妊婦の吐き気と嗅覚の関係

ハンク・グリーン氏:みなさんの意識は身体と長い間付き合っているので、コントロールしようと思っても思わなくても、驚くほど奇妙で思いがけないことが起こったりするものです。特に女性が体内にもう1つの命を宿している場合には、より奇妙で驚くべきことが起こります。

妊娠すると、当然身体には重い負担がかかります。体内にまったく別の命を宿すための組織をつくるわけですからね。加えてそれはかなり不快なもので、激しいホルモン異常をきたします。

これらの化学的なサインが、臓器にいつ何をすべきかということを伝えているんです。これらの別個の目的は赤ちゃんに栄養を与えたり、出産を助けたりすることです。

これらの化学物質は女性のあらゆる腺から分泌されます。LH(黄体形成ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)など、これらの多くは、エストロゲンやプロジェステロンなどをより多く分泌するための引き金にすぎないのです。

これらはさらに役立ち、たとえば初めて妊娠を経験する女性のほとんどが神経過敏、嗅覚過敏になります。これらは突然発生するもので、妊娠初期の診断に使われます。

匂いを嗅ぎ当てられるようになるというよりも、嗅覚過敏症と呼ばれ、食べ物や香水、タバコやおならなどあらゆる匂いに敏感になってしまうんです。どんな匂いに対しても同じぐらい敏感になり、普通は不快に感じてしまいます。

誰にも解明されていないのは、この高められたすべての活動に、何らかの目的があるのかどうかということです。しかしこれがつわりの真の原因だと考えている科学者もいます。

吐き気は妊娠第一期によく起こりますが、無嗅覚症の妊婦にはほとんど発生しないことが分かっています。

「お腹が出る」以外に現れる変化

それからこれはあまり役に立たない情報かもしれませんが、妊婦のお腹が出てくる前から、目で見ても分かるような変化が身体に現れることがあります。身体の中心、へそのすぐ下から性器にかけて黒い線が現れることがあるんです。これは医学的にはリニアニグラ(Linea nigra)と呼ばれます。

これもエストロゲンなどのホルモンの異常によって起こるものだと考えられてきました。妊婦の身体のいたるところがシミやアザによって黒くなることもあります。

肝斑(chloasma)は、目の周りを中心に顔にシミができる症状で、妊娠黒皮症(mask of pregnancy)とも呼ばれています。

これは体内にもう1つの命を宿したことに対する自然の祝福です。

進化の観点から言えば、これらのシミは女性が妊娠しているかどうかを非常に明確にしますが、これもまたなぜ起きるのかは科学的には証明されていません。

人間にもある「巣作り」の本能

しかし身体をコントロールできないことでもたらされるものには、良いこともあります。家が綺麗になるんです。最近科学的に明らかになったことですが、多くの妊婦が巣作りを行なうんです。

出産の直前になると、妊婦は家を掃除したり整理したりせずにはいられなくなります。キッチンのお皿を並べたり、赤ちゃんの服を綺麗にたたんだり。また誰を家に入れるか、誰と一緒に過ごすかについても神経質になります。

2013年にマックマスター大学は、妊娠している女性とそうでない女性を同期間比較しました。その研究によって、妊娠第三期のある時点で妊婦は一貫して同じ行動パターンを取ることが明らかになりました。一方、妊娠していない女性は普通に歩きまわるだけでした。

巣作り本能(nesting instinct)は、母と子の両者の変異を容易にする古代からの順応で、両者が対面する前から絆を強めるんだと言っている神経科学者もいます。

すべての母親はこんなに奇妙な出来事を乗り越えて来ているわけですから、感謝しないといけませんね。特にぼくの母親に。