20代のキャリア論

井上皓史氏(以下、井上):今日の流れとしては、トークセッションがメインで、8時半ぐらいからTwitterとかで質問を受け付けたいと思っております。それで今日は何を話そうかと思ったんですけど。

尾原和啓氏(以下、尾原):ちなみに、本なんて別に買わなくても、どうせ誰かがまとめてくれるから。

(会場笑)

読みたいやつは、僕の本だったら、4つか5つぐらいのブログを見てくれれば、だいたい(内容が)わかるから。それを読んで「あ、おもしろいな」と思ってくれれば買えばいいからね。

井上:そうですね(笑)。ありがとうございます。

尾原:「そうですね」って言っちゃダメだろう。

(会場笑)

井上:確かに間違いないです(笑)。ぜひ買ってくださいね。それで尾原さんの話がネットであったり、YouTubeであったりにたくさんある中で、朝渋で語ってもらうのは何がいいのかなと思ったんですけども。

尾原:なるほど。

井上:僕がまだ新卒4年目ということもあって、若者の代表として、20代のキャリア論というのがすごく難しくなってるなと思っていて。まず、好きなことを見つけられないであったり、副業解禁とか、20代のスキルアップのための転職であったり。本の中に書かれていることも多いんですけども。

このあたりをぜひ、僕をケーススタディにして、尾原さんにどんどん斬っていただきたい、という企画をしたいなと思ってます。尾原さん、大丈夫ですか?

尾原:あ、大丈夫ですよ。

井上:ありがとうございます。

尾原:僕は基本的に多動症なので、複数のことをやってます。

(会場笑)

井上:大丈夫かと(笑)。Twitterを見てましたか? では僕をケーススタディにということで、朝渋は、好きなことを見つけて、そこから得意になって、それを世の中が必要としてることに変えて対価を得るみたいな、生きがいのサイクルに合わせたものなんですけれども。

このあたりで僕は個人でずっと早起きをやっていてですね。周りの夜型人間を朝型人間に変えていくという趣味があったので(笑)。それをやっていたら、「これはもっと社会的にやるべきだ」みたいな話にどんどんなってですね。そしたら、朝渋というライフワークでやっていこうということで、朝渋が誕生したんですね。

それが2年前で。たまたま早起きが好きだった、得意だったという2年前の話なんですけれども。そういった好きなことを見つけて、それを体現しているのがこの朝渋だと思います。最終的には『モチベーション革命』にあやかって、「早起き革命」というのを。

尾原:書こう!

井上:はい(笑)。「早起き革命」。

尾原:箕輪(厚介)さんに編集してもらおう。

井上:ぜひ。「朝渋」「早起き」みたいなところをもっと出していきたいと思ってます。

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好きを見つける

井上:さっそくですが、「好きを見つける」って、今日の一番聞きたいところでもあるのかなと思うんですけれども。「好きを見つける」って、すごい難しいなと思っていて。例えば、サッカーが好きとかあると思うんですけれども、仕事の中でどうやって「これは自分でしかできない」であったりとか、自分個人のタグを付けていくかっていう部分で。

(尾原氏が持っているお菓子を指して)……何ですか、それ?

尾原:これ最近アメリカで売れてるSkinnyといって、ナッツに薄くチョコレートをかけたやつで。

井上:ちょっと僕にも回してください。

(会場笑)

そこでまず尾原さん的に「好きを見つける」のところを。30歳、40歳の人が「好きを見つけましょう」って言うのは、すごくわかるんですけども、「わかんないよ」というのが若者の意見なのかなと。そこをどう見つけていくのか、っていうヒントで。

僕の知り合いに、大学時代にすごく優秀だったのに、大企業に勤めてから、最近会うと仕事が忙しすぎて「朝渋みたいなことはできないよ」とか、社内の飲み会では愚痴ばっかり言ってたりする人がいます。

「転職しないの?」と言っても、「いや、給料いいから」みたいなかたちで、なかなか「自分の好き」に移行してないなという若者をたくさん見てるんですけれども。

こういう20代の生き方のコツみたいな、好きを見つけるための工夫みたいなところって、尾原さんはどうお考えですか?

尾原:まず最初に言えるのが、自分で火をつけといて言うのもなんなんですけど、最近みんなが好きを見つけなきゃいけない恐怖症になりつつありますよと。生きがいを見つけなきゃいけいない恐怖症に。

(生きがいが)あったほうがいいけど、別になくったって、惰性で生きれるは生きれるんですよ。『モチベーション革命』では煽るために書いてないんですけど、実はモチベーションって『モチベーション革命』の中に書いていない、3つのモチベーションがあって。1つが周りから強制的に、怒られるからやるっていうやつで。

井上:強制力、はい。

尾原:2番目が金銭であったり、モテるからやるっていう、ちょっと物質的けん引で。3番目が実は惰性っていうのもある。だから別に惰性をうまく活用して、そのままダラダラ生きれるんだったら、それでもよくて。

もともとギリシャの幸せの考え方にユーフォリア(euphoria)というのがあって。要は、ただ生きてること自体がありがたいことなんだから、もうそれでいいじゃないかっていう。英語だとcontentmentという言い方をするんですけれども、今この場に生を受けてることが、それだけでもう奇跡的なことなんだから、それを味わって暮らしていきましょうよっていうですね。

ただ、人間って承認欲求の塊だし、コミュニケーションをしたいし、飽きる生き物だし。だから、自分が他の人にない、なにか自分だけが生きてる理由があったほうが、プラスはプラスかもしれないので、選択肢の1つなんですよね。そうなった時に、どうやって探していくかっていうと、日本人ってみんなね、真面目すぎるんですよ。

井上:今日来てる方はとくに真面目かもしれないですね(笑)。

尾原:そうですよね。えらいよね。考えられないよね。

自分は何者なのか

井上:今日朝5時半ぐらいに起きて来てくれた方も多いと思います。

尾原:僕はもともと4時間半しか寝ないので、どの時間に寝てるのか起きてるのかというのがあまり関係ないので、朝だろうがどうでもいいんですけど。日本の統計を見るとすごいのが、だいたい大学を出て社会人3年目までって、けっこう夢にあふれてるんですよね。

というのは、日本人にとっては、大学を出て就職をするタイミングが、「自分は何者なのか。自分はどこから来たのか」ということを、ものすごく見るタイミングなんですよ。

井上:就職活動のタイミングですね。

尾原:そう。そうすると自ずと、嘘でもいいから、就職面接で「僕の個性はこうです」とか、「僕はこう信じてます」とか言わなきゃいけなくなるから、そういうもの(自分は何者なのか)をある程度見つけるんですよね。

そうすると、その時に見つけたものっていう加速度が得られてるので、わりと「自分はこういうことをやっていきたいんです」みたいなことが出るんですけど、ここで書いてあるとおり、会社の中に入るとどうしても、目の前にある目標を追っかけなきゃいけないから。

そこに過剰適応できるのが日本人のすごいところで、だいたい3年目で「何やりたいですか?」って言ったら、会社の中での目的にほとんど変わるんですよ。

井上:そうですね。個人の名前が出てこないですよね。

尾原:これは何かというと、単純に言うと、自分の目標軸を会社以外に持ってない人が多いんですよ。

井上:目標軸。

尾原:そうすると、要は「評価をしてくれる人が会社の上司だけです」となると、当然さっき言ったように、人ってほめられたい、認められたいわけだから、どうしても会社の人が言う評価に自分を合わせちゃうんですよね。

それに対して、「じゃあ、本当はそうだったの?」って。学生時代って、いろんなサークルに顔を出してたり、Facebookとか、Instagramとか、いろんなところでいろんな人から「いいね!」をもらってるわけじゃないですか。

井上:サークルの立ち上げをやってたりとかね。

尾原:それを考えると、いろんな評価があるんですよ。そこをまず見るということですね。つまり、会社の評価がすべてじゃない。だから結局好きを見つけるって、自分の中から解像度を上げて好きを見つけていく方法と、いろんな人からほめられてる中で、「自分が何をほめられるとうれしいんだろう?」ということを重ねていくのがあって、それがたまたま両方一致すればラッキーだし。

さっき言ったようにオードリーの若林さんと、あと「今でしょ」の林先生と番組を収録したんですけど、林先生がすごくて。林先生ってすごく教えるのがうまいじゃないですか。「僕、1ミリも好きじゃないんです」と言ってて。

井上:あ、教えることが。

(会場笑)

尾原:「僕、ぜんぜん好きじゃなくて。ただ、稼げるし、みんなから尊敬されるから、『いいや』と思ってやってるんです。でも、本当はそんなことぜんぜん好きじゃなくて、僕はどっちかというと、人と会わずにずっとこもって物事を考えたりしてるほうが好きなんですよ」と言ってて。

でも、大事なのはそういうことなんですよ。解像度を上げるって何かというと、好きと得意って、一致してれば、そのほうがいいはいいけど、別に離れててもいいってことなんだよね。

ワークライフバランスはクソ

尾原:だから、僕の本の中で「ワークライフバランスはクソだ」という話をしてるんですけれども。ワークライフバランスって、そもそも「ワークとライフが別で、バランス取んなきゃいけない」という考えがまずおかしくて。

1段階目として、ライフワークバランスがあるの。つまり、人生の中でライフワークと呼べるものに、どれだけの時間をあなたは費やせてるんですかと? もし人生の中でライフワークに出会えたら、努力は努力じゃなくなるんですよ。だって、努力って別にイヤじゃないもん。むしろ努力自体が楽しいものです。だってライフワークと思ってることって、やってるうちに時間を忘れてるでしょ?

井上:没頭してますよね。うんうん。

尾原:それって一橋大学の楠木建先生は、「努力の娯楽化」と言ってるんですけど、そもそも努力じゃないんだよね。だってライフワークは、失敗が楽しいんだもん。

それが見つかった時に、さっき言ったように、林先生みたいにライフワークはあんまりお金になんなくて、むしろお金を稼げるところは別っていう人もいるわけですよ。得意なところと、お金を払ってくれるところですね。

井上:時間配分であったりとか。

尾原:そう。それは僕の本の中では「ライスワーク」っていう言い方をしてて、自分のお米を稼いでくるところ。だから、必ずしも得意でお金を払ってくれるものではない。いわゆる林先生はまさにプロフェッショナルなわけで、教えることが別に自分の好きじゃなくても、誰かが求めてくれる。自分がそれをやらねば自分の人生ではないミッションとは、別でもいいんですよ。

だからライスワークというお米を稼ぐために生きる部分と、ライフワークという、お金が稼げなくたって俺はそれをやらなければ俺ではない、というものが別でもよくて。ただ大事なことは「それぞれが自分の中の言葉で言えてるか?」ってことなんですよ。

井上:なるほど。