スポーツの中継映像で使われる、CG技術
オリビア・ゴードン氏:フットボール、つまりアメリカンフットボールシーズンがフィナーレをむかえます!
ということは、アメリカで最も人気のあるスポーツが何百万もの家庭で映像が流れ、ありとあらゆる画面で映し出されるということになります。
しかし、テレビで観戦している人たちは、ブラウン管を通して実物とそっくりなものを映像として見ているわけではなく、スコアから次のファーストダウンの位置を示す黄色いラインまで、まるで実物のような光景を目の当たりにします。
CGは試合をわかりやすくする効果もあれば、逆に視界を邪魔するものにもなりますが、その裏に隠されたテクノロジーは意外と興味深いです。
アメリカンフットボール中継でもっとも頻繁に表示されるのは、裏の映像を隠して表示されるスコアでしょう。
これは比較的簡単にできます。カメラで映し出された映像をCGに置き換えるだけです。こうして、元の映像の上にCGが見えるようになります。
この技術は比較的簡単で、コンピューターに内蔵されている映像編集ソフトでできることが多いです。でも、黄色いファーストダウンラインを表示する技術はもっと複雑で難しい技術が必要です。
アメフトにあまり詳しくない視聴者もいるかと思いますが、このファーストダウンのラインはとてもまっすぐです。まず、攻撃チームには4つの攻撃権が与えられていて、そのうちの1つが10ヤード(約9メートル)の前進である「ダウン」です。このダウンに成功できれば、カウンターがリセットされて新たに4回の攻撃権が与えられ、10ヤード進むことができます。ダウンに成功できなければ、相手チームにボールがわたり、多くの人がテレビに向かって悲鳴をあげることになります。
テレビでアメフトを観戦していると、守備チームがプレイを始めた位置から10ヤード先にある次のダウンの位置を示す黄色いラインを見ることがあると思います。この画面上で見る黄色いラインは、CGらしさがないので、コンピューター上で付け加えられたものではなく、実際にフィールドに引かれているという錯覚に陥ることもしばしばあります。実際のフィールドに引かれた白線と同じように描かれ、プレーヤーが跨いでもプレーヤーが黄色く変色することもありません。
「黄色いライン」の作り方
このラインを作成するには膨大な労力が必要です。作成プロセスは試合が始まるずっと前から始まります。各企業はシーズン開始前からリーグの全フィールドの3次元測定を開始し、ありとあらゆる場所を計算モデルに取り込みます。と言うのも、一見平坦に見えるフィールドですが、水はけの観点から少しだけ中央部分が盛り上がっています。そして広い芝生にはそれなりに起伏があります。
有名なのがジャイアンツ・スタジアムの旧10ヤードライン近くにあるコブです。これらの情報すべてがフィールドのモデルに送り込まれ、そのおかげで正確なファーストダウンラインの位置と形状が決まります。
試合当日には、次のファーストダウンラインがどこになるかをすぐ把握できるように、スタジアム近くのコンピューターで臨戦態勢にあります。
しかし、位置と形状を把握することは作業の半分にしかすぎません。なぜなら、カメラの位置によって、実際の画面上でどのようにラインを映し出せばいいかをコンピューターは考えなければならないからです。
各テレビカメラには位置関係を示すセンサーが組み込まれているので、ラインが実際にフィールドにあるとすればどの位置にあるかを各コンピューターは計算上はじき出すことができます。
そして、コンピューターを使って黄色いラインをカメラの撮影イメージ上に映し出します。ただ、先ほどの簡単なCGのように黄色いピクセルをただ単に置き換えるのではなく、特定の色だけを置き換えます。芝生のフィールドで見かける色が緑や茶色なので、一般的には緑と茶色を置き換えます。しかし、他の色は置き換えません。そうすることで草と土は黄色いラインと置き換えられますが、選手の色は置き換えられません。たとえライン上を跨いだとしても色は変わりません。
しかし、緑色のユニフォームを塗り替えることを防止するため、コンピューター上で置き換える色は各フィールド、ゲームごとに細かく特定しなければなりません。この作業は非常に難しく、慎重にプログラミングしなければなりません。
一部のアルゴリズムでは、直近にラインが引かれた時からあまり変化していないエリア上では選手を塗り替えることがないようにプログラミングされています。たとえば選手が立っている場所とか。
どの手段を使うにしろ、スタジアムからあなたの自宅に配信される1秒当たり30コマの映像にすべてのモデリングと計算が施されます。つまり、あなたがアメフトファンであるにせよ、デジタルモデリングや巧みなグラフィックのファンであるにせよ、きっとアメフト試合の中継にはあなたが気付いていない何か新しい発見があるはずです。