2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
What Your Family History Can’t Tell You(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:あなたが初めて病院に行く時、お医者さんはたいてい、あなたの家族の病歴を聞くのではないでしょうか。彼らはすべての病歴、心臓病からガン、そして2型の糖尿病にいたるまで、もしあなたの近い血縁関係の家族の中に持病を持つ人がいれば、知りたいと思うのです。それには最もな理由があります。そのような家族の病歴を知れば、お医者さんはあなたにもそのような遺伝的な病気のリスクがあるかどうかを知ることができるのです。
しかし、その情報は完全というわけではありません。なぜなら実際のところ、家族の病歴はあなたの遺伝子に隠れている病気のリスクのすべてを教えてくれるわけではないからです。その理由を知るためには、病原となる複雑な遺伝子を調べる必要があります。病気のリスクは、家族の病歴を知ること以上にもっと直接的な時もあります。なぜなら時に、1つの遺伝子の突然変異が病気にかかるリスクを非常に大幅に上げてしまうことがあるからです。
例えば、遺伝子BRCA1とBRCA2を例に考えてみましょう。
これらの遺伝子に変異体、または突然変異が見られた場合、人生の中で乳がんにかかる可能性が45から65パーセントにも上昇してしまうのです。可能性が45パーセント上がるのではありません、可能性が45パーセントになってしまうのです。これは冗談ではありません。
そして、このことはあなたの家族の病歴を知ることにより、お医者さんが予測できることなのです。お医者さんは、もしあなたの親族にBRCAの突然変異を持つ人や、乳がんを患ったことがある人がいるとしたら、遺伝子テストを受けることを勧めてくるかも知れません。
しかし、乳がんを患ったことのある人のうち、ほとんどの人はこのような遺伝子の突然変異体を持ってはいません。そのような遺伝子を持つ人は、人口のうちほんの少数の人に過ぎません。研究者たちは今まで、このことを「散発性」または「遺伝性疾患」として記録していました。「遺伝性疾患」は遺伝性のものです。「散発性」のものは遺伝ではなく、環境などにより生じるものです。
この分け方も、私たちが人間のゲノムについて理解するにつれて、もっと解明されてきました。例えば、時にはたった1つの遺伝子が原因で、大きなリスクを引き起こすことがあるのです。BRCA1や2がその例です。それ以外の場合、ちょうど何千もの小さな切り傷のように、たくさんの遺伝子が原因となって病気のリスクを上昇させている場合があるのです。
たくさんの遺伝子変異体それぞれが、心臓病やガンなどにかかるリスクを少しづつ上昇させるのです。ですから、遺伝子変異体を遺伝的に受継げば受け継ぐほど、病気にかかるリスクが上がってしまうというわけです。もしあなたの両親や祖父母が病気になったことがなかったとしてもそう言えます。
ですから、家族の病歴を見たとしても、そのようなリスクを持っている場合はわからないのです。しかし今、私たちはヒトゲノムの配列を理解しているので、このような多くの遺伝子がある場合や多遺伝子性疾患を見つけられるようになったのです。
すべてのゲノム配列に関して最も大切なツールは「ゲノムワイド関連研究」、略して「GWAS」と呼ばれる研究です。この研究では膨大な人数のデータを扱います。とはいえ、そのすべてのゲノムを配列する必要はありません。代わりに、研究者たちは「一塩基多型」または「SNP」と呼ばれる遺伝子変異体を探します。
これら「SNP」が、必ずしもあなたの病気のリスクを高める変異体であるというわけではありません。これらは変異体となるものの近くにいるため、その流れで遺伝するかも知れないのです。この大規模な研究で、「SNP」や遺伝のパターンについての統計を取ることで、いわゆる「何千もの傷」をついに見つけられたというわけです。
しかも「何千も」という言い方は大げさではありません。時に、遺伝性リスクに関係のある、本当に「何千」もの変異体を見分けることができるのです。もちろんライフスタイルや環境は異なりますが、GWASは遺伝性の病気にかかるリスクをごく少しですが上げてしまうのです。
とはいえ、遺伝により病気にかかるリスクのある人かどうかを調べるのは、危険性のある遺伝子変異体を知る以上のことが含まれます。リスク遺伝子は複雑な仕方で互いに相乗したりキャンセルしたりするので、研究者たちはかなり複雑な計算をしなければなりません。
この計算の結果は「多遺伝子性リスクスコア」と呼ばれます。その数値は、その人の持つ遺伝子変異体の組み合わせに基づき、その人の受け継いだ病気を発症するリスクを示します。そしてその数値により、私たちが以前「遺伝で起こる」と考えていた病が「時折起こる」ものであるということがわかったのです。
例えば2018年に発行された『Nature Genetics誌』で発表された論文によれば、研究者たちが冠動脈疾患の多遺伝子性リスクスコアを計算したところ、その対象母集団の8パーセントには他と比べて3倍のリスクがあることがわかったのです。その数値は「家族型の病」に基づき、既存の研究が述べていた予備軍の数字より20倍も高くなったのです。
そのほかにも2018年に行われた研究では、悪性の前立腺がんの多遺伝子性リスクスコアが計算されました。この研究によれば、そのスコアが家族歴や、誰が何歳で前立腺がんを発症するかを予見するために広く用いられているスクリーニング検査よりも正確だということがわかったのです。
要するに、これらのスコアは患者が実際に病気にかかるよりずっと前に計算することができます。出生時にもわかるのです。そうすると、患者は特別な健康的生活習慣を送るように促されたり、特定の薬品を摂取することができたりするというわけです。なぜなら、遺伝に関連したほとんどのことと同様、多遺伝子性リスクスコアは「運命」というわけではないからです。スコアに関わらず、個々のライフスタイルや環境が大きく影響するからです。
このようなツールを用いることにより、病気にかかる可能性のある大勢の人たちを見つけ、その病にかかることのないように助けることができるようになります。
しかし、この便利な多遺伝子性リスクスコアをどのように利用するかについては、大きな警告がなされています。今までにGWASの研究対象となった人たちのほとんどが、白人のヨーロッパ系の家系なのです。つまり、現存するデータに基づき多遺伝子性リスクスコアを計算する場合、白人にはあてはまるということになってしまいます。
多くの科学者たちはゲノム生物学のフィールドにおいて、このような多様性に関係する問題があることを認め、問題解消に努めています。そのようなデータはようやく集められている段階です。
研究者たちの中には、この多様性に関係する問題は、実際に人々を助ける現場となるクリニックで、多遺伝子性リスクスコアを用いるのを阻んでいる唯一の問題であると考えている人もいます。しかし、その問題が解決されれば、このスコアを用いて、病気が出る前に患者が治療できるようになるのです。多くの人たちにとって、これはとても良いニュースでしょう。
しかし、そうなる前にもこれら遺伝子が互いにどのように小さな部分で働いているかを知ることは、遺伝子が原因となって引き起こされる複雑な遺伝的病を解き明かす助けとなるのです。
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