根絶すべき生物、オオヒキガエル

マイケル・アランダ氏:種を根絶させること、それは悪いことをしているかのように思えます。私たちは、地球上の生命を守ることに多くの時間と資金を費やし、破壊することには使いません。

しかしすべての根絶計画が、ある種の全個体をターゲットにしているわけではありません。いてほしくない場所にいる一部だけです。外来種はエコシステムを完全に破壊することができます。私たち人間は、何年もかけてさまざまな方法を使い、外来種を取り除こうとしてきました。

しかしこうしたいくつかの努力が、裏目に出てしまいました。それも劇的にです。例を挙げてみましょう。オーストラリアの外来種の代表選手、オオヒキガエルです。

南米と中米の原産で、平均12~15センチメートルと大きな体格をしており、腐った肉から昆虫、外に置き忘れた猫のエサまでなんでも食べます。

また自分より小さいカエル、ヒキガエル、ヘビ、ナメクジ、小さな哺乳類も食べます。基本的に、口の大きさに収まるもので捕まえることができるものなら、なんでも食べるのです。このオオヒキガエルについての最も悲しいお話しは、彼らがオーストラリアに意図的に持ち込まれたことでしょう。

サトウキビの収穫物を食べてしまう甲虫をコントロールするために、農家が1930年代に持ち込みました。不幸なことに、このオオヒキガエルはサトウキビ畑にとどまらず、オーストラリア大陸のあちこちに繁殖しました。

中米の原産地では、このヒキガエルは地元の魚や爬虫類、鳥、虫などに捕食されていましたが、オーストラリアでは彼らを安全に食べることができる捕食者たちの数は少なかったのです。

オオヒキガエルには毒があり、その毒に適応していない捕食者たちがオオヒキガエルを食べるとしばしば死んでしまいます。このカエルは肩の分泌腺から毒をまき散らすことができ、これが人間にも激痛と一時的な失明をもたらします。このため、捕まえるのが難しく不快にさせました。

そして繁殖となると、彼らはまるで『スタートレック』シリーズに登場するイボイボがついた動物のトリブルのようです。メスのカエルは1回の産卵でクラッチ(一腹卵数)に3万5,000個の卵を産み、年2回産卵します。たとえ卵の1%が成体になったとしても、対処するにはとても大きな数です。

これらのことをすべて踏まえれば、なぜオーストラリアにこのヒキガエルが数億匹もいるかがわかるでしょう。そして個体数のコントロールの努力にもかかわらず、彼らは増え、毎年40~60キロの新しい土地へ移動します。

ミートアントがオオヒキガエルを撲滅?

しかし、もしかしたらオーストラリア原産のある種に、このヒキガエル撲滅の希望があるしれません。それはミートアントです。

この小さな虫であるアリは、オオヒキガエルの毒に影響されることなくヒキガエルを殺して食べることができます。そしてオオヒキガエルは、オーストラリア原産ではないため、このアリを警戒する方法を知りません。

もし科学者たちが、オオヒキガエルが集う場所にミートアントのコロニーを作ることができたら、このヒキガエルの個体数に大きなインパクトを与えることが可能かもしれません。

何人かがこのヒキガエルの天敵を持ち込むことを考案しましたが、その土地の原産ではない捕食者を輸入する案にはリスクがあり、これこそがそもそも、オーストラリアを混乱させたのです。

同様な個体数コントロール問題が、その他の外来種によって引き起こされました。植民地時代、船は探検者とともにハツカネズミやドブネズミといった密航者を運びました。

ネズミたちの数をコントロールするために、船乗りたちはしばしば害獣に対応するために外来の捕食者を持ち込みました。

インドマングースの脅威

「間違いを2つ合わせても正しくはならない」というフレーズを知っていますか? まさにここでぴったりあてはまることです。

人気のあった輸入動物が、食欲旺盛な捕食者である小型のインドマングースでした。インドマングースは、外来種のげっ歯類やヘビの個体数をコントロールするために太平洋の島々、カリブ諸島、日本、地中海に持ち込まれました。

マングースは口にくわえることができるものなら何でも食べるため人気があり、児童小説『リッキ・ティッキ・タヴィ』をご存知の方ならだれでも知っているように、この動物はなんでも捕まえることができます。

しかし、この能力が問題なのです。なぜなら彼らは、外来種のネズミだけでなく植物、フルーツ、卵も食べ、現地の動植物たちにとって悪夢となりました。地球上の1ダースほどの種の絶滅は、マングースに起因しています。これは、探検者たちがマングースを持ち込んだ時に意図していたことではありませんでした。

マングースをあらゆる場所に持ち込むことは良いアイデアと人間が考えなかったそのほかの理由は、マングースが狂犬病を媒介するからです。明らかに、最初から外来種を持ち込むことは避けるのがベストです。しかし本気で取り組めば、こうした外来種を撲滅させることは可能です。

オーストラリアと南極の間にあるマッコーリー島で起こった出来事は、駆除がどれだけ難しいかということを教えてくれます、しかしそこには希望もあるかもしれません。

オーストラリアの探検家が1810年にこの島を発見したとき、この島はアザラシとペンギン狩猟の中心地となりました。ハンターたちを満載した船は、この地の原産動物の食糧庫を脅かすハツカネズミやドブネズミを持ち込みました。

そこで、船乗りたちはこうしたげっ歯類の数をコントロールするために猫を持ち込みました。

ウサギがもたらした悲劇

時間を60年早送りしましょう。次の外来種が持ち込まれました。ウサギです。これは、船が最果ての島で難破した場合に船乗りに食糧を供給するための古い習慣でした。

当然、ウサギは信じられない速さで倍増します。そしておいしいたくさんのウサギがいることで、猫も倍増していきました。

1970年までに島の植物生態を破壊する10万匹以上のウサギがいました。そして猫は、島の2種類の鳥を絶滅に追いやりました。自然保護主義者たちはウサギの問題をとても懸念し、そのほかの外来種をこの地へ持ち込みました。ウサギの病気である粘液腫病です。

これは成功し、ウサギの個体数を10年間で2万以下に減らしました。しかし狩るウサギが減ったことで、マッコーリー島原産の鳥にとって猫はさらに危険となりました。1985年までに猫が大きなダメージをもたらしたため、保護主義者らはすべての猫を撃って殺すキャンペーンを始めました。

このことが何をもたらすのか、みなさんはおそらく想像がつくでしょう。2000年にマッコーリー島最後の猫は射殺され、10年もたたないうちにウサギの個体数は制御不能となり、島のほぼ半分を禿げ地にしてしまいました。

これ以上のダメージを防ぐために島のすべてのウサギ、ハツカネズミとドブネズミを捕まえて殺すため、タスマニア政府は1,700万ドルのプログラムの予算を承認しました。

プロジェクトの第1弾は2011年に開始され、げっ歯類用の毒餌があらゆる土地に撒かれました。これがハツカネズミやドブネズミを全滅させ、ほとんどのウサギを殺しました。

残りのウサギを全滅させるために、次に犬が持ち込まれました。みなさんが外来種をまた持ち込むなんて恐ろしいことだと思う前にお知らせすると、これらの犬はウサギ捕獲用に訓練されたもので、プロジェクト後はトレーナーとともに島を去っています。

2014年4月、2世紀にわたるダメージのあと撲滅は完了しました。ですから、地球のいたるところで問題を起こす外来種をコントロールすることに希望はあるかもしれません。

根絶の努力はとても難しく、時間とお金がかかること、そしてどれだけひどい逆火が起こりうるかということをこうして起こったケースが私たちに教えてくれます。不要となったペットが下水に流されたという話を次に耳にしたら、ミュータント・タートルズよりも、環境の悪夢についてもっと考えてみましょう。