時代劇でありながら、新しさに溢れた映画

司会:それでは早速ではございますが、登壇者の皆さまから一言ずつご挨拶をちょうだいしたいと思います。まずは戯作者に憧れる見習い医者であり、離縁を求める女たちを手助けしていく、駆出しの離縁調停人・中村信次郎を演じました、大泉洋さん。お願いします。

大泉洋氏(以下、大泉):どうも、中村信次郎を演じました大泉洋でございます。今日は雨が降って、足元が悪いんですが、お集まりいただきましてありがとうございます。

『駆込み女と駆出し男』という映画は、井上ひさしさんの『東慶寺花だより』という原作がもとになっているんですけれども、本当に原作も実に意識したし、監督がお書きになった脚本も、とにかくすごくエネルギーに満ちていて。

実際に撮った時にも、勢いを損なわないような撮影だったのを覚えています。できあがったのを見た時に、時代劇でありながらも、ものすごく新しい映画を見たな、という感覚に囚われたのを覚えております。より多くの方に見ていただけるように、宣伝をしてください(笑)。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:どうもありがとうございます。

事前に決めすぎず、時々の感性を重視する

司会:続きまして、夫の暴力から逃げ出し、駆け込むが、改心した夫の懇願に心震える、働きものの鉄練りの女、じょごを演じられました戸田恵梨香さんお願いします。

戸田恵梨香氏(以下、戸田):じょごをやらせていただきました戸田恵梨香です。私は時代劇をはじめてやらせていただいたんですけれど、できあがった作品を見て、とても見やすくて、笑えて、涙もあって、若い世代の方たちにも楽しんでもらえるような作品になっているんじゃないかなと思いました。できるだけ多くの方に、若い方たちに見ていただけるように頑張りたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:どうもありがとうございます。さて、縁切り寺では、豪商・堀切屋の愛人・お吟がある秘密を持って東慶寺に駆込みます。そのお吟を演じたのは、満島ひかりさんです。ご挨拶お願いします。

満島ひかり氏(以下、満島):こんにちは、満島ひかりです。記憶を探りますが(笑)。とても難しい役柄でした。べらんべえ口調を喋ったりとか、着物を着て肩を落としたりとか、荒っぽく、粋にとか。

色々と注文もありましたので、どこまでできるかわからなかったんですけど、原田眞人監督は、とても感性の素敵な監督で、私はこんなに進む方向がわからないというか、決めすぎないで、ちゃんとその時の感覚で進んでいく監督さんっていらっしゃるんだなって、とても楽しかったです。

撮影していて難しかったし、苦しかったし、楽しかったし、できあがった映画みて、なんか見たことのない時代劇でした。時代劇っていうと、皆が「通さん」みたいな芝居をするイメージがありますけど、とても現代に通じる、かつて私たちの先祖だった人が生きてきた時代の映画だな、って感じることができたので、とても色んな人間が出てきますし、楽しんでもらえると思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:ありがとうございます。

時代劇を崩していく映画

司会:続きまして、ゴロツキの剣豪に夫を殺され、無理やり結婚させられた、女サムライの駆込み女の戸賀崎ゆうを演じました、内山理名さん。よろしくお願いします。

内山理名氏(以下、内山):戸賀崎ゆうを演じました内山里名です。私は映画自体もすごく久々でして、原田さんの『わが母の記』を見て、すごくご一緒したいなとおもっていたので、この話がきたとき、まず何が何でもやろうと思っていました。

私の役がですね、女侍ということで、映像でも女侍ははじめてでしたので、毎日刀を片手に持って稽古して、今回は映画に入る前にも色々な稽古をしまして、それも私にとってはすごく思い出で、こんなに準備期間をいただいたこともなかなかないので、贅沢にやらせていただきました。

時代劇自体はけっこうやらせていただいているんですけれども、この作品で、私は時代劇というものを、時代劇はこうじゃなきゃいけないんだというものを監督に崩していただきまして、新しい時代劇をつくることができて、すごく良い影響を受けました。

皆さんの中にも時代劇見たことない方やあまり興味のない方にも、すごくテンポがよくて見ていただける作品なので、沢山の皆さんに見てほしいと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:どうもありがとうございました。

今までの作品で、1番の良作

司会:続きまして、御用宿・柏屋の主で母性と父性を持ち合わせたベテラン離縁調停人、3代目・柏屋源兵衛を演じた樹木希林さん。

樹木希林氏(以下、樹木):樹木希林です。こういうところに出てくるほど、映画の中で役にたってないのですが、行きがかり上、こうやってつながっています。

未だに題名が覚えられないんですね(笑)。内容は、男と女の離縁を調停する柏屋源兵衛を演じさせていただいております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:どうもありがとうございます。さて、本作でメガホンをとりました原田眞人監督、ご挨拶お願いします。

原田眞人氏(以下、原田):原田です。『わが母の記』以来、いつも作品を考える時に、今度は樹木さんにどういう役で出ていただこうかと、そればっかり考えておりまして。

原作に、おとら婆さんというのがいまして、おとらさんをはじめは樹木さんにやっていただこうと思っていたんですけれど、やはりもうちょっと貫禄があるほうがいいと思って、おとらさんの樹木さんが目立ちすぎちゃうと、源平さんが目立たない。もういっそのこと2人を一緒にしちゃえと考えまして、樹木さんにお願いした次第です。

若いキャストも本当に素晴らしかったし、皆さん、演技指導の段階から一生懸命やってくれて、僕自身、はじめての時代劇でしたけれども、皆と一緒に学んで、少しずつ成長することができました。

映画監督になる前、映画ファンであった頃、僕自身が時代劇と戦争映画と西部劇で育っていますから、やっとこれではじめての時代劇を撮れて。時代劇というよりも今回は19世紀の映画という意味で、当時を色々調べて、皆と一緒につくりあげました

非常に現場も楽しかったし、できあがったものも自分の今までの中では1番良いものができたのではないかなと思ってます。よろしくお願いします。

『アナ雪』を超える女の連帯を描きたかった

司会:それではここから皆さんに色々なお話をうかがっていきたいと思います。まずは私から登壇者の皆さまに代表質問をさせていただこうと思います。

原田監督にうかがいたいのですが、今ご挨拶にもございましたように、はじめて時代劇に挑まれたということで、その中で心がけたもの。また、井上ひさしさんの持つ原作の世界観をどのように描こうと思われたのか。その辺りをお聞かせください。

原田:時代劇ということでこだわったのは、儀礼、礼儀ですよね。そこはきっちりとやりたいなと。今までの時代劇の延長上にあるような、江戸ものって観点からいうと、この作品は江戸から話がはじまって、鎌倉に駆け込むというところからはじまっています。

そして、やはりその距離感とか、道中の雰囲気であるとかが、主人公たちの生きている「生き様」や生活、風俗というものを見せたくて、それから女たちの連帯の話であると同時に、進次郎の成長の物語であるということで、それぞれの背景のリサーチですよね。

脚本を書く上で時間がかかったんですけど、もともと井上ひさし先生が原作で、この本読めば全部わかるんですけど、井上先生というのはもうリサーチマンですから。

それと同時に他の作品ですね、井上ひさし原作、原案ということになってますけど今回の『東慶寺花だより』以外にも『戯作者銘々伝』や『手鎖心中』とか色々ありますけど、そういうものからも参考にさせていただいて。

あと1番最初苦労したのは、これ実を言うと原作は時代がはっきり限定していなかったんですね。15のエピソードがあるんですけど、そのうちの1つには約150年前の振袖火事という記述が出てきて、振袖火事というのは明暦の大火ですので、1807年頃の話かなあと。

その後に出てくる話で、座敷ずしというのがあって、座敷ずしが取り締まられたのは天保の改革の頃ですけど、1840年くらい。だから1810年くらいから40年くらいまでの幅のあるところでどこに話を絞ったら、若い主人公たちが女たちの連帯を、『アナ雪』よりももっと素晴らしい女の連帯を描きたいというときに、どの時代が1番いいのか。

その時に原作者が弾圧されてる、当時としても特別秘密保護法案みたいなのができちゃった天保の改革の頃のほうが今に通ずるんじゃないかなと。そこに時代設定をしてからは、あとは凄くスムーズに準備が進むようになりました。

司会者:どうもありがとうございます