日本政府の考えるスタートアップエコシステムの全貌
石井芳明氏(以下、石井):みなさん、こんにちは。内閣府企画官の石井でございます。 本日は本来、内閣府特命担当 科学技術イノベーション担当 井上信治大臣からご挨拶差し上げる予定だったんですが、公務の関係でどうしても外せないということで、私が代わりにメッセージを読ませていただきます。
まず始めに、「ヘルスケアイノベーションエコシステムの新たな可能性」カンファレンスの開催おめでとうございます。本カンファレンスではヘルスケア分野を中心に、特にスタートアップを軸としたイノベーションエコシステムの議論がなされると聞いております。
スタートアップは、その機動性とチャレンジ精神でイノベーションを牽引するキープレーヤーです。大企業が取り組みにくいリスクを伴う新しい分野に積極的に取り組み、新しい価値を生み出し創造に貢献します。
そういったスタートアップが、アストラゼネカさんを始め、大企業と組んで大きく飛躍することは非常に意義深いことだと思います。COVID-19を受けた新しい日常への変革において、こういった連携はますます重要に大きな役割を持っていくことになると思っております。
日本政府といたしましては、世界に伍するスタートアップエコシステムの拠点形成戦略に基づき、スタートアップ支援の抜本的な拡充を図っております。特に都市におけるイノベーションを促進していく。大学をしっかりと支援する。日本の大きな力はやはり大学の中にありますので、大学から出てくる技術をうまく社会実装していく。
そういったことが大事ということで、大学における事業創出の促進。そして事業が立ち上がるところのアクセラレーター、それからギャップ・ファンディング、ファイナンスの面で、リスクを取るファンディングをどんどんやっていく。こういったことを抜本的に強化してまいります。
人材の流動化を目指し、固定的なキャリア形成の脱却へ
また、そういった支援策だけでなく、政府自らが新しい市場の創出に貢献するように、いろいろなニーズにおいてスタートアップ、あるいはスタートアップと大企業との連携や、新しい技術サービスを積極的に採用・調達していきたいと思っております。
そして、ネットワークも非常に大切です。技術がどんどん生まれる、あるいは資金が入ってくる。そういったものを、うまく社会実装につなげるための人と人とのつながりを作っていく。このコロナの時代において、オンラインも含め新しいつながりを模索しなければならないのですが、そういったネットワークをしっかり強化する。そしてオープンイノベーションをネットワークで推進していく。そういったことが大事だと思っております。
オープンイノベーションについては、企業それぞれがいろんな文化を持っております。あるいは、いろんな商慣習がありますけれども、そういったものを乗り越えることのお手伝いもできればと思っております。
そして、特に日本の特徴的な問題なんですが、人材の流動化をもう少し進めなければいけないと考えております。大企業の人材、スタートアップの人材、政府の人材、大学の人材、これらがいろんなキャリアパスの中で混じりあっていく。キャリアを変えながらつながっていく。こういったこともやっていく予定です。
こういった拠点を作ること、大学を応援すること、アクセラレーション、ギャップファンドを作ること。加えて、ネットワーク構築や公共調達を内閣府が各省庁と連携しながら進めていく予定であります。また地方自治体や、地方民間企業との連携も図りながら推進していく予定です。
本年7月には、スタートアップエコシステムの拠点として8都市を選定しております。グローバルに戦う拠点都市、世界のイノベーションの拠点と伍して戦う拠点都市として、東京エリア、名古屋エリア、関西。これは大阪・京都・神戸の連合体ですけれども、このエリア。そして福岡を拠点として選んでおります。グローバル拠点として、支援を集中していくということであります。
地方とグローバルのトッププレイヤーとつながりを作っていく
また地方の特徴を活かす推進拠点として、札幌・仙台・広島・北九州、こういった都市を選んで、地方の特徴を活かしてイノベーションを起こしていくことを推進しております。
各拠点都市におきましては、大学、自治体、それから民間のプレイヤー、大企業を含め金融機関などが入ったプレイヤーがコンソーシアム(注:共同事業体)を作ってコミュニティを作る。一体的にエコシステムを形成していくという取り組みを図ってまいります。
政府でも、スタートアップ創出の観点から、こういった取り組みを応援してまいります。また省庁連携で、一括して支援をしていきたいと思っております。スタートアップの支援、イノベーションエコシステムの形成、これが本当に重要な政策課題でありますが、それを効果的に進めるためにはグローバルな連携が不可欠となっております。
世界のトッププレイヤーとのつながりを作る。そういったことがこのエコシステムの形成、そしてエコシステムから生まれるスタートアップの世界への貢献に役立つと思っております。本日このカンファレンスに参加されておられますスウェーデンの企業、世界の大企業、それからいろんなグローバルなプレイヤー、投資家の方もご覧になっていらっしゃると思いますし、いろんな企業の方もご覧になっていらっしゃると思います。世界の企業家、こういった方々とのつながりづくりを強化してまいりたいと思っております。
共にイノベーションエコシステムの形成に取り組み、新しい価値の提供で、日本・世界に貢献できる優れたイノベーションの創出を共に促進していきましょう。カンファレンスにご参加のみなさまの、ますますのご活躍ご繁栄を祈念いたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。
以上、内閣府特命担当大臣井上信治、代読は内閣府企画官の石井でございました。
スウェーデンと日本の連携によるイノベーションの創造に向けて
司会者:石井さま、ありがとうございました。続きまして駐日スウェーデン大使、ペールエリック・ヘーグベリより、開会のご挨拶をさせていただきます。それではペールエリックさん、よろしくお願いいたします。
ペールエリック・ヘーグベリ(以下、ヘーグベリ):イノベーションとは、グローバルな課題に対してソリューションを見い出すことです。イノベーションは出会いであり、共有であり、まさに今我々が取り組んでいることです。
本日、このヘルスケアイノベーションエコシステムに関するフォーラムが開催され、皆さまと一堂に会することができたことを、非常嬉しく思います。
これは私たちスウェーデン大使館と、Business Sweden、アストラゼネカが共催しているものであり、シンセティックMRにもスポンサーとしてご参加いただいております。
スウェーデンからはオンラインで、それから日本からも非常に著名な方々にご参加いただいています。さらに、産業界からはスタートアップ、イノベーション、エコシステム、アカデミア、そして政府の代表の方々、みなさまに心から歓迎申し上げます。
そして、数多くの日本の政府機関、内閣府。それから経産省、厚労省、そしてJETRO(日本貿易振興機構)、PMDA(医薬品医療機器総合機構)、東京都、大阪市、その他関連機関からの数多くの代表者にご参加いただいております。
今日このようにしてたくさんの皆さまにお集まりいただけたこと、本当にうれしく思っております。そしてアストラゼネカ社におかれましては、この国際的なイノベーションネットワークの日本拠点を設立されたということで、心からお祝いを申しあげます。
日本とスウェーデンでイノベーションの加速を目指す
本日はその発表をいただけると聞いており、非常に多様な演者の方が、オンラインとオフラインで東京の会場に集まっていただいております。まさにこのイベントのテーマにマッチしているのではないでしょうか。
今回のような機会を通して、お互いに協力をすることの重要性がわかるのではないかと思います。ありとあらゆる背景を持った方々に集まっていただくことによって、イノベーションがさらに加速化されるでしょう。
そして、日本でヘルスケアイノベーションハブが設立されることは、イノベーションを促進する非常に重要な道だと思います。エコシステムによって、ますますお互いが協力できる、その貢献度を高められる。各機関、また個人のレベルでそうした協力が増すと考えています。
日本とスウェーデンは常にパートナーでありました。そしてこれはサイエンス、研究、イノベーションの領域だけではありません。医療でもそうです。数日前は、スウェーデンの保健大臣が田村厚生労働大臣とオンラインで二国間協議を行いました。さまざまな医療、健康に関わる事例、それから新型コロナに関わる議論もなされています。
また、こちらも数日前ですが、スウェーデンの疫学者がオンライン記者会見に参加しまして、日本とスウェーデンで直面しているコロナへの危機についての意見を表明しました。
スウェーデンと日本では共通点も多く、今後も両国間でさまざまな連携の機会があるでしょう。ぜひ皆さまにも、多様なイノベーションエコシステム、スウェーデンのエコシステムを知っていただき、新しい繋がりをつくっていただければ嬉しいです。
また、ぜひこれを機会にBusiness Sweden、スウェーデン大使館の私たちにもご連絡ください。今日一日を通してもさまざまなセッションがありますし、オンラインでも交流ができるかと思います。
私たちは、スウェーデンのイノベーションエコシステムを皆さんに最も意味のあるかたちでご紹介し、最初の接点になれればと思っています。
最後になりますが、改めて今日はみなさまお集まりいただきありがとうございました。私のほうからもヘルスケアイノベーションのプロジェクト、そしてシステムがここから生まれるものを見守っていきたいと思います。コロナ下ではありますが、ぜひみなさん健康に気を付けて、そしてイノベーションを続けてください。