蝶の一生の不思議

オリビア・ゴードン氏:みなさんはもしかしたら、蛾や蝶の基本的なライフサイクルについてご存知かもしれません。卵からイモムシが生まれてきて、それがサナギとなり、サナギから成長した蛾や蝶に姿が変わるのです。

しかし、この変化は並大抵のことではありません。ある一定の時にサナギを開いてみると、虫のスープ以外なにも入っていません。

イモムシは卵から生まれてくる前、すでに大人の体の部位が育ち始めた状態で生まれてきます。その「成虫原基」と呼ばれる、とても小さな細胞の塊は彼らの体中に広がっていて、変態の間にそれぞれの原基が成虫の蝶や蛾のさまざまな体の部位として発達するのです。

イモムシがサナギになる時、それは酵素を放出するので、ほとんどの細胞組織を溶かしてしまいます。成虫原基と、特定の筋肉と神経システムの部分しか残ることはありません。体の残りはすべてドロドロに溶けてしまうのです。

このたんぱく質豊富な廃物液は新たな細胞分裂の急増を促進する助けとなり、成虫原基が一人前の成虫の羽根、目、そして脚となるのです。

彼らは体のほとんどすべてが溶けて、さらに全くはじめから再構築するわけですが、成虫となった蛾の場合、自分たちがイモムシであった時のことを覚えているのです。

ある研究で、蛾の一種であるタバコスズメガの幼虫が特定の匂いにさらされている間、それに弱い電気ショックを与えました。その幼虫が変態した後の成虫となった蛾は、不快な電気ショックと関連のある匂いをまだ避けていたのです。

ですから、少なくともいくらかのイモムシの脳は変態の間も、体がほとんど溶けてしまっているにもかかわらず、残っているようです。

変態は複雑ですが、昆虫にとってそれは助けとなるプロセスです。体のパーツが全くもって再アレンジされるということは、成虫と幼虫の食料源が異なるということです。通常イモムシは植物の葉を食べ、蝶や蛾は蜜を食べます。異なる成長過程で同じ食料を競争して食べることを防ぐのは、虫にとって進化することの大きな後押しとなります。

しかし我々は変態が一体にどのように行われるのかを理解したわけではありません。否定されてしまった1つの仮定で、飛べる昆虫と這う昆虫が交尾することにより変態が始まったとする説がありました。

そうではなく、きっと発達方法がさほど複雑ではなかった時から徐々に進化していったのでしょう。どのように変態が進化してきたかにかかわらず、蛾や蝶が格好良く見えるようになるのではないでしょうか。彼らはか弱くて綺麗に見えますが、実際は自分の体を溶かしても生き残ったのですから。