エナジードリンクの栄養成分として知られるタウリン

お気に入りのエナジードリンクを手に取って、その栄養成分表示ラベルに目をとめたことはありますか?

一体これにはなにが入っているんでしょう? そこで目を引くのが“タウリン”という成分です。

研究者たちは、タウリンが私たちの健康に重要な役割を果たしていると考えています。そして実際、エナジードリンクの製造会社はこの物質を製品に取り込んでいますが、このタウリンが本当になにか役目を果たしているのか、実はまだ解明されていません。

タウリンという物質名は、1820年代に雄牛を意味するラテン語の「トーラス」からとられました。これはおそらく、この物質が牛の胆汁から初めて分離、検出されたからだと思われます。

どうりでレッドブルには雄牛の精子が含まれている、なんていう噂がたつわけです……そんなわけないじゃないですか!

タウリンの正式な化学名称は2-アミノエタンスルホン酸ですが、大抵の場合、略してアミノ酸と呼ばれます。この有機分子はアミノ基(-NH2 )は持っていますが、化学の授業でよく扱われる20種の標準アミノ酸と違ってカルボキシ基(-COOH)は持っていません。また、タンパク質の構成要素でもありません。

私たち人間の体はタウリンを作り出すこともできますし、肉や魚などの食物やサプリメントから摂取することも可能です。母乳に含まれていることも判明しています。また、タウリンの分子は私たちの脳や心臓、骨格筋の組織、胆汁にも存在します。

科学者たちは、タウリンが体液の量を一定に保ったり、骨格の正常な発達、中枢神経系や心臓血管系の正常な働きを助けたりしていると考えています。

また極端に反応しやすいフリーラジカル(遊離活性基)という分子の影響から人体を守る抗酸化物質のような役目を果たすこともあります。

運動をすると筋肉からこのタウリンが失われる可能性があるという研究結果が報告されたことで、タウリンは運動時に補給することが望ましい成分とみなされるようになりました。こうしてタウリンがエナジードリンクに取り込まれるようになったわけですが……話はそう単純ではないのです。

エナジードリンクに含まれるタウリンについてなされた研究は、レッドブルについてのみ、しかも多くて20人ほどの被験者を対象に実施されたごく限定的なもので、その研究結果にも一貫性がみられません。

(エナジードリンクを摂取することによって)わずかながら耐久力、注意力、思考力などが向上した被験者もいれば、まったく変化がなかった被験者もいました。さらには、エナジードリンクにはカフェインやビタミンV、砂糖といった脳や体に影響を与えるその他の物質も多く含まれます。これらの物質も人体のエネルギーレベルを上昇させますから、それを考慮したときにタウリンそのものがどれほどの影響力をもつのか解明するのは難しいのです。

International Society of Sports Nutritionを含めたほぼすべての研究者たちが、タウリンの働きを解明するためには、もっと多くの研究が必要であると考えています。タウリンが人間のエネルギーレベルに顕著な影響を及ぼすという確証はつかめていないというのが現状です。

いずれにせよ、エナジードリンクのタウリン含有量が人体に悪影響を及ぼすことはないようですから、タウリンが栄養成分に含まれていたとしても失うものはないでしょう。