コウモリはなぜ逆さまで寝れるのか

マイケル・アランダ氏:今夜木のあるところで寝たくなったとして、ハンモックを持ってくるのを忘れたとします。もっと動物と触れ合いたいと思えば、オランウータンのように木の枝と葉っぱで作った巣を作ってみたり、コアラの真似をしてお尻を木の枝元くっつけてみて、機会を伺うのもいいでしょう。

哺乳類のなかで、私がインスピレーションを受けないだろうと思うのは、コウモリです。私は1分以上腕を使ってぶら下がっていることはできず、足はそうした作業には全然向いてないと思います。

しかしコウモリは、その特別なメカニズムによって、いびきをかいている間に足を使って何時間も逆さまでぶら下がっていることができます。

彼らは、掴むための強い筋肉は何も持っていません。食いしばる力は、すぐに筋肉を疲労させます。コウモリは単に掴むことに割くだけのエネルギーは持ち合わせていません。そうしたエネルギーは飛ぶことに使います。

また、睡眠中、筋肉はリラックスする傾向にあります。寝起きに読みかけの本が、そのまま顔の上で開かれたままになっていることでもわかるでしょう。

秘密は、その腱にあり

コウモリの秘密は、彼らがぶら下がっている間に使用する筋肉ではありません。筋肉の代わりに、彼らは進化した腱に素晴らしいメカニックな秘訣を持っています。

一般的な腱の役割は、筋肉と骨をつなげる役目を負っていますが、コウモリには別の使い方があります。

特別な腱が足先、脚と上半身とを接続し、強く引っ張ることでコウモリがぶら下がる時の体重を支えるようになっています。

大部分の腱は、腱鞘と呼ばれる、腱の滑りをスムースにするコーティングに囲まれています。これらの腱が特別なのは、腱の上の「のこぎりの歯」のようなものが外側の腱鞘に向かってあり、腱を包む腱鞘にある突起物が、その「のこぎりの歯」の溝に対応するように並んでいて、ぴったりかみ合うようになっているためです。

ぶら下がるのによい場所を見つけたコウモリが、その部分を足で掴んだとき、腱が「のこぎりの歯」を引き出し、ラチェット(つめ車装置)のように足をしっかり固定します。腱の「のこぎりの歯」の角度が固定され、肋材が滑り出してくると、それらは固定されるのです。

一連の動きは、コウモリにとってほとんど努力を必要としないため、「不活性なデジタルロック」と言われています。これによってコウモリは疲れて地上に落ちてしまうことなく、ぶら下がったままぐっすりと眠れるのです。

一連の動きはとても不活性なため(自然で力を加えない状態のため)、死んだコウモリですらぶら下がったままです。その掴む力はとても強く、小さな種類のコウモリでさえ、洞窟の天井の一番小さな岩の端に掴まっていることができます。

ぶら下がって寝ることの利点とは?

鳥にも枝の上にとまるための似たような固定メカニズムがあるのでしょうが、学者たちはこのメカニズムを鳥がどのように使っているのか、まだよくわかっていません。ある一定のネズミも、よじ登るためにこれと似たようなメカニズムを使っています。

といっても、すべてのコウモリが同じことをできるわけではありません。吸血コウモリはこのようにぶら下がることはできませんが、通常のコウモリよりもさらに強い脚力を持っています。彼らは素早く俊敏に地上や(血を吸われる)被害者の背中の上で食事をします。

ぶら下がることのできるコウモリの有利な点とは何でしょう? まず一つは、多くの捕食者が木の枝の下や洞窟の天井にいないことです。

また、コウモリが飛ぶためには、ただ足の筋肉を開放して羽を広げて舞い上がるだけなので、その他の鳥より飛び立つことがずっと簡単です。走り上がるためのエネルギーは必要ありません。

落ちて死ぬことさえなければ、逆さまで寝ることは良いことのように見えます。