2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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藤岡清高氏(以下、藤岡):前回のインタビュー時(2013年5月)から会社組織も大きく成長し、知名度も上がりました。山下さんの自身の変化について教えてください。
山下智弘氏(以下、山下):1つは私自身の個人的な話になりますけど、役員(ボードメンバー)に相談ができるようになったというのは大きいと思います。
今までは相談ができませんでした。相談してるふりはしていましたけど、全部もう決めてることを話して、背中を押して欲しいだけでした。自分が決めたことを、とやかく言われるのも嫌で、全部決めてからしか相談しませんでしたし、決めてない状態では言葉にもしませんでした。
しかしそれが、たぶんこの3年ぐらいで、「こういう提携の提案があるけど、これどう思う?」「これ、どう考える?」などという相談をできるようになったのが変化だと思ってます。
例えばCFOが就任したのは2年前なのですが、それまでお金のことは経営そのものですから、前の会社を含めて13年目になりますが、起業して以来誰にも相談をしてきませんでした。手続きとして経理の方に「これ、どうしよう」という話はありますが、ただ手続き上の問題だけでした。
一方、資本をどう調達するかなどの相談ができるようになったのは、相談できるべき相手ができた、作れるようになってきたということなので、すごく大きいと思っています。
CFOを例えにしましたが、そういうふうに相談することができると、既存のメンバーにもそれができるようになってきました。「これ、どうしよう?」「これ、どうしようと思ってる?」とか。既存のメンバーに問題があってできなかったのではなくて、相談できなかったのは僕のほうの問題で、心を開けてなかったわけです。
今までは自分で全部やればいいやと思っていて、自分のコピーがいればいいやと考えていましたが、そうじゃなくなってきたのは、そうしないと組織としてもう成り立たなくなってきたというのもあると思います。
藤岡:社員が何人ぐらいになった段階でそう感じ始めましたか?
山下:あるテレビ番組に取り上げられてからです。番組に出演したおかげで、Webに10倍くらいの訪問があり、問い合わせ量も7倍、8倍になりました。ある程度は予想していたので、Webの回線も太くし、問い合わせ対応できる営業マンや設計のコントロールする人間を一気に増やしたのですが、それが大失敗でした。
理念や会社としてのバリューも何も関係なしに、とりあえず人をバーッと集めてしまったので、チームも何もない状態になりました。新しく入ってきた人間が古い人間を連れて辞めてしまう、お客さんにすごい迷惑をかけてしまうなどということが一気に起こりました。
僕がチームを作れてない状態で一気に大きくしようとしたので、そういうことが起こったと反省しています。
もう一度、そういうチャンスがあったとすれば、同じことは繰り返しません。もちろん回線を太くしたり、人員も厚くしますけど、違う方法をとると思います。
例えば外注をうまく使うなど、もっとやり方があったと思うのですが、そのときはもう、とりあえず「いけ、いけ、いけー!」という感じでした。
藤岡:そのような事故があり、今後組織を成長するうえで大事にされている価値観について教えてください。
山下:僕たちは「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に」というミッションを掲げているのですが、それに基づいて、ビジョン・バリューといったように行動指針も社内のメンバーと一緒に作っているところです。
Aのところは、組織のミッションと個のミッションが合致しているということです。会社が目指そうとするところと個人が目指そうとするところは、できるだけ一致している人が望ましい。ですが、実際は一緒の方向なんか向きません。面接していると、「御社の考えとぴったりです」と言われるのですが、絶対に嘘でそんなわけないですよね。僕が自分で作った会社でも、100パーセントは一致してないので(笑)。
組織や会社も生き物なので、100パーセント一致するというのは難しいと思います。ですが一致させようとすること、しっかり擦り合わせることには意味がある。
Bは、ここ大事なんですが、気持ちがいいということです。「謙虚さ」「感謝の気持ち」「明るいバカ」という3つのキーワードにシンクロする人を指して表現しています。
ベンチャーは、ほとんどのことで失敗すると思っています。おそらく、10個あったら8か9は失敗します。ですから失敗した後が大事で、「わっ、この人に任したから失敗したんや」なのか、「この人でここまでやって失敗したならしょうがない、ちょっとなんかフォローしてやろう。次も任せてみよう」と思うかは大きな違いです。
この違いは、気持ちがいい人であるかどうかという点ではっきり分かれる。ですからとてもこだわっています。
Cのところはスペックですね。一般的にハイパフォーマー、ハイスペックと言われる地頭が良く、論理的思考能力が高くて、向上欲求みたいなものが強い、という指標です。
この3つのA・B・Cが重なった部分の人を採用していこうとしています。そうすると以前起きたような事故は起こりにくくなると考えています。
3年ぐらい前までは、リノベーションを流行りのファッションの1つとして捉えていた不動産会社、工務店がいて、「リノべる」ってテレビで見るし、リノベーションのことも聞くようになったし、1回乗っとこうかということでパートナーになったかたちが多かったように思えるのですが、最近はそうじゃなくて、本当の意味で論理的にも、腹に落として加盟される、パートナー登録される会社が増えてきている気がします。
藤岡:価値観の共有を大事にするからこそ、共感できないパートナー企業の登録は断ることもあるのですか?
山下:もちろんあります。FCと言われるフランチャイズの、エリアパートナーと呼んでいますが各エリアを任せるような取引きがあります。
今うちは全国で19拠点のショールームを運営しています。北は仙台で一番南は沖縄なんですけど、そのうちの9拠点は、フランチャイズです。沖縄の「リノべる。沖縄」は、沖縄にある企業が運営しています。
Webマーケティングのところは我々がするけども、実際にショールームに来ていただいた以降の動きは現地の会社さんがしていただくかたちです。最低2人の方に2ヶ月、東京に研修に来ていただいて、「リノべる大学」で研修を受けていただいきます。そこでそぐわない人、会社としてどうしても難しいときはお断りになりますし、逆に来ていただいた方も、考え方が違うと研修が続きません。
例えば、大手で不動産30年やってきました、というベテランの方が研修に入ると、もう既存の考え方で固まっていたり、お客様を上から見ていたりということがあります。
うちが取り組んでいることは新しいもので、それに対して情報の非対称性で儲けていたのが従来の不動産会社なんです。ぜんぜん考え方が違うわけです。
お客様に対して「売ってやろう」というスタンスの方がいるのですが現代はそんな時代じゃないです(笑)。
お客様に対してどんな価値があるのかというのをプレゼンテーションして、ストーリーを語って買っていただくのが、不動産会社の一番大事な仕事だと思っています。
我々の物件を扱う際に気つけて欲しいこと、僕たちとしてのスタンスを「リノべる大学」で伝えています。そこがフィットしないとなかなか成功しないです。
この話は以前アマテラスさんにインタビューしていただいたときにはできなかった話かもしれません。一番失敗しているからこそ今、そういう話ができていると思います。
今リフォーム産業新聞社によると、このワンストップと言われる、再販ではない業界では僕たちがトップなんですね。
年間約400件受注していて、2位の会社が100件程度です。4倍程度差をつけて僕たちがトップなのですが、これは一番失敗しているということです(笑)。
お客様から一番怒られて、パートナーさんから怒られて、そのナレッジを「リノべる大学」の中に落とし込んで、着実に積み上がっている。リノべるは先ほど言ったようにどちらかというとコンサルに近い、既存の不動産会社ではなかなか無い形態で売っているので、パートナー企業さんに僕たちが目指していることややっていることをお話して、経験を共有してもらっています。
藤岡:組織が大きくなってきていますがそれに伴う変化はありますか?
山下:社員が単体だと100名で、連結だと100名を超えています。あと関係会社としては、ファイブスターファクトリーというアフターメンテナンスの子会社と、タマホームさんの事業であるSuMiKa(スミカ)という設計士マッチングサイトの会社があって、そこに出資して共同運営しています。
組織が大きくなってきて、失敗しない方法を選んでしまったり、自分の頭で考えなくなっているなと感じることが出てきたことです。これは相談の逆側ですが、自分で経営しなくなってるなと、ハッと気付くことがあります。
何か物事があって解決しようというときに、じゃあアドバイザーのAさんに聞こう、法律的な観点だと専門家のBさんに聞こう、となってしまい「あれ、これ自分で考えてるのかな……」と思うときがあります。それはやめようと思って、今自分自身の意識改革をしています。
相談できるからと言って頼りすぎると、他人の肩に乗って経営しているようなかたちになるので「いや、そうじゃないよね」と。一方、自分で走りすぎてもダメなのでそのバランスは大事にしています。
事業推進のスピードでいくと僕は、この1年半は落ちたと思っていて、すごく反省してるポイントです。チーム作りに力を入れたこともありますが、相談できるようになった役員(ボードメンバー)が強くはなってきたけれども、その中でやっぱり遠慮というか、ポテンヒットがすごく増えました。
5人のボードメンバーでやっているのですが、その5人の間にボールが落ちて、「誰かがやると思ってました」ということがあったりもしました。これは自分の責任で、今メンバーの責任範囲を明らかにしていっています。役員に対して、「あなたはこの1年これをやりましょう」ということをやっています。
藤岡:前回のインタビュー時は、まだVCさんが入っていませんでしたが、現在は複数のVCさんや株主が入っています。山下さんへの期待や要求も大きくなってきていると思いますがメリット、デメリットあれば教えてください。
山下:今8、9社から出資をいただいていて、メインインベスターはかなりこだわって選びました。経営を支えてくれるような投資家を求めていたのでグロービスさんは、ベンチャー経営に長けているので、彼らに入っていただきうまくいっています。
社外役員にも入ってもらい何かあるごとに、もう本当に中の人のように、「これ、どうしよう」と一緒に話をしていく仲で、心強いですね。
彼らは僕たちが見たことのないステージを見てきた人たちで、なかにはハンズオンが嫌な経営者ももちろんいると思いますが、僕の場合はそこを知って刺激を受けるほうがいいと思っていました。
ただやはり、スピードに関しては鈍化しがちになります。経営の意思決定について株主さんに承諾を得ながら進めなければいけないのはわかっているのですが、その辺の手続き的な事は、「ああ、ちょっと面倒だなー」みたいな事はけっこうありました(笑)。
結果的にはプラスのほうが多く、毎月の経営会議にも出ていただいて、今良いこと悪いことを含めて共有しながらやっています。
藤岡:リノべるさんの今後の展開について教えていただけますか?
山下:書籍では台湾に行こうと書いたのですが、海外展開は一度ペンディングしてます。というのも、台湾も含めて海外の不動産事情がすごく変化してるので、今行くべきではないという判断です。今は国内だけで展開していますが、そこで取り組もうとしているのは、「ホームテック」です。
アメリカではホームテックはフィンテックよりも大きいと言われていますが、IoTを使って家を自動化していくということなんです。
そのなかで、僕たちは2つの取り組みをしようとしていて、1つは本社に併設しているショールームが入り口のすぐ横にありますが、あそこはコネクトリーラボという名称で、IoTを体験できる実験場にしています。
今、たくさんの家に関わるデバイスが発売されていますが、例えばスマートロックは何がいいかわかりづらいですが、「中古住宅の中でIoTを使うとこうなる」という体験ができます。
藤岡:中古住宅に最新のテクノロジーを導入してホームテックにしていくというのは斬新ですね。
山下:そうなんです。逆に中古だからIoTを生かせる部分がけっこうあって、例えば、僕たちが販売する宝石物件でいうと、築30年だとオートロックがないマンションがけっこう多いんです。
女性住民が不安で「オートロックを付けよう」とすると管理組合とか、管理規約を変えて、何千万円の投資をして作らなくてはなくてはなりません。
ですがIoTであれば、オートロックよりも簡単なセキュリティ機能を月々数百円という単位で導入できます。不審者が入ってくると、ブザーが鳴って警察に通報がいくようにするとか、顔を認識してログを取ることができます。
「中古物件とIoTを掛け合わせて、どんな価値を見出すか?」という実験場がそのコネクトリーラボです。そしてコネクトリーアップというアプリケーションをソフトバンクさんと共同で、今作っています。
これがホームテックの1つで、家をアップデートしようとする取り組みです。リノベーション自体がアップデートの1つだと思うんですけど、機能を追加していくことで、アップデートできる家を作ろうと。
藤岡:リノべるはテクノロジー企業に進化してきていますね!
山下:そうですね。今までは、営業、設計のようなリアルなところのスタッフが多かったのですが、今ではスタッフの20パーセントぐらいがITバックグラウンドの人材で、DeNAやGREEといったITベンチャー出身者がさまざまな部署で活躍しています。
また、ITを使った商品設計、効率化というところまで取り組んでいます。ITを使うことで僕たちのこの事業を爆発的に改善することができるんです。
中古の家を買うのは新築を買うのと比べて、価値が落ちにくいとか、再販と比べて自由度が高いとか、いいことづくめだと話しましたけど、マイナスもあるんです。
何かと言うと、お客様からすると出てくる登場人物がとても多いんです。設計屋、建材屋、営業マン、金融機関、不動産会社……たくさんの人が出てきて、1ヶ月半位で対応していくのでストレスがすごいんですよね。やっぱり「言った言わない……」ということになります。
人と人の間にすべての問題があると思っていて、そのコミュニケーションにITを使えば、だいぶスムーズにできるので、シンプルで直感的に使える施工現場用の業務管理ツールも開発しています。
「施工現場にも優秀な“猫の手”を」というテーマで取り組んでいますが、職人と現場監督のやり取りを可視化したり、すべての現場がスマートフォンでいつでもどこでも見れるようになっています。
日本全国、北は仙台、関東圏、中部、関西、中国、九州と案件がどんなふうに進んでいるかが、すべて見れます。今、首都圏だけで多分90現場ぐらい動いているのですが、その物件がどんなスペックのマンション、築何年のマンションで、何平米で、誰が担当していて、管理人さんがこんな人でというのも見れます。あとはそこに、チャット機能があって、誰々がこんな話をしてというのも見れるようになっています。
将来的にはこのシステムをアップデートしていって、エンドユーザーも見れるようになり、今どんなふうに工事をしてるかがカメラで24時間わかったりとか、そこで職人さんとやりとりができるなどサービスの幅を広げていきたいと考えています。
藤岡:山下さんが考えられているリノべるの経営課題についても教えてください。
山下:これは直近も長期も含めて、一番は人材採用、教育強化だと思っています。今取り組んでいるのが新しい事業領域なので、過去にこういうことをやっていた人が活躍するという成功事例がなかなかないんですよ。
必ずしも、不動産業界にいた人が活躍するかというとそうでもないですし、人がいる領域なので、ITが発達したとしても、人は絶対いるんですよね。じゃあ人がボトルネックにならないようにするには、採用と教育の力をつけていくことなので、そこはけっこうこだわってやっていますね。
藤岡:本日は貴重なお話ありがとうございました!
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