく、入院患者の割合など、他の側面から推測しようとしている研究者だっているくらいなのですから。

しかしながら、あなた個人にふりかかるコロナウイルスの危険性が例え低いものだとしても、この蔓延している疫病を甘く見てはならないでしょう。今どうするかによって先の未来が決定されるのですから。真剣に向き合うのには、まだ遅くはないのです。

「インフルエンザのワクチンを接種する」「具合が悪ければ家で休む」「こまめに手をよく洗う」など、散々言われていることを実行し続ければ、最悪の事態は避けられるのではないでしょうか。