カタツムリを操る寄生虫

ハンク・グリーン氏:寄生虫。気味が悪いような、生意気なような。寄生虫はうまいこと私たちの体内に入り込み、住みついて、簡単に言うと私たちを生けるカフェテリアにしてしまいます。

一度寄生虫を見てみてください。すばらしくおもしろいですよ。でも寄生虫が実際に私たちを食べ始めるときよりもっとひどいのは、寄生虫が私たちの脳を乗っ取ろうとするときです。

あなたたちの脳を乗っ取ることができる寄生虫がいるんです。

困ったことがあります。寄生虫のなかには、体内で店を開くだけ、つまり宿主の体を消費し尽くすだけではもの足りないものもいるんです。

奴らは自分たちの生活サイクルが続くようにするために、宿主に具体的なことをやらせる必要があります。そして寄生虫はとてもずる賢いので、自分たちの宿主の脳を乗っ取ることによってこれを実行することができるんです。

例を挙げてみましょう。ロイコクロリディウム、鳥のなかに住みつくのが好きな寄生虫の一種です。

でも鳥のなかに入るためには、まず鳥の食べ物のなかに入らなければなりません。ここでカタツムリの登場です。

ある種のカタツムリは鳥のフンを食べるのが大好きです。そして鳥のフンは、ロイコクロリディウムが鳥に入り込んだ後、最後に行き着く場所なのです。

カタツムリは散歩していてそれを見つけます。「やや、すばらしくおいしそうな鳥のフンが葉っぱの上にあるぞ!」

でもそのフンのなかに、これから自分の脳を乗っ取って自分をゾンビに変え、その体をゴーカートのように乗り回す小さな寄生虫の幼虫がいることを知っているカタツムリはほとんどいません。

寄生虫はただ鳥の注意を引くためだけに、カタツムリを使ってこの信じがたい状況を作り出します。要するに寄生虫はゾンビ化したカタツムリを、鳥が必ず見つけるような見えやすい場所へ行かせるのです。

それから寄生虫は、鳥がそのカタツムリを食べてもう一度そのサイクル全体が始まるように、カタツムリの目の触角を占拠してカタツムリの頭部がおいしそうな巨大ウジ虫に見えるようレーザーショーを開演します。

さらにすごい寄生虫たち

でも、そういうやつよりもっとすごい、ハリガネムシというのがいるんです。

この小さなろくでなしは、バッタのような昆虫に、飲み水を通して取り入り、十分に成長するまでその昆虫のなかで暮らします。しかしこのハリガネムシが水のなかに戻らなければならないときが来たとき、どうすると思いますか?

なんと、バッタの脳内作用を妨げるタンパク質を分泌し、細胞すべての機能を停止させ、バッタに自殺するよう命令するのです。その結果、バッタは一番近くにある水場に飛び込んで溺れ死に、寄生虫は超ハッピーになってバッタの肛門から這い出て、ほかの不愉快な肛門寄生虫に会いに行くんです。

私たちにとってありがたいことは、私たちが抱えているような驚くほど複雑な事象を取り扱うことができる寄生虫はそれほどたくさんいないということです。

ああ、でもこういうことがあります。トキソプラズマと呼ばれる単細胞生物がいます。

ネコはトキソの赤ちゃんをフンと一緒に出してしまうのですが、ネコはイヌと違って自分のフンを食べるような野蛮なことはしません。しかし、どういうわけかはわかりませんが、ネズミはネコのフンを食べますよね。でもそうするとトキソはネズミからそのフンをネコに戻す方法を考えなければなりません。

そこでトキソはネズミの脳内作用を邪魔して、「ネコに近づいちゃダメだ。ネコはおまえを食べるんだよ」とささやく小さなスイッチを切ってしまうのです。そして代わりにネズミの脳にこうささやきます。「おまえはネコが大好きだ。あのネコちゃんが大好きだろう。魅力的で愛らしいじゃないか。ネコといちゃいちゃしてみたらどうだ?」

ネズミがネコといちゃいちゃしようとすると、どうなるかわかりますね。ネズミはむしゃむしゃと食べられて、大成功!

しかし困ったことがあります。人間もネコのそばで多くの時間を過ごすため、恐ろしいことですが、実際ネズミととてもよく似た状況にあるのです。

19世紀の半ばから終わりにかけて、統合失調症について重要なことを示唆する研究がされました。それは、ネコを飼うことに関する大きな発見でもあります。

「トキソプラズマの量と統合失調症の程度の関連性は、この小さくて不愉快な奴が人間の脳内作用を妨げている可能性があることを示唆している」ということを示した研究があるのです。

でもこれが、ネコが異常に好きな女性たちがいるという現象の理由になるとは誰もまだ言っていませんが。